【要請レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-①分科会 子育て支援と児童虐待

十勝地方本部保育集会シンポジウム
「地域で支える子どもと家族」

北海道本部/十勝地方本部・社会福祉評議会

 2008年7月26日、自治労十勝地方本部社会福祉評議会は、保育集会を開催し、「地域で支える子どもと家族」と題してシンポジウムを行いました。
 対応困難な親に対するアプローチをどうしていくのか。また、「気になる子」の発見と、保育所の役割、障害児を持つ親の支援はどうあるべきかが話されました。そのなかで、保育士は、子どもの発達について、保護者にどう説明できるか、保健センターなどとの連携の重要性が強調されています。ここでは、それぞれの立場の発言を踏まえ、連携の課題を明らかにします。

■シンポジスト
進  行 佐々木浩治さん(足寄町福祉課福祉室福祉担当主査)行政と療育の立場から
パネラー 瀬戸 典仁さん(帯広児童相談所)児童相談所の立場から
     畠山八重子さん(中札内村子育て支援センター)子育て支援担当者の立場から
     水野 弘子さん(幕別町保健課健康推進係主査)保健師の立場から

1. 対応困難の「困難性」という概念と言葉の意味について

○瀬戸さん
 私たちが一番困るのは、虐待通告があり、訪問すると、児童が怪我とかしている場合です。多くは親御さんが虐待の事実を認めようとしません。職権によって一時保護できますが、その場合、親御さんは昼夜時間を問わず、児童相談所に怒鳴り込んできます。虐待をする親御さんは大抵の場合、たたいた事実は認めますが、「しつけだ」「子どもが悪いから」と責任転嫁してきます。
 お子さんのなかには、発達障害や知的障害などがあり、関わりづらいお子さんだったのかも知れません。親御さんも困っているという状況のなかでどのように対応していくかということを、大変苦労してきた部分と感じています。
○畠山さん
 例えば親にしても子どもにしても向かい合ったときに、何かができるとかできないとかということで、できない子だから困難な子だとか、できない親だから困難な親だという考えはもっていません。それがわかったことはいいことだと思います。対応の仕方がわかるからです。
 しかし、その家族にある背景だとか、色々なことへの親の気持ちだとか、そういうものがわからないケースに関してはすごく難しい。自分のなかで解決できない、あるいは相手に伝えたとしても理解してもらえない、そんなケースが困難だと思います。
○水野さん
 発達障害のあるお子さんの親御さんにも何か問題があることが多いので、親御さんに色々な話しを聞きだそうと色々聞いても、こちらの質問の意図とすることを答えてくれない。自分の事で精一杯という親御さんと出会ったときに、この子のことをどのように伝えよう、この子を伸ばすためにどのように導いていこうかと考えたときに、親と相談する上でこの先どうしようか、という話が通じないときに困難さを感じます。

 以上のように、一般的に「困難」という言葉に対して、それぞれの立場から様々なとらえ方が生まれています。「困難」という言葉は、安易に使うと危険性を伴い、また、自分が理解できないこと、うまく受け止められないこと、伝わらないことを困難という表現をしてしまうことがあることがわかります。
 例えば、発達障害にお子さんの家族性があって非常に似た気質をもつ親御さんが非常に多い、アスペルガーのお子さんの親のどちらかの方がアスペルガーっぽい反応をしているひとが非常に多いです。その時に保育士、保健師の話が上手く通じない、違った意味で逆ギレされて伝わっていくことがあります。
 困難という言葉の内容によって、介入の仕方が全然違ってきます。もし自分たちが困っているのであれば自分たちの選択肢を増やしていかなければならないのです。困難というのは、職員にとって困難という場合が非常に多いと感じます。

2. 地域における「困難」事例について

○瀬戸さん
 保育士や学校の先生によく聞かれるのは、「この子どもたちとどう関わっていいのか、教えてください」と言われます。しかし、児童相談所職員は、巡回相談に行っても、ものの1時間です。常日頃関わっている保育士さんの方がお子さんの状態についてよく知っていると思います。ただそのなかには、「お母さんが保育所にお迎えにきてもぜんぜん話をしてくれない」「おはようございますも言わない」という状況があります。お子さんの発達のなかで、お子さんの生育歴、お父さんお母さんの生育歴ですね。これをしっかり関係者が把握したなかで関わっていかなければならないと思っています。
 また虐待ケースについては、私は本音で親御さんにぶつかっていきます。ただし、相手の言うことは全部聞きます。相手の気持ちというものをしっかり聞いた上での関わりというものは当然必要になってきます。そういったなかで、やはり何が困難かであるか理解するまでに時間がかかるのが困難であっても、最終的にはどこかで理解してくれると思って仕事をしているわけです。
○畠山さん
 シャッターを閉められないことを一番先に考えます。焦って結論を出すのではなく長く時間をかけて、そのお母さんの本当の気持ちが見えてくることに時間をかけたいと私は思っています。親御さんって結構、最初はかたいのですが、時間をかけていくと、この人は聞いてくれる人、本当に聞いてくれる人だと2回目3回目になると表情もかわってきますし、言えないことを話したとき時に、涙がでてくるときもあります。あとは小さいときから保健師とこの先の連携というのを考えてやっています。
○水野さん
 保健師のところでは大抵健診で関わるケースが多いのですが、お母さん方には「異常があるか無いかの発見の場」として捉えられてしまう傾向があります。あるお母さんは健診にも来なかったり、電話番号を変えたり、訪問に行っても居留守を使う人がいます。役場からは手紙を出したりとかしますが、結局、そのまま保育所に入所し、そこで大変になって、ようやくお母さんと接する機会を持てたことがあります。
 幕別町では、お母さんと信頼関係をなるべくつくった上で、3歳児健診で「もっとこうしたら伸びるよ」という方向性で関わっていきたいということで、赤ちゃん訪問時から信頼関係をつくろうとしています。ことばの教室の先生がすごく親身になって相談に乗ってくれるので、そこで親御さんが変わったりすることがあって、親御さんの表情が落ち着いたということもあります。
 幕別町は、年間200人ちょっとの出生ですが、集団幼稚園や保育所にはいっていないお子さんもおり、学校の就学前健診で発見するケースもあります。その場で発見したお子さんは、後で色々と情報収集して、カンファレンス後、就学健診にかけたりとか、子ども支援ネットワーク会議という小学校教諭、保育士、幼稚園教諭、保健師などで構成する会議がありますので、入学後の対応について検討できる場が、2007年度から整備されています。

 以上の事例からいえるのは、やはり信じ合うということです。それと話を聞き続けるというのは、ベースにはカウンセリングマインドというカウンセリング的な方法を用いて聞き続けて、諦聴するということがあって、それを繰り返していくなかで本人が心を開いてくれることを待つということが、すごく重要なやり方です。また、連携も重要です。私は2歳児健診と3歳児健診にはずっと一緒にいるのですが、保健師に「あの子は心配だから健診のときに様子を見てくださいね」といわれる子に限って当日来ない。なぜ当日来ないのかというと、私たちが考えているのは、きっとお母さん自身もそのつらさを知っていて、そういうことを言われるだろうと思うから来ないと考えます。
 また、連携をどう取るのか、連携を取るのであれば、きちんとその子がどう変わってきたよ、ということを伝えることがすごく重要です。その作業をやり続けているかによって、連携の質も変わってきます。

3. 社会サービスを活用しない家族に対して

○瀬戸さん
 児童相談所に発達相談で来られるお子さん、虐待で来られるお子さんというのは何らかの特性を持っていて親御さんが関わりづらいということが多々見受けられます。最近多いのは小学校、中学校まで全くノーチェックできていて、学校についていけないという相談がありますので、全体ではそれなりの件数があがっていると思います。ですからある程度早い段階でこういったお子さんに対するフォローができる体制が必要です。
○畠山さん
 センターに来られない人には色々な条件があると思われます。私は、健診にも行って、子育て支援センターはこんなところです、ということを説明して声をかけるようにしています。それから支援センターに来ている親のなかで、そのお母さんの友人にお願いしてみます。あと、保健師さんでは健診日に来れない人に別の日に健診を実施して来てもらい、その場に私も行くようにしています。ただ、健診にも来ない、本当に全く知らない人の扉をどう叩くのかは未だに解決していません。
 一事例を話すと、お母さんもどちらかというと人混みが嫌い、お子さんも人混みが嫌いということで、家のなかで閉じこもって子育てをしていた親子がいて、保健師が支援センターを紹介してくれて、午前中はほとんど事業をしているので、事業のない日に支援センターに来てもらい親子支援をやってその子が保育所入所にまでこぎつけた事例があります。
○水野さん
 健診に来て頂ければ、お母さんが恥ずかしくて支援センターに行けないのであれば保健師が同伴して一緒に行ったり、支援センターの先生と保健師が一緒に、一度家庭に訪問してから上手に支援センターへの来所につなげたり、集団のなかで発達をのばすために支援センターが必要だとお母さんが理解したときには、色々な介入の方法があるのですが、まずそこまで行けない家庭が稀にあります。
 大抵そのようなお子さんには問題があったり、お母さん自身に問題があったりするケースで、うまく介入できないことが多いです。ほとんど保育所や幼稚園に入るので保育士さんから情報を頂いて、もう一回健診に行かないかと保育士さんから上手く勧めてもらい、保健師からは何回もアプローチをしてお母さんに対して健診に来て頂くこともあります。

 児童相談所については、その特殊性のため、親御さんの理解が必要です。理解が十分でない場合、行きたくないけど来たとか、困ったことはありますかと聞いても「ありません」では何のために来たのかわからない、という相談もあります。そうならないためにコンセンサスを親御さんときちんと了解のもとでやることが非常に大事です。その糸口になるのが、お子さんの発達をどう親御さんにきちんと伝えられているかということが非常に重要な要素になります。
 子育て支援センターのサービスとか、保育所のサービスを受けたいというのは、その家庭の選択によるものなので、こちらがいくら心配しても、その人やその家庭でその意識がない場合は全く介入のできるものではありません。それを無理矢理に入って行くことで、余計に家庭に混乱が持ち込まれる場合があります。これは介入すべきなのか、見守った方がいいのか、いい意味で時間をかけて、この子は間違いなく保育所に行くだろう、それまで待とうということができるのか、その見極めを子育て支援センターや保健師の人ができるのかということであって、何でも介入すればいいということではないと私は思います。畠山さんの話のとおり扉の叩き方がわからないというのはそのとおりだと思います。叩き方一つ間違ったことで大変になる場合があるわけですから、その思いを持ちながら、できる範囲を積み上げるということが非常に大事です。
 保健師さんは、健診とかの場で、違う介入の仕方があると思いますが、それでも限界があると思います。そのため、良い意味での猶予期間をきちんと置かざるを得ない人もいるということです。それは放任ではなく配慮された猶予期間で、その情報は保育所や子育て支援センター、保健師が内々で情報をきちんと共有し、その親御さんにできる、その年代でできる、アプローチを的確にして頂きたいと思います。そのアプローチに対する親御さんの反応をまた共有するみんなで情報共有するということをしていき、親御さんが思った時期につながれるネットワークをきちんとつくって見守るということが大切です。いつでも相談を受けられる体制をつくっておくことがすごく重要で、良い意味での猶予となります。

4. 気になる子について

○瀬戸さん
 親御さんのなかには、お子さんの発達の過程で「マークに強かった」「文字ばかり知っていた」「ローマ字ばかり知っていた」ということを良いことだと思っていることがあります。人見知りの無い子で育てやすかった、という親御さんもいます。これらは、発達に課題があることなどを親御さんにきちんと伝えますが、ショックを受けて泣き出す親御さんも多くいます。でも、きちんと子どもの状態を理解して頂く部分では、その後のフォローを保育所の先生や保健師さんも含めてやっていきます。そういったところでは各地域の連携、児童相談所と市町村、その市町村と保育所などの連携が必要だと思っています。

 お子さんを見ている専門職でも一番気を付けなければいけないのは、動きの少ないおとなしい子です。多動性の子は間違いなくすぐに見つかります。目立たない子、キュートな笑顔でわかったような笑顔で"うん"と言える子が、「本当にわかった笑顔なのか」「単にうんと反応しているだけの子か」、どれだけ保育士さんたちがプロとして見極められるかということが重要です。
 私の町で保育士によくお願いするのは、先生たちが指示したときにワンテンポ遅れる子です。それはその子が言語を理解して動いているのではなくて、全体の動きにあわせて動いているだけだから、言語理解が高まっているのではない、真似ですから。「みんなでトイレ行って来て」と指示を出したときに行けるのです。一人の時に指示を出したとき行けるか、それはパターンで行っているだけではないか、一人で行くことが全く出来なかったり、手洗いのプロセスをふむことが出来なかったりする子どもたちがなかにいるのですね。その時に一つ一つの行動を集団のなかできちんと見極めることが重要で、懇話会のなかで一番話題になるのはおとなしい子、反応の少ない子です。キュートな笑顔でニコって笑う子たちをどう我々が見極められるかが課題で、それを見たときに保健師さんたちの生育レベルの情報とどうリンクさせられるかということが非常に重要になってきますので、そういう意識を持ってもらいたい。
 小学校1・2年生のときは気付かなくて、大体3・4年生のときが問題の発生してくる時期です。なぜ3・4年で問題発生するかというと、この時期はギャングエイジという徒党を組む時期なのですが、問題のある子は徒党を組めないですよ、関わりが弱くて。ポツンと集団から孤立するとか、うまく仲間に入れないとか、といった問題がでてくる場合がある。その場合に発達障害を持つことが多いので、小学校3・4年生の応用問題が解けないのです。この子はわかっていなかったとその時でてくるのです。ですからこれから気付けなければいけない子は、おとなしい子、わかっていそうな子で早い時期に文字が読める子は気を付けた方が良いです。
 「やあ、この子は文字を読めるんですよね」っていうのですが、「何て書いてあったの」って聞くとわからない。何故かというと文字をセンテンスとして分けられてなく読んでいるだけなのです。「お父さんは会社に行きました」と読んでいて、お父さんどこに行ったのと聞いてもわからない子は「お父さん」「会社」「行きました」というセンテンスに分けられていない。だけど読めている。もしかすると「お父さん」「会」「社に行き」「ました」と子どもが分けていると全然意味がわからないわけです。これは自閉タイプの子に多いので、センテンスに分けられているか、読んでいるだけなのか、確認をしないと「この子、読めるのにね」という話になることが多いです。
 また、そういうことがあることを保育士さんや保健師さんもわかっていて頂かないと、小学校のある程度、中学年になって発見するということになる。発達を見る目がすごく重要であることをご理解頂きたいと思います。

5. なかなか理解してくれない親御さんへのアプローチ

○畠山さん
 私が相談に乗ったときに、その子の状態をお話ししてもお母さんが「そうなのかなあ」という反応があったときには、お母さんに多く話してもらうように心がけています。こちらが話した一言でお母さんの顔色が変わったとき、「あっ、お母さん痛いところを突かれているのだな」「嫌なことを聞かれているのだな」ということで話題を変えます。でも、お母さんの顔色が戻ったり、話に乗ってきたりしたとき、もう一度その話題を振ってみます。その時に1回目と違う反応があるので、そこで一つでも二つでもお母さんが心配に思っていることを話してくれたときが、チャンスなのですが、そのチャンスで一気には行きません。そこで行ってしまうと話が終わってしまうかもしれないので、また少し違う話題をしながら話を続けるように相談のなかではしていますが、そのなかに、この子との関係、この親との関係を自分のなかでエピソードとして貯めています。
 実は、支援センターではパートの方ですが、毎日来所した親子のカンファレンスを帰った後にしています。「この親子はどう見えたとか」「この子はこうだったよね」「あの親こうだったよね」「この前からこう変わってきたよね」ということを全部記録に残しています。エピソードが残っていますので、それを貯めておいて話をするときに、そのエピソードをお母さんに伝えていきます。
 話のなかで、その子のことを話しているけど、さも別の子の話をしているかのように逆に相談をすると話に乗ってくる場合もあるので、話術として使うときもあります。
 また、なかなか理解してくれないときには、長期の目標と短期の目標を立てるようにしています。今、何ができるのか、最終的にどうするのか、という長期と短期の目標を持ちながら関わっていき、チャンスがあるときに伝えていくということと、もし長期にわたってしまった場合も、私のところから出て行くときに言えなかった、保育所を卒業するときにも言えなかったときには、小学校との連携も大事になってくるので、そこは連携といった形でつないでいきます。中札内村にも特別支援連携協議会というものがあって、小学校の先生方と情報交換する場があるので連携しています。
○水野さん
 お母さんが理解できない、理解したくない場合は、連絡が付くならお父さんやお婆ちゃんなど、同居している家族を巻き込んで、その子の状況を伝えてあげるように色々な方法で対応します。

 親御さんは、発達の問題をきちんと伝えるとショックを受けますが、そのお子さんが帰る場所、保育所とか基盤となる施設の先生も、発達状況を親御さんに伝えることを一緒に理解することが必要です。その後、親御さんをどうフォローするかという体制が取れないと児童相談所では話ができません。親御さんを崖から落として終わるわけにはいかないのです。ただ、全く理解してくれない親御さんの話とは少し性質は違います。
 その家族の歴史、ストーリーを共有することが大事なのですね。その家族のストーリーが無いと常に切り取られた関わりになってしまいます。ご家族もその子を育てていく上で、ストーリーを持っていないと、親御さんもずっと関わることができない。そのエピソードが親御さんにとっても楽しいエピソードであり、たくさんの残るような支援ができれば良いなと思います。毎日カンファレンスすることは大変なことですが、共有することが大事で、どなたと話してもその親御さんと関わったときに同じ方向性で話ができるようなラインをきちんとつくっておかないと、連続性に欠けていくことになります。
 「理解していない」というキーワードについて、親御さんが「理解できない」のか、「理解したくない」のか、が大きな差になってきます。理解したくない人にどれだけ話をしても喧嘩をしかけるようなもので、関係はできていかないのです。だから理解したくない人に対しての接するポイントと理解できない人の接し方は全く違うということを一回整理する必要があります。「理解したくない」という人に、その時点での介入の方法だとか、支援の方法だとかを話しても「理解したくない」といっているので喧嘩になるだけです。
 では、どうしたら良いのか。「理解できない」には、色々な意味でありますが、理解できない人への介入の方法としては短いセンテンスで必要なことを伝えるとか、時間をかけてゆっくりと伝えていくとか、という方法がありますが、まずここをきちんと分けることが必要であるので、「理解したくない」「理解できない」という表現は重要であると思います。
 伝えるときに、我々が如何に発達と絡めて伝えられるかということで、保育士さんしかり、保健師さんしかり、こと学校の先生もそうですが、発達を理解していない人が本当に多いのですね。子どもが育つ道筋を自分のなかでどれだけ身につけていて、それを言語化して相手に伝えることができるか。
 よく学校の先生が「この子は平仮名が書けないのですよね」と言いますが、平仮名を書けない意味はあって、基本的に丸、三角、四角が書けて、更に菱形が書けて、平仮名が書けるという発達のプロセスがあるのですが、平仮名が書けないときに、この子はまず図形が書けるのか、図形を書くためには目で見た物と同じ物を手で実際に積み木を使って作ってみるとか、平面上での平仮名というのは非常に複雑な図形ですから、その構成が出来るわけがないのです。平仮名が書けないのではなくて、書くためのプロセスがどこまでできているのかということを、親御さんに伝えてあげる。これを丹念にやり続けないと、親御さんに上手く伝わらないことになってしまう。目の前の現象だけでなくて、その子の育つ道筋をきちんフィードバックすることがすごく重要で、私はそういったスタンスで、困難な親御さんとずっと付き合っています。
 そういうことを、ぜひ考えて見て下さい。発達を見るプロになっていかないとなかなか子育て支援だとか、介護に必要な社会の対応ができないと思います。

6. 専門職として、大切な心構えについて

 私たちの仕事はお互いに支えられないとできない仕事です。連携はそこから始まります。お互いの専門職がお互いに責めるとそこで終わってしまいます。そこでは自分たちの役割で出来るところ出来ないところを明確にする必要があります。全てが保育所で出来るわけではなく、全て保健師が出来るわけではありません。役割分担がきちんと出来るのだから連携が保てます。そういうスタイルはその町できちんとつくらないと支えることはできないと思っています。そういう動きが、地域のお子さんや家族の支援につながっていくと思います。