【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅰ-②分科会 立ちあがれ自治体職員! ― 地方自治の可能性を探る ― |
|
1. はじめに 空知研究評議会(以下空知研究評)は1977年に自治労全道庁空知総支部の職域毎の評議会として発足した。現在の構成支部・分会は、空知総支部管内の道立試験研究機関(以下 道立試)、すなわち中央農業試験場、同岩見沢試験地、同遺伝資源部、花・野菜技術センター、畜産試験場滝川試験地、林業試験場の6支部・分会である。 2. 道立試の独法化決定に至る当局の検討経過 2003年4月に地方独立行政法人関係法律案が閣議決定されたことを受け、高橋知事が道議会で「地方独立行政法人制度は道政改革の推進にとって意義ある制度」と答弁したのは2003年7月であった。以降、2004年度に「道立試験研究機関のあり方検討」において一元化が検討されたが、これは所管部の抵抗もあり頓挫した。しかし、危機的な道財政の悪化を背景として道は2006年2月に「新たな行財政改革の取組み」を策定、この中で道立試の独法化が頭出しされたのが大きなターニングポイントであった。以降、北海道企画振興部科学技術振興課が主体となり、道立試への地方独立行政法人制度の導入を検討してきた。「研究推進本部」に「地方独立行政法人制度活用検討会議」を設置し、法人化を前提として基本概念等の様々な検討を行った。同会議の「幹事会」(2007年4月開催)で「道立試験研究機関における地方独立行政法人制度活用に関する検討結果について(案)」が最終案として承認された。これにより事務分掌が企振部科技課から総務部へ移り、実施に向けた作業が本格化した。
道議会総務委員会で報告されたことから、対応が職員監室に移り、四定議会での決着を図ろうとしたものの、道議会では、逆に給与削減問題、支庁制度改革とも相まって高橋知事側の姿勢に野党のみならず与党側からも拙速であると指摘され、逆に「行革の観点のみでの検討にあっては、将来に大きな禍根を残すことが懸念される」との附帯意見が可決され、決着には至らなかった。 |
|
3. 各県における試験研究機関の独法化の現状 道当局の独法化の検討が加速する中、独法化に関する情報を共有し、問題点をより多くの人に理解してもらうには、他都府県における独法化の状況を把握することも重要である。2008年6月に開催された「第12回自治労全国研究職集会」に参加し、以下のとおり各県の状況をまとめた。 (1) 地方独立行政法人となった岩手県、東京都、鳥取県、大阪市の概況
・法人解散の場合は県に戻れるとの覚書。 ・予算も当初は削減なかったが、中期目標で効率化計画。 ② 東京都
③ 鳥取県
・職員アンケート「準備不足のままの法人化反対」8割にも関わらず、「職員はすでに理解している」との当局発言で、県議会紛糾したが、「事前に理事長名を提示し、県議会と協議させる」との条件で県議会承認。 ・「就業規則」については2007年7月に「県職員に準じる」とすることで、概ね合意。 ・個人業績評価制度は、2007年度は試行段階で県職員準拠。2008年度からは、論文数、特許数等による5段階の相対評価による業績評価が行われる。 ④ 大阪市
・技術職員は異動し、民間委託。 ・当局側の一方的な制度設計、高圧的な態度。 ・就業規則等は、市立大学をモデルにしているが、「整理解雇」という表現も。研究員減っているが(86→81)、新規採用なし。任期付き雇用もなし。業務量はそのまま。 |
(2) 検討中の山口県、青森県の状況
・当局内に「独法化準備グループ」発足、県立試の研究調整監(副場長相当)による「地方独立行政法人化推進連絡会議」を設置 ・運営交付金は総枠方式だが、人件費は積み上げ方式(当面の間) ・職員は、法人職員か県職員の身分で派遣(三セク派遣法)のどちらかを選べる。 ・準備予算1億3,500万円(ネットワーク費、固定資産鑑定、労働安全衛生コンサルタント委託料等) ・8月には職員の身分の希望聴取開始、12月に定款の議決と国への認可申請、2009年3月に中期目標、関連条例、運営費交付金の議決を予定。 ・独法化に伴い、農総研グリーンバイオセンターの廃止 ② 山口県
・2007年8月に商工労働部次長が、産業技術センターの独法化を宣言。 ・産技セの管理職、若手職員、組合代表も交え、7回の独法化検討WGの結果、特定型が適切との報告 ・2008年4月、部当局の独法化準備班(5人)、産技セ総務課に資産評価担当主査、嘱託コーディネーター等が増員。同時に3級専研以上が関わる準備WG編成。 ・準備予算は8,800万円 ・当局は特定型にすると言明しているが、総務省との協議が難航している模様 ・法人廃止時の身分保障の覚え書きは前例がないので交わせない。交付金の適正配分も確約はできない。 ・法人に移りたくない職員が転籍できる職場は、県立試内にはない。 4. 国独立行政法人のその後……「非公務員型」への移行、廃止・統合、民間移管…… (1) 国独立行政法人は第1回の見直しでほとんどが「非公務員型」に移行 |
<別表> 国の試験研究機関等の独立行政法人移行および見直し状況
|
(2) 独立行政法人化された国の試験研究機関の厳しい実態
5. 全道庁、空知研究評の独法化反対の取り組み (1) 全道庁の取り組み
しかし当局は、いずれも11月までに「法人制度導入に関する方針案」を策定するとして、法人化ありきの不当な回答を行ってきた。このようなことから、労使交渉だけで当局方針を跳ね返すことは非常に難しいと判断し、道民世論に訴える必要性があることから、戦術を立て直した(以下)。
当局側の動きが本格化するにつれて、道議会対策も必要と判断し、2007年9月に組織内道議が所属する民主党会派に対して要請しレクチャーを実施した。その直後の三定議会より、継続して代表質問、一般質問、各種委員会も含めて当局側の姿勢を追及してきた。並行して署名運動にも取り組んだが、問題をより多くの層に周知するために、必ずしも「反対」ではなく「知事への要請」に重点を置いた。その結果、給与独自削減等の近年行われた署名に比べても多い個人署名104,798筆、団体署名2,424筆を集約し、2007年12月に道当局に提出した。道当局とは2回の団体交渉を行って道立試の一元・法人化の問題点を追及したが、一元・法人化ありきの回答に終始する不当なものであり、同時にWGの議論が十分になされていないことが伺えた。このため各部交渉も実施し、「原案」についての認識、事業部局としての意見反映や考え方等について問いただしたが、道当局の回答を超えるものは得られなかった。 (2) 空知研究評の取り組み 6. まとめ……今後の取り組みの方向…… 地方独立行政法人制度は「地方公共団体自身が直接実施する必要がないもの」と規定した地方行政の実施部門のアウトソーシングを目的として導入された制度であり、最終的には財政上の理由による縮小、廃止や民営化を目指している。地方独立行政法人の組織や業務は、評価委員会による事業年度毎および「中期目標」(3~5年)期間の実績評価により見直すこととなっており、人事管理権を持つ理事長の下で組織や定数が頻繁に変更される恐れがある。また、効率的な事業運営・自主的管理の名の下で、人事や給与の面からの労務管理の強化は必至である。さらに、法人職員の身分は非公務員とされ、北海道職員の身分は剥奪される。私たちは、こうした目論見を断じて許すわけにはいかない。 |