【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-②分科会 立ちあがれ自治体職員 ― 地方自治の可能性を探る ―

『空気バス』の起死回生の復活劇から丹後地域の活性化の核へ
~京丹後市の『上限200円バス』の取り組み~

京都府本部/自治労京丹後市職員労働組合 野木 秀康

人口 62,723人
面積 501.84㎡
人口密度 124.98人/㎡
地勢:近畿の最北端
 
運賃最大1,150円を200円に


1. 2006年度までの主な取り組みと成果

 路線バスについては、利用者の減少傾向の中で多額の補助金を支出している現状が続いていました。この現状を打開するべく、2005年12月に京丹後市地域交通会議(現・京丹後市地域公共交通会議:会長 中山泰市長)を設立し、利用者のニーズにあったバス交通の実証運行を行うこととし、まずは、大規模な住民アンケート調査(有効回答サンプル4,828人/8,353人分回収)を行い、回答者の約6割の方が『バス運賃を200円~300円に』『運行間隔を40分未満に』とする結果がまとまり(2006年2月公表)、2006年10月1日の実証運行開始(出発式)となりました。


記念すべき上限200円バス
出発式(H18.10.1)

高校生の利用が急増
市民の皆さんの声

(1) 実証運行の取り組み
① 丹海バスの間人線、間人循環線、海岸線、弥栄病院線の4路線において、低額運賃による実証運行を開始。
 ア 運賃上限200円の設定
  ● 大人200円(中学生以上)
  ● 小児100円(小学生)
  ● 6歳未満無料(保護者1人同伴で1人が無料)
  ● 身体障害者手帳及び療育手帳提示者各自100円
 イ さらにお得な回数券(2,000円)の販売及び窓口の拡大
  ● 普通回数券(11枚綴りで、実質、大人1回あたり182円で乗車可能に)
  ● 通学回数券(13枚綴りで、実質、学生1回あたり154円で乗車可能に)
  ● 昼間回数券(13枚綴りで、実質、大人1回あたり154円で乗車可能に。
     ただし、利用制限として、午前10時~午後4時までの降車時に限る)
  市民局(峰山・網野・丹後・弥栄市民局)と網野駅、バス車内での窓口販売開始
 ウ 定期券で保護者の負担軽減
   例えば、間人~峰山間の運賃700円が200円となり、これを受け、学生の通学定期券も大幅に安くなりました。



② ダイヤ改善(パターンダイヤの導入、列車からバスへの接続時間の短縮、丹後あじわいの郷及び弥栄病院への直接乗入れ実現)
③ バス停留所の改善
 ・バス停留所新設6箇所
 ・バス停留所名称変更7箇所
④ フリー乗降区間の増設(てんきてんき村~経ヶ岬間)
⑤ 車両改善(中型ノンステップバス2台導入、ラッピング車両導入)


ラッピング車両を導入(18.10.1)

ノンステップバスへの随時導入
病院への直接乗入が実現

⑥ 情報提供改善(全ての公共交通情報を網羅した地域総合型時刻表の作成及び全戸の配布を初実施、公共交通マップの作成、市ホームページへ掲載、広報「きょうたんご」に毎号掲載、ポケット時刻表作成)
⑦ 市職員等が月1回以上公共交通を利用する「ノーマイカーデー」の設定、絵本「ピン・ポン・バス」の幼稚園・保育所への配布。
⑧ 老人会、区長会、校長会等における利用促進依頼(営業活動)の展開。高校生との対話集会実施。


分かりやすい時刻表(冊子)を発行

『乗りもの絵本』の読み聞かせ

老人クラブとの意見交換
 
市職員によるノーマイカーデーの取り組み開始(H18.11~19.3)
 5ヶ月間でバス・鉄道を1,390回の乗車
※20年度以降も継続して取り組み中

⑨ 花金バスの実証運行開始(峰山22:31発~溝谷~間人23:12着)

(2) 成 果
 低額運賃(上限200円)を導入した2006年10月から2007年3月の半年間の乗車人員は1.4倍(46,082人→65,867人)となり大幅に乗車人員が増加しました。特に高校生の利用が急増し、施策の効果が早期に出た。


 
間人線 バス停『峰山』のようす(H19.1)
海岸線 バス停『峰山』のようす(H19.1)

2. 2007年度の主な取り組みと成果

 2007年度は、2006年度に引き続いて「低額運行と分かりやすく、使いやすい公共バス交通の実証運行」を行い、10月からは市営バス路線と丹海バス路線の市内全路線に上限200円バスを拡大しました。

高齢者、高校生、小さなお子さんにとっても身近な乗り物になりました。

(1) 取り組み
① 上限200円バスを市内路線に拡大
  丹海バス路線(久美浜線、延利線、峰山線の一部、病院線の一部)と市営バス路線(久美浜線、弥栄線)を加え、市内全てのバス運賃を上限200円に設定。
(2007年度の運賃の最大値下げは久美浜駅~峰山駅前間の運賃880円が200円に。さらに、実証2ヵ年を通した最大値下げは経ヶ岬~網野経由~峰山駅前間の1,150円が200円に)



実証2年目には市内全路線が上限200円バスに
(H19.10.1)

② 運行路線の充実(与謝の海病院線をショッピングセンターマイン経由に路線変更)
③ ダイヤ改善(パターンダイヤの充実、列車からバスへの接続時間の短縮)
④ バス停留所新設4箇所
⑤ 情報提供改善(地域総合型時刻表の改良による発行、新聞折込による利用啓発チラシの実施、ひとめでわかる公共交通マップの作成、市ホームページへ掲載(動画も公開)、広報「きょうたんご」に毎号掲載)


ショッピングセンターへの
乗入れが実現(H19.10.1)

市HPを充実(動画の公開)

分かりやすい時刻表の発行
(バス・鉄道の路線を地図上に表記)

バス車体にも
エリア拡大表示
新聞折込チラシの実施(19.11.3)

⑥ 市職員等が月1回以上公共交通を利用する「ノーマイカーデー」を継続推進
⑦ 花金バスの経路を網野回りに変更
 (峰山22:35発~網野~間人23:20着)
⑧ モビリティ・マネジメントの推進
  バス運転手による出前講座の開催開始、
  企業に対しノーマイカーデー取り組みの推進

ノーマイカーデーにお子さんと一緒に通勤する市職員

運転手による出前講座

幼稚園での親子遠足利用
小学生は100円、6歳未満は
保護者同伴で無料に     

(2) 成 果
 実証運行1年間(2006年10月~2007年9月)の乗車人員は対前年比1.64倍(92,681人→151,891人)、収入は対前年比0.95倍(26,673千円→25,409千円)という結果でありました。低額運賃(上限200円)の導入及び便数の増加、燃料費の高騰により、運行確保維持額を当初93,000千円と見込んでいたが、運賃収入もほぼ前年並みを確保する中で、前年度実績(87,387千円)とほぼ同額(87,577千円)に抑えることができるなど、多くの方に喜んでいただける実証運行1年目となった。
 2007年10月~2008年3月の乗車人員も従前の路線で前年同期間と比較して1.25倍(65,867人→82,528人)となり、実証運行の開始前の2005年10月~2007年3月の期間と比較すると1.79倍(46,082人→82,528人)と大幅に増員となった。新規に実証運行を始めた路線の乗車人員も1.32倍(40,625人→53,556人)と好調で、特に、久美浜線では、2.13倍(4,716人→10,048人)となった。この期間の全路線の乗車人員は1.27倍(106,492人→136,084人)となった。


上限200円バス1年目からの実証運行適用路線の乗車人員の推移

(数値については、運賃収入額より乗車人員を算出) 単位:人

市民の投票により、2007年の京丹後市10大ニュースの第1位に選出

 
 
広報紙「きょうたんご」の表紙に
 
  また、国や他の自治体からも京丹後市の取り組みは注目されており、各地から視察に来られ「何のための公共交通か考えさせられた」といった感想をいただいたほか、市の行政評価委員会でも「大ヒット事業だ」という評価をいただきました。
 市では、『公共交通施策』は、運行収支だけでその良し悪しを判断するのでなく、まちづくりに必要不可欠な社会インフラ整備であるとする認識に立ち、交流人口を増やし、丹後全体が活性化する公共交通網を構築していくこととしている。

3. 施策実現のための工夫

(1) 体制の強化
① 府レベル:「分かりやすく、使いやすい公共交通ネットワーク実現会議」の開催
  2年間で延5回開催(別途ワーキング会議開催)
② 市レベル:京丹後市地域公共交通会議の開催
  2006年2回、2007年4回開催(設立は2005年12月)
③ 新交通体系構築プロジェクトチームを発足
  (市役所内部の部局横断的チームの編成)
  2年間で延19回開催(発足は2006年5月)

(2) 予算確保への努力
① 総務省の『頑張る地方の応援プログラム』に応募
② 国土交通省の『地域公共交通活性化・再生法』に基づく、地域公共交通総合連携計画の策定(富山市に次ぐ、全国で2例目の計画承認)

(3) 国との情報交換等


実現会議の様子

地域公共交通会議の様子

国会議員を前に事例発表(東京)

近畿運輸局長様と(市長室)
上限200円バスの事例発表(広島市)

4. 総合計画の目標数値とその見直しについて

 市内の路線バスの利用者数(目標値)について、2004年の160千人から2014年には180千人であったが、既に2007年度は263千人となった。そこで、下表の通り、総合計画をより具体化した『路線バスの戦略と戦術』を示し、2014年の目標数値を300千人と上方修正することとした。


京丹後市の路線バス 300千人達成のための戦略と戦術について