【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-①分科会 市民と公共サービスの協働

仙台市児童館のこれから
~指定管理者制度の中で~

宮城県本部/仙台市職員労働組合・児童館支部

1. 指定管理者制度の状況と課題

 仙台市は、全国で最も早く2005年度開館の新設児童館から指定管理者の公募を行ってきました。児童館は今年度5館新設され98館となり、仙台ひと・まち交流財団(以下財団)が82館、5NPO法人が13館、1社会福祉法人が1館、地域運営委員会が2館を運営しています。
 今後は、次世代育成支援対策推進法の市町村行動計画として、小学校区(125学区)に1館の建設を目指し、毎年3~4館整備する計画です。
 2007年4月は私たちの財団が運営する既存館75館(マイスクール児童館5館を除く)の指定管理者の切り換え時期にあたり、「児童館事業の充実」「雇用と職場を守る」を最重要課題として取り組んだ結果、「一括非公募・3年」となり、労働組合の力で3年間の雇用を確保しました。(財団とは2006年3月労働協約を締結)しかし、3年後の保障は何もなく、指定期間ごとに不安定な雇用や劣悪な労働者を生み出すことになりかねません。
 近年、児童クラブの大規模化が急速に進み、第2児童クラブもきちんとした施設や受け入れ人数の基準がないまま市民センターの「併設館」や小学校の「余裕教室」、「行政サービスセンター」(市役所・区役所の納税、戸籍、保健年金の業務を遠隔地で行う)の2階などで実施されています。また障がい児の受け入れも増加の一途をたどり、受け入れや職員の配置なども基準があいまいになり、少ない人員体制で狭い施設の中、多くの子どもを可能な限り受け入れ、遊びや静かに過ごすスペースがないのが現状です。
 2006年以降、財団は、「指定期間ごとに雇用問題が発生する」という理由で新設児童館の公募には応募していません。既存館の運営だけでは正規職員の雇用枠が狭まり、新規の職員採用も減ってしまい、雇用不安から意欲をなくし、子どもの安全が保障できなくなる、と悪循環になりかねません。今年は2006年に選定された財団の児童館2館の2巡目の選定があります。新設館・既存館に関わらず公募に応じるよう取り組んでいきます。
 また2巡目の公募では指定管理料の削減はありませんでしたが、新設のマイスクール児童館3館については、委託料が10%削減となり、私たち財団の職員体制では運営も難しく、公募に応募することさえできませんでした。委託料の積算根拠を明らかにし、マイスクール児童館の総括とあわせて仙台市へ働きかけをしていくようにします。
 仙台市では、指定管理者制度の公募は「試行」となっています。2005・2006年度開館の新設館の公募を「試行」とし、2007年の既存館の方向性を決めるはずが、結局検証がされないまま2005年度開館の3つの児童館は公募となり、多いところで3団体の応募がありましたが、結果は1巡目と同じNPO団体が選定されました。組合では試行の検証をきちんと行うよう仙台市に訴えていきます。

2. 指定管理者団体の枠を越えて~私たちの新たな取り組み~

 労働組合では、指定管理者制度の導入当初こそ公募をめぐって各指定管理者団体が競争し、児童館を「取った」、「取られた」と職場がなくなることに大きなショックを受けていましたが、自分たちが抱えている問題は他の指定管理者団体にも共通する問題ではないか、との思いを強くしました。
 そこで2007年12月、「つながろう仙台の児童館」として、児童館で働く労働者が初めて一堂に会する機会を持ちました。指定管理者制度の問題点として、①常に雇用不安が発生すること、②指定管理料の削減は人件費の削減や安上がりで劣悪な職員を増やしかねない、委託料の積算根拠を明らかにすること、③指定管理者制度自体の選定基準、情報公開があいまいである、仙台市の担当部局が調整機能や統括機能など責任を果たすべきであること、④「3年」の指定期間や原則公募が福祉の分野ではなじまない、公募をしない選択肢もとるべきであるなど、指定管理者制度をこのまま続けていくことに疑問がある、と全体で問題点を共通理解することができました。
 その他にも非常勤職員として働いているが、雇用継続の不安や低賃金で将来の見通しが立たないこと、子育てをしている立場からいくら制度が整ってきても職場の協力が必要不可欠であること、第2児童クラブを分離型(小学校の教室を利用)で実施しているNPOの実施状況などについて報告がありました。
 2008年7月には、「第2弾 つながろう仙台の児童館」として第2児童クラブや障がい児について話し合いました。児童クラブの受け入れも100人を超える児童館もあり、子どもたちが安心・安全に過ごす環境は、職員の努力と工夫でまさにギリギリの状態で成り立っていること、NPOでは、障がい児を無条件で受け入れているが加配の職員がつかず、今いる職員体制のまま運営を行っていること、指定管理料についてもほとんどが人件費となり人のやりくりが大変であること、仙台市は働く私たちのがんばりだけに期待して、その後の人的、予算的ケアをしていない等が挙げられました。
 また障がい児放課後ケア支援事業の一つとして児童デイサービス事業と児童館事業を併設した児童館は、社会福祉法人と私たちの財団で運営しています。今回はその紹介もしました。定員や利用料金、利用日数などで検討していかなければならないこともあるが、仙台市の担当部局の調整をはじめ、地域連携が今まで以上にうまくできるように制度の見直しをしていく必要があります。
 放課後ケア団体では、2005年に障害者自立支援法が施行され、利用者の負担が増加したことに伴い、10団体で協議会をつくり、市長あてに要望書を提出したそうです。保護者も事業所も協力して市へ働きかけた結果、仙台市は独自に補助金制度を導入したという、私たちの今後の運動に大いに力づけられる報告がありました。
 日々の忙しさに追われ、本来向き合うべき子どもときちんとコミュニケーションがとれているのだろうか、子どもを多く受け入れることが遊びを提供するよい環境となっているのだろうかなど私たちの仕事のあり方を見つめ直すよい機会にもなりました。
 私たちの財団は、ともすれば他の運営団体より人員体制や給料面でも恵まれていると思われがちですが、仙台市へ一つ一つ問題を訴え、粘り強い交渉の結果、多くの成果を勝ち取り今に至っています。
 しかし、決して今の状況に満足している訳ではありません。私たち常勤職員も自立して生活していけない低賃金で働いています。その他にも多くの課題があります。(常勤登用問題・雇用問題・公益法人改革など)
 指定管理者団体が団体の枠を越えて児童館現場で働く労働者が力を合わせ子育ての現場を守るため、仙台市へ予算要求、職員体制の改善などを要求していくことは今すぐ取り組むべき重要な課題です。
 児童館事業をより充実させていくには、働く私たちの賃金労働条件が改善され、職業としての身分確立が重要です。市職労、他の外郭団体、そして指定管理者団体と連携しながら、改善に向けて取り組んでいきます。