【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-②分科会 立ちあがれ自治体職員 ― 地方自治の可能性を探る ―

市民と行政のかけ橋に
~組合と行政の新たな関係~

北海道本部/深川市職員労働組合・自治研推進委員会

1. はじめに

 深川市職労の自治研は、1997年9月の推進委員会(以下「委員会」とする。)設置以来、徐々に活動を広げてきました。委員会は、委員が5・6人と事務局の担当執行委員2人で構成され、任期は原則2年間での活動になります。当初は「公用車のあり方」等市役所内のことをテーマに活動していましたが、地方分権の流れの中、また、自治労としての深川市職労の在り方などから、市民と接点を持てるようなテーマへと変わっていきました。
 2005年度設置の委員会では、中学生を対象にした職場体験(消防や病院等)として「はたらく探検隊」を企画・実施し、市民に今までの深川市職労とは違う側面として、自治研の存在を知ってもらうきっかけになり、市民から高い評価をいただきました。また、組合内では少しずつ自治研に対する理解も得られるようになり、活動した委員も通常業務では得られない充実感や達成感とともに自治研活動の必要性とすばらしさを感じてきました。
 しかし、委員の数が少ないこともあり、自治研が組合内に浸透するところまでには至っていません。また、委員会は、委員の2年任期が終わると「このすばらしい活動を少しでも多くの組合員に体験してほしい」との思いから、事務局の担当執行委員のみが継続し、委員は全員入れ替ってしまうことから、委員会の継続性や発展性がありません。
 まだまだ、自治研活動が定着していない深川市職労ではありますが、今は少しずつ組合員に自治研を広げること。そして、自治研が定着していないため自治研に対する固定概念がないことを活かした活動をしています。

2. 2007年度委員会の設置

 2006年12月に委員5人、事務局2人で委員会を設置しました。委員全員が自治研は初めてのため、まずは「自治研って何?」から始まりました。そして、活動テーマの検討に入りましたが、委員は自治研活動の幅広さからテーマが絞り切れずにいました。委員会では、過去の自治研活動の流れや市職員の置かれている立場から「市民と関わりのある活動」が必要との意思統一はされたものの、具体的な活動が決まらないまま時間が経過しました。
 そんな中、「氷雪まつり」を所管する組合員から「今年の氷雪まつりでの模擬店のブースが空いている。自治研で何かできないか」という話が持ち込まれます。
 「氷雪まつり」は、毎年2月に市内の公園で開催されるイベントで、会場には雪像や氷像のほか、ステージイベントや模擬店がでるなど冬の一大イベントです。近年言われている市民協働の視点で言えば、このまつりでは市民が制作する市民雪像があり、10日間ほどの製作期間をかけて行政と市民が一緒に作り上げていく数少ないイベントです。
 委員会では、2007年1月に打ち合わせをし、このことをすぐに検討した結果、すぐさま参加することに決定しましたが、その背景には、ある事件の影がありました。
 その事件とは、前年の暮れに現職市長・部長及び市職員OBが逮捕された談合事件でした。深川のまちは年の瀬にも関わらずその賑わいはなく、ひっそりと年を越しました。また、市民も市職員もこの事件で大きなショックを受けていました。委員会では、「こんなときだから、氷雪まつりを盛り上げたい。」「市の職員も汗をかいているところを市民に見てもらう必要があるのではないか。」との意見が出され、短時間での対応となるが、ここで氷雪まつりに参加する必要性を強く感じていました。あとに思えば、これが危機感というものだったかもしれません。そして、この危機感が大きな原動力になったことは間違いありませんでした。とにかく、これも自治研活動のひとつ、自治研でなければやれない活動という認識で氷雪まつりへの参加に取り組むことになりました。

3. 氷雪まつりへの初めての参加(2007年2月3・4日)

模擬店の様子―くじ引き―
 氷雪まつりへの参加決定後は、開催日までが短時間だったため慌てて準備を行いました。まず、模擬店で何をするかについて、協議しました。
 ・市民団体の模擬店と競合しないもの。
 ・まつりなので、子どもたちが喜べるもの。
 ・気軽に楽しめる価格設定にすること。
 上記のような条件で検討をした結果、「射的」と「くじ」をすることになりました。また、価格設定を抑えるために組合員に景品の提供をお願いするとともに、当日の運営は委員会だけでは人不足のため、当日の参加者も呼びかけました。模擬店の名前は「集まれチビッ子 おまつりや」と名付け、営業方針(別紙)を決め準備を進めました。
 当日は、短時間の準備と経験不足の中、多くの組合員の協力を得ることでまつり2日間を乗り切りました。模擬店を出店している市民からは「一番の繁盛店だね」と評価された反面、市民への自治労(自治研)の知名度の低さから、安心感を持ってもらうことができず「どうせくじは、1等なんか入っていないのだから」という的屋と同じように受け止められた方もいました。しかし、全般を通して子ども達やその親や祖父母たちが雪像以外に気軽に子ども達が楽しめるものを求めていることがわかりました。また、委員や運営に携わった組合員からは、様々な感想が寄せられました。以下にその1例を紹介します。

・既成概念にとらわれず、頭はいつも柔軟に
  くじ引きで、残念賞を「これが欲しかったの~」と喜んだ子。
  自分は「こ、これを喜ぶの?!」と思っちゃいました(^^;
  →仕事をする上で「こう考えるのが普通だ」「こういうものだ」という凝り固まった考えに支配されがちな自分。気づくと、まず最初に「出来ない理由」を探しているような……「どうしたら出来るか」という発想の転換でより良い市民サービスをめざしたいものです。

 氷雪まつり参加後、委員会では活動を振り返り、2日間ずっと会場にいたことでまつりの全体像も把握でき、まつりの企画に対する疑問や改良点などの意見や我々市職員の労働組合という利点を活用して、市の所管と連携すればよかったのではないかとの反省点も出ました。
 その後、各委員が多忙となったため活動が停滞し、いつの間にか雪が舞い降りる冬を迎えていました。

4. 2回目の氷雪まつり

 委員会が、活動を再開したときには、年の瀬が迫っていたため、前回の氷雪まつりへの参加経験を活かすため、今度の氷雪まつりに企画段階から所管担当者と連携をとり、一歩踏み込んだ形で氷雪まつりへの参加をすることになりました。


模擬店の様子―射的―

5. 行政との連携した活動

(1) ボランティアの導入
 委員会では、まず、所管担当者との打ち合わせからはじめました。担当者は、近年、市民との協働がクローズアップされる中、当市でも議会で市のイベントにおいて、市民の参加・協働による運営が求められ、担当所管は準備や当日の運営などでボランティアの導入を検討しているとのことでした。
 しかし、ボランティアはある程度の人数の申し込みがなければ、企画倒れになるばかりでなく、まつりの準備工程やイベント内容の変更が余儀なくされるため、所管としては二の足を踏んでいました。そこで、自治研がこのボランティアへの参加を約束することで、今回の氷雪まつりからボランティアの導入を進めることになりました。

(2) 所管と試行錯誤
 所管としても初めての試みで、何をボランティアに依頼できるのか? その準備がどうなるのか? 人員削減で人手不足の中での試行錯誤が始まりました。自治研は、市民の申し込みで不足する部分や急遽行わなければならなくなったことを中心に所管をバックアップする形で取り組みました。また、昨年同様に模擬店での出店に加えて、同じ市職員としての信頼感からステージイベントの一部も請け負うことになり、広く組合員への協力依頼も行いながら準備を進めました。
 所管が広報等でボランティアの募集を行った結果、職場単位や商工会議所青年部などから申し込みがあり、ある程度の人数確保ができました。ボランティアの申し込み結果にほっとしながら、委員会もボランティアで参加しました。

(3) 所管の本音
 そこで感じたことは、初めてのボランティア導入でボランティアに依頼する仕事を準備する所管の苦労でした。所管担当者は、「準備不足で市民にお願いしにくいことも、自治研には同じ市職員だからお願いできて助かる」という言葉どおり、所管の職員不足に加え、異動で「氷雪まつり」を経験していない担当者もいることから、なかなか計画的にできない現実を目のあたりにしました。しかし、所管では、委員会が参加することで同じ市職員が担当を超えて一緒に作業をできる心強さも感じていたようでした。

(4) 作業の中で感じたこと
 委員も自分が異動してこの仕事を担当するかもしれないという自覚から、所管でなければわからない準備作業等に発見や学習を繰り返し、寒い中夜遅くまで会場での作業を行いました。また、ボランティアの市民と一緒に行う作業もあり、普段の業務以外での市民との交流が図られ、市民に対する市職員のイメージが少しは変化したのでないかと思います。
 ボランティア以外でも、氷雪まつり実行委員会に委員会の代表者が参加し、正式に氷雪まつりの運営にも携われるようにもしました。所管の話では、以前より実行委員会から「所管が忙しいのならば他の市職員が手伝ってくれてもいいのでは? 手伝ってもらえないのか?」と言われていたので、市としての一体感をアピールできたように思います。しかし、実行委員会は形骸化しており、事務局である所管がほとんどを企画・実行する現実に協働という言葉とのギャップを感じました。

6. いよいよ当日(2008年2月2・3日)

 模擬店・ステージイベント・運営ボランティアと開催期間の2日間を委員と協力参加の組合員は目の回るような時間を過ごしました。

(1) 模擬店
 昨年の模擬店を覚えている子どもたちは、「まだ、できないの~」と準備時間から待っていたり、「今年もあった」と喜んで駆けつけてくれる子もいたり、楽しみにして集まってくれている子どもたちを見ると、昨年の活動が無駄でなかったことを感じました。

(2) ボランティア
 ボランティアでは、子どもが30cmほどの雪だるまを作成し、メッセージを添えて会場に展示する「まごころゆきだるま」のスタッフとして参加し、多くの子どもたちの思い出作りに関わり忙しい中にも子どもたちの元気な声を聞けることのうれしさを感じました。
 また、夜のキャンドルを灯す作業も手伝いました。キャンドルは委員会が準備期間にボランティアとして空き缶に芯を入れて作成したもので、キャンドルは幻想的な空間を作り出し、来場者は素晴らしい冬の夜を満喫していました。

(3) ステージイベント
 子どもたちを対象に、お菓子・小さなおもちゃや地場産のものが当たる券などをステージから撒く「なんでもまき」を行いました。これは委員会が所管から請け負ったもので、企画・準備・実施まですべてを委員会で行いました。いつもの「もち」や「みかん」と違う企画に予想以上の子どもたちが集まり、好評のうちに終わりました。

7. まとめ

 委員会では、2年間氷雪まつりに参加する中で、多くのことを学ぶと同時にいろんな課題があることにも気がつきました。

(1) 良かったこと
① 一市民として組合員が地域に貢献できたこと。その場を委員会が作り出せたこと。特に市外出身の若い組合員は、地域に貢献したくても具体的なことがわからないため、その思いを具現化できたことは、良い機会だった。
② 行政と委員会の連携で新たにボランティア導入の後押しができたこと。
③ 結果を強く求められる通常業務と異なり、自治研活動は、結果が分からないことを実際に行って研究する活動のため、自由な発想で活動できたこと。固定概念や失敗を恐れて新しいことができない業務への姿勢について考えるきっかけにもなったこと。
④ 普段は、縦割りといわれる行政の中で別々の職場の組合員が協力して同じ目的のために活動できたことは、組合員同士の繋がりを強め、このことは普段の業務にも反映し、円滑な行政運営にも効果を発揮することであろうこと。
⑤ 談合事件による影響に危機感を感じたことが、逆に原動力にできたこと。

(2) 課 題
① 所管としては、市民との協働を目指しボランティアを募集すると、申し込み人数が不明なため、どの程度の仕事量を依頼したらよいかがわからないこと。また、初めてボランティアを導入する場合には、何をボランティアに依頼できるのかを十分検討することが必要なこと。
② 模擬店では、飲食店以外の出店は委員会が初めてで大盛況だったが、これを市民に引き継げられないか。
③ 氷雪まつり以外のイベントについては、どのような状況になっているのか。

 今回の活動では、ボランティアの導入を後押しすることができ、結果的に市民との協働を求められている行政と市の事業への参加を求めている市民とのかけ橋的なことができたことが一番大きな成果でした。そして、今まで行政は市民⇔行政しか考えられなかったが、市民⇔(組合)⇔行政となることで、行政運営を一歩前進できるという手法を発見できたことは、行政にも組合にも大きな発見でした。

 また、ボランティアの役割は、事業運営を手伝うだけでないことを感じる場面もありました。会場のキャンドルが倒れ、缶の中の燃料がこぼれ火が大きくなったのですが、ボランティアをしていた委員がすぐ見つけ対処したので大事に至らなかったことです。このようにスタッフが増えることで会場内の目配せ、気配せが可能となり、来場者の安全確保に繋がることも体験しました。何が協働なのか定義もあいまいなまま進められている行政運営ですが、ボランティアに参加して「行政に任せきりより自分たちが携わったほうが、充実感や愛着などそのイベントへの思いが大きく違ってくる」と感じました。今回の委員会では協働を直接のテーマにはしていませんでしたが、協働とは市民と行政が一緒にまちづくりに参加することで郷土愛を育てることかも知れないと感じました。

 2005年度の委員会のレポートで「私たちは、市職員や組合員といった立場よりも先に、一市民でなくてはならないと思います。『市職員だから深川に住む』のがこれまででした。これからは、意識改革し、深川が好きだから住み続けたいし、市のことを知りたい。だから、市職員になった。という気持ちを持ちませんか?」と提起されていますが、改めて、業務だけでなく、地域に愛着を持ち一市民として地域に貢献することが必要だと感じました。町内会や市民団体に参加することはもちろん、今回のように組合が持つ立場を活用して組合を通じての地域貢献は行政にとって大きなメリットがあります。
 組合も行政もまちの発展を願う気持ちに変わりはありません。今後は、新しい組合と行政の関係を築き、一緒にまちづくりをすすめることが必要だと思います。


(別紙)

自治研屋台「集まれチビッ子 おまつりや」営業方針 ≪抜粋≫

1. 目的  (1) 氷雪まつりを盛り上げる。
      (2) こどもたち(お客様)に最大限楽しんでもらう。
      (3) (1)(2)を達成するために自分たちも楽しむ。
2. 日程及び店番ローテーション (省略)
3. 内容
(1) くじ引き 1回 50円  総数 約800回分(2日間)
  ① くじの種類 ・数字合わせ(既製品、オリジナルくじ:寄付された景品で作ったもの)
          ・ひもくじ(セットが必要です)
  ② やり方   ・(省略)
          ・くじの景品が残り少なくなり、人気がなくなってきたら、そのくじは下げる。下げたくじは、自治研推進委員が他の残った景品と合わせて、残り物でくじを作成する。
(2) 射的 1回 50円で3発 景品数 約700個(2日間)
  ① 景品と銃の種類・景品:駄菓子、おもちゃ、寄付された景品
           ・銃:コルク玉のもの2丁、吸盤の矢のもの4丁
  ② 景品の並べ方 ・駄菓子類は、直接並べる。
           ・倒れづらい景品は、下にダンボール(カット済)を入れて倒れやすいようにセットする。または、その景品の上やそばに用意してある的を置く。
  ③ やり方    ・(省略)
           ・景品は、倒した数だけ(1回に最高3個)渡すが、1つも倒れなかった場合には、くじ付きアメやチョコまたはガムの残念賞を1つ渡す。
           ・ひとつの景品に執着し、何回(目安:4回)も残念賞になっている場合には、状況判断でその景品、もしくは他の景品を渡す。
  ④ 注意事項   (省略)
4. その他      (省略)