【要請レポート】自治研活動部門奨励賞 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅱ-①分科会 子育て支援と児童虐待 |
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1. はじめに 八王子市の次世代育成支援対策推進法による行動計画(八王子市子ども育成計画)は、2005年3月に策定されました。この計画は、これまで市が重視してきた乳幼児の相談と乳幼児保育という狭い視点から大きく転換し、子どもの自ら育つ力を大切に、市民、学校、企業、行政などが協働して18歳未満の子どもの育ちと育成支援の総合的な体制の確立、推進を目的とした総合的な子ども育成支援計画とすることができました。 |
2. 八王子の地域事情 八王子市は、東京都心から西へ約40km、地形はおおむね盆地状で丘陵地帯に囲まれ緑豊かな中核的都市です。もともとは相次ぐ町村合併で大きくなった市で、一時は70万人都市構想を掲げ、住宅・道路など丘陵を開拓し都市整備を図ってきました。 |
3. これまでの八王子市のこども施策 八王子の子ども施策については、市民から「中心市街地に児童館や学童保育所など子どもの居場所がほしい」「子どもの年齢に関わらず安心して相談できる場所がほしい」など、地域実情に合わせた子ども・家庭支援サービスの充実が求められてきました。しかし、長い間「子育ては、親の責任、家庭の責任」と「子どもの育ち・子育て」に、無関心、住民任せの施策を展開し、市の責任を回避していました。特に、学童保育所事業については、1972年から東京都の独自補助制度を受けて、公設公営11施設を整備した後、市民任せのコミュニティ方式、自主運営の学童クラブ、公設民営の学校方式と一時は四形態にも及ぶ無作為な施策でサービスの格差を生み出していました。バブルを背景とした黒字財政時にも、土地と建物の確保から運営委員会の設置など、住民任せの自主学童クラブの解消を行わず、数少ない公立の児童館や学童保育所を行政改革という名の下に民間委託を画策するという子ども施策に関しては、きわめて消極的なまちづくりをしてきました。そして組合運動も、常に当局と合理化反対闘争を展開し、お互いを信頼するという関係が出来ない状況でした。 |
4. 八王子市職の取り組み (1) 子どもの権利条約の検証と新たな運動展開 (2) 子ども施策充実へ向けた新たな政策提言と組織変更 |
(3) 市職の政策提言「八王子市の子ども施策をダイナミックに」の具現化を目指して |
「公立保育所あり方労使検討会(2003年9月設置)」:2004年12月に公立保育園のあり方検討会のまとめが出され、17園中5ブロックの各地域に2か所ずつ、計10か所の基幹型保育所(地域こども家庭センターとの連携により、通常の保育業務に加えて、療育的な障害児保育や虐待が危惧される家庭の見守り、虐待児の緊急一時保育などの実施)として位置付けていくこととなりました。 |
5. 子育て・子育ち支援と八王子市の次世代育成支援行動計画「八王子市こども育成計画」 2004年10月24日八王子市は、「八王子市子ども家庭支援センター」を、JR八王子駅北口から徒歩3分の中心街にあるクリエイトホール(生涯学習センター)1階情報プラザを改築(一部残)してオープンしました。クリエイトホールは、イベントホール・会議室・図書館のほか、男女共同参画センターなども併設された複合施設として多くの利用者があるところです。 |
6. 子どもに手の届く八王子の子ども・家庭支援を目指して 子どもの問題は、子どもが事件に巻き込まれる・事件を起こす、児童虐待、いじめ、不登校、引きこもり、学校・社会への不適応、社会への関心の希薄化、コミュニケーション能力(対人関係を築く力)の低下、摂食障害、非行・性の乱れなど、子どもの育ちが脅かされ深刻な状況で、子ども支援に求められる領域も多岐に渡っています。 次に、児童館では、中高生年齢に力を入れ、居場所づくりや体験活動などの支援を行っています。特に、中学生という年齢は思春期の只中にいて関わり方が難しくなります。子どもは、10歳を過ぎると第二次成長期(性徴の段階でホルモンがアンバランスになる)で思春期に入り、脳の仕組みが大きく変化するときだと言われています。その反面、情緒的・理性的にとても飛躍する年代で自立に向けて大切な時期です。ところが児童館で出会う思春期の子どもたちの中には、幼少よりの育ちが上手くいかない子どもがいます。体は大きくなっても幼児の幼さで、大人に対しての反抗や物を壊すなどの行動を示すことがあります。口も力も達者な分、関わり方にはスキルが必要です。心が満たされない子どもたちは、大きくなればなるほど回復の時間も育った年齢分必要となってきます。このように、子どもたちが社会へ自立をしていくために必要な、自分が自分でいいんだという「自尊心」は、幼少の頃からの成長の中で培われていくものです。家庭環境や幼少期の虐待などが要因で、思春期になるまでの成長期間に充分この機会が与えられなかった場合は、社会への適応に欠けていきます。そして、表面的に子どもを捉えて対処すると、余計に悪い方向へ向き、解決の糸口を見つけられないまま放置してしまうこともあります。 次に、公立保育所ですが、現在、八王子市内には私立と公立を合わせて82の保育園があります。そのうち80%を超える65園が私立保育園です。こうした中で、公立保育園の果たす役割は何か模索をしてきました。そして、現在、公立保育園ではすべての家庭に対する子育て支援を視野に入れ、従来の保育サービスに加え、障害児保育の充実や家庭福祉員/保育ママ(保育士などの資格を持った人がそれぞれの自宅などにおいて子どもの預かり)の支援のほか、子ども家庭支援センターと連携しながら被虐待児などの要保護児童の緊急一時保育などを行っています。 このように、新たに作った様々な仕組みは、子どもを含めた市民のための機関として機能しています。これからさらに、この仕組みを充実させていくには、労使協議だけではつくれません。子ども・家庭支援のためのネットワークの拡大、支援者のスキルアップ、緊急対応が出来るシェルターも含めた居場所の確保、生活福祉支援、メンタルサポートなどまちぐるみで取り組む必要があります。今、少しずつですが、地域で暮らす子どもが安心して地域で暮らすために、子ども家庭支援センター(地域子ども家庭支援センター含む)の強化、地域で子どもを支える支援者要請(研修養成も含め)、行政職員の事務担当含めた子ども支援に関するスキルアップ研修制度(子ども支援ワーカーの養成)の充実など、労使の枠を超え様々な取り組みを行っています。 |
(資料3)八王子子ども家庭支援ネットワーク |