1. はじめに
私たちは1年前に労働組合の共済事務を通じて知り合った仲間で、普段は奈良市・宇陀市と別々の場所で仕事をしています。あるとき、3人の談話で「この厳しいご時世の中で労働者はどんなことを考えながら、どんな問題を抱えて仕事をしているのだろう」という話題が出たのですが、憶測ばかりで明確な答えを見つけることができませんでした。そこで、「労働者のSOS」というアンケートを取り、実情を探ることにしました。
今回は初めてなので、全体的な傾向を把握するために労働組合に関係ある人もない人も、労働組合を知っている人も、知らない人も、職種・雇用形態・職場等、全然違う方々にもアンケートをとることにしました。本論文は、これらの結果から、労働者のメンタル面を掌握し、彼らが現在抱えている共有の問題点を探ることを目的としています。
2. 調査の方法
アンケートは対話形式で行い、調査員が回答を調査票に記入しました。
対象者は「職場・友人・家族」
内容は「今、働きながら心のバランスはとれていますか?」
① 今の会社は、どうしたらさらに良くなると思いますか?
② 今の会社でしたい事がありますか?
③ 今の会社で働く意欲はありますか?
④ 転職は考えていますか?
⑤ 生きていると実感していますか?
⑥ 生き甲斐はありますか?
の6項目作成しました。
アンケートの分析を行い全体の傾向について概観したのち、執筆者3人がそこから得た印象や各自考えたことを随筆で述べました。
3. 分析の結果
アンケートの回答者は31人(回答者の内訳→職場14人、友人12人、家族5人)と少なかったのですが、対話を行うことで設問以上の情報を得ることができました。
はじめに働く意欲について、9割は働く意欲があり、1割が転職を考えているとの回答でした。働く意欲はあると答えた中に多かったのは、現実的に働かないと生活していけない、転職を考える理由は、賃金が安く、人間関係がうまくいかないとの回答がありました。
次に、生きていると実感していますか? の項目では、生きていると実感している人は30人いました。「生活が楽な時は、実感しない。」「生活が苦しい時は、実感する。」という答えがあり、経済的な豊かさよりも「心の豊かさ」が生きている実感に影響を与えていると感じました。
次に生き甲斐がありますか? の項目では、家族や趣味等が生き甲斐という回答が15人でした。
その他では、回答者が感じている問題を自由に語っていただきました。会社の経営状況によって人員の削減で人間関係が悪くなった事や、地方の財政難や合併によって人間関係が悪くなった事等、職種を超えた共有の問題点が見えてきました。
このアンケートによって知った事は、改めて人は、人と人とのつながりを重要視しているという事でした。どんな状況でも、人は人を求め、お互いを高め合い、思い合いながら、働き生きていくのだなと感じました。
そして、これから私たちがしていくべき事は、人に「つながり」を伝えていく事だと思いました。
アンケート対象人数は31人と少なかったですが、集約していく内に1人1人の心の内側を覗かせて頂き、驚きと、感動がありました。そして、アンケートに協力して頂いた皆さんの思いをたくさんの方々に知ってもらい、共に考えて頂きたいと思いました。
(執筆:川村良江)
4. 団結! 今こそ団結を!
私たちは今労働組合の中で仕事をしています。三人とも職場は違うけど毎日バタバタ……、ドタバタって感じであわただしくすぎていく毎日……。
時々ケーキ食べに行ったり、時にはビール飲みに行ったりしてちょっぴりかしましく? いろんなおしゃべりをしたり冗談を言い合ったりしています。
そんなとりとめのないおしゃべりの中でふと出た話題……。『秋葉原殺傷事件』。
週刊誌やワイドショーでも話題になりました。派遣労働者で未来が不安だったとか、コミュニティサイトにたくさん投稿していたとか、孤独だったとかなんだか近頃テレビや雑誌をにぎわす本当に今よくきくキーワードが満載だなっ……。って。
この事件をきっかけとして政府は小泉改革以来増え続けた非正規雇用の働く人々の待遇を考慮した政策を考える? とかなんとか、かんとか……。
果たしてそれが的を得た対策になるのか? 働く人たちが報われるのか?
私の周りの友達もさまざまな雇用形態で働いています。正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パート……。でも一度正社員を辞めたら正社員で再就職する人は確実に少なくなっているように思います。
株主や経営者の利益還元率は何倍にもあがっているのに従業員の給料は約5パーセント下がっています。
物価高、偽装問題、地震、ネットカフェ問題さまざまな問題がおこっているにもかかわらず政府はどこか他人事のよう……。そして私たちもお互いがあまり干渉しないよう、どこか他人事のようにすごしているような……。
ある派遣会社の派遣労働者達が組合を結成して団結を訴えていた事件があります。食品サービス業の労働者が勇気を出して管理職裁判を行い見事勝利した事件、近頃話題になっている食品偽装問題も誠意ある一労働者の告発がきっかけになっています。
働く人々が勇気ある行動を起こす、みんなで団結することが今とても大事だ! そんな思いを伝えたくてこの論文を作成いたしました。私たち3人はまだまだ経験が浅くて失敗したり、先輩から教えていただいたりすることも多くてまだまだ学ぶことが多いです。なにはともあれ、組合員さんや役員さんとともに……。
さあ、今こそ反撃だ!
(執筆:幸田彰子)
5. 労働者の団結
2008年5月1日、歴史は動きました。アメリカとイラクの港湾労働者が同時連帯ストライキをたたかいました。軍事物資輸送を実力で止めたのです。海を越えて、労働者の心と行動が1つになったそうです。
アメリカではずっとメーデーは事実上禁止されていました。でも、現場の労働者が1つ1つ挑戦して、2年前にメーデーを復活させ、軍事物資を実際にとめて戦争を止める歴史的なたたかいにまでなったのです。
こういうことができる原動力は何か? それが「労働者の団結」です。
現場や地域の職場では「同じ仲間なのに理解されない」「本音が言えない」と、孤独に働き、生きている人がたくさんいます。その結果が、「秋葉原事件」であり「無差別殺傷事件」につながっていると思います。本来、人間は一人では生きていけません。人と人との関係の中で、自分が他人に必要とされていることを実感したり、生きがいをもつものです。
「労働」という人間の本質的な部分で、孤独や未来に希望を見いだせない事ほど絶望を生む状況はありません。
だからこそ、職場・地域で労働者が大事にされることが重要なのです。不安定雇用や、ワーキングプアをなくし、本音を言える人間関係を形成し、誇りをもって労働できるようにしていかなければなりません。
たしかに職場や現状を変革しようとしたら必ず困難な壁にぶつかります。「出る杭は打たれる」こともあります。だけど、そういう時こそ「仲間」がいたら頑張れます。仲間との団結が労働者のよりどころです。
結論として、労働組合が原則的にたたかっていく中で、仲間を大切にする団結をつくることが最も大切なことであると考えます。
(執筆:吉谷宏子)
6. 終わりに
色々と、個々それぞれ伝えていきたい事を、3部作で作成しました。
まだ、1年余りの仲良し書記仲間3人組なのですが、労働組合に対する思いの熱さから、3部作という結果になりました。
ここで私たちが伝えていきたい事は、人であり、労働者という共有の仲間であるという仲間意識であり、労働者は団結すると世界をも動かせるのです。労働者には国境はないと思います。
アンケートを媒介して31人の方と語りあえたことは大きな収穫で、労働者が感じている問題点を解消するためには、どのような行動を起こすべきかを改めて考えさせられる結果が得られました。今回のアンケートを契機に、より「働くこと」や「労働者を取り巻く環境」について考えを深められるよう、これからも3人で会うたびに、語り合いたいと思います。 |