【モデル単組】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-②分科会 立ちあがれ自治体職員 ― 地方自治の可能性を探る ―

京都市政に対する「市民アンケート」


京都府本部/自治労京都市職員労働組合

1. はじめに

 自治労京都市職員労働組合(以下自治労京都市職)は、「よりよい京都のまちづくり」と「市民に信頼される市政の構築」をめざし、京都市と政策協議を行うなど自治体改革へ向けた取り組みを行っています。
 こうした取り組みの一環として、2007年の10月から11月にかけて、市民の意見を積極的に京都市政に反映していくため、「市民アンケート」を実施しました。この「市民アンケート」の取り組みは、4年前も実施しております。
 アンケートでは、性別や年齢といった回答者の属性を把握することをはじめ、「京都のまちの魅力」、「市政改革のあり方」、「市政への市民参加」、「京都市が進めてきた施策」などについて質問を行いました。集められた回答を数値化し、4年前の結果と比較を行っています。また、自由記入欄を設け、市民が京都市政に対する意見を自由に記入していただきました。
 今回のレポートは、より市民ニーズに直結した京都市政にしていくため、自治労京都市職が提起する政策要望などの基礎となる資料として活用していきたいと考えています。

2. 調査の方法

 調査対象:京都市民 回収数:7,541人
 調査方法:①調査票を自治労京都市職の組合員が市内各家庭に配布。
      ②連合加盟の各労働組合に協力を依頼し、京都市在住の組合員に配布。
 調査期間:2007年10月22日~11月20日

3. 回答者の属性



Q1 あなたは、「京都のまち」のどのような点に魅力を感じますか?


眺望景観条例など新景観施策の一層の展開を
 6項目中で一番評価が高かったのは、「芸術や文化、歴史的遺産が大切にされている」で、2番目は、「まちなみや景観が大切にされている」です。前回と比べてみると、「芸術や文化、歴史的遺産が大切にされている」は、「(どちらかといえば)魅力がある」が89.0%から85.4%へ、「まちなみや景観が大切にされている」で78.9%から76.2%と若干数値が下がっていますが、全体としては高い評価を得ています。
 しかし、「道路や公園など公共施設の整備が行われ、新たなまちづくりが進められている」「伝統産業や先端産業など、産業の育成が図られている」「町内や学区内などで、人々の交流が活発である」「子供やお年寄り、障害者にやさしいまちづくりが進められている」では、4年前の調査よりも評価(魅力)が上がっていますが、いずれも「(どちらかといえば)魅力がある」が5割前後となっています。
 今後は、「京都文化芸術都市創生条例」や「眺望景観条例」などの新景観施策の一層の展開と共に、公共施設の整備、産業の育成、人々の交流の活発化、子供やお年寄り、障害者にやさしいまちづくりなど、さらなる施策が求められています。


Q2 京都市の財政は非常に厳しい状況となっていますが、よりよい市民サービスを行っていくうえで、どのような市政改革のあり方がよいと思われますか?


サービスの見直しは、市民参画で
 「厳しい財政情勢なので、市民サービスの水準の低下はやむを得ない」と回答した人は26.5%。また、「市民サービスの維持・向上のためには、税金や利用料など市民の負担が増えても仕方がない」は28.1%でした。
 反面、「市政改革は必要だが、市民生活を守るサービスは、できるだけ行政が行うべきである」と回答した人は79.5%と、4年前の調査に比べて7%の増加となりました。また「経費節減のため、市民が出来ることは自ら行い、積極的に行政へ協力していくべきである」は78.6%と、これも前回より18%近くも増加しました。「これまでの市民サービスを見直して、市民が求める新たなサービスを行うべきである」は85.6%でした。
 これらのことから、市政改革として、安易な民営化や民間委託でははく、市民ニーズに迅速に対応できるような業務の見直しと、住民サービスのあり方の見直し、将来を見据えた市民参画による新たな施策の立案と実行が必要だと思われます。


Q3 京都市では、市民とともに市政を進めるため、市民参加推進条例が制定されています。市政への市民参加をより一層進めるためには、今後どのようなことが必要だとお考えですか?


市民参加推進の一層の取り組みを
 「市民への説明や情報提供・公開などをさらに充実させるべきである」「市民と行政が一緒に協力していくためには、市職員の意識改革が必要である」のそれぞれは、9割の方が「(どちらかいえば)そう思う」とし、依然、情報提供や公開、職員の意識改革などへの努力が求められた結果となりました。しかし、「市民参加を進めるためには、市民も市政への関心を高める努力が必要である」も9割あり、京都市民の自治意識が非常に高いことを示しています。
 これらのことから、2003年6月に「京都市市民参加推進条例」が制定されてから今回の調査まで約4年が経過し、京都市民の高い自治意識に支えられているなか、審議会の原則公開、審議会委員の公募推進、パブリック・コメントの制度化などの市民参加推進計画を充実し、さらに情報提供や公開を推進し、市民ニーズに応えた一層の取り組みが求められています。


Q4 京都市の今年度予算は、厳しい財政状況の中にあっても、高齢者福祉、子育て支援、教育、産業の活性化と創出、環境、都市基盤整備などに重点を置いていますが、これらについてどのように思われますか?


これまでの施策を、引き続き推進
 この項目では、3期12年に及ぶ桝本市政の中で、重点的に行われた施策について、どの程度充実してきたと実感できるかと、現在取り組みを進めている施策や、今後進めていく施策について聞いてみました。
 「子育て支援施策が充実してきた」は「(どちらかというと)そう思う」が48.3%でしたが、「専業主婦(夫)」からは60.4%と高い評価を得ています。また、「循環型社会に向けた取り組みが積極的に行われている」が、前回の33.7%から64.5%と大幅に増え、「ごみの有料指定袋制」の導入が評価されていると思われます。さらに、「京都市景観条例の取り組みをさらに進めていくべきである」は77.9%、「モラル向上の取り組みを積極的に進めていくべきである」が84.8%となっており、現在京都市が進めている施策について高い評価を得ています。しかし、「職員の意識改革と信頼回復に向けた取り組みが進んでいる」は32.9%で、取り組みが市民に十分浸透していない結果となりました。
 「入札には、企業の社会的責任も考慮し評価するべきである」では、「パート・アルバイト・派遣社員」だけでなく、「自営業・自由業」からも9割以上の支持を得ました。今後は、企業の環境対策・障害者雇用・従業員の労働条件など社会的責任を考慮し評価する、「政策入札」の推進や「公契約条例」の制定などが求められています。
 今回の桝本市政に対する評価については、全体的に高い評価を得ることとなりました。特に「京都市景観条例の取り組み」「循環型社会に向けた取り組み」「モラル向上の取り組み」については非常に高い評価を得る結果となり、今後も引き続きこれらの施策を推進していく必要があります。


Q5 今後、京都市政はどの分野を充実すべきだと思われますか?


住民が安心して暮らせるためのセーフティーネットの充実を
 今回の調査で最も多かったのは、「保健医療の充実」でした。全体をみてみると、保健・医療・高齢者福祉など社会保障関係で60%近くを占めました。これは、医療費自己負担の上昇や、介護保険の相次ぐ制度改正、保険料の上昇などで、生活における不安感が増しているためと考えられます。さらに「雇用対策」「経済対策」も上位に位置し、住民が安心して暮らせるために可能な限りの、セーフティーネットを充実させることが求められています。
 男女別では、1位は同じですが、2位は、男性が「道路・交通網の整備」、女性は「高齢者福祉の充実」となっています。年代別では、年齢が高くなるほど「保健・医療の充実」さらに「高齢者福祉の充実」が1位になっています。職業別では、学生の1位が「環境対策」で、若者の環境への関心の高さがうかがえます。
 「道路・交通網の整備」では、自由記入欄でみると、交通渋滞対策に加え、自転車が歩道を占領し車椅子の通行を妨げているなど、歩行者が危険に感じる運転マナーの悪さが指摘されています。
 「環境対策」では、ごみの分別やバイオマスなど先進的に取り組まれていますが、さらにきめ細かな地球温暖化への対策が求められた結果となりました。

4. 自由解答欄に書かれた意見(抜粋)


京都市政に対する意見
・ 市民の意見を尊重してほしい(男性・70歳以上・南区・無職)
・ 京都らしい環境を守るべき。地方の小京都に負けないように(女性・40歳代・右京区・会社員・公務員)
・ 市民と行政が一緒に協力して今後活動していくことが大切だ(男性・20歳代・伏見区・会社員・公務員)
・ 「経費節減」のための市民参加はおかしい。よりよい地域福祉を実現のため、行政と市民の情報交換が必要。無償の労働力を得ようとするとサービスの低下を招きかねない(男性・40歳代・上京区・会社員・公務員)
・ 市長が交代しても、今までの積み重ねが水泡に帰すことのないよう、一貫した有効な施策を続けてほしい(男性・20歳代・左京区・学生)
・ 入札で安さを追求すると、耐震や耐火の偽装が行われ、粗悪品の横行を招く。質・アフターサービスの充実は、利用者の安全性を考えれば価格よりも必要(女性・50歳代・中京区・パート・アルバイト・派遣社員)
・ 今後の高齢化に向けた福祉政策を充実してほしい(男性・50歳代・伏見区・会社員・公務員)
・ もっと本腰を入れて、ごみを無駄にしない循環型の社会を実現してほしい(女性・50歳代・左京区・パート・アルバイト・派遣社員)
職員・労働組合に対する意見
・ 職員、特に労働組合員はもっと市民の感覚、目線を持ってほしい(女性・50歳代・中京区・会社員・公務員)
・ 財務省が26日に公表した公務員給与の水準では、国が100とするなら京都市はダントツの162.5,2位は千葉市の133.9とあった。これはどういうことか。市税からの給与だ。清掃、調理員、運転手など技能労務職員の給与を民間並みに見直すべきだ(女性・70歳以上・山科区・専業主婦)
・ 自治労自身の保身を図ることなく、社会常識を認識し、職員としての仕事に誠に尽くし、改革勢力の最大抵抗勢力は自治労とならないこと(男性・50歳代・西京区・会社員・公務員)

5. さいごに

 労働組合の運動方針を定めるうえで、信頼される市政づくりをめざしていくことが必要不可欠です。
 今回の取り組みで、市民のくらしを守り、市民サービスの向上をめざすため、自治労京都市職が京都市に対し行っている政策協議や、京都市の民主党会派(民主・都みらい京都市会議員団)への要望などに活かしてまいりたいと考えています。また、自由記入欄に書かれている意見の中には、京都市政や職員への批判とともに、労働組合に対する厳しい意見も多くありました。それらの意見を真摯に受け止め、今後の活動を進めてまいりたいと考えています。
 これからも、自治労京都市職は、行政に携わる職員がつくる労働組合として、市民ニーズに対応した政策への転換をめざし、市政改革運動を提起し、市民に信頼される市政を作るため、取り組みを進めてまいります。