2008年1月27日の大阪府知事選挙は、「タレントであり弁護士の橋下候補」が183万強の得票で2位の熊谷にダブルスコアに近い差をつけ圧倒的な「府民の支持」で当選した。
2月6日に大阪府知事として初登庁し、就任直後の記者会見で「財政非常事態宣言」を出し、同時に、「図書館以外の府有施設の廃止を検討している」と発表した。
その後、驚くべきスピードで「橋下改革」が行われてきた。
(資料-1 新聞記事を初めとしたマスコミの記事より引用)
1. 「橋下改革」の狙い 一連の発言から見えるものは?
① 「府債発行原則ゼロ」「収入の範囲で予算を組む」
② 大阪府は「破産会社と同じ」「職員は破産会社の従業員」「職員給与は分不相応」
③ 「府民と痛みを分かち合いながら、府政を建て直すためには避けて通れない道」
④ 「文化は振興するものではなく、残ったものが文化」
⑤ 「大阪府を発展的解消できれば良いと思っている」
などの一連の橋下発言は、いずれもマスコミを意識した意図的で、センセーショナルなものばかりだ。
"府民の視点""民間の感覚"での点検、「自己責任」と「互助」をキーワードとして強調しているが、その中でも際立っているのが、「人件費削減」と「文化」に対する無理解ともいえる"判断"だ。
2. 大阪府男女共同参画推進財団・ドーンセンターの存廃をめぐって
自治労大阪府職総務支部は、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)の担当部署が支部の担当エリアだったこともあり、ドーンセンターの建設以前の段階から、運営形態や施策・業務内容、職員の労働環境などの諸条件について、大阪府の男女協働社会実現の拠点施設と位置づけ、討議に参画し、取り組んできた。
また、ドーンセンターオープン後も当該職員の労働組合結成にもかかわり、今日まで、ドーンセンター労働組合と連携・協力しながら、財団当局との交渉や申し入れを行ってきている。
そのような経過から、ここでは、"男女財団・ドーンセンター"の存廃を巡る状況についての動きを報告したい。
3. ここの事業は必要だが、ハコモノが必要かは疑問(2月24日ドーンセンター視察での知事発言)
2月13日に結成された知事直轄のプロジェクトチーム(改革PT)の廃止対象に大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)も含まれているとの発表に、ドーンセンターの利用団体の有志や各地の支持者たちで「好きやねんドーンセンターの会」を結成し反撃に出た。
4. 4日で1,065人の一言コメント・昼休みマーチや御堂筋パレードで訴え
発足からの4日間で、府内のみならず全国から海外から集まった1,065人の一言コメントとともに知事への要請を行った。また、5月府議会の開会日に、"昼休みマーチ"を企画し、府庁周辺を「売らないでドーンセンター!」と呼びかけを行い、5月23日には、大阪の"目抜き通り"御堂筋を昼休みにパレードし、PT案撤回を訴えた。
ドーンセンターを管理・運営する大阪府男女共同参画推進財団もドーンセンター館長との連名で財団の存続についての要望書を知事に提出した。
5. 直営か財団運営か(ドーンセンター設立をめぐっての議論)
大阪府における男女施策の展開をめぐっては、ドーンセンター設立以前から、多くの女性・府民が熱い期待を寄せて、建設討議から参画し、オープン後も登録団体制度や「NPOとの協働モデル」を追求してきた。
総務支部も、オープン前の1994年2月に生活文化部から検討状況について説明を受け、①財団委託になったとしても、行政責任を充分に果たしうる体制の確保、②女性のニーズを踏まえた事業内容の充実、③組合員出向職場としての労働条件問題などについて、関係者と連携を深めて取り組みを強めていくことを確認している。
管理運営を財団(府の全額出資で1994年4月発足予定)委託する理由として当局は、①ニーズに応じた柔軟な事業展開を目指す、②雇用条件を柔軟に設定することによって人材を確保し、専門性の確保を図る、ことの2点をあげている。(総務支部機関紙「鼓動」94.2.18号)
6. 専門性を高めノウハウの蓄積・NPOとの協働を
当時の状況や、財団の今後について、ドーンセンター前館長で大阪市立大名誉教授の竹中恵美子さん(78)が簡潔かつ明確に思いを語っておられる。以下新聞記事から引用する。
「同センターは、自治体主導で作られた箱モノではなく、30年にわたる女性たちの草の根運動から生まれました。国際婦人年(1975年)からの女性運動の高まりを受け、77年に知事の私的諮問機関として、婦人問題推進会議が設置され、私を含め学者や市民団体ら幅広い層が参加して、活発な議論を重ねました。事業内容を語り合い、建築構想にもかかわりました。職員が2~3年で異動する府の担当部局ではなく、専門性を持つ常勤職員がいる財団が最もふさわしいと運営主体を決め、ノウハウを蓄積してきた。相談、事業、情報の3本柱がうまく機能し、NPOとの協働事業も数多く手がけ、人材育成にも取り組んでいます。直接足を運ぶ人は限られていても、センターで力をつけた人が地域で活動すれば、間接的に影響を受けたことになります。財団自体も発展的に事業を見直す必要がありますが、府もこの蓄積をご破算にしない施策を考えてほしい。」(2008年7月26日読売新聞)
多くの女性・府民の熱い期待と熱心な討議の末誕生したドーンセンター
基本理念・目的と取り組み
① 男女共同参画社会実現のための拠点施設
② 各種講座の取り組み(女性のためのカウンセリング講座etc)
ア ビデオ・各種映像を使った取り組み
イ 多様な資料・図書・蔵書の活用
③ NPOとの協働モデル施設
ア 各種相談事業(法律相談、からだの相談etc)
④ 女性のチャレンジ支援のための拠点施設
ア プロパー職員を中心とした高い専門性とネットワークを生かした事業展開
イ 府民に信頼され、府内市町村や他府県、女性関連施設から評価される拠点機能の発揮
7. 指定管理者制度をめぐる動き
2003年9月に施行地方自治法の一部改正により、公の施設管理を営利企業やNPOを含む民間事業者に代行させることができることになった。
この制度をドーンセンターに適用したらどうなるのだろうか? 税金でつくった公的施設で利益をあげることが追求されたらどうなるのか? 自治体の公的責任は? そこで働いている人たちの地位や労働条件はどうなるのか? など、多くの危惧の声があがった。
これらの声は、男女財団・ドーンセンター関係者のみならず、府内や全国の女性施設に関わる人たちの危機感の現れであり、同時にいかにドーンセンターが多くの人たちに支えられ運営されてきたかを示している。また、全国各地でバックラッシュが吹き荒れる社会状況への警戒感の表れでもあった。
8. 新しい協働方式(コンソーシアム)をめざして
① そうした人びとの危機感の表れが、何とかドーンセンターを守り発展させようと何回かの学習会をもちその議論の成果として、コンソーシアム(NPOと財団の共同事業体)という新しい工夫を生み出した。
② 「過去10年の実績とノウハウを活かすとともに、ドーンセンターが男女共同参画の拠点施設としての使命を今後とも果たせるように、また、NPOとの創造的協働を一層進めるため、コンソーシアムという新しい協働方式を導入して指定管理者に応募することといたしました。」(男女財団の協働相手先(NPO法人)募集について)より抜粋
9. 指定管理者への応募と選定結果
新しい協働の相手先として、ドーンセンターの登録団体の有志で特定非営利法人ZUTTOを立ち上げ、(財)大阪府男女共同参画推進財団とともに、ドーン利用促進事業共同体を構成し、指定管理者へ応募した。
その結果を「大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)の最優先交渉権者及び次点者の選定結果」から、一部を抜粋すると
申請者数は2団体(ドーン利用促進事業共同体と(株)キャッスルサービス)
最優先交渉権者の審査結果については、
(1) 選定理由として
① 男女共同参画に係る目的施設の設置目的を理解し、施設のノウハウ及び実績を持ち、今後も充実した運営が期待できる。
② バリアフリーに配慮するとともに、利用者向けサービスの向上に向けた具体的な方策が示されていた。
③ NPOとの協働の方策やESCO事業や屋上緑化など、府政への協力についての具体的な提案があった。
点などが評価され、最優先交渉権者として選定された。
10. 「指定管理者」モニタリング制度と点検結果
大阪府は、「指定管理者制度の本格的導入から1年が経過したことから、前年度の管理運営状況について点検し、その結果を公表することで施設設置者としての説明責任を果たすとともに、移行の年度の事業計画に反映させることにより、府民ニーズに合致した質の高いサービスの提供と効率的な施設運営の一層の推進に資することを目的に」(指定管理者制度におけるモニタリング(点検)の方針 大阪府総務部行政改革室ホームページより)指定管理者点検調書にまとめ、公表している。
11. 2006年度のドーンセンターの点検調書(資料-2)を見てみると
点検した総合評価として、
① 男女共同参画推進財団が有する専門性とNPOが持つ理念を生かして設置目的に沿った管理運営がなされている。
② 新たに客層を開拓することで、貸館の利用率を高め、利用者の増加、収入の確保を図るなど、公募時の提案内容以上の業績を上げていることは評価できる。
③ 今後も利用者ニーズに対応した細やかなサービスの提供に努め、府民に親しまれる施設となるよう勤めていただきたい。
と、極めて高い評価をしている。
にもかかわらず!「ここの事業は必要だが、ハコモノが必要かは疑問」の知事発言はいったいなんなのか!
7月に開かれた臨時府議会は、職員人件費と私学助成金削減幅の一部圧縮という知事の修正案を与党の自民党、公明党のみならず民主党の賛成も得て大阪維新プログラムを決定し閉会した。
女性関連でつくる全国女性会館協議会理事長の大野曜さんは「これから各自治体とも、来年度予算の編成が始まる。ドーンセンターを巡る動きは今後も注目されるでしょう」と話している。」(2008年7月26日読売新聞)
大阪府維新プログラムを、全国の「女性センター」をはじめとする「運動」への攻撃の動きとして捉え
① 「ハード(建物)とソフト(事業運営)との分離」には、理念を共有して、事業を推進するには、それを保障する"場"が必要だと、声を挙げ続けていこう。
② ドーンセンターを拠点として頑張っているそれぞれの団体、共同事業体をはじめ運動団体との分離の狙いをとめよう。
③ 今以上の"頑張り"を要求する「自立化」は、男女共同参画社会づくりの運動をつぶすことにつながることを、訴えていこう。
④ 連携を強め、粘り強い反撃の輪を築こう
"しなやかに、したたかにそしてしぶとく"を合言葉に、協働の輪を広げていこう!
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