【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅱ-②分科会 持続可能な医療体制の確立 |
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1. 奥尻町の概況 2008年3月末現在で、人口は3,442人、世帯数1,658世帯である。基幹産業は水産業と観光業である。主な交通手段としては、せたな町(夏期間のみ)、江差町からフェリーが毎日2往復で運航している。 また、1974年には、交通機関等の高速化に対処するため、奥尻空港が整備され、奥尻~函館間の空路が開設し、町民の生活路線として定着してきた。更に、2006年3月に、奥尻空港滑走路がそれまで800メートルだったものが、1,500メートルへと滑走路が延長となった。これにより離島における観光振興にも一層の期待が寄せられている。 |
奥尻島の古名は、イクシュンシリといい、後にイクシリと転訛したものである。これは、北海道の先住民であるアイヌの言葉である。「イク」は向こう、「シリ」は島の意で即ち「向こう島」という意味であり、享保5年(1720年)新井白石著『蝦夷誌』に初めて「奥尻」と記されている。島は寒暖二つの海流に囲まれ、豊富な漁田があるほか、初松前と呼ばれる海岸の砂丘地帯には約520年前松前藩の藩祖武田信広が奥羽各部から来島し、居城したと言われている。1869年には、国郡設定にあたり後志国奥尻郡となり、その後奥尻村に改められ、更に1961年1月には奥尻町となり、町制が施行された。 2. 奥尻町を取り巻く医療環境について 現在奥尻には、町営の国保病院が奥尻地区に一つと、それに連なる診療所が青苗地区に一つある。また、民間の歯科医院が青苗地区に一つある。 |
外科的な治療が必要な場合は、道立江差病院や函館市立病院などへ患者を搬送している。その他に、万が一、脳梗塞や心筋梗塞などの緊急を要する重篤な患者が発生した場合、国保病院では、高度救命医療設備が整っていないことから高度救命医療施設が整備されている函館市内の病院へ搬送しなければならない。患者を搬送するためには、離島であることから北海道防災航空室へヘリコプターの派遣を要請する。この要請は、「北海道消防防災ヘリコプター運航管理要綱」並びに「北海道消防防災ヘリコプター緊急運航要領」、「ヘリコプターによる救急患者の緊急搬送手続要領」などに基づき行っているものである。 |
奥尻町も離島であるという地理的条件であることから、僻地であり、過疎化・高齢化がものすごいスピードですすんでいる。2008年3月31日現在の人口が3,447人で、そのうち65歳以上の人口が1,032人となっており、高齢化率はおよそ30%である。今後老齢化に伴う医療施設の充実が喫緊の課題である。 |
また、より迅速に高度救命医療施設が整備されている病院へ緊急患者を搬送するためには、現在都道府県レベルで進められているドクターヘリの設置が、絶対的に必要と思われる。北海道では、2005年4月1日に、手稲渓仁会病院救命救急センターにおいてドクターヘリを設置しているが、道内で保有するドクターヘリは現在のところこの1機だけである。北海道の広い大地を網羅するためには、1機だけでは不足であるので、今後2機、あるいは3機と増設する必要があると思われる。特に利尻・礼文という離島を抱える宗谷地方、天売・焼尻を抱える留萌地方、そして奥尻島がある檜山地方には特に配備するべきであると考える。 3. 北海道のへき地医療について 先述した「北海道へき地保健医療計画」によると、緊急医療の充実ということで、消防防災ヘリコプター等による患者搬送、ドクターヘリ事業の充実を掲げており、更にその中で、「ドクターヘリ事業の充実に向けた取り組みを進めます。」との文言がある。また、「へき地における医師の確保」ということで、施策の方向として掲げているのは、「離島やへき地における医師確保やへき地医療拠点病院等の医師確保を進めます。」とある。更には、北海道地域医療医振興財団ドクターバンク事業の推進ということで、「道内の過疎地等医療機関における地域医療の確保を図るため、厚生労働大臣の許可を得て医師の無料職業紹介業(常勤及び非常勤医師の紹介・あっせん)を行うほか、過疎地等に勤務する医師の定着に向け、研修会の参加や休暇の取得等を促進するため、短期診療支援医師を確保し、市町村等への紹介を行っています。」とある。 4. 今後の課題について 医療は、経済性や収支だけではかれるものではなく、人の命を守るという重大な責務を負っている。このことをしっかりと踏まえて議論しないことには、地域医療については語ることができないと思う。単なる経済性合理主義とか、診療報酬の引き下げ、診療所化・人員削減・合理化などというものと、医療とは本来相容れない性格を持っていると考える。 |