1. はじめに
2000年の地方分権一括法の施行や市町村合併に伴い、地方公共団体の自己決定の裁量権や自己責任の範囲が拡大したことにより、地方議会を取り巻く環境も大きく変化してきた。
こうした中で、住民の代表であり、二元代表制の一翼を担う議会の果たすべき役割や責任も、これまでの政策の決定、監視・評価といった機能にとどまらず、住民の多様な意見を反映させるべく、独自の政策立案機能を高めていくことが求められている。
つまり議会の自主性・自律性の拡大の観点から、住民の声を反映させながら監視機関としての機能強化や議事機関としての政策形成機能の充実、住民との直接対話など、議会活動への住民参加が図られるよう議会活動の見直しを検討すべき時期に来ている。
越前市議会では、現行制度の積極的な活用や適切な運用を進めるとともに、新たな視点で議会の一層の活性化を目指して、議会の自己改革を進めている。
2. これまでの主な取り組み
① 一般質問における一問一答方式の採用(2002年6月定例会から)
・従来の一括質問一括答弁方式(質問回数は3回)を一問一答方式(回数制限なし)、対面方式に改めた。
② 議案質疑における一問一答方式の採用(2005年6月定例会から)
③ 議会PR・市民への情報提供について
・CATVによる本会議の生中継及び録画再放送(1999年6月より)
・議会ホームページの開設(2002年9月より)
・会議録検索システムの運用(2002年9月より)
④ 各種審議会、協議会等への議員参画の取止め(2006年2月より)
・ただし、法律に基づくものは除く。
⑤ 会派の人数要件を3人から2人に変更(2006年8月より)
⑥ 代表質問の実施時期を3月定例会から12月定例会に変更(議会の提言を当初予算編成に反映させるため)(2006年12月より)
3. 議会活性化検討委員会の設置
越前市議会では、議会活性化の一層の推進を目指して、昨年の3月に議長の諮問機関として「議会活性化検討委員会(7人:議会運営委員会委員で構成)」を設置し取り組みを進めている。
2007年9月には「(1)議会の監視権の強化」と「(2)所管事務調査の充実」、「(3)議会報告会の開催」についての第1次答申を行った。
(1) 議会の監視権の強化
地方自治法に定める議会の議決に要する契約の種類が「工事又は製造の請負」に限定されていることから、事務の合理化や事務改善のためのOA機器をはじめ事務機器の賃貸借契約が高額にわたる契約の場合であっても議会の監視権が及ばない、といった問題が発生した。
この対策として、地方自治法に定める契約の種類に「賃貸借」を追加するよう国に意見書(議会の監視機能の充実強化に関する意見書:2007年9月定例会)を提出するとともに、一定額以上の賃貸借の契約については、議会にその内容を報告するよう、議員提出による条例(議会の議決に付すべき契約以外の契約の報告に関する条例の制定:2007年12月定例会)を制定した。
地方自治法に基づく、契約の種類及び金額を
・工事又は製造の請負 予定価格 1億5千万円以上
↓ ↓
「賃貸借」を追加 予定価格 2千万円以上
(2) 所管事務調査の充実
常任委員会に与えられている権限である所管事務調査について、現状は理事者からの所管事務にかかる報告事項に対して議員個人の質疑が中心になっていることから、あらかじめ特定事項を選び、政策立案の基礎づくりとなるような調査を行うように充実させることを協議、確認した。
(3) 議会報告会『市民と議会の交流座談会』の開催
市議会本会議における審議や委員会における議案審査の結論を出すに至った経緯について市民に説明するために、議会自らが地域に出向いて、議会活動の状況や市政に関する情報を市民に直接報告・説明を行い、市政に対する意見、要望、提言などを直接市民から受けるなど、議員と市民が自由 に情報や意見交換できる場として開催した。
事前に、「議員個々の意見や会派としての見解は報告しないこと」、「結果報告については結論に至るまでの過程を含めて報告すること」等を確認して臨んだ。
第1回:2007年11月(旧武生地域)
第2回:2008年2月(旧今立地域)
報告したテーマは、①議会活性化に向けた取り組み、②新庁舎建設、③福井鉄道福武線への支援、④学校給食、⑤水道料金の値上げなど。
報告会では、市民から「動員型ではダメ。意見提起型にしないと長続きしない」、「各地区へ足を運んで実施すべき」、「"議会たより"で、理事者の答弁に前向きに検討とあってもその後どうなったのかが分からない」、「報告内容が、市の課長の意見のように聞こえる」など厳しい意見が出された。
政策にかかる意見では「学校給食は地産地消で重要、喜ばれる給食にして欲しい」、「新庁舎は中途半端なものではダメ、しっかりした建物を建設してほしい」、「南越中学校では三校分900食の給食をつくっている、自校方式で十分な体制で実施してほしい」、「命に関わる政策を優先してほしい」などの意見があった。
市民からの意見・質問に対して、議会を代表しての発言は具体性に欠け歯切れの悪い答弁になったことも否めない。
参加者アンケートでは「意欲的な取り組みに拍手を送ります」とか「市民からの意見を先にまとめ、整理してから臨んでほしい」、「原稿を読むだけではわからない」、「福祉をテーマにあげて欲しい」、「議員通知簿制をスタートしてほしい」、「議員の活動内容を公開してほしい」など多くの意見があった。
2008年度から市内小学校区(17地区)ごとに、本格的に実施する計画。 |