【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-②分科会 持続可能な医療体制の確立

救急救命講習会の取り組みについて


石川県本部/石川県現業職員協議会 梅田 聡春

1. はじめに

 石川県現業職員協議会は、技能労務職員の自己意識改革と住民及び同じ県職員に対しての認知度を高める為に、ボランティア運動・業務改善運動等の様々な活性化運動に取り組みながら組合運動を牽引してきました。
 しかしながら、小泉政権より顕著となってきた行革の流れは、公務労働として現業部門における業務改善を目指す議論のないままに、技能労務職そのものを委託及び民営化する方針が打ち出される状況となっています。現業職種による公務労働の効果を示す一端としては、福井県で発生した豪雨による河川堤防決壊に対する復旧支援対応が思い出されます。このときは自治労のネットワークを生かした働きかけにより、各自治体から清掃職員が大挙してパッカー車で駆けつけ迅速な災害対応作業が実施出来ました。これは正に、現業職種が公務労働であればこそ出来た対応として評価され、災害地となった福井県の認めるところとなっています。
 このような大きな力としての公務労働も一つのあり方ですが、各個人の努力で可能となる取り組みを行うことで技能労務職労働者という捉え方だけでなく、公務労働者として住民の理解を得られ、且つ、自己のモチベーション向上に繋がることも必要な課題と考えます。

2. これまでの取り組みの現状

 石川県現業職員協議会の主な取り組みとしては、自治労石川県本部現業評議会の一員として、また、石川県職員労働組合との協同や石川県現業職員協議会単独で、様々な活性化運動に取り組んで来ました。これまでの取り組みの多くは、組織対応を単位とするものや、業務に直結したものが特徴と言えます。
 最初に近年の拙速な行革について申し上げましたが、著しい現業職員の削減攻撃の結果、組織対応を単位とする取り組みメリットである、多くの人員で実施することが、否応なしに低下してきている状況となっています。
 しかしながら、これまで組織対応を単位とする取り組みは、組合員間の団結やコミュニケーション向上の観点から、対応出来る組合員が減少しても工夫しながら継続していくことが必要と考えています。

3. 活性化運動の新たな展開

 このような現状を踏まえ、これまでのボランティア運動等も適時に実行することとしながら、新たに活性化運動の展開を図れないか執行委員会で協議を重ねた結果、組合がバックアップし「組織対応による個人で対応可能な事柄」について取り組むことを確認しました。
 確認した内容は、
  ・プルタブなどの収集ボランティアについて現業協議会で取り組むこと。
  ・人の集まる公共施設等での設置が顕著となっているAEDの取り扱い習得など、各自の救急時対応力の養成を目的とした取り組みを行うこと。
 というものです。
 特に、組織的にバックアップを図ったのが、「各自の救急時対応力の養成」です。
 具体的には、石川県の各地域消防署に救急救命講習会の実施申し込みを行い、組合員は、日時や開催地で都合の良い講習会を選択して受講する形を取りました。
 2006年は、金沢駅西消防署で9月9日(土)救急の日を皮切りに、県下9箇所の消防署で10月にかけ順次実施しました。
 特徴的だったことは、8時間の受講を行い試験のある「上級救急救命講習会」の受講希望者が思いの外多かったことです。これは、「普通救急救命講習会」が消防署による定期的な実施となっていることに対し、上級の講習会は、一定人数が集まっての申し込みでなければ実施されないことがあると思います。上級の講習会は、組合が運動として取り組んだことにより実施可能な希望者を得ることが出来たものです。
 さて、はたして参加者の感想は、執行部が思っていた以上に好評だったことが、嬉しい誤算?となりました。「是非、また、やってもらいたい」「継続してやってもらいたい」「組合で取りまとめてくれた事で、顔見知り同士での参加が出来てありがたかった」等々、組合執行部として、これ程多くの嬉しい電話をいただいたことはなく、しかしながら、それ以降(きっと本日まで)、その反響を更新出来ていないことが些かプレッシャーとして、のし掛かり始めてもいます。
 また、この取り組みは現業職員協議会での実施でしたが、組合員を通じて見聞きされたのか行政職の皆さんからの参加申し込みを頂くなど、この点でも嬉しい運動となりました。

4. 救急救命講習会運動の経過など

 2006年から実施した救急救命講習会は好評のなか2007年も連続して実施することとしました。これは、国際的に見直しを行う救急救命の方法が2006年の途中から切り替わったことから、受講者によって旧のやり方で学んでいること、また、初めての取り組みだった事を考えたとき、少なくとも翌年は続けて取り組みを行うことで、折角の受講内容を忘れて欲しくなかったことによります。
 2007年以降は、基本的に隔年で実施することを予定していますが、「今年も実施しないのか?」という組合員からの意見も聞いていることから、実施時期や方法について、組合員の意見を反映出来ないか執行委員会で検討したいと思います。

(1) 2006年救命救急講習会実績
   (2006年石川県現業職員協議会定期大会議案書・抜粋)
 昨年、第48回定期大会で決定した方針に基づき、9月9日から11月18日にかけて救命救急講習会を全県で取り組みを行い、95人の参加者(うち上級17人)が受講しました。
 初年度となる本年は、本部主導で実行し、一人でも多くの組合員に受講して頂き、「県民、地域住民に少しでも貢献していく」との趣旨で取り組んだものです。
 今回の取り組みで良かったことの一つとして、定期講習があり、一人でも参加可能な普通救命救急講習会とは異なり、参加人数が一定以上集まることで受講可能となる上級救命救急講習会を予定できたことです。
 また、既に参加された方の中には、直接書記局に連絡を頂くこともあり「また機会を設けて欲しい」「有意義だった」などの感想が寄せられています。
 今後は、本年10月以降より、世界的な見直しにともなって救命処置の方法が変わることや今回だけでは、せっかく講習で覚えたことを忘れてしまうこともあり、来年度も継続して行う予定としています。
 来年度は、組合員の意向により、夏季の受講も検討していきます。
〈 普通救命救急講習 : 無試験 〉
 今回は全て土曜日、 午前9:00~12:00

実施日
担当消防署・消防本部
受講場所
指導担当者
9月9日
9月23日
9月30日
9月30日
10月14日
10月21日
11月18日
金沢駅西消防署
津幡町消防本部
かほく市消防本部
七尾鹿島広域圏事務組合消防本部
白山広域圏事務組合消防本部
小松市消防本部
輪島消防本部
金沢駅西消防署
津幡町消防本部
かほく市消防本部
 
松任消防署
中消防署
奥能登行政センター
松井様
新木様
東 様
山辺様
沢田様
大野様
 

〈 上級救命救急講習 : 試験有 〉
 午前9:00~17:00
実施日
担当消防署・消防本部
受講場所
指導担当者
10月21日
白山広域圏事務組合消防本部
松任消防署
沢田様


(2) 2007年救命救急講習会実績
   (2007年石川県現業職員協議会定期大会議案書・抜粋)

 昨年に引き続き、本年も救命救急講習会受講の取り組みを行いました。今回については、組合員から意向のあった夏休み時期に配慮した日程とし、7月28日(土)から9月1日(土)にかけて全県下で取り組みました。申込総数は39人で、その中で8人の方が上級を受講しました。
 今年度も取り組みを行った理由としては、昨年の10月後半から救命処置の方法が改正された内容になっていること、1回の受講では忘れがちなこと、3月25日に発生した能登半島地震や7月16日に発生した新潟県中越沖地震を考えれば、公務員として「県民、地域住民に少しでも貢献していく」ことが趣旨であり、取り組むべきと考えたことによります。

〈 普通救命救急講習 : 無試験 〉
 午前9:00~12:00

実施日
担当消防署・消防本部 
受講場所 
7月28日(土) 
8月5日(日)
8月11日(土)
8月18日(土)
8月25日(土)
9月1日(土)
七尾鹿島広域圏事務組合消防本部 
小松市消防本部
金沢中央消防署
白山広域圏事務組合消防本部
津幡町消防本部
かほく市消防本部
七尾消防署 
中消防署
金沢中央消防署
松任消防署
津幡町消防本部
かほく市消防本部


〈 上級救命救急講習 : 試験有 〉   午前9:00~17:00

実施日
担当消防署・消防本部 
受講場所 
8月25日(土) 
白山広域圏事務組合消防本部
松任消防署

 


5. 今後の課題

 救急救命講習会に着目したことの一つとして、石川県議会の議事録が目に止まったことがあります。県議会の中である議員が、県の担当職員に防災士を取らせてはどうか? と言った記録がありました。
 県など各自治体は、行革による様々な見直しを行う中で、防災等安全に関わるものについては、日本における近年の自然災害の状況もあり、具体的な施策を充実させる方向と言えること、また、住民も公務に期待する分野と考えられること、等の状況と言えます。
 この議事録にあった、「防災士」について調べたところ、防災士を取得する要件に「救急救命講習会の受講」がありました。
 そこで、救急救命講習会を一つの通過点として、防災士の取得を目指すことを将来的な目的に持ちながら、継続的に、救急救命講習会の受講を行いたいと考えています。
 防災士は、地域防災の一つであり、住民に理解される公務員を考えたとき前向きな取得が望ましいと思います。
 現業職種公務労働者の活性化運動として防災士を取得することは、地域に役立つ現業職員として一つの位置づけになると考えられます。また、自治体にとっても好ましいことであり、取得した本人にとっての意識改革に繋がるものと言えます。
 労働組合の現状は、退職不補充による組合員の減少に拍車がかかるとともに、未組織労働者が増えています。課題が山積する中、今こそ労働者の団結が求められているにもかかわらず、その担い手がなかなか育っていないのが現状です。
 住民に理解される公務員であり、また、住民に理解される労働組合であるためにも、この取り組みを継続し、組合員各自の緊急時対応力養成及び維持と、防災士資格の取得に繋げたいと思います。


参考資料:過去の活動例