【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-①分科会 市民と公共サービスの協働

平取町における自治基本条例制定への取り組み


北海道本部/平取町職員労働組合

1. はじめに

 2000年12月、北海道ニセコ町で施行された「ニセコ町まちづくり基本条例」をはじめに自治体運営の基本理念と基本原則を定めた「自治基本条例」が全国で策定されるようになった。2007年度当初現在、すでに基本条例が施行されている自治体は全国で194団体(道内15団体)策定作業中も含めると300近い団体が自治基本条例を策定あるいは策定作業を進めるに至っている。どの自治体でも自治基本条例を当該自治体の「最高規範(自治体の憲法)」と位置づけその傘下の各条例を基本条例と整合を図り整備するなど、基本条例の各条文の具現化にむけ、様々な取り組みが始まっている。
 当町でも、2006年度を初年度とする10ヵ年長期計画「第5次平取町総合計画」の基本構想で2007年度中に策定することが明記され、2006年9月から約1年6カ月の策定作業をへて、2008年3月議会に上程し、4月1日に施行されている。
 平取町職員労働組合自治研推進委員会としては、今後、基本条例を原則とする様々な取り組みに対し、現場の視点で検証し、問題点等を積極的に提起するうえでこれまでの策定の経緯の実態等を把握することとした。

2. 基本条例の必要性

 すでに多くの自治体で基本条例が制定されている状況下で、なぜ、自治基本条例が制定されるようになったのか、その背景と必要性について最初に記述することとする。
 1990年代に地方分権に向け様々な構想が提案され、地方分権推進委員会が中央省庁との交渉の結果、一応の分権改革が進み、2000年4月機関委任事務を廃止する「分権一括法」施行という形で新たな国と地方の関係が法律の構成上は再構築された形となった。
 国の省庁が決めたことを市町村、都道府県が行政として行うことを期待されていた「地方行政」から、自分達の自治体のことは自からが決めるという「地方自治」が基本、原則になるということを改めて認識することとなった。
 いわゆる2000年の分権改革以前から、社会情勢の変化、それに伴う地域ニーズの多様化に対し、それまでの中央集権型のシステムでは、さまざまな個別の課題への対応が困難な状況が生まれ、自治体の中には国からの指示で動く「地方行政型自治体」では国の施策が不十分なため対応できないとし、独自の自治体運営、行政サービスの提供を行う自治体も多くあった。しかし、基本の構造、法律上の構造は地方行政といえるものであり、それが2000年の分権改革で、クリアーすべきハードルは残したものの、自分たちが決めて律していくという「地方行政」から「地方自治」に転換を図るべく基礎が形成されたといえる。
 地方行政という視点で地方自治体を見ると、全てではないにしても、国が決めた枠組みのなかで国の仕事をやらざるを得ない環境ということからして、住民自治とはいえ、住民が決定できる範囲、自治体で実施できる範囲は限られていたといえる。
 しかし、改革後は自治体が決めることができるようになる範囲が広くなったことから、その部分をどのような手順をもって、どのように決定し、執行していくかということが必然的に重要性を増すこととなった。
 そのことは、以前とはちがう自治体の行政サービスの質の改革、あるいは決定手法の改革が求められているということになり、地方自治法だけでは自治体運営は不可能であるという側面は、今日においてより拡大していることを明確にしている。
 これは、分権改革に伴い自治体自らが決定し、運営しなければならない要素が拡大し、その中でどう自治を醸成していくかが大きな課題となってきており、このような背景のなか、自治体運営の基本理念と基本原則を定めた自治基本条例の必要性が増し、多くの自治体が策定に取り組む状況が生まれたといえる。

3. 平取町での取り組み

 前述した地方分権の背景と、多くの先進自治体の基本条例を通しての自治への取り組みが、平取町でもこのような条例の必要性の機運を高め、条例が策定される大きな要因となっている。今回施行された平取町の自治基本条例は「情報共有」と「住民参加」が原則条項となっているが、町政運営における情報開示や参加について、すでに種々の取り組みはあったものの、それが偏っていたり、不十分、手法のまずさなどから町政に関する「情報共有」と「住民参加」について町民の閉塞感、不満が存在していたと考えられ、その基本原則を明文化する基本条例の策定を町民は望んだと考えられる。
 前述したように、平取町でも「第5次総合計画(2006~2015)」にて自治基本条例を策定することが基本構想に盛り込まれ、2006年度から策定作業がはじまっている。
 平取町での自治基本条例策定作業は、「町民がつくるわが町のきまり(憲法)」とすることを基本姿勢としている。すでに策定された自治体の条例の内容をみると、ナショナルミニマムとして自治体が取り組むべきことが法令等の枠のなかでほぼ同様という状況のなかでは内容に共通する項目も多くなるという側面もあり、どこかの自治体の条例を参考に短期間で役場の職員がつくることも可能ともいえる。
 しかし、役所が案をつくり、いつの間にかできあがっていた自治基本条例を、住民が「わたしたちのまちの憲法」と思えるかどうか。結果的にできあがった条例が、他の市町村の条例と内容的に大きな違いがないものであったとしても、説得力をもって「わたしたちのまちの憲法」と語るには、まずその自治の主体である町民が自ら策定過程に携わり、役場、議会、町民との協働作業で、自ら創り出すべき条例でなければならないことを策定作業の基本原則としている。
 策定体制は下図-1のように町民15人を各団体の推薦(5人)と一般公募(10人)により、基本条例をつくる会を設置し、この会が町長の諮問により条例案をつくり答申するという手法を採用した。それと並行し、庁舎内に各課主幹クラスのメンバーからなる検討チームを設置し、つくる会で協議する条例案の事前検討を行うこととしている。また、つくる会の検討の過程で、専門的な助言者として、アドバイザーを大学教授に依頼し、条例の構成、条文の策定手順など随時、アドバイスをもらう体制とした。条例案に対し町民の意見をいただく「住民集会」や条例の必要性などを周知するシンポジウムはすべてつくる会が主体的に行うこととした。条例をつくるという作業が一般町民にとり馴染みの無いものであったことから、基本的な知識の蓄積が要求されるなどメンバーのご苦労も多かったものと推測する。
 つくる会での条文の検討は、ワークショップや先進自治体の例を比較検討し、月1回のぺースで真摯な議論が続いた。1回約2時間の会議の時間を設定していたが、時には議論が伯仲し4時間を超えることもしばしあった。この熱っぽい議論は、施行された基本条例の原則条項でもある「住民参加」の条文を実践したという意味で、今後の関連条例の策定や制度整備の取り組みにも明るい要素をもたらしたと考えている。


図1 策定体制



4. 平取町自治基本条例の構造

 下記の構造図のとおり、平取町自治基本条例は8章38条からなり、最高法規性を誇示することからも、前文が設置されている。第2章「情報共有」と第3章「町民参加」は原則条項として位置づけ、第4章から第8章のそれぞれの章はこの原則条項を実現するための条文として整備されている。多くの先進事例が情報共有と町民参加にもっとも重きを置く構造となっており、平取町の場合もその体系に沿ったものとなっている。
 第4章の行政運営では総合計画を政策の柱とし、事務事業の執行を計画的に進めることを原則としている。第21条の出資団体等では第3セクターなどの経営と町財政との関係の情報公開を常態化することを規定し、第22条の公益通報では、すでに法的に整備されている公益通報者保護法を町職員に適用することを規定する条文を設けている。第5章、第6章では議会と町長を含む執行機関の役割と責務を規定している。先進自治体の例では、議会の条文は議会自らが策定するという例が多いが、平取町では、つくる会の条文案を議会が検討し、その協議のすえ最終案として調整している。
 第9条の選挙の条文は、町長、議会議員が選挙の際に自分の考えを町民に伝えるという規定も公職選挙法との整合を図りつつ規定した。38条では条例の見直し規定を定めており、時代の変化、新たな技術開発が予測されることから、検証する必要性を認め「育てる条例」として見直しを規定している。


図2 平取町自治基本条例の構造



5. 平取町自治基本条例のこれから

 今後は、原則条項をはじめとする町政運営の基本原則をより具現化する条例、制度の整備が不可欠となる。たとえば「情報公開制度」等の更なる強化と、すでに先進自治体での取り組みも始まっている「情報共有条例」や「住民参加条例」などの整備を図らなければならない。それも基本条例で規定する住民との協働を基本に作業をすすめることとなるだろう。また、策定段階でも住民への条例の認知の度合いが少ないことがたびたび指摘される場面があったが、基本条例がまちづくりの根幹となる重要なルールであることのさらなる住民への周知と、基本条例を基礎に、町民、議会、町長がそれぞれの役割を改めて認識し、まちづくりへの参加を促すことが重要な取り組みとなるだろう。
 4月条例施行後、初めて行われた町長選挙でも、基本条例の条文の主旨がまだまだ理解、浸透されていないところがあり、条例の主旨を十分に反映された結果とはなっていない現状があった。
 また、基本条例の策定作業と並行して、原則条項である情報共有の実践との捉えから、基本条例プロジェクトチームのメンバーを中心とした主幹以下9人からなる運営委員会を設置し、「まちづくり住民講座びらとろん2007」を開講している。テーマは「総合計画」「財政」「病院経営」「後期高齢者医療制度」「税制」など多岐に亘り、講師は担当課長が努めた。1テーマにつき町内3箇所ずつ21回の開催となった。毎回欠かさず出席する町民もあり、継続を望む声も多くあった。情報共有の一つの取り組みとして更なる進化も期待し、今後の取り組みにも注目したい。

6. 当自治研としての検証

 平取町基本条例は2008年4月1日に施行はされたが、策定段階でのパブリックコメントの不足、事前の町民の認知度の低さは否めないものとなっており、今後、各条項を具現化するための取り組みが速やかに進むよう、組合自治研としても検証をしていかなければならない。自治研の当面の取り組みとして、役場全職員、町民(有権者の10%程度)、議員を対象としたアンケート調査を実施する予定でいる。そこから得られる策定段階での問題点などを検証し、今後の具体的な取り組み、制度開発等に意見反映させることとしたい。


平取町自治基本条例

 平取町は、沙流川の清らかな流れが育んだ豊かで雄大な自然のもと、農林業を基幹産業として発展してきました。私たちは、この地に先住し自然を敬い共生してきたアイヌの人々や先人達が共に築いた歴史や文化、みどり溢れる自然や風土などの大切な財産と、未来に向かっていつまでも「輝くびらとり」であり続けるための自治のしくみを、次代を担う子どもたちに引き継ぐ責務があります。私たちは、情報の共有による積極的な町民参加が自治をつくる原動力となることを強く認識し、町政運営の基本理念や制度運営の原則を明らかにするとともに、協働の精神を基本とし、みんなで力を合わせ、町民主権による自治を確立するため、平取町自治基本条例を制定します。

第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、町政運営の基本理念と基本原則を定め、町民の権利と役割、議会、町長、職員の責務を定めることにより、町民主体の創造的な自治の実現を図ることを目的とします。
(位置づけ・最高規範性)
第2条 この条例は、町政運営における最高規範と位置づけ、町民、議員、町長及び職員はこの条例を遵守し、他の条例等の制定及び改廃にあたっては、この条例の内容に基づき、適合させなければなりません。
(定義)
第3条 この条例における用語の意味は次のとおりです。
(1) 町民 平取町内に住所を有する人をいいます。
(2) 町 執行機関及び議会で構成される自治体をいいます。
(3) 執行機関 町長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会及び固定資産評価審査委員会をいいます。
(4) 町政 平取町における政治、行政の全てのことをいいます。
(基本原則)
第4条 町は、第1条の目的を達成するため、次に掲げる事項を町政運営の基本原則として定めます。
[情報共有]
(1) 町は、町民の知る権利を保障するとともに、十分な説明責任を果たすことによって、透明な町政を築き、かつ町民参加を効果的に進めるための条件を整えます。
[町民参加]
(2) 町は、町民が意欲的に町政運営に参加できるよう、多様な参加の機会の保障と意見の反映を行います。
[行政運営]
(3) 執行機関は、総合計画、財政運営、法務体制、行政評価等、行政運営の質を高めるために必要な制度の確立及びこれらの運用の原則を明らかにします。
[議会]
(4) 議会は、町民の意思を反映するとともに、行政運営の監視、牽制機能を果たし、町民福祉の向上を図ります。
[行政組織]
(5) 町長は、的確な意思決定と効果的な政策の立案、執行のため、効果的な行政組織を編成するとともに、職員の政策能力の開発を図ります。
[連携・協力]
(6) 町は、自らの責任と判断において、他自治体や国及び関係機関、町内外の団体などと、対等の立場で連携、協力します。
2 町は、より効果があがるよう、この条例で定める町政運営の制度を可能な限り相互に関連づけて活用しなければなりません。

第2章 情報共有
(情報の共有と公開)
第5条 町は、町の保有する情報が町民と共有する財産であることを認識するとともに、町政に関する正しい、わかりやすい情報を町民がすみやかに、容易に得られるよう、情報を積極的に公開しなければなりません。
2 町民は、情報共有が町からの一方的な情報の提供ではなく、相互の情報発信があってこそ成り立つことを認識し、情報を提供するよう努めなければなりません。
(情報を共有する制度)
第6条 町は、情報の共有を進めるため、町の保有するすべての情報を対象に、次に掲げる制度を設けなければなりません。
(1) 町の情報を正確にわかりやすく提供する制度
(2) 町の会議を公開する制度
(3) 町民の意見等が町政運営に反映される制度
(4) 町が保有する文書その他の記録などを請求する制度
2 町は、町が保有する情報を統一した基準により管理し、保存しなければなりません。
3 第1項各号に関して必要な事項は、別に条例などで定めます。
(個人情報の保護)
第7条 町は、町民の権利や利益が侵害されることのないよう、町が持つ個人情報を保護しなければなりません。
2 個人情報の保護について必要な事項は、別の条例で定めます。
(説明責任)
第8条 町は、町政運営に関する事務事業等の企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、町民に的確な情報をわかりやすく説明しなければなりません。
2 町は、町民からの意見、要望または説明の求めなどに対し、誠実かつすみやかに対応しなければなりません。
(選挙)
第9条 町長、町議会議員の候補者は、選挙の時に、町政に関する自らの考え方を町民に示すよう努めなければなりません。

第3章 町民参加
(町民参加の権利)
第10条 町民は、町政の主権者として、町政運営に参加する権利があります。
2 町民は、町政運営に参加する際に、国籍、民族、性別、年齢、心身の状況、信条、社会的又は経済的環境等によるいかなる差別も受けません。
3 満20歳未満の町民は、それぞれの年齢にふさわしい町政運営に参加する権利があります。
(町民参加の保障)
第11条 町は、町政の基本的な事項を定める計画や立案等の検討過程において、町民の参加を保障しなければなりません。
(町民参加の推進・拡充)
第12条 執行機関は、多くの町民の参加機会を保障するため、審議会の委員の公募、意見の公募などの多様な参加手法を用意しなければなりません。
2 執行機関は、次に掲げるときは、町民の参加を図らなければなりません。
(1) 総合計画などの重要な計画を策定し見直すとき。
(2) 重要な条例案の策定や改廃を提案するとき、及び、規則や要綱などを制定し、改正し、廃止するとき。
(3) 事業を選択するとき。
(4) 事業を実施するとき。
(5) 行政評価を実施するとき。
3 町内に住所を有しない人で、町内で働いている人、学んでいる人、また、町内で事業を営む法人及び活動する団体については、町政に参加する機会が保障されます。
(町民の知る権利)
第13条 町民は、町が保有する町政についての情報を知る権利があります。
(町民の責務)
第14条 町民は、町政の主体であることを自覚し、互いに尊重し、協力して自治を実現する責務を有します。
2 町民は、この条例主旨を尊重するとともに、町政運営に参加するにあたっては、自らの発言や行動に責任を持たなければなりません。
(町民投票) 
第15条 町長は、町政の重要事項について、町民の意思を直接に確認し、町政に反映させるため、町民による投票を実施することができます。
2 町は、町民投票に参加できる者の資格、投票結果の取り扱い、その他町民投票の実施に必要な事項は、それぞれの事案に応じ、別に条例で定めなければなりません。
3 町長及び議会は、町民投票の結果を尊重しなければなりません。

第4章 行政運営
(総合計画)
第16条 町は、総合的かつ計画的な町政運営を行うため、めざすべき将来像などを明らかにした基本構想とこれを具体化するための基本計画で構成する総合計画を、町民の参加を経て策定しなければなりません。
2 執行機関は、総合計画を最上位の計画と位置づけ、町が行う政策は、災害復旧事業などの緊急を要するものを除き、総合計画に基づいて実施しなければなりません。
3 執行機関は社会経済情勢の変化に弾力的に対応するため、第1項に規定する基本計画を審議会などの検討を経て、必要に応じ見直すとともに、事業の進行を管理し、その状況を公表しなければなりません。
4 各分野における個別計画等は、総合計画との調整を図って策定するとともに、策定後においても総合計画との調整を図りながら進行を管理しなければなりません。
(評価)
第17条 執行機関は、行政活動を点検し改善を図るため、町民参加の外部評価も取り入れた行政評価のしくみを確立し、効果的で効率的な行政運営に努め、その結果をわかりやすく公表しなければなりません。
(行政改革)
第18条 執行機関は、効率的な行政運営を行うため、行政改革大綱を町民の参加を経て策定し、行政改革を積極的に進めなければなりません。
2 執行機関は、行政改革大綱及びその進捗状況を公表しなければなりません。
(財政)
第19条 町長は、総合計画の財政計画に基づいた予算を編成し、計画的で健全な財政運営を図らなければなりません。
2 町長は、財政計画、予算の内容、決算の状況、財政指標などを、毎年度、町民に分かりやすく公表しなければなりません。
(財産)
第20条 執行機関は、町が保有する財産の適正な管理及び効率的な運用を図らなければなりません。
2 執行機関は、財産の価値、取得の経過、処分又は取得の予定、管理の状況を公表しなければなりません。
(出資団体等)
第21条 執行機関は、町が出資している団体、職員を派遣している団体、公の施設の管理を委ねている団体など(以下「出資団体等」といいます。)に関し、町との関係と出資団体等の経営状況などに関して資料を作成し、毎年度、公表しなければなりません。
2 執行機関は、出資団体等への支出など、町と出資団体等との財務上の関係を明らかにし、その内容を公表しなければなりません。
3 執行機関は、出資団体等の経営状況と町との関係について評価を行い、その結果を公表しなければなりません。
4 出資団体等の公表に関して必要な事項は、別に条例などで定めます。
(公益通報)
第22条 町の職員は、公正な町政運営を妨げ、町政の信頼を損なう行為が行われている、若しくは行われようとしていることを知ったときは、その事実を放置し、隠してはなりません。
2 正当な公益通報を行った職員は、その公益通報をしたことを理由に不当に不利益を受けないよう保護されなければなりません。
3 公益通報に関して必要な事項は、別の条例などで定めます。
(法務体制)
第23条 町は、町民主体の町政運営を実現するため、条例等を整備し、法令との関係を明らかにするとともに、この条例を最高規範とする法体系の整備を積極的に行なわなければなりません。
2 町は、法令解釈や法務に関する能力向上のため、専門機関等との連携により必要な体制の整備を行なわなければなりません。
(行政手続)
第24条 執行機関は、町民の権利利益を保護するため、処分、行政指導と届出に関し、公正の確保と透明性の向上を図らなければなりません。
2 前項に関して必要な事項は、別の条例で定めます。
(危機管理体制の確立)
第25条 執行機関は、町民の生命や財産を守るとともに、災害等の緊急時に機能的な活動が図られるよう、危機管理体制を整備しなければなりません。
2 町民は、危機管理に関し、普段から相互の連携に努め、災害などの発生時においては、自らを守る努力をするとともに、協力して災害などに対応しなければなりません。

第5章 議会
(議会の役割と責務)
第26条 議会は、選挙で選ばれた町民の代表から構成される議決機関として、町の意思を決定する役割を有します。
2 議会は、町の政策の意思の決定、行政運営の監視及び条例の制定や改廃するなどの権限を有します。
3 議会は、町政へ町民の意思の反映を図るため、町民と意見を交換する機会を設けるなど、調査活動に努めなければなりません。
4 議会は、閉会中においても、自主性に基づき町政運営に関する調査、検討等に努めなければなりません。
5 議会は、政策の水準を向上させるため、課題などを的確に把握し、質疑の充実に努めなければなりません。
(議会の組織)
第27条 議会の組織や議員の定数は、町政運営における議会の役割を十分に考慮して定めなければなりません。
(政策会議)
第28条 議会は、本会議のほか、町政に関する政策を議論するため、政策会議を設置することができます。
2 前項の会議は議長が招集し、議事運営にあたります。
(議会の会議)
第29条 議会の会議は自由討議を基本とし、議長や委員長などは会議に出席させた町長や説明員などに、議員への質問及び意見を述べさせることができます。
2 議会の会議は公開しなければなりません。ただし、非公開とすることが適当と認められる場合は、その理由を公表し非公開とすることができます。
(議会の情報公開)
第30条 議会は、議会が保有する情報を町民と共有するため、情報を公開しなければなりません。
2 議会は、本会議及び委員会等の会議の日程、内容を事前に町民に周知しなければなりません。
3 議会は、審議の過程や結果及び議会に関する情報を、町民に多様な手段を用いて公開しなければなりません。
(議員の責務)
第31条 議員は、町民による直接選挙で選ばれた者として、町民の意向を常に把握し、議会活動に反映しなければなりません。
2 議員は、この条例の理念や原則を守り、公益のため公正で誠実に職務を遂行しなければなりません。
3 議員は議員としての能力を高めるため、自己研鑽に努めなければなりません。

第6章 行政組織
(執行機関の組織)
第32条 執行機関の組織は、簡素で効率的であると同時に、社会経済情勢の変化に応じ、町民にわかりやすく、相互の連携を保ち機動的に編成しなければなりません。
(執行機関運営の原則)
第33条 執行機関は、その権限と責任において、公正かつ誠実に職務を執行しなければなりません。
(町長の責務)
第34条 町長は、町の代表者として町民の意思を常に把握するとともに、町がおかれている社会、経済情勢等に敏感に対応し、公正で民主的かつ誠実に町政を運営する責務を有します。 
2 町長は、この条例の理念のもと、長期的視野にたって町政を運営しなければなりません。 
3 町長は、効率的な行政運営に努めるとともに、職員を適正に指揮監督し、能力を最大限に引き出すよう努めなければなりません。
4 町長は、就任にあたっては、自治の確立と、この条例の理念実現のため、公正かつ誠実に職務を執行することを議会で宣誓しなければなりません。
(職員の責務)
第35条 職員は、町民全体のために働く者として、この条例の理念や原則と制度を遵守し、常に町民が町政の主権者であることを認識し、誠実かつ公正に職務を執行しなければなりません。
2 職員は、町民との意思の疎通を大切にし、町民の視点にたって仕事をしなければなりません。
3 職員は、前例にとらわれず、より柔軟な思考により仕事をしなければなりません。
4 職員は、職務の遂行に必要な知識、技能等の向上に努めなければなりません。

第7章 連携・協力
(広域連携)
第36条 町は、効率的な町政運営や共通する公共課題の解決を図るため、他の自治体、国及びその他の機関との広域的な連携を積極的に進めなければなりません。
(交流・連携)
第37条 町及び町民は、各分野におけるさまざまな取り組みを通じて、国内外の人々との交流を図り、そこから得られる知恵や情報を町政運営に活かします。

第8章 改正
(条例の見直し)
第38条 町は、この条例の施行から4年を超えない期間ごとに、この条例が平取町にふさわしく、地域の情勢などに適合しているか検討しなければなりません。
2 町は、前項の規定による検討の結果を踏まえ、この条例及び関係する諸制度について見直しが必要となった場合、適切に対応しなければなりません。

附 則
 この条例は、平成20年4月1日から施行します。