【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅰ統合分科会 地域の公共の力を探求する |
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1. はじめに 現在国は、地方分権改革推進委員会において、「国から都道府県へ・都道府県から市町村へ」の権限移譲の議論を進めており、「分権改革」「道州制」「市町村合併」が関連付けされながら進められている。そのような状況で北海道においても、現在道州制と併せ地域のことは地域で決めることができる「地域主権型社会」を目指しており、その一環として地方自治法に基づく条例による事務処理の特例制度(地方分権一括法により創設)を活用し、国が進める地方分権改革を先取りした権限移譲を2006年度より進めている。 2. アンケート項目について |
Ⅰ 権限移譲までの経過について ①検討のキッカケ ②担当課での検討状況 ③職員への理解や移譲に係る準備 Ⅱ 移譲された権限の行使状況 ①項目数 ②行使回数 Ⅲ 現状と課題について ①権限移譲のメリット&デメリット ②今後移譲が必要と思われる項目 ③権限移譲における率直な考え方 |
項目数は敢えて少なくしつつ、別途考え方のヒントを示しながら自由記入をメインにするようにした(実のところ回答内容についてはある程度予想されたが…)。結果については道のフォローアップ報告書と付け合わせることとした。
3. 多くの権限を受けている町担当者の見解 アンケートとは別に、町村では全道で一番権限移譲を受けている新ひだか町について、移譲に係る窓口である企画課担当者(前書記長)に全庁舎的な状況や今後の課題を伺ったところ、次のとおり本音ともいえる率直な見解が出された。 |
★町長のトップダウンにより移譲を積極的に受けていくこととなったが、実際には課長職の考え方に温度差があり、そのことが受ける項目数の課ごとの差異につながっている。基礎自治体として本当に必要な権限と思われるものを移譲できた訳ではない。 ★多くの権限移譲を受けているが、他町が受け入れていつつも当町では受けていないものもある。例えば農地法関係は開発行為が多い地域事情を勘案し、敢えて移譲を受けていない。町とは一段違う立場での判断を道に求めている。 ★浄化槽(単独・合併)保守点検関係等、道が地域実情(対象数や町の業務体制)を考えず一方的に下してくる事例がある。担当課では本来受けたくても、町の体制がとれないことで再検討のうえ断念したものもある。 ★パスポート発給については、当初総合支所での発給ができず、一部住民について支障が出た。現在は総合支所でも発給しているが、事務量自体は総体として若干重みを感じている。権限移譲後は当町住民分は当町のみが発給できる制度となっているため、当町だけではなく道のパスポートセンター(札幌)でも発給ができるようなシステムが望ましい。これは札幌へ就学している子どもが住民票を移していない実態による。 ★道は事例自体が少ない権限を町村へ積極的に移譲しようとしており、当町も「少ないなら」という観点で受け入れているものもあるが、実際に権限を行使する事例が発生した場合に町としての判断材料やノウハウが乏しく、正しい権限行使に不安がある。道によるフォローアップについても不透明な要素が多い。特に町村・道双方ともに担当者が異動した際のリスクにどう対処するか。職員研修を強化したとしても結果として判断の遅れや誤った対応につながってしまう可能性は否定できない。また、権限について関連業者が関わってくる場合は、「業者におんぶに抱っこ」という事態がやむをえず発生してしまう可能性がある。 ★2006年に多くの権限移譲を受けた際は、同時に行われた2町合併の関係もあり若干のハレーションもあったが、多くの権限は事例が少ないこともあり大きな混乱を招くには至らなかった。移譲については一段落したと考えている。 ★道より交付金措置がされているが、単純に「1回の事務×時間×単価」のような考え方を中心として算定されており、権限によっては町の業務執行上の実情に合っているとは言えない。特にパスポート発給は顕著である。 ★実際に移譲を受けた権限についての検証はどこかの段階で必要である。特に人員数も減らされてきているなかで引き続き対応しきれるのか。 ★現在の道の移譲メニューにない権限で移譲を希望するものを各課に対して募ってもなかなか出てこない。職員数を減らされ職場状況が厳しくなるなか、各課ともすでに受けた権限について手一杯・手探りの状態ではないか。 |
4. 道による前述の町へのインタビュー骨子 |
【町長】 ★2町合併を機に職員力も強まることから、将来の自分の町の姿を想定して必要なものは積極的に受け入れることとした。 ★受け入れた権限については、実際に役場内で精査して「この程度なら受けられる」という判断をした。 ★職員もいろいろと仕事を覚えて対応する必要性から、視野を広く持つなど意識改革という面ではプラスになったと考える。 ★他市町村ともう少し足並みを揃えるべき。特別交付税など優遇策があれば。 ★産業振興や住民福祉の向上などに関して、私たちの手元で決裁や対応できる権限は数多く移譲を受けたい。「住民あっての町行政」が第一である。 ★当町は管内でリーダーシップを取るべきまちであろうと思っており、そういう意味でも積極的に権限移譲を進めていきたい。 【担当部局】 ★パスポート以外は少件数で、メリット・デメリットが現段階で具体的に出ていない。 ★職員には事務量の増が先行的な負担感につながった面もあるが、「住民サービス向上のために」話し合い、理解を得た上で権限を受けてきた。 ★パスポートについては昨年約300件の実績があり、大きなメリットがあったと考えるが、「道のパスポートセンター(札幌)でも発給を受けられるようにしてほしい」という声はある。 ★真の意味で地域に密着した権限の移譲を進めるべきだと思うが、「何が本当に地域に密着した権限で市町村がやるべきなのか」という点を道と市町村とでもう少し議論しながら進めていくべきと考える。 |
道によるインタビュー内容と担当者の率直な見解にはやはりというべきか若干の乖離が存在するようである。「合併を機に職員力も強まることから必要なものは積極的に受け入れる」という点と、「受け入れた権限については『この程度なら受けられる』という判断をした」という点は、ともすると相反する内容と受け止められる。 5. アンケート結果について (1) 権限移譲までの経過について (2) 移譲された権限の行使状況
(3) 現状と課題について 6. まとめ 全国すべての都府県で北海道と同様の特例条例による権限移譲が行われており、一部では合意形成のないままの移譲が進められていることを考えると、道が進める「手挙げ方式」は一方的とは言えないものの、市町村に対する「打診」の現状からすると今後の移譲の進め方に注目していく必要がある。 |