② 経過と課題
この親子環境学習会は、親子で楽しく学べる体験型の学習会を開催することにより、直営収集に対する理解と協力、さらなる分別意識の向上を図るために企画しました。
当日は、園児や保護者にクリーンセンターの内部を案内し、高知市の廃棄物行政の説明を行い、その後、子どもに楽しみながら分別の基本を理解してもらえるように、ごみ分別ゲームや戦隊ショーを行い、さらにはパッカー車の体験乗車を行いました。
清掃分会独自の取り組みである地域に踏み出したこの活動は、高知市が業務として行っている「出前講座」・「啓発活動」と内容的に同一であるとの見地から、2007年には、業務の一環として位置付けられました。
その結果、町内会の夏祭りの中での、説明会および戦隊ショーや、高知市まちづくり推進課から、イベントへの参加要請があるなど、活動の幅が大きく広がりました。このように、組合の自発的な取り組みは、行政当局や議会、地域住民に一定理解され、現場職員の努力が評価されてきています。
今後は、多くの職員の協力が得られるよう、職員参加への体制整備や、学習会の内容の拡充など、親子環境学習会の開催についての問題点や課題について、整理・検討が必要であると考えています。
3. ふれあい収集について
(1) 職場提案から試行実施までの流れ
1999年、市長あての組合提言「これからの清掃行政」の中で、「ふれあい収集」についてふれ、サービス実施の必要性を訴えました。
組合からの再三の要求にもかかわらず、長らくの間、市当局からは実施の話しに至らないまま、この間、組合独自に先進地視察や学習会を実施、さらには一部の地区民児協(民生委員)からの協力による情報提供をいただき、それらを参考に組合としての具体案をまとめていきました。
特に地区民児協の協力においては、日頃から地域の弱者に接している観点からの貴重なご意見、助言をいただくことができ、組合の提案する「ふれあい収集」に対する市民の期待と早急な実施の必要性を再認識するものとなりました。
2005年3月、高知市議会での質問において、環境部長が試行実施を明言、これによりようやく試行実施が行われることとなり、当局においてその調査と準備をすることとなりました。
2005年4月頃から、環境部・健康福祉部と組合で数回にわたり協議を行いました。また、在宅介護支援センター定例会等にも参加し、介護サービスに携わるケアマネージャーやヘルパーからの意見についても積極的に聞き取ることができました。
2006年1月、当局が試行実施要綱を作成することとなり、2006年3月~5月までの3ヶ月間、一部モデル地区において試行実施をすることになりました。
(2) 組合の提案する「ふれあい収集」とは
私たちは、「ふれあい収集」を提案するにあたり、次の点を重要なテーマとしています。
[地域コミュニティの再構築]
「ふれあい収集」によって職員が定期的に訪問し、声かけ等を行うことにより、付近の住民にあらためて独居高齢世帯・障害者世帯などが存在することを再認識してもらい、地域のコミュニティの輪の中に加えていってもらうきっかけとなることを期待するものとします。地域コミュニティの輪が再構築された場合には、該当者に対するふれあい収集業務を終了し、地域の中で新たにごみ出しを含めた日常の交流を行ってもらうこととします。また、すでに地域での助け合いがある世帯については、かえって地域の交流の邪魔になるため、行政があえて「ふれあい収集」を行うことはしないものとします。
このことは、防災面においても力を発揮することが期待できます。実際に阪神大震災や高知西南豪雨においても、地域コミュニティの輪がしっかりしている地域では、独居高齢者・障害者などを住民が把握しており、すみやかに救助することで人的被害を最小に食い止めた例があり、その必要性を裏付けています。
[行政・福祉団体との連携]
「ふれあい収集」の申請や実施を通じて、行政内部の他部署間と福祉団体との間で、独居高齢者世帯や障害者世帯への対応について互いに協力するようにします。必要に応じて個人情報の取り扱いに十分配慮しつつ、情報交換をすることで効率よく市民サービスを提供することが可能となります。
さらにそこへ地域の実情に詳しい自治会や民生委員がかかわることにより、単にごみ出しの問題にとどまらず、様々な問題についても把握でき、適切な対応が可能となります。行政としてもこれまでの縦割り行政を改善でき、市民の声をより多く聞きながらワンランク上の業務をこなすことで、職員自身のレベルアップのきっかけとすることが期待できます。 |
このように「ふれあい収集」を単にごみの戸別収集にとどまらない、まちづくりや市民の生命の安全にまで踏み込んだ総合的かつ先進的なサービスとして提供することを提案しています。
(3) 2006年の試行収集の結果と問題点
これまでのいきさつや調査、協議の内容をふまえた上で、試行収集を行うはずでしたが、当局が試行実施要綱を作成した時点で、その内容が異なるものとなりました。当局が作成した試行実施要綱は、介護保険による要介護2以上が条件とされたため、ケアマネージャー・ヘルパーからの意見で市民ニーズが強いとされた要介護度1、要支援(経過的要介護)が対象外とされました。
また、居宅介護事業所からの推薦を基本とし、組合の提案するふれあい収集を通じての地域とのかかわりや地域の実情に詳しい民生委員の協力、さらに他部署との連携などのアイデアは全く無視され、単純に廃棄物行政として戸別収集をするというものでした。
・北街・南街・下知の3地区限定
・要介護度2~5でごみ出しが困難な世帯,もしくは特に市長が必要と認める世帯
・3月~5月末までの3ヶ月限定(いったん打ち切りが条件)
・週1回もしくは週2回の生ごみのみの収集(玄関先までは出してもらう)
※居宅介護支援事業所を訪問の上、上記対象者の紹介を依頼 |
このように決まった以上、高知市の試行実施としては要綱に沿って実施するしかなく、3ヶ月の試行収集期間、まずは試行収集実施要綱に基づき、市内全部の居宅介護事業所(74事業所)に試行実施依頼文書を発送の上、訪問可能な事業所(68カ所)については直接訪問し、試行実施の内容説明と試行実施の条件にあてはまる世帯についての紹介を依頼しました。このとき、試行実施の条件にはあてはまらない世帯についても、全市でどのくらいの希望者がいるのかを把握するために世帯数をあげていただくよう依頼しました。
その結果、全体の半数以下の事業所からとなりましたが回答があり、世帯数合計では33世帯、うち対象条件を満たす世帯は5世帯にとどまりました。しかも5世帯のうち4世帯は対象者の都合等により収集までには至らず、試行収集を行うことができたのはたった1世帯ときわめて少ない結果となってしまいました。たった1世帯だけの週2回収集では、当然のことながら実運用面でのデータとしての意味合いも薄くなってしまいました。
しかしながら、居宅介護支援事業所の訪問や試行収集現地調査などで、ケアマネージャーからの行政に対する様々な意見を聞くことができたり、少しでも介護サービスの現場の実情をみせていただいたことは非常に参考になりました。
実施する前から懸念されていたことも含め、試行実施の問題点をまとめると以下のようになります。
(問題点)
・ふれあい収集を通じての地域コミュニティ再構築が全く加味されていない
・役所内における他の部署との連携が、単に健康福祉部から意見を聞くだけにとどまり、他の福祉サービスやまちづくり、防災などの事業と連携することが想定されていない
・介護認定対象者をほぼ主体としたことで、介護認定世帯以外でごみ出しに困っている世帯についての調査や対応がされないままである
・要介護2以上という条件自体が、実際のニーズからはずれてしまっている
・地域の実情に詳しい民生委員の協力を得るかたちになっていないため、広く対象者を把握することが困難
・条件を絞りすぎているため、試行実施としての数がきわめて少なくなった |
試行実施の途中や終了時の報告において、これらの問題点を報告しました。しかしながら、今後の本格実施を行うかどうかについても議論されないまま試行収集を終了しました。
このようになった理由としては、当局側に本格実施の意志がないか、あったとしても極力実施世帯数を抑えながら、少しでも問題がおきないような簡単なものにしたいという消極的な考えがあるためだと思われます。
(4) 今後について
2006年の試行実施をもって、希望世帯数が少ないため市民ニーズがほとんど無いとするのは誤りであり、当局の基準の設定に問題があると考えています。
このような当局案のままでは市民サービスとして不十分であり、組合として重要視している地域コミュニティの再構築というテーマを十分に考慮した上で、地域の実情に詳しい、自治会や民生委員の意見と協力を得るかたちでの再調査および再度の試行実施を要望してきていますし、清掃分会としては、組合員を含めた検討委員会の中で車両・人員・収集体制についての議論を行い、早期実施に向けた職場提案をまとめてきました。しかし、所属の考えは、「清掃行政の基本はステーションに出されたごみの収集を行うことであり、合併地域への対応もあるため、新たな業務への対応は困難である」との一点張りでした。
私たちとしては、清掃行政の新たなサービスは住民が真に必要とするものでなければならないと思っています。そのためには積極的に市民の意見を参考にして、試行錯誤ながらも取り組んで行くべきだと考えています。また、我々現場の職員自身の手で考えて工夫し実行に移していくことができれば、本当に市民のためになる実のあるサービスが提供できるとともに、市民と職員の垣根、他部署間の垣根も取り去り、ひいては我々個々の職員のレベルアップにもなるものと確信しています。
4. 総括
これら一連の取り組みについては、環境行政におけるサービスの拡充や市民参画をめざしたものであり、地域コミュニティの再構築につながると確信しています。
私たちのめざすふれあい収集については、環境部のみならず健康福祉部や消防といった災害対策など関連する部署、加えて民生委員など市民の力を必要としています。これまでの自治体の仕事はそれぞれの部で専門的な業務を行うのみであり、新規事業で部を超えての連携を必要とするものは少なかったと思います。そのため、環境部では人員や車両など収集に対する課題、健康福祉部ではふれあい収集の対象となる基準設定、さらに両部の共通問題して対象世帯の申し込み受付や認定作業といった、課題があることから当局側は慎重に議論を行い、最終的には環境部のみで対応できる試行実施とされています。
ごみ分別等の説明会については環境部の所管であり、ボランティアで始めた親子環境学習会は業務に関連することから、新規事業としてすぐに認められることとなっています。
このことから、自治体の業務における提案については、単一部署での対応であるならば、容易に試行などが実施できると想定できます。しかしながら、地域コミュニティの強化をはかる事業や市民の求めるサービスについては、自治体のさまざまな部署にわたる可能性があり、慎重に議論を重ね実施までに長期間かかると考えられます。
私たちは、環境行政には市民の協力や理解が必要と考えており、そのためにはステーションに出されたごみを取るだけでなく、分別への理解が深まるような学習会の開催を行うとともにどのようなニーズがあるのか聴く場を設定することが重要と考えています。さまざまなニーズに対応するためには、従来の縦割り行政ではなく横断的な組織対応が可能となり総合的なサービスを行える行政組織の再構築をしなければなりません。
組合としても、ふれあい収集の早期実施や親子環境学習会の活性化をはかり、地域へと踏み出した取り組みを強めるとともに、災害対策や福祉部門などに関連した市民の声に対応できる複合的な環境行政をめざしていきます。 |