【要請レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅱ-②分科会 持続可能な医療体制の確立 |
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1. はじめに 小泉内閣の聖域なき構造改革の旗のもと立ち上げられた経済財政諮問会議・規制改革会議により、日本が世界に誇るべき国民皆保険制度は今崩壊の危機に瀕している。この裏には国の財政悪化を理由に医療費適正化などと称して公的給付を削減し、削減分を民間保険会社に任せろという自分たちの利益のみを考える経団連の思惑があります。また、この背景にはアメリカ企業の圧力により、公的医療費などを抑制し、今後増え続ける医療費などを民間に任せ利益を生みだすことが小泉・ブッシュの約束としてあったのです。この意向を受けて、医療費抑制のため医療制度改革が行われた。そのひとつが総務省から出された公立病院改革ガイドラインであり、この改革は公的医療費削減を最優先に効率・採算性のみを重視したものであり、まさに命の価値をお金と天秤にかけるという代物だ。そして今年度中にその計画策定をするように地方自治体は迫られている。 2. 現状と将来の見通し (1) 人口推移 (2) 医療資源 (3) 交通事情 3. これからの地域の医療のあり方 現状の町立病院を存続していくことは現在の国の医療政策の下では財政的には到底無理なことははっきりしている。しかし、公立病院改革ガイドラインに基づいた縮小が行われれば医療過疎地域となるのは明らかである。 4. 当院の財政分析 2006(平成18)年度決算によると単年度の赤字は1,100,509千円である。支出の部分では経費削減を徹底し、コスト意識を高めることで減少がみられている。しかし、患者数の減少と診療報酬改定による診療単価の減少により、収益が伸びていないのが現状であり、このことが赤字を生んでいる原因であると考えられる。当院の管内の医療受給率は52.1%と約半数であり、大半が隣接する渡島管内に流れている現状がある。その理由は今年行われた「道立江差病院に関するアンケート調査」報告書によると「希望の診療科がない。」「専門的な医療が受けられない。」「評判が悪く、信頼できない。」「医療水準が低いと思う。」「待ち時間が長すぎる。」の5項目がほぼ同率の10%台で並んでいることからこのことが原因であると明らかとなった。また、このことが改善できた場合の利用についての解答では66.2%が利用しても良いとしていることがわかった。この結果からも欠員の解消を行い、診療科を移転開院当初に戻すことだけでもかなりの額の収益を改善できるものと考えられ、改善を望む声が多いことも明らかになった。 |
5. 当院のこれからの役割・あり方 本当の意味で地域センター病院として中核を担う役割を果たせるだけの機能強化・充実が早急に必要であり、先に述べたように地域での医療体制のリーダーとして不採算医療を行政の責任において守るためにも直営堅持がもっとも望ましいと考える。 |
○江差鴎島祭り「ペイロン大会」における救護班活動 この活動を行う要点は地域住民が多く参加していること、病院職員として医療活動を行えること、住民がわかりやすく受け入れやすい内容であることである。話題になっているAED体験装置を用いて使用方法を説明しながら、機器の必要性や実際にあった事例を紹介し、産科医師の撤退でお産ができなくなっている現状を"地域医療を守れ"ビラを配布して訴えた。また、傷や火傷の処置などを通じて創傷処置方法の変化についての啓蒙も行うことができた。 ○小学校での「手洗い講習・リハビリ教室」 この活動は同じ連合傘下である教職員組合と連携を図ること。また、子どもの頃から病気にならないための予防が大切なことを知ってもらい、医療に携わる職業に関心を持ってもらうこと、病院が治療だけを行うわけでなく医療情報の発信や予防医療にも取り組んでいるということをマスメディアによって住民に周知でき、イメージアップに繋がることを目的として行った。「手洗い」という身近なことを改めて実際に体験してもらいながら、その必要性を写真や簡単な事例を紹介しながら指導するとともに理学療法士が簡単なリハビリ教室を行い、子どもたちから好評を得ることができた。 このように病院事業として行っている地域連携事業とは別に実際に地域に出て、生の声を聞き、こちらのことも分かってもらえるような機会を増やす試みをしている。 また、組織内の取り組みとして定期的な執行委員会の開催や全員参加の学習会の開催などを通じた意識の統一、欠員や職場での問題点の把握に努めている。 |
6. 終わりに 現段階ではまだこれらの取り組みに関して、どうなのかという評価は得ることは出てきていないが、こういう取り組みを続けていくことが地域での大衆運動を起こすきっかけとなり、その大衆運動こそが地域での医療のあり方を住民全体で考える起点となり、そこから当院のあり方、必要性の議論が生まれると考える。その時に本当に当院がこの地域で必要とされるかどうかは私たち職員のこれからの職業人としての意識やあり方、公務員としての地域での働きに懸かっているのである。このことをしっかりと自覚して今できる最大限の取り組みを続け、来年には明るい未来展望をレポートとして提出できることを強く望んでいる。最後になるがこの数年の医療制度改悪を通じて、改めて政治・政策の重要性を痛感した。自分たちの未来や次世代の人たちの為にも日頃から常に関心と監視を続けていくことが必要である。生きやすい、安心して死ねる地域を作るためにも次期選挙では政権交代に向けて精一杯取り組むことを決意して、このレポートを締めたいと思う。 |