【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-②分科会 持続可能な医療体制の確立

北海道渡島管内の自治体立病院の状況と分析
~地域医療を守るために~

北海道本部/渡島地方本部・副執行委員長 木村 春樹

1. 地域医療の現状と課題

 地域医療が崩壊の瀬戸際にたっています。
 現在、自治体立病院は、全施設8,842、162万病床のうち1,018、23万7千床と、それぞれ11.5%、14.6%を占めています※1
 また、救命救急センター、小児救急医療拠点病院、地域がん診療連携拠点病院など医療の中核を担う役割は30~40%台を占め、特に地域の医療を担うべきへき地医療拠点病院の割合は全252病院中183と、72.3%となっています※2
 しかし、その経営状況は厳しく、2006年度で累積欠損金は1兆8,736億円、不良債務は953億円となっており、2002年度に比較してそれぞれ3,613億円、206億円も増え、前年度と比較しても5.1%、14.3%の増加となっています。これは、医師をはじめとする医療従事者の不足や過疎化に伴う患者数の減少、診療報酬の改定などが大きな要因とされています。
 また、全自治体立病院における不採算地区病院は22.7%とほぼ4分の1に達しています※3

2. 総務省『公立病院改革ガイドライン』と北海道『自治体病院等広域化・連携構想』

 これらを踏まえ、総務省は2007年12月、「経営の効率化」「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」を3つの柱とした『公立病院改革ガイドライン』を発表し、2008年度中に全自治体立病院が『公立病院改革プラン』を策定することを求めています※4。このなかでは、経営の効率化を目指し、経営指標に係る数値目標を設定して取り組むこととされていますが、参考例として示された目標数値例は、民間病院、公立病院(黒字)、公立病院(上位1/2)など序列化された数値が記載されており、少なくとも公立病院(上位1/2)以上の数値目標を掲げ3年後の黒字を目指さなければプランとして承認されないものと思われます。このプランが承認されなければ、当然ながら2008年度単年特例である「公立病院特例債」を発行することができず、また、発行できたとしても、償還期間は7年ながら5年後にはこの特例債の残債を含んだ不良債務を解消しなければならないこととされており、実質的に5年間で資金不足の状態から抜け出さなければならないことになります。
 また、北海道は、このガイドラインに先駆け、『自治体病院等広域化・連携構想(素案)』を2007年9月に発表し、パブリックコメントの募集や議会論議を踏まえて若干のアジャストを行い、2008年3月、正式に北海道の構想として位置づけ取り組みを進めています※5。この構想は、北海道医療の経営状態を「82市町村が計94病院を経営しているが、2005年度の決算状況調査では7割に当たる61市町村の病院事業が赤字で、赤字額は計111億円。累積欠損金は年々増加し、計1,208億円に達し、不良債務は145億円。市町村一般会計からの繰り出しは1病院平均2億7千万円合計258億円であり、限界に近づいている」とし、全道を30区域に分割。(うち極端に広大となる4地域ではサブ地域を設定)そしてその区域内での核となる1病院のみ各診療科をそろえ規模を維持するが、他の病院は縮小し、場合によっては入院病床19以下の診療所に変更。規模を縮小した市町村から中核病院へは通院バスを走らせるなど連携を深め、高齢者などに配慮する、としています。
 どちらも2008年4月に一部施行された新自治体財政健全化法の連結実質赤字比率や企業会計の資金不足比率などを念頭においており、これまで地域医療を懸命に守ってきた自治体関係者も、財務状況を良くすることを最優先として対応せざるを得ない状況です。

3. 北海道渡島管内の状況 ※6

 北海道南部に位置する渡島管内は、合併が進む以前は17市町村で形成され、函館市と近隣4町村、上磯町と大野町、森町と砂原町、八雲町と檜山管内熊石町が合併したことにより、現在は11市町となっています。このうち、市であるのは、人口30万人と突出している函館市、そして上磯町と大野町が合併し函館市に隣接している新設北斗市(人口5万人)のみであり、ほかは人口5千人から2万人ほどの小規模な自治体を形成しています。
 北海道は面積8万3千km2、人口560万人を有していますが、そのうち渡島管内は面積3,900km2、人口45万人であり、それぞれ4.7%、7.9%の割合となっています。このなかでの自治体立病院事業は、函館市の3病院1事業をはじめとして9病院6事業であり、病床数は834床から59床まで、第3次救急指定や療養病床が主たるところなど多様であり、まさに渡島管内医療の中核を担っています。
 しかし経営状況は全国、全道同様非常に厳しく、2006年度決算では黒字事業がわずか1、経常収支は合計37億9千万円の赤字であり、さらに不良債務は4事業合計で20億1千万円となっています。一般会計からの繰入金は2005年度が31億円だったのに対し2006年度は43億7千万円と急増しているにもかかわらず、累積欠損金は26億円、不良債務は5億2千万円増加しており、まさに危機的な状況です※7
 北海道策定の『自治体病院等広域化・連携構想』では、ほぼ管内中央の森町から函館市、北斗市を経て北海道最南端の松前町までの10市町(檜山管内離島自治体の奥尻町を含む)区域(うち木古内町から松前町までの西南渡島4町はサブ地域を設定)と、町村立では全国有数の規模を誇る八雲町を中心とした4町(北部檜山管内2町を含む)の二つに区域設定されています
 そして自治体病院の方向性は、函館市を中心としたエリアでは、病院や自治体の財務状況、ほか医療機関や医師数など取り巻く状況を踏まえ、「市立函館病院は地方センター病院であり、引き続き第三次医療圏の中核を担うことが期待されます。函館市内の他の2病院は比較的小規模であり、今後担うべき役割を踏まえてあり方を検討する必要があると考えます。」「松前町、森町及び奥尻町の病院事業には不良債務があり、3町の病院は今後の経営状況を見据えて、診療所化を含めて規模の適正化について検討する必要があると考えます。」「木古内町国保病院は不良債務がなく、比較的大きな規模で一定の役割を果たしていますが、町財政との関係も念頭において病院経営を行う必要があると考えます。」と記述されています。また、八雲町を中心としたエリアでは「八雲総合病院は地域センター病院であり、区域内の中核的医療機関としての役割を果たしていることから、今後とも一定の機能の維持が必要です。」「八雲町熊石国保病院は病床利用率が低く、中核的な病院との連携のもとに、診療所化を含めて規模の適正化を検討する必要があると考えます。」「長万部町立病院は不良債務はありませんが、比較的小規模の病院であり、平均在院日数などを勘案して今後とも適切な運営が必要です」との記述になっています。
 これをみるとわかるとおり、現行の機能・規模を維持し残すべき病院と、診療所化を含め規模を縮小すべき病院にほぼ二分されています。その判断基準は、「~論点を踏まえ~」とは記載されているものの、平均在院日数や不良債務の有無が大きな材料になっているようです。この渡島管内では、松前、森、熊石の3病院がはっきりと診療所化に言及され、地理的要因や経営状況を踏まえると長万部も診療所化が懸念されることとなります。そしてほかの自治体立病院も、自治体財政や地域特性、患者動向などに大きな課題があり、現行のまま存続することはすんなりとはいかない状況も明らかになってきています。また、八雲熊石病院、市立函館恵山病院、市立函館南茅部病院の3院は、合併に伴ってそれぞれ同一自治体内に所属することとなったものであり、地域特性、地域感情にも配慮した対応が求められています※8

4. 連合や自治労の地域医療を守る取り組み

 自治労北海道本部はこれら北海道の医療を取り巻く情勢を踏まえ、道本部執行委員長を本部長とする『公立病院改革対策本部』を設置し、「地域医療を確保するため必要不可欠な公立病院の存続を求めていく」ことなどの基本方針を掲げ、公立病院対策会議の開催や、連合北海道が各支庁ごとに設置した「地域医療を守る対策委員会」へも積極的に参画することとしています。
 北海道南部に位置する渡島管内でも、2008年3月に『地域医療を守る渡島地域対策委員会』が連合渡島地域協議会の手により設置されています。しかし、連合主体の地域対策委員会は、政治的分野をカバーするため民主党も参画した画期的なものですが、一方で、これまで自治体のように公的な繰出金に頼ることなく労使が一体となって経営の改善に努めてきた民間病院も所属する「道南医療」という組織もメンバーのため、自治体立病院グループとは温度差があるのが事実です。
 そこで、地方本部自治研活動の一環として、自治体立病院を設置している6市町を中心として病院財政や病院経営に詳しい労組役員を参集し、各病院の状況などを分析するなかから、よりよい方向性がすこしでも見えてくれば、ということで立ち上げたのが『自治労渡島地方本部自治体病院医療問題対策本部』です。
 このままでは管内のほとんどの自治体立病院が共倒れしてしまい、地域医療を守れない=地域住民の生命を守れず、そしてまた組合員の雇用と生活を守れないという危機感から、まずは参集しできることを協議しようということが出発点であり、設置の大きな動機ともなっています。
 参考までに『地域医療を守る渡島地域対策委員会』では、診療所化に言及された松前、森、そして長万部の各町で地域住民も対象のシンポジウムや集会を実施しており、いずれも200人前後が参加し、病院と地域医療のこれからを議論しています。また、連合北海道全体の取り組みとして、北海道知事に対し医療スタッフの解消について責任をもって進めることや不採算・へき地医療を担っている医療機関の経営維持のため必要な財政措置を行うことなどを求める署名をほぼ全地域で行っており、住民との議論を深めるなかで地域医療を自治体立病院が中核となって守っていく取り組みを進めています。

5. 渡島地方本部『自治体病院医療問題対策本部』の活動

 対策本部設置にあたっては、2008年3月下旬の地方本部単代会議と自治研推進委員会で設置の確認を行い、その日の後段に第1回目の会議を開催し、体制や役員、活動方針などを決めています。
 地方本部執行委員長を本部長として、所在の6市町や地方本部からの選出はもちろんですが、今後、北海道の構想に関する申し入れなどの対応や、各保健福祉事務所が事務局である地域保健医療福祉推進協議会が広域化や連携に関する議論の場になることが想定されることから、全道庁渡島総支部の役員にも参加してもらうこととし、関係するところは総力を挙げて取り組むという体制づくりがなされています。
 また、今後の議論のなかで、広域連合や一部事務組合での運営、あるいは近隣自治体が負担金を拠出する、ということなどが提起されること等も想定するとともに地方本部一丸となって取り組んでいく姿勢を確認するため、会議には自治体立病院が存在しない自治体単組も参加できることとし、とりまとめの節目の際には全体の場で進捗・論議状況を報告することとしています。
 この対策本部の任務は、(1)運動の視点として、①地域における医療を守る ②自治体立病院で働く労働者を守る ③主に赤字の自治体立病院について運営と財源確保策を考えていくこととし、(2)取り組み内容として、①道南圏及び渡島圏の医療の現状を把握し、各自治体立病院の今後の方向性を探っていく ②「地域医療を守る渡島地域対策委員会(事務局:連合渡島地域協議会)」と連携し、住民を巻き込んだ集会などにより地域の声を集約し、各自治体立病院のあり方を論議していく ③各地域における情報を集約し情報の共有化と共通認識を持つよう努める ④自治体財政健全化と自治体立病院経営の関わりについて議論していく ⑤2008年度に予定されている各病院改革プランの策定について委員としての参加などを行って積極的に関わり意見反映をしていく ⑥これらの一定の到達点として、自治研運動や自治研集会などに積極的に関わっていく、ことを確認しています。
 また、スケジュールとして、①月に1回程度参集し議論を行っていくこととし、②渡島地方本部及び北海道本部自治研集会にレポート提出などを行い、議論内容を公表、周知していく ③組合年度内をめどに最終的にレポートなどをまとめ、各単組と協力して自治体当局に要望を行い、積極的に働きかけを行っていくことを最終目標としました。

6. 公立病院特例債と病院改革プランの状況

 対策本部委員による当局確認などによると、公立病院特例債の発行は、函館市が30億8千万円、松前町が3億6千万円、森町が4億2千万円と3市町が予定しており、今後渡島支庁や道庁と協議を行っていくこととしています。先般の総務省通知などによると、特例債残高を含んだ流動負債が流動資産を下回るという不良債務の解消が5年後には図られなければならないとなっています。また、病院改革プランは、松前町が7月までに策定するとしていましたが、様々な検討を加えていくこととして9月議会までと変更し、ほかの自治体は策定体制を含め検討していくこととしています。しかし、9月の中旬までには総務省ヒアリングが実施される予定であり、その前段に道庁ヒアリングも行われその際には改革プランの骨子を提示することとなっていることから、早急な対応が求められています。

7. 議論の経過

 この間、3月28日の設立会議、5月10日の第2回会議、6月28日の第3回会議、そして8月9日の第4回会議と議論を進めてきています。(8月9日は予定)
 議論はまず、各病院と地域の状況を対策委員から説明してもらい、それを踏まえて地方公営企業決算状況調2006年度版やその他の資料を用い、各病院の経営指標や財務状況を分析し、問題点や課題を浮き彫りにする作業を行いました。この作業過程で明らかになってきた事がらを、地域状況などとともに以下に記載します。

(1) 市立函館病院
 良好指標は、職員給与費比率、薬品費比率、平均在院日数、職員一人当たり営業収益など。うち薬品費比率が低いのは院外処方を実施しているため。不調指標は、経常・医業収支比率、平均入院患者数など。入院患者数が少なく収益が上がっていないため職員給与費比率等にも影響している。地理的状況(交通の便など)が要因と思われるが、外来を含め患者数が伸びるような方策を検討しなければならない。新築後の元金償還が開始され、大きな負担となっている。
 当局が収支改善のための事業計画を策定中。DPC(包括評価)やオーダリングシステム導入で5億1千万円(7月~実施)、10:1→7:1看護実施(6月~実施)、クラーク配置、ジェネリック医薬品の採用などあわせて17億円強の改善効果としているが、組合試算では経費増加分などをいれると5、6億円程度の改善にしかならない。当局は、ほか2自治体病院の改善策や改革プラン策定のため「函館市病院事業改革プラン策定懇話会」を設置し議論することとしている。

(2) 市立函館恵山病院
 良好指標は、材料費比率、病床利用率など。不調指標は、経常・医業収支比率、職員給与費比率、患者一人当たり入院・外来診療収入など。7月から全病床を療養病床へ転換し経営改善を図ることとしているため、当面は推移を見守る。

(3) 市立函館南茅部病院
 良好指標は、職員給与費比率、外来患者一人当たり診療収入など。不調指標は、経常・医業収支比率、材料費比率、入院患者一人当たり診療収入など。今後薬剤師が減員となることから、材料費比率等は改善される予定。7月から全病床を一般病床へ転換し経営改善を図ることとしているため、当面は推移を見守る。

(4) 町立松前病院
 良好指標は、医業収支比率、材料費・薬品費比率、病床利用率、外来患者数など。不調指標は、職員給与費比率、外来患者一人当たり診療収入など。医業収支比率は、あと数ポイント改善すれば総務省が示したガイドラインの公立黒字病院平均に並ぶ。金額にして6千6百万円程度。外来患者一人当たり診療収入が、現在4,190円とかなり低い。これが3割程度アップすれば1億円の増収となり費用増を踏まえてもかなりの収支改善になる。
 町長は、法の全部適用を目指し職員給与費を調整したい意向。一方で、看護師不足のため人材派遣会社を通して看護師派遣を行ってもらっており、従来看護師との給与費や待遇面での格差がある。看護師一人患者5人担当制の導入や医事業務の委託を検討している。特例債の償還は一般会計からの繰り出しで行う方向で検討を進めている。

(5) 木古内町国保病院
 保有病床数は141床だが実稼動は120床、この4月からはガイドラインにおける財政措置等も見越し99床で運用。また、13:1看護から10:1看護へ変更。良好指標は、経常・医業収支比率、職員給与費比率など。
 不調指標は、病床利用率(120床換算では68.3%)、入院・外来患者数など。患者数が数年前から急激に減少しており、それが病床利用率や100床当たり職員給与費悪化の原因。外来患者数→入院患者数を増やす方策を検討しなければならない。経常・医業収支比率が良好なのは、収支不足を補うための営業助成金を一般会計から支出しているため。このような状況は町財政からして長くは続かない。

(6) 森町国保病院
 良好指標は、外来患者一人当たり診療収入。
 不調指標は、経常・医業収支比率、職員給与費比率、材料費・薬品費比率、病床利用率、入院患者数や入院患者一人当たり診療収入など。町民が入った検討委員会での答申により、13:1看護から15:1看護へ変更。
 昨年10月から院外処方を予定しているため、材料費比率や薬品費比率は改善される予定。外来患者数、入院患者数とも落ち込みが続いている。特に入院患者数の減少が著しく、また、外来に比して入院患者一人当たり診療収入が少ない。この入院患者数を2004年度水準まで回復すれば7千8百万円の収益増となり、また、収入を2割改善すれば6千5百万円、3割改善すれば9千7百万円収益増となる。したがって、入院患者数回復と診療収入3割改善により、2億円の収益増となり、費用増嵩分があってもかなりの収支改善になる。しかし、入院患者数増は、外来患者数の増なしには望めない。外来患者数も減少傾向となっており、これが2004年度水準まで回復すると6千7百万円の収益増となり、入院患者数の増にもつながると期待される。
 従前までベッドコントロールを誰がやっていたのか不明。今後、入院患者の増が見込める余地がない場合、町内の医療・介護状況を踏まえ、一定程度減床してその分を介護老健施設への転換なども検討していかなければならない。他自治体でもその方向で検討しているところがあるため調査、確認していきたい。

(7) 八雲総合病院
 良好指標は、医業収支比率、材料費・薬品費比率、病床利用率、入院患者数、入院一人当たり診療収入など。不調指標は、職員給与費比率、外来一人当たり診療収入など。医業収支比率は89.3%とわるくはないが、予算規模が大きいため公立黒字病院平均値まであげるためには2億8千万円の医業収益増が必要。外来患者一人当たり診療収入が管内他病院よりも低いため、これを3割上げると3億2千万円の収益増となる。しかし、リハビリ目的の受診も多いため、困難を伴う。100床当たり職員給与費が高いが、より詳細な分析が必要。
 病院当局は、診療科ごとの収支計算や、ドクターに対してインセンティブを与える手当制度などを導入している。

(8) 八雲町熊石国保病院
 良好指標は、外来一人当たり診療収入、100床当たり職員給与費など。不調指標は、経常・医業収支比率、材料費・薬品費比率、病床利用率、入院外来患者数、入院一人当たり診療収入など。当初当局は、30床を八雲病院へ移譲することを検討していたが、医療技術者の関係で断念。全一般病床にもかかわらず平均在院日数が79.3日と極端に長く、また病床利用率も45.9%と50%以下の状態。平均在院日数が長いことが入院一人当たり診療収入の少ない要因。入院状況(年齢、疾病、状態など)を分析し介護施設等への転換が適当と思われるが、合併時の協議により困難。八雲総合病院との機能分担を検討し方向性を出すことが必要。

(9) 長万部町立病院
 良好指標は、経常収支比率、材料費・薬品費比率など。不調指標は、医業収支比率、職員給与費比率、病床利用率、入院・外来患者数など。経常収支もよくはないが、医業収益でまかなえない分を一般会計繰り出しで補っている状況。2007年度決算では、医業収益がさらに7千万円程度悪化。入院、外来患者数ともここ数年で大きく落ち込んでおり、それが病床利用率や職員給与費比率などに影響。材料費比率や薬品費比率が良好なのは全病床63中33床が療養病床のためか。外来患者数を増加させ患者一人当たり診療収入を増加させることが必要。外来患者数を2004年度水準まで回復させ診療収入を増やすことで、かなりの改善効果が期待され、そして入院患者数の増にもつながる。町当局は、北海道新幹線などの将来を見据え現行の病院体制で運営する意向。

8. これからの運営課題と改善策

 各病院における状況と課題で列記したとおり、ほとんどの病院で経常収支及び医業収支が不調となっており、2007年度決算ではさらに悪化していることが想定されます。
 この原因は様々であり地域特性なども関連していますが、これをさらに分析することにより、各病院がとるべき方策、方向性が見えてくるものと思います。
 このレポート作成時点では、自治体当局に提言すべき項目のまとめまでは進んでいませんが、8月に開催する次回会議以降、2007年度決算統計資料などを使用してさらに深い議論を交わし、各病院改革プラン策定のスピードにあわせていかなければなりません。
 今回の総務省ガイドライン、北海道構想、そして各病院策定の改革プランへの対応は、いままでの状況を急激に変化させることではありましたが、一方で各病院が、どのようにして地域に根ざして存在していくのかを考えるよいきっかけでもあります。各地域で行われている集会、職員との議論、そして改革プラン策定過程でのいろいろな分野との協議では、理念を明確にし目標を定めての議論が活発に行われています。
 今後、どの地域においても、地域の医療を守り「住民の生命と暮らしを守る」という自治体本来の使命にたちかえり、自治体立病院が必要とされるよう、財政分析や医療問題を共通認識しながら活動を続けていきます。




※1:厚生労働省医療施設調査(平成20年1月末現在)より。
※2:全国自治体立病院開設者協議会平成20年度定時総会資料より。
※3:全国自治体立病院開設者協議会HPより、平成19年3月31日現在。不採算地区病院とは、「イ.その有する病床が100床未満又は前年度における1日平均入院患者数が 100人未満であること、ロ.前年度における1日平均外来患者数が200人未満であること、ハ.当該病院の所在する市町村の区域内(平成14年4月1日から平成17年3月31日までに議会の議決を得て都道府県知事に合併の申請を行い、平成18年3月31日までに合併を行った市町村の市町村立病院については当該市町村の合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5年度に限り、当該市町村の合併前の区域内)に他の一般病院が存在しないこと、又は、所在市町村の面積(平成14年4月1日から平成17年3月31日までに議会の議決を得て都道府県知事に合併の申請を行い、平成18年3月31日までに合併を行った市町村の市町村立病院については、当該市町村の合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5年度に限り、当該市町村の合併前の面積)が300km2以上で他の一般病院の数が1に限られていること」の条件が満たされている病院をいう。(特別交付税に関する省令より)
 不採算地区病院には、1床当たり68万円の特別交付税が措置されている。(平成19年度実績)
※4:http://www.soumu.go.jp/c-zaisei/hospital/pdf/071112_guideline.pdf
※5:http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/irs/jititaibyouinkouikikakoso.htm
※6:資料1参照。「渡島支庁管内市町行財政概要平成20年6月刊」ベース。
※7:渡島支庁管内市町行財政概要平成20年6月刊より。
※8:2005年10月、八雲町と熊石町が対等合併し新「八雲町」を新設。2004年12月、函館市が近隣の戸井町、恵山町、椴法華村、南茅部町を編入合併。

資料1

渡島支庁管内図


 
病院名
病床数
 
病院名
病床数
市立函館病院
834
森町国保病院
87
市立函館恵山病院
66
八雲総合病院
358
市立函館南茅部病院
59
八雲町熊石国保病院
99
町立松前病院
100
長万部町立病院
63
木古内町国保病院
141
 
1,807
※2006年度末現在