【自主レポート】
地球温暖化対策における緑化推進の取り組み
京都府本部/自治労京都市職員労働組合 稲田 利幸
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1. はじめに
京都市の地球温暖化対策の取り組みは、1997年12月に京都市において開催された「地球温暖化防止京都会議(気候変動枠組条約第3回締結国会議)」、いわゆるCOP3を契機に行われました。
地球規模での環境問題、特に「地球温暖化問題」は私たちの将来世代の存続基盤も危うくする21世紀最大の課題であるという観点から、私たちのライフスタイルや企業活動を環境負荷の少ないものに変革していくことから対策を講じなければなりません。「大量生産・大量消費・大量廃棄」といった消費型から、環境型の持続社会づくりに変革形成することが最も重要であり、その実現には、市民・事業者・行政がそれぞれの取り組みを進めると共に、お互い関連するところではパートナーシップの下、協働して取り組まなければなりません。
地球温暖化防止対策は、大気中にある二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度が異常なペースで高くなっているためであり、その原因は、化石燃料の大量消費と森林、とくに熱帯雨林の消滅とされています。
私たちに出来ることは、この増加基調にある温室効果ガスの総排出量を早期に減少基調に転換していくことです。そのためにも、国・地方公共団体・事業者及び国民市民といったすべての主体が、それぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠であります。また、各々が基本的な考え方を勘案し、その区域の自然的、社会的条件に応じて、温室効果ガス排出の抑制などのため、総合的かつ計画的な施策を策定し、実施することが必要です。
2. COP3
地球温暖化防止京都会議では、長期的・継続的な排出削減の第一歩として、先進国の温室効果ガスの削減が法的拘束力をもつものとして、京都議定書が採択されました。
議定書では、排出の抑制及び削減に関する数値化された約束の対象となる温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH2)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)であり、これら排出量を2008年から2012年までの約束期間に、先進国全体で1990年レベルと比べて少なくとも5%削減することを目指して、各国ごとに法的拘束力のある数値化された約束が定められています。
日本においては6%の削減を目標としています。しかしながら、温室効果ガスの排出量は、現在の予測では2010年には基準年である1990年と比べて大幅に増加すると予想されています。特に運輸部門、民生部門(家庭における新たな機器の普及や保有台数の増加、オフィスビルや商業施設等の増大)からの排出量が増加しており、その原因は、電気やガソリン等の消費量の増加と言われているところです。
このような中、エネルギー効率が既に世界最高水準にある日本にとって、議定書の6%削減約束を達成していくことは、決して容易なことではありません。前文でも述べましたように、国、地方公共団体、事業所及び市民国民が一体となって、約束達成に挑戦していく必要があります。
3. 第29回自治研報告概要
第29回徳島自治研に「京都市における地球温暖化防止施策の推進」としてレポート報告をしました。その発表に際しては、COP3の自治労京都市職の取り組み報告や京都市の地球温暖化対策の具体的な取り組み状況及び経過について報告をしました。
京都市の取り組みの中で、①市民参加のまちづくり、省エネ、省資源などの活動誘導、②環境学習の推進、③市役所の率先実行、④計画策定、⑤資源循環・廃棄物対策、⑥その他、6項目と20の取り組みについて記載し、報告については、具体的に、3つの取り組み状況を報告しました。
(1) 京都市では、二酸化炭素排出量10%削減を目指し、環境と共生する持続型社会への行動計画を策定し、その中で、KES・環境マネジメントシステムスタンダードの創設等「京(みやこ)のアジェンダ21」の取り組み。
(2) 環境学習・環境教育の取り組みの一環として、ごみ減量・リサイクルの問題から地球規模の環境問題まで、幅広い視点にたった「環境意識」の定着を図り、市民・事業者の環境保全活動支援を図るための施設としてCOP3開催記念館「京エコロジーセンター」について説明。
(3) 京都市では、使用後廃棄していた廃食用油(天ぷら油)を回収して、再生したバイオディーゼル燃料を自動車のディーゼルエンジンの燃料として使用している「バイオディーゼル燃料化事業」の取り組み。
今回の報告については、その他の項目中の「緑化推進」の状況について報告します。
4. 緑化推進の取り組み
快適な生活環境を保全するため、ヒートアイランド現象の緩和が問題に挙げられます。都市化の進んだ地域では、人口の集中、地表の改変、エネルギー消費の増大等により、周辺部に比べて気温が上昇するヒートアイランド現象が起こっています。京都市域においても、弱風、晴天の条件下で3~5度の温度差が観測されています。ランドサットによると地表面温度分布は、京都市街地南西部に高温域が、御所や二条城等の緑地に低温域がみられます。気温の上昇による影響は、冬の寒さが和らぐ一方で、夏の暑さを一層不快なものとし、気温の上昇による住居空間の冷房のためのエネルギー消費の増大によって、更にヒートアイランド現象が強められています。
このことから、公園、緑地の積極的な配置、効率的なエネルギー使用、都市廃熱の再利用等の施策が重要であります。地球温暖化防止京都会議の意味を踏まえ、議定書に冠された都市にふさわしく、今後自然と共生する地球環境都市の実現を目指して、各種の環境施策に積極的に取り組む責任があります。
「緑」には、CO2吸収効果があり、地球温暖化防止の一助をなすとともに、温度や湿度の緩和効果があり、都市の微気象の急激な変化を和らげたり、ヒートアイランド現象の抑止にも役立っています。また、豊かな緑の生態系を創出することは、生物の多様性を確保することでもあり、身近な自然とのふれあいを通じて、潤いある豊かな都市生活を実現することになります。これまでの経済性、利便性を追い求めるライフスタイルを見直し、見失いつつ自然との共生関係を取り戻して、環境にやさしい緑豊かなまちをつくりあげる必要があります。
5. 京都市緑の基本計画
京都市では、緑地保全法に基づき、緑の現状や緑に対する多様なニーズを踏まえ、公共施設の緑や民有地の緑を幅広くとらえ、将来像を展望した総合的な緑に関するマスタープランとして、1999年2月に「京都市緑の基本計画」を策定しました。
市街地の緑化面積を定めることにより都市の緑化の目標を定め、その達成への道筋を示し、また道路や河川・公園緑地や樹林地等を組合せ、都市域における水と緑の公的空間確保等の住民が身近に関心が高められる施策が定められました。
緑地を系統的に配置し、環境保全・レクリエーション・防災・都市景観形成等、さらに都市のヒートアイランド現象緩和等の緑地が持つ諸機能を有機的に発揮しうるように、緑を守り、育て、増やすことにより、京都市の独自性を活かした個性的なまちづくりを進め、良好な生活環境の整備を目指しています。
(1) 緑の確保及び緑化の目標(目標年次2025年)
① 緑の確保目標水準
ア 市街地を囲む周辺の山々の緑 → 量、質とも現状を保全し活用
イ 市街地の緑 緑被率24.4%(現状)→ 33%
② 具体的な緑化の目標
ア 公共公益施設の緑化(都市公園・道路・その他)→ 現在より100%増
イ 民有地の緑化(工場・住宅団地・社寺境内地・個人住宅)→ 現在より50%増
③ 都市公園等の確保目標
市民1人当り公園面積 4.53m2(2004年3月現在)→ 10m2以上
(2) 目標実現のための具体的施策
(3つの基本方針)
① 緑の保全と活用(歴史、文化、環境を守る)
② 新しい緑の創出 ― 緑のネットワークの形成 ―(防災、環境活動の空間を創る)
③ 市民・事業者とのパートナーシップによる緑化の推進
(9つの基本施策)
① 市街地を囲む周辺山々の緑保全と活用(関係部局と協議中)
② 市街地の緑の保全と活用(景観法に伴い関係部局と協議中)
③ 公園等の整備(公園の新設、再整備については計画的に実施)
④ 公共公益施設の緑化(道路・河川・学校緑化等実施)
⑤ 工場、民有地緑化等の推進(開発事業等により積極的に要請)
⑥ 緑化推進啓発活動の展開
⑦ 緑化助成、顕彰制度
⑧ 緑のまちづくりを進める組織体制の整備
⑨ 人材の育成
ア 市街地の緑の保全と活用 ―②―
保存樹指定事業(京都市緑化の推進及び緑の保全に関する条例により)
40本指定(2001年~05年)区民誇りの木872本の他、市民推薦
イ 緑のまちづくりを進める組織体制の整備 ―⑧―
(市民・事業者とのパートナーシップによる緑化の推進)
京都市都市緑化推進協議会(市民代表・事業者・学識者15名で構成)
重要課題・優先する課題を具体的に進めるため3つの部会を設置(①緑化重点地区、屋上緑化等新しい緑の創出の検討、②緑化啓発、助成・顕彰制度等パートナーシップによる緑化の検討、③京都三山や市街地の緑の保全と育成の検討)
ウ 緑化助成・顕彰制度 ―⑦―
・住宅地や駐車場における生け垣等の緑化助成制度
96件1,300m程(1999年度~2003年度)
・緑化功労者への表彰制度(個人・団体2003年度より実施)
・まちみどり写真コンクール(今年で20回目)
・屋上緑化助成の検討(緑化協会屋上に試験的施工、調査研究中)
エ 緑化啓発活動 ―⑥―
・都市緑化推進啓発活動(街頭啓発、区民ふれあいまつりの参加)
イベントやパンフレット、種子・球根の配布、緑化相談、樹木ウォッチング等
オ 緑化重点地区の決定(緑化重点地区の計画)
2004年度と2005年度で緑被率調査 → 緑化推進協議会で検討
カ 人材の育成 ―⑨―
まちの緑のボランティアリーダーを育成(検討中)
キ その他
・全国都市緑化フェアへの展示品の参加
・近畿都市緑化際への展示品の参加
・京都市都市緑化推進協議会の設置(市関係局部課連携)
・白川桜ライトアップ事業(商工会議所との連携)
・区民誇りの木事業、標識設置
6. 今後の課題
目標達成に向けて基本計画に掲げる各種具体策を積極的に実施するため、また、緑化施策を円滑に幅広く協力的に展開していくためには、京都市都市緑化推進協議会での協議・意見を集約し、基本計画の見直しをも視野にいれ、実施方法についてはさらに検討する必要があります。
7. おわりに
京都市においては、2004年の9月市会において「京都市地球温暖化防止条例」が上程され、可決されると思われます。
京都市環境審議会では、2003年の3月に、京都市長から「京都市地球温暖化防止条例(仮称)の基本的な考え方」について諮問を受け、温暖化対策条例検討部会を中心に検討していました。このことは市民生活に密接な関係があり、市民の知恵と力を活かした取り組みの推進が重要であることから、これまでの部会の議論の途中経過をまとめて公表し、市民から意見募集(パブリックコメント)が行われました。更に11月には、市民の意見を直接聞くための意見交換会も開催され、2004年2月に取りまとめ、市長に対し答申されました。
報告には、条例制定の趣旨や目的、基本的な考え方、また、条例に規定すべき事項で、市の責務・事業者の責務・市民や観光旅行者その他滞在者の責務の他、地球温暖化防止計画の策定、施策等が記載されています。
自治労京都市職もCOP3において、京都府本部とともにあらゆる取り組みを行った経過もあり、また、京都市を「環境自治体」とする方針に基づき、今回についても、京都市環境審議会・温暖化対策条例検討部会に「地球温暖化防止条例(仮称)に関する意見書」を2003年9月に提出しました。
最後に、自治労を通じて全国的な運動と国際的な労働組合組織にも京都議定書の意味を訴えてもらいながら、地球規模での環境対策を講じていく一方で、名実ともに京都市を「環境自治体」とするために、自治労京都市職は自治研活動や自治政策による運動展開により京都市に対して政策提言を行いながら、全組合員・組織一体となって継続した取り組みを進めていきます。
2003.9.10
京都市環境審議会 温暖化対策条例検討部会 様
自治労京都市職員労働組合
中央執行委員長 橋元信一
地球温暖化防止条例(仮称)に関する意見書
京都市の「地球温暖化防止条例(仮称)」制定のためにご尽力されております貴職に敬意を表します。
さて、地球温暖化の問題は自然環境と人類に深刻な影響を与えるものであり、国際的な枠組みの中での早急な対策が求められています。
国においても、2002年5月31日に「京都議定書」の国会承認と「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が可決成立し、「京都議定書」の発効へ向けた準備が整いつつあります。
そしてこうした状況の中で京都市については、「COP3」開催の地として、さらに「京都議定書」に名を冠した都市としての先進的な取組が望まれているところです。
現在、全国の政令市に先駆けて制定されようとしているこの「地球温暖化防止条例(仮称)」はそうした意味でも大変意味深いものであり、また今回公表された「京都市環境審議会 温暖化対策条例検討部会」の途中経過につきましては、現在指摘されている多くの課題が盛り込まれており、非常に有意義な内容となっています。
わたしたち自治労京都市職は、市民ニーズに対応した質の高い公共サービスの実現へ向けた自治体改革を推進していくため、かねてから政策・制度要求実現の取り組みを進めてきました。そして今年の7月1日には、この地球温暖化の問題も含めた「政策・制度等に関する要請書」を高木副市長に対して提出してきたところです。
今回、「京都市環境審議会 温暖化対策条例検討部会」の途中経過につきまして、自治労京都市職として次のとおり意見を提起させていただきました。今後の「地球温暖化防止条例(仮称)」の制定にその主旨が十分活かされますよう要請いたしますのでよろしくお願いします。
1. 京都市においては、平成15年度の予算編成方針においても、全ての分野で環境を基軸とした施策の展開を図るとなっています。当然のことながらこの内容を実践していくためには、他の政策分野や各種開発計画よりも「環境」とりわけ地球温暖化の問題が優先される必要があります。よってこの事を視野に入れた全市的な位置付けの確立を求めます。
2. 「京都市環境審議会 温暖化対策条例検討部会」の途中経過にもあるように、各自の責務等を「義務的又は規制的措置」として定めるには十分な検討を要します。しかしながら条例の実効性を担保していくためには必要不可欠な措置であると判断しますので、利害関係に基づく様々な意見等に対し、公平・公正かつ適切な対応を求めます。
3. オゾン層を破壊するフロンに対しては、2001年に「フロン回収破壊法」が制定されましたが、その後「オゾン層保護」を名目として、代替フロンであるHFC・PFC・SF6の生産・使用量が増加しています。これらの代替フロンは温室効果が高く京都議定書の対象ガスですが、「フロン回収破壊法」の対象外となっています。フロン回収の実効性ある制度構築と合わせ、環境に深刻な影響を与えない「脱フロン製品」の利用促進へ向けた対策を求めます。
4. クリーンエネルギー自動車・燃料電池車・低公害車・低燃費車の普及促進を目指すとともに、クリーンエネルギーの燃料供給設備等のインフラ整備の推進を求めます。また、省エネ型電気製品の開発・普及および省エネ住宅への建設技術等の積極導入を進めるとともに、住宅用太陽光発電等への支援措置の拡充を求めます。
5. 自然的・社会的条件に応じた環境保全の意欲の増進及び環境教育の推進に関する方針、計画等の作成を求めます。
6. 地球温暖化防止条例の具体的項目として以下の措置を求めます。
① オフィスなど大規模事業所にCO2排出量削減の義務化を求めます。
② 新築建築物に対し、より高い省エネルギー性能の達成の義務化を求めます。
③ 消費者に省エネ情報が確実に伝わる仕組みづくりを求めます。
④ 自動車に起因するCO2排出量削減を求めます。
⑤ 再生可能エネルギーへの利用転換を求めます。
⑥ 「環境共生都市・京都」のまちづくりと一体となったヒートアイランド対策を求めます。
― 以 上 ―
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