【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-①分科会 市民と公共サービスの協働

訓子府町における自治体改革とまちづくり
~訓子府町の自治基本条例制定に向けて

北海道本部/訓子府町職員組合

1. はじめに

 昨今、全国の市町村で「自治基本条例」という耳慣れない条例が盛んに制定され始めている。この条例は、市町村によっていろいろな名称が付けられているが、「町民参加条例」「町政運営基本条例」「まちづくり基本条例」などがこれにあたる。
 名称に違いがみられる理由としては、それぞれの市町村(行政)が住民と手を取り合ってゼロから作り上げる条例であり、一般的な条例は行政が案を作成して議会に提案するのが普通であるのに対し、この条例においては、その方法だと意味を持たないと言われているためである。
 この条例が制定されはじめたのは、7年前の2001年ごろから。最初に制定したのは、ニセコ町と言われており、その後しだいに増え、今では全国で120市町村を超える多くの自治体が制定に向けた取り組みをしている。
 2001年以降に作られはじめた背景には、2000年に施行された法律「地方分権一括法」の存在があげられる。この法律は、今まで国が導いてきたまちづくりを、それぞれの市町村が自分たちで考え行動し、責任を持って地域の特色を生かしたまちづくりとするようにと変えるためのものでもあった。
  訓子府町が「自治基本条例=町民基本条例(仮称)」を制定するにあたり、町民一人ひとりがこの条例作りに参加することの大きな意味は、まちづくりの主役は町民一人ひとりであるということ。そして、そのまちづくりにどのようにかかわるのかを自分たちで決めるところにある。条例の中では「町民の権利や責務」「参加と協働」などと規定している。


(図表1)

 

2. 協働のまちづくりに向けて

 訓子府町の良いところや問題・課題を一番よく知っているのは町民であり、町民・行政・議会が一緒に協力してまちづくりを進めるためには、すべての町民が認める共通のルールが必要となる。そのために、全国の市町村すべてが知恵を出し合ってこの条例を作り、新しいまちづくりに取り組んでいるのである。
 「町民基本条例(仮称)」の制定は、訓子府町がこれからのまちづくりを進めるときに、最も基本とする「きまり」を定めるものである。新しい自治のかたちでのまちづくりは、町民自らが自分たちの地域のことを考え、自ら行動する「町民自治」が基本となる。そのためには、次にあげることが欠かせないといえる。

(1) 町民がまちのことをよく知る【情報の共有】
   まちづくりについての情報はすべての町民が共有することとし、町は町民に対して分かりやすく速やかに提供する。

(2) 町民がまちづくりに参加する【参加と協働】
   町民はまちづくりの主役であり、町の大切な決め事などまちづくりに対して平等に参加する権利を有する。

(3) それぞれの役割を明らかにする【役割と責務】
   町民、議会(議員)、行政(町長・職員)は、それぞれまちづくりにどうかかわり、何をしなければならないのかを明らかにする。

  これらのほかにも、町民がまちづくりに直接意見を提出したり、投票できることや条例を見直すことの決まりも定められている。

3. 「自治基本条例」制定による影響

 この条例ができたからといっても、日常生活が大きく変わることはないと言える。この条例は、町が仕事を進める上で町民に対して必要な情報を提供し、重要なことにかかる判断には積極的に参加してもらい、協働のまちづくりを進めるために町民・議会・行政の役割などを定めるものである。
 具体的に、町の仕事の項目で指定されたものについては、決められた方法で情報が公開される。また、町民の生活に大きな影響のある条例や全町的な計画作り、規模の大きな事業などには、審議会や公聴会または町民意見提出制度などで町民から意見をもらい決定することとなる。また、町の将来に重大な影響を及ぼす問題については、住民投票により判断することも規定することができる。
 町民だれもが自由な考えでまちづくりに参加することは今までと変わりなく、参加しないことで差別を受けたり罰を受けたりすることはない。

4. まちづくり委員会

 訓子府町では、先に実施したアンケート結果を踏まえて、町民が行政課題に直接参加できる場として「まちづくり委員会」の設置を準備している。
 「まちづくり委員会」は、各地域(町内会・実践会)の代表者、一般公募者、公職者などで構成され50人ほどの規模になる。委員には、協働のまちづくりの視点に立って無報酬で協力してもらうこととしている。
委員会の会議は、月に1回のペースで公開開催する予定であり、委員にはさまざまな町の課題を話し合い、結果を町長に提言することとなる。具体的には、財政健全化プランなどの行政課題を検討し、住民自治の学習(講演など)を重ねながら、最終的には町民基本条例の検討に入ることを目標に置いている。

※ アンケート(添付資料参照)は、広報「くんねっぷ」と合わせて町民に配布され、郵送等により回収されている。なお、アンケート結果について、今回は資料添付しない。

 以上、訓子府町では、協働のまちづくりを目指し、「町民基本条例(仮称)」の制定に向けての取り組みを行っている。条例の具体的な内容は未定であるものの、町の財政事情をはじめ、様々な問題や課題が発生する近年、町民自らによるまちづくりへの意識はしだいに高まりつつある。
 訓子府町の町民が自分たちで考え行動し、責任を持って地域の特色を生かしたまちづくりができるかどうか、この「町民基本条例(仮称)」制定にかかる期待も大きいと言える。

【参 考】
 訓子府町では、今年の2月号から広報「くんねっぷ」において、「シリーズ 新自治への一歩」と題して「自治基本条例」についてわかりやすく説明するコーナーを設けている。
 そこには、説明の基本となるべきキーワードを掲載していたため、参考までに記載しておく。

~町民基本条例(仮称)の制定に向けて~キーワード

◎キーワード①【条例=じょうれい】
 「条例」とは、私たちみんなが安全で快適に生活していくために、一人ひとりが必ず守らなければならない都道府県や市町村の決まりを言います。
 条例は、国が決めた決まり(憲法や法律など)を守ったうえで、私たちが選挙で選んだ代表者(議員)が集まる議会で最終的に決められます

◎キーワード②【地方分権:ちほうぶんけん】
 国がもっている権限や財源を地方(都道府県や市町村)に移すことを言います。今までは国が決めていた仕事を、これからは各地域で自分たちが考え、自分たちの責任でまちづくりを進めることができるようになります。

◎キーワード③【自治:じち】
 自治(地方自治)とは、地域に関することは、地域自らの責任において処理するという意味になります。
 地方自治は、民主主義の原点とも言われ、日本国憲法でも「団体自治」と「町民自治」を本旨として保障されています。
 地方分権は、団体自治(役場が主)から、町民自治(町民が主)への切り替えを実現しようとする動きとも言えます。

◎キーワード④【住民投票:じゅうみんとうひょう】
 住民投票とは、条例の位置付けの中で、町の重要な問題について住民による直接投票を行う制度です。
 条例のタイプとして、事案ごとに個別に設置するもの(個別設置型)と対象事案をあらかじめ設定するもの(常設型)の二つがあります。
 住民投票は、法律的に明確に位置付けられていないため、投票の結果は法的に拘束力(結果に従わなければならないこと)を持たず、諮問的なもの(結果を参考にすること)とされています。

 

自治基本条例(仮称:町民基本条例)に関するアンケート調査