【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅰ統合分科会 地域の公共の力を探求する

市民と公共サービスの協働
市民に求められること……私たちにできること

北海道本部/自治労札幌市役所労働組合連合会・自治研推進部 鈴木 惠子

1. 札幌市役所自治研推進部とは……

 札幌市職員の現業職で作る札幌市役所労働組合の専門部の1つです。他には企画組織部、労働安全対策部、調査賃金部、青年女性部があり、それぞれ独自の活動をしています。自治研推進部は本部の役員8人で構成されていますが、3支部1部会(教育委員会支部・清掃支部・建設支部・校務助手部会)に自治研推進委員会等があります。各支部・部会より代表2人が本部自治研部員となり、年間活動方針を提案し、市役所労働組合(以下、市労)の全体の取り組みになるように活動計画を組み立てていきます。本部自治研部員8人、各支部・部会の自治研委員総勢58人の部員からなっており、各職場、地域で活動しています。


2. 自治研って何?

 自治研運動は、市民自治の確立と民主的な地方自治を確立するための自治労運動の1つです。大きく分けて、以下の2つがあります。

(1) 職場での活動
 1つ目は、その自治体の公務員としての立場(視線)から
 2つ目は、その自治体の一市民としての立場(視線)から
 3つ目は、その自治体の労働組合の組合員としての立場(視線)から、私たち自治体で働く者の本来の仕事はどうあるべきかを考え、市民の視線に立ち、より良い公共サービスのあり方を考え、これを模索・研究・行動(実践)していく運動です。

(2) その地域での活動
 その地域に於ける問題点(ごみの問題から、冬期間の除雪や環境問題等)を市民団体や住民の皆さんと協議し、解決策を考え、行動(実践)していくことを運動の柱としています。


3. 実際には何しているの?

 私たちの職場は、札幌市内のいたるところにあります。
 市立保育園、市立小・中・高校の用務員、給食調理員、学校業務員、動物園、各区の土木センター、下水処理場、水再生プラザ、斎場、ごみを収集する清掃事務所、清掃工場等々、市民の皆さんと直接関わりのある職場です。
 私たちはこの独自性と、その職務上、市民の皆さんとの深い関わりを生かし、住環境、自然環境、都市環境など職場で考えられる様々な問題を市民グループの方々と直接関わり合いながら、札幌市の明るい未来へと向け日々取り組んでおります。
 以下に、自治研推進部の一年間(2007年11月~2008年10月)の取り組みを紹介いたします。


(1) 除雪ボランティア

 社会福祉協議会へボランティア登録をし、除雪に参加・協力できる組合員を募集します。他のボランティア団体もいるので、市労には平均で5、6世帯位からの要請があります。2月中旬~3月初旬にかけて、市内の高齢者世帯で除雪が困難な方や一人暮らしで身体の不自由な方等の自宅へ行き、予め社会福祉協議会から聞いていた除雪箇所を1世帯あたりに7~8人が集まり、協力し合い、除雪を行います。その中で、家庭でのごみの搬出等で困っていることや私たち現業職員に対する要望を聞くように市民対話を心がけています。
 今年度は2月16日に東区で1世帯(除雪参加者は7人)、2月23日は西区で3世帯(除雪参加者は22人)、3月1日は東区と西区で各1世帯(除雪参加者は東区7人、西区7人)、1世帯あたり30分から1時間をかけて、除雪申込み者の希望に添えるように作業を進めていきます。
 市労全体の取り組みを自治研推進部が中心になり、各支部に除雪ボランティア募集の呼びかけをしたところ、36人の方々からの申込みがありました。多くの市労組合員の協力があり、今年度の除雪ボランティアが無事に終了しました。

(2) 琴似発寒川の清掃ボランティア
 春・秋の年2回(5月と9月)市内西区の連合町内会の皆さんと一緒に琴似発寒川の寒月橋~八軒橋までの1.2㎞の河川敷に沿ってごみを拾いながら歩きます。
 この取り組みも今年で5年目になります。
 西区役所の地域振興課が中心となり、1990年から各連合町内会の他、札幌土木現業所・西清掃事務所の方などが参加しています。発寒の他、山の手、琴似、八軒、西野、西町11連合町内会、総勢2,000人規模の大きな取り組みです。
 今年は5月17日(土)、市労からは自治研部員を中心に60人の組合員が参加し、市民の皆さんとの協働作業に心地良い汗を流しました。


(3) スクールフェスティバル
 1996年1月に学校開放イベント「いいんでないかい 昔の遊び」を始めたのが現在のスクールフェスティバルです。
 1994年に従来、委員会組織だった「自治研推進委員会」を専門部へと昇格させ、職場活性化や市民アピールの更なる充実を図ってきた中から議論が始まり、1996年の学校開放に繋がったものです。市内手稲区の小学校を会場に、地域の連合町内会をはじめ、老人クラブの皆さんの協力のもと、かまくらを作っておしるこを提供したり、雪のグラウンドでの凧揚げや体育館ではお手玉・おはじき等の昔遊びを一緒に楽しみました。
 1997年の夏休み期間中に、市内清田区の小学校を会場に2回目の学校開放イベントを開催し、その中では学校給食の提供をしました。市民の皆さんに「安全で安心な学校給食」を試食していただき、学校給食に対する理解と今後のあり方を考えていこうというものです。
 「夏だ まつりだ 学校だ」と題して開催したのが、現在のスクールフェスティバルの原型です。
 その後、清掃職場のリサイクルの広報活動やごみの分別パネルの展示、グラウンドに於いて、ごみ収集車に模擬ごみ袋を入れる体験を企画し、冬に大活躍する除雪車の展示と記念写真撮影、円山動物園からのミニ動物の出張(ふれあい動物)等を行い、少しずつ新たな企画を加えて開催してきました。また、むかし遊びの他にペットボトルロケットの作成や給食から出た廃食油を利用したリサイクル石けん作りは人気コーナーになりました。毎回200~300人の方々が参加し、地域の皆さんに大変喜んでいただき、高い評価を得ています。唯一の公共施設である学校を会場に毎年夏に開催されるスクールフェスティバルの立案、計画、実行運営を本部・各支部・部会・青年女性部と連携を取りながら、自治研推進部員が中心になり進めています。本市職員としての意識啓発を前提に、地域住民との交流を通して、自らの職務・職責を見直す機会と位置付けて、私たちの仕事をアピールし、直営の必要性をも理解してもらえるようにとの主旨で始めたスクールフェスティバルも今年は10回目になります。
 前年度(2007.7.28)第9回スクールフェスティバルの報告を(市労組合員に配布した情報紙)資料として添付します。(資料1を参照)
 今年度は、7月27日(日)に札幌市白石区の上白石小学校で開催。
 開催までには、およそ半年間の準備期間を要します。
 開催に向けて
① 開催校の決定
 ア 学校職場に働く市労組合員(給食調理員・学校用務員・業務員)の理解と協力を得る。(最初に開催予定校に働く職員の了解を得ることにより、その後の交渉がスムーズに進められます)
 イ 学校側の理解と了承を得る。
 ウ 市労本部・支部の了解を得る。(スクールフェスティバルを行うことは早い段階で提案するが、開催予定校が決まったら新たに報告する。)
② 必要書類の提出(開催校、市教委、各関係機関)
③ 書類の確認
④ 協力機関に要請文を提出する。
 市労の場合は、環境局清掃事業部業務課にごみ収集車、建設局雪対策室に除雪車、動物園にはミニ動物の出張を要請しました。(清掃業務員も動物園の飼育員も市労の組合員)
 このような段階を経て、当日まで何度も打ち合わせをして準備をしていきます。

4. 自治労水週間

 自治労の水週間に合わせ、8月の第一土曜日に、市労水週間のイベントをします。私たちが毎日飲んでいる水の誕生から、それを育む森林の役割を通して、水の大切さを広く市民に理解していただこうと「奥定山渓 森と水の学習会」を開催してきました。
 募集して呼びかけた一般市民と組合員とで奥定山渓へ行き、自然に触れながら樹木や水の大切さを学びます。毎回40人ほどが参加し、今年は6回目になります。普段は立ち入ることができない場所を北海道森林管理局の職員、石狩森林環境保全ふれあいセンターの職員に案内して頂き、迷い沢に流れている小川の水量を測定しました。わずか水深15センチ、川幅は2メートルほどですが、一日に約54万リットルの水が流れていることになり、この小川だけで一日1万8,000人分の水を供給してくれることになります。当たり前のように考えていた「飲み水」の大切さを限りある資源なのだと改めて市民と共に学びました。最後には、参加者が自ら摘んだ笹の葉で手作りの笹茶を試飲して自然を満喫し、森林浴を楽しみました。


5. 円山動物園の裏側探検

 秋の動物愛護週間に合わせて、2006年度に1回目の裏側探検を行い、昨春に2回目を開催しました。市民(参加者)に、市労の組合員である飼育員が、動物の生態や飼育員としての役割等の学習会をし、その後動物園の裏側を案内して、動物たちの実態を紹介・説明します。稀少動物の種の保存や自然環境の変化による野生動物への影響などを調査・研究し、自然保護等の仕事もしています。
 普段は見ることも入ることも出来ない動物園の裏側は未知の世界で、とても興味深い場所です。見慣れている動物園を裏側(バックヤード)から見られるこの企画は、とても新鮮で、満足度は120パーセントです。私たちが企画した裏側探検は予想以上に参加者に大好評でした。
 今回の第32回地方自治研究全国集会でもオプショナルツアーで、「円山動物園の裏側探検・ドキドキ体験」として、参加者を募集しています。

◎ 自治研推進部のその他の活動は、市労のホームページを担当し、定期的に更新しています。
◎ 市労組合員向けに、「自治研ニュース」を発行し、活動報告をしています。さらに今年度は市民向けの教宣紙「市労自治研便り」&「とらいあんぐる」2号を発行しました。以前は給食支部の調理員が自分たちの職場紹介と「安全で安心な学校給食」をPRするために「学校給食ニュース」を20号まで発行して来ました。
 2005年度の支部統合により、教育委員会支部として(学校用務員・給食調理員・業務員)同じ学校職場ですが、異なる3つの職種を結んで「とらいあんぐる」と名称を変えました。市労で唯一の市民向け教宣紙です。
資料2を参照)

資料1 市労自治研便り

資料2 「とらいあんぐる」(旧学校給食ニュース)第1号