【モデル単組】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ-③分科会 雇用の質と公共・行政・労組の役割とは

自治体における労働政策


山梨県本部/甲府市職員組合

1. 甲府市の取り組み

 労働行政は、従来、広域的・専門的分野であるとの判断から、国または県の段階での行政であるとされていたが、年々、勤労者の行政に対するニーズが、質的・量的に高度化・多様化するにつれて、きめ細やかな対応を図るため、新たな観点に立った労働行政が必要とされてきている。
 このため、甲府市の労働行政の推進については、国・県の労働行政の方向を踏まえながら、地域の労働関係機関と密接な連携を保ち、広く意見を求める中で、勤労者の福祉増進と雇用の安定を政策に反映していくことを基本的な姿勢とし、以下の項目を重点政策として行った。
・中小企業勤労者の福利厚生の向上   ・雇用の安定  ・勤労者の健康増進と余暇の利用
・高年齢者および若年者の就業支援対策 ・労働問題全般にわたる相談業務

2. 勤労者住宅資金融資事業

(1) 事業の概要
 勤労者に対して、住宅の新築、増改築及び購入に必要な資金の融資を行うことにより、勤労者の福祉増進と生活の向上に努める。なお、2008年度当初預託(既存分)は、596,950,744円である。貸付状況については、次のとおり。

(2) 預託金融機関
 中央労働金庫に預託しており、本年度の新規分は、1億5,000万円を上限とし、随時預託している。なお、協調倍率は3倍で、預託利率は無利息である。(1998、1999年は2.5倍)

(3) 融資の対象者
① 甲府市内に住宅を新築、増改築及び購入しようとする勤労者で、新築及び購入については、延床面積が165m2(50坪)以下であり、増改築については、増改築する部分の延床面積が10m2(3坪)以上で完成後の延床面積が165m2以下であること。
(中古住宅の購入についても貸出し可能。)
② 同一事業所に引き続いて1年以上勤務している方。
③ 年齢が25歳以上、55歳以下で同居の親族のいる方。
④ 所得が250万以上、1,000万円未満の方。但し、同居の親族の収入を合算することもできる。(※甲府市多世代同居用住宅資金との併用は認められない。)

(4) 融資の条件
 融資限度額は1,500万円以内とし、融資期間は30年以内、元利均等月賦償還及びボーナス償還併用で、繰り上げ償還も可能である。

(5) 2008年度の特徴
 ①申し込み時に、住宅の設計図か業者の見積書の提出を求めた。②前年の源泉徴収票の提出を求めた。③融資額の限度額は、一棟につき、1,500万円以内とした。

(6) 2008年度の募集方法
 ①5月に、市の広報及びホームページとチラシで周知。②受付期間は、5月8日(木)から21日(水)まで。③抽選会を、5月26日(月)に開催した。

3. 勤労者生活安定資金融資事業

(1) 事業の概要
 勤労者福祉の向上と、生活の安定に寄与することを目的とし、より豊な生活の形成を促進するため、生活資金の貸付を行う。

(2) 預託金融機関
 中央労働金庫に預託しており、本年度は2,500万円(年度当初、残高が約3,000万なので、2,000万円だけ預託してある)を上限とし、随時預託している。なお、協調倍率は2倍、預託利率は無利息である。

(3) 融資の対象者
① 甲府市内に2年以上住所を有する勤労者。②申込日現在において、勤務する事務所に引き続いて1年以上勤務している者。

(4) 融資の条件
 融資額は、最高100万円(但し、教育資金は200万円以内(8年返済))で、5年以内(60回払い以内)の元利均等払い及びボーナス併用が可能。

(5) 2008年度の特徴
 貸付の利率は、医療が1.7%(昨年度同率)、教育が1.7%(昨年度同率)、その他の一般が1.9%(昨年度も同率)である。(医療は介護も含む。)
 なお、一般の自動車購入資金は、貸付限度額を200万円とした。

(6) その他
① 2005年6月から土・日(am10:00~pm5:00)も融資の相談が中央労働金庫1階の「ローンセンター」(火・水休み)でも可能となった。
② 会員の保証料は、0.7%となっているが、これは中央労働金庫に出資している労働組合の組合員に適用される。
 ※住宅資金及び、生活安定資金とも(社)日本労働者信用基金協会が保証をしている。
  なお、融資の返済が焦げ付いた場合には、中央労働金庫が、代位弁済請求を行い、認められると残高(原資と利息の一部)が保障される。

4. 雇用対策事業(シルバー人材センターへの支援)

(1) 事業の概要
 高齢化社会を迎え、その対策の一環として、高齢者が就業を通して社会参加することにより、自らの生きがいの充実や追加的な収入を得るために実施する、同センターの事業に対する運営管理を支援した。
(2) 設立場所:甲府市幸町14-6
(3) 設立年月日:1981年4月21日
(4) 会員数:2007年度は617人(男;444人・女;173人、平均年齢;71歳)
(5) 受注件数:4.550件(前年比較で+1.45%)
(6) 受注内容:技能(大工、塗装、表具、植木等)、軽作業(清掃、除草等)、管理(駐車場管理等)が主立ったものであり、全体の約90%を占めている。
(7) 契約額:209,097,933円(前年比較で-3.24%)
(8) 会員の条件:甲府市に居住し、概ね60歳以上の者で、健康で臨時的、短期的な就業を通じて自己の就業能力を活用し、それによって自らの生きがいの充実や社会参加を希望する者であること。(※年会費2千円)
(9) 就業率:77.6%(前年比較で-4.1%)
(10) 事務局体制:6人(事務局長;嘱託職員1人、プロパー職員;3人、嘱託職員;2人)
(11) 2008年度予算について(事業活動収支予算)



5. (財)甲府市勤労者福祉サービスセンター推進事業

(1) 事業の概要
 甲府市内にある中小企業の事業主と、そこで働く勤労者の福利厚生事業を推進するため、同センターの運営管理を支援した。また、同センターでは、会員とその家族を対象に、福利厚生、生活安定などの各種事業を実施するとともに、会員の加入促進に努めた。
(2) 設立年月日:2000年7月
(3) 設立の趣旨:甲府市内の中小企業の事業主とそこに働く従業員の福利厚生を推進する総合的な勤労者福祉事業である。
(4) 2007年度の事業内容
 ① 共済金給付事業(会員にお祝い、お見舞いなどの給付事由が発生した場合の給付金)
 ② 人間ドック受診事業
 ③ 旅行補助事業。
 ④ 生活資金融資斡旋事業
 ⑤ 自己啓発事業(教養を深めたり、資格などを取得したいと希望する会員が、NHK学園通信講座、山梨文化学園講座、健康料理教室等を受講する場合に、受講料の一部の助成等)
 ⑥ 健康クラブの利用券斡旋事業
 ⑦ その他として、余暇活動事業(年5回)、チケット等(音楽・観劇入場券の低廉な提供)斡旋、映画鑑賞の補助、会報(年6回)の発行、ホームページでの実施事業・給付内容等の情報提供。
(5) 会費等について(入会金は会員1人につき100円、会費は会員1人につき、月500円であり、入会金は事業主負担とし、会費は制度の趣旨から原則事業主が2分の1以上負担するものとする。)
(6) 会員数の推移



(7) 2008年度の収支予算について



(8) 職員体制 4人(事務局長1人……嘱託職員、事務局次長……市派遣職員、加入促進嘱託職員1人、臨時職員1人)
(9) 甲府市からの2008年度補助金(運営費補助金)について、



(10) 指定管理業務について
・指定管理料 10,075千円 ・人員 2人

6. その他の主な労働福祉事業

(1) 勤労者「海の家」「山の家」開設事業
① 事業の目的
  甲府市内在住の中小企業に働く勤労者とその家族が、夏の余暇利用と健康増進を図ると共に、勤労者が相互に親睦を深め、明日への活力を生み出すこととしている。
② 抽選会 6月26日(水)午後6時30分~ 甲府市総合市民会館
 約150家族の参加

(2) 市民いこいの里施設管理事業
① 事業の目的
  甲府市民と勤労者の健康管理と相互の親睦を図ることを目的として設置した施設として、1976年4月に甲府市黒平町に開設され(土地;10,177.07m2……約3,072坪、建物;259.0m2……78.2坪)、レクリェーション活動、グループ活動、家族の慰安等多くの利用者に親しまれ、利用されている。
② 施設の概要
  レストハウス、キャンプ場、テニスコート(1面)、バーベキュー施設(3炉)、自由広場、遊具などがあり、駐車場も完備している。※(炊事用具は、完備しているが自炊である。)
③ 開設期間 毎年4月1日から11月末日まで。
④ 利用実績

(3) 勤労者福祉センター施設管理事業
① 勤労者の福祉増進と文化の向上を図り、より豊かな生活を促進するため、各種の会議、教養、サークル活動、レクリェーション活動など相互交流の拠点施設として、1981年8月1日(26年目)に、甲府市朝気2丁目2番22号に開設された。敷地面積は、4,554.46m2(約1,375坪)、延床面積は1,424.58m2(約430坪)である。
② 年度別の利用実績
 ア 免除団体 甲府市、甲府市各行政委員会、甲府市社会福祉事業団ほか
 イ 減額(大ホール)全面を使用しない場合適用
③ 指定管理業務について
  指定管理料 10,075千円  人員 2人

(4) スポーツ大会の開催
① 事業の概要
  スポーツを愛好する勤労者に交流試合の場を提供し、親睦を図り、健康増進、積極的な余暇利用の促進、余暇と労働の調和の取れた「ゆとりと豊かさを実感できる社会作り」を目的に、連合山梨甲府地区協議会、(社)山梨県労働者福祉協会、甲府市勤労者福祉協議会、甲府市の4者で構成している実行委員会が主催し、40年以上の歴史を持つ大会である。
② 2007年度甲府市勤労者球技大会各種実施競技結果
 ア 第16回甲府市勤労者グラウンドゴルフ大会  2007年10月14日(日)
 イ 第23回甲府市勤労者硬式テニス大会     2007年10月14日(日)
 *9月30日開催予定であったが、雨天のため10月14日に順延となった。ここ数年参加チームが少ないので、事業実施について検討が必要である。
 ウ 第38回甲府市勤労者バドミントン大会    2007年2月3日(日)
 エ 第48回甲府市勤労者卓球大会        2007年2月3日(日)
  *当日は、雪にも関らず昨年度を上回るチーム数及び参加者があり、盛大に大会が行われた。来年度については、参加者からの意見・要望等を踏まえ、多数のゲームが行えるよう会場の検討が必要である。

(5) 中小企業退職金共済掛金補助事業
① 目 的
  この事業は、中小企業の従業員の福祉の増進及び中小企業の振興に資するため、中小企業退職金共済法に基づく勤労者退職金共済機構が実施する退職金共済制度及び所得税法施行令の規定により、特定退職金共済団体の承認を受けた甲府商工会議所と退職金共済契約を締結する中小企業者に対して、共済金の一部を補助することとし、1972年から実施している。毎年1月1日から同年12月31日までの間の共済契約者が納付した共済掛金に対して機構等から退職金を受給すべき従業員1人につき、補助を行う。
② 補助概要
※2005年度までは、
・初年度は、月額15%(180円)を補助していた。
・次年度は、月額10%(120円)を補助していた。
  2006年度からは、①月額2,000円を限度に初年時は15%(300円)、2年次は10%(200円)の補助を行い、②月額1,000円までは初年時は15%(150円)、2年次は10%(100円)の補助を行うことに改正した。(予算額は43.7%アップの1,914千円とした。)
③ 補助実績



(6) 中巨摩地区広域事務組合への負担金
① 負担金の概要
  1975年に竜王町、田富町、昭和町、玉穂町、八田村、白根町、芦安村、若草町、櫛形町、甲西町の11町村(現在(2008年度当初)は、南アルプス市、甲斐市、中央市、昭和町、市川三郷町、増穂町、鰍沢町の3市4町となっている。)がごみ・し尿等の共同処理をするため広域組合を設立した。
  その後、1979年~1981年にかけ文化・学習活動・レクリェーション活動等のため峡中地方勤労青年センター(研修棟、体育館、グランド、テニスコート等の施設)を建設した際に甲府市の南部地域(大里地区、国母地区、山城地区)においてこれらの施設が不足していたため、事務組合内のこれらの施設を上記地域の住民が利用するにあたって甲府市と組合で協定を結び、管理運営に係わる負担金を支出してきたものである。
② 1986年4月締結の協定書(勤労青年センターの管理運営費)による甲府市の負担金の算出については次のとおりとなっている。
  ・均等割……30% ・人口割……30%(甲府市は上記の地区の人口で算出)
  ・距離割……40%(甲府市は大里町3,080番地からセンターまでの4キロメートルで算出)
  ※協定期間は、締結の日から5年間有効
③ 甲府市の年度別の利用状況及び負担金

(7) 若年者就業支援事業
① この事業の経過は、次のとおりである。
  ニート並びにフリーター対策として、2006年度にハローワークの協力を得て、「ハローワーク甲府プラザ」内に、「若年者就職支援相談コーナー」を設置した。
  しかしながら、雇用・派遣契約のない職員を事実上、派遣労働者として扱い、本来のハローワーク職員が行うべき職務をさせていたことから問題となり、2006年度をもって終了した。
  2007年度は、キャリア教育の試行を甲府市立甲府商科専門学校で行った。また、甲府商工会議所と連携し、独自のインターンシップ事業を実施した。
  ※2008年度に行っている事業は次のとおり
 ア キャリア教育への支援     イ インターンシップ事業の実施
 ウ 企業ガイダンスへの補助    エ 若者サポートガイドブックの作成と配布

(8) 労働相談室、社会保険労務士による相談業務
① 労働相談室について
 ア 目的…………勤労市民が抱えている労働問題全般にわたる相談、助言、指導を行い、勤労市民の生活向上に資することを目的とし、1988年に開設。
 イ 相談内容……a 就業規則、労働契約、賃金、労働時間、安全衛生、解雇、退職労働条件等に関すること
         b 結成、労働契約、不当労働行為等労働組合に関すること。
         c 雇用保険、労災保険、厚生施設等福利厚生に関すること。
 ウ 相談日………毎週木曜日の午後5時~8時迄
         第1日曜日の午前9時~12時迄
 エ 相談員………1人
 オ 相談場所……毎週木曜日「勤労者福祉センター」第1日曜日「甲府市役所談話室「わ」
  カ 相談実績(件数)
  ※なお、従来からの「広報こうふ」及び甲府市ホームページへの掲載の外、PRの強化(チラシを本庁舎1号館ロビー、国保年金課窓口、本庁舎3号館の市民税課窓口及び9ヶ所の公民館に配布)を図っている。また2005年5月からはメールでの受付けも始めた。
 キ 出前労働相談の実施(2007年度から実施)
   2008年度は、夏季が西公民館で、冬季は南西公民館で開催
  a 2007年度の相談内容について


  b 年齢別・男女別の内訳

  c 2007年度の相談内容について

  d 2007年度出前労働相談

  e 年齢別・男女別の内訳

② 社会保険労務士による無料相談事業
 ア 目的……労働・年金問題(年金、健康保険、解雇、賃金不払い、退職金、セクハラ、
人事、配置転換、労働契約、労働時間、休日、休暇、労働災害)等に関する相談に対応するため、2003年10月26日に開設した。
 イ 相談員……山梨県社会保険労務士会より、2人の相談員が派遣され、対応している。
 ウ 相談日…毎月第2・第4日曜日の午前10時~午後4時迄。
 エ 相談場所……こうふアルジャン4F(旧トポスビル)
 オ 年度の相談実績は次のとおりである。
 カ 相談内容

※2008年度の相談月別件数