【要請レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-②分科会 持続可能な医療体制の確立

公立雲南総合病院職員組合の地域医療活動への取り組み


島根県本部/公立雲南総合病院職員組合

1. はじめに

 島根県は中国地方の北部にあり、東は鳥取県に接して京阪神地方に通じ西は山口県をはさんで九州地方に、南は中国山地を隔てて広島県に接し、北は日本海に臨んでいます。
 また、島根半島から北方40~80キロ海上には、島前、島後からなる隠岐諸島があり、東西の距離は230キロと細長く、総面積は6707.6m2になります。
 中国山地が日本海まで迫り、平野に乏しく県土の約8割を林野が占めており、山間部は千メートル級の山々が連なっています。
 そして我が公立雲南総合病院は、その島根県の東部に位置する雲南市にあります。
 雲南市は、県都松江市と出雲大社で有名な出雲市に隣接し、南部は広島県に接し、2004年の平成大合併により、旧6町村が合併して誕生した市であります。
 雲南市は、ヤマタノオロチの伝説で知られている斐伊川が流れ、各地に神話や伝説が残り、加茂岩倉遺跡など多くの遺跡や古墳が発掘されています。こうした遺跡や神社、地名の由来は、「出雲国風土記」にたどることもできます。
 雲南市の総面積は、553.4m2で島根県の総面積の8.3%を占めその大半を林野が占めています。
 公立雲南総合病院は、雲南市を中心とした雲南地域の中核病院として地域の住民の生命を守っています。
 公立雲南総合病院は、1948年に地域の住民が自分たちの生命を守る医療施設がこの地域に必要との考えから、住民運動によって設立された病院であります。
 設立当初は、内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、眼科の6診療科50床の病院としてスタートしましたが、それから60年の歳月を得て、14診療科334床の総合病院として地域の住民の生命を守っています。

2. 島根県の医療

(1) 島根県の医療体制
 島根県は、松江医療圏域、雲南医療圏域、出雲医療圏域、大田医療圏域、浜田医療圏域、益田医療圏域、隠岐医療圏域の7つの二次医療圏域に構成されている。
 圏域別の人口と医師数は、下記のとおりである。

   ○松江医療圏域

人口:

209,891人

  医師数:

627人

   ○雲南医療圏域

人口:

64,096人

  医師数:

90人

   ○出雲医療圏域

人口:

173,744人

  医師数:

739人

   ○大田医療圏域

人口:

61,548人

  医師数:

116人

   ○浜田医療圏域

人口:

87,974人

  医師数:

178人

   ○益田医療圏域

人口:

66,918人

  医師数:

151人

   ○隠岐医療圏域

人口:

22,554人

  医師数:

38人

   ○島根県全域

人口:

729,642人

  医師数:

1,939人

(人口:2008年3月1日現在、医師数:2006年12月31日現在)

(2) 医師不足の状況
 全国的においても医師不足が大変な問題となっていますが、島根県も全国同様医師不足を抱え、特に、離島・中山間地域で顕著に医師不足が発生し、診療科の廃止や病棟閉鎖などそこで生活する住民に多大な影響を与えている。
 医師不足の要因として、医師の都市部への大病院志向、過酷な勤務が強いられる病院勤務医の敬遠、国立大学の独立行政法人化、そして一番は、初期臨床研修必修化(研修したい医療機関を選択できる)により、医学部を卒業した研修医が都市部の医療機関に集中し、大学の医局離れである。
 このことで大学の派遣によって医師を確保していた各地の公立病院は、軒並み医師不足の状況に陥っている。
 また、上記医療圏によって医師の地域偏在の実情があり、とりわけ大学病院及び県立中央病院のある出雲市に集中している。

(3) 看護師を始めとする医療従事者不足の状況
① 島根県内の状況について
  看護職員については、2006年度県が策定した「第6次看護職員需給見通し計画」において、今後5年間で250人程度不足するとしていましたが、2006年度の診療報酬改定により、従来最も高い報酬を得られていた患者10人(10:1看護)よりも手厚い、患者7人(7:1看護)の基準が新設され、都市部の大病院が基準獲得に向け大幅な募集を掛けたことによりそれを上回る数の看護師不足が発生している。
  また、医療技術者(薬剤師、理学療法士等)の不足も深刻であり、地域においては配置基準すら満たすことが出来ない状況になっている。
② 看護師不足の主な要因
 ア 2006年度の診療報酬改定において、看護師を手厚く配置した病院に対して診療報酬を増やす制度(7:1看護基準)を新設したことにより、全国的に獲得競争が過熱し、地方の看護師不足に拍車がかかった。
 イ 県内にいる看護師の「卵」の半数が県外で就職し、県内就職者の5.5%が一年以内に退職している。
 ウ 看護師養成機関に進学する県内高校生の半数以上が、県外の養成機関への進学を選択している。
③ 看護師争奪戦の現状
 ア 島根県立看護短大に、東京大学付属病院、京都大学付属病院を始め、都会地の民間大病院が相次いで募集に来ている(これまでは無かったこと)。
 イ 島根大学付属病院では、ボーナスとは別に年間25万円の特別賞与制度を新設。
 ウ 松江赤十字病院では、院内保育所の設置、時間延長などの子育て支援策を強化。

3. 雲南地域での地域医療の取り組み

(1) 雲南地域医療を考える会の立ち上げ
 自治労に加盟する雲南地域の自治体立病院(公立雲南総合病院、町立奥出雲病院、飯南町立飯南病院)は、当時あった自治労島根県本部の下部組織自治労雲南3郡町村職員等連合会の中にあった病院対策部において、病院の充実・課題の克服を図るため、組合員対象の学習会、住民参加型の講演会、住民アンケート等の活動に取り組んでいた。
 自治体病院の枠の中での活動をしていくうちに、その幅を住民参加型の大きなものにしたいと考え、雲南地域内の3つの公立病院(飯南病院、奥出雲病院、雲南病院)の組合を中心として、雲南市職員労働組合、雲南市議会議員、自治労島根県本部など多数の協力を得て「雲南地域医療を考える会」を2006年2月に設立した。
 また、この会を組合の活動から地域住民活動へのシフトを目指すため、会の会長にこれまで長年医療行政に携わってこられた元島根県保健環境科学研究所所長関龍太郎氏に就任を頂くこととなった。

(2) 雲南地区地域医療対策協議会の立ち上げ
 島根県においては、隠岐における産婦人科医不在の問題に象徴されるように、離島・中山間地で医師が不足し、そこで生活する住民に適切な医療が提供できない状態が続き、住民生活に多大な影響を与えている。
 こうしたことから地域住民にとって医療サービスの安定提供は、地域での暮らしの基盤であり、安心・安全を確保することは、行政・自治体の責務であることから、地域医療対策を自治労島根県本部の政策重点課題として住民を巻き込んだ地域運動を展開する方針が決定された。
 具体的な取り組みとして下記のとおりとした。
① 重点地区の設定
 ・県内でも特に医師不足が深刻であり、それぞれの地区に自治体立病院を有している。
 ・3地区(隠岐地区、雲南地区、邑智地区)を重点地区に設定します。
 ・各地区に対策委員会(仮称)を設け地域での運動を企画・実施します。
 ・各地区において、医療シンポジウム、地域医療の充実を求める署名行動、県知事への申し入れ、県・市町村議会請願等を実施する。
② 連合島根との連携
  連合島根・各地協と連携を図り、地域での取り組みを推進する。
③ 自治労中央本部への情報発信と中央段階での取り組み
  中央本部衛生医療評議会及び中央本部各機関会議で情報発信を行い、全国運動となるよう取り組みをする。
 このことから連合島根、自治労島根県本部指導のもと、連合雲南地協の中心に「雲南地域医療対策協議会」の設立に参画し、2006年8月2日、雲南地域の住民生活の基盤である「安全、安心、安定」した医療環境の整備と、適切な医療を提供出来る体制を確立することを目的に、「雲南地区地域医療対策協議会」を設立した。
 この協議会は、要求実現のための地域署名行動及び、地域医療に対する認識を深めるための各種研修会、講演会の開催等を主な活動内容として取り組みを進めて行く事を目的とし、「雲南地域医療を考える会」と連携して各種活動を進めていくこととした。

(3) 活動報告
① 第1回シンポジウム開催
  島根のような地方とりわけへき地(中山間地)の深刻な医師、看護師等の医療従事者の不足を医療現場で働く者として感じていました。この問題はこの様な状況の下、どの様に展開しているのかを同じ地域で生活する住民と「医療を取り巻く現状」「病院の実情」等を共有し、今後どの様に地域で解決していくのかを一緒に考えて行きたいとの思いから、「地域医療を考える会」の設立を機にシンポジウムの開催を計画した。
  2006年5月20日(土)雲南市三刀屋町のアスパル小ホールにて【雲南地域医療を考える会シンポジウム「中山間地の医師不足と医療の現状と課題について」】を開催しました。
  シンポジウムの内容としては、「中山間地域における医師不足と医療の現状と課題」をテーマに基調講演を行い、その後それぞれの立場のパネリスト6人によるパネルディスカッション形式で行った。
  基調講演には、考える会の関会長から「中山間地域における医師不足と医療の現状と課題」をテーマに、医師不足が深刻化した背景は何か、どこに問題があるのかについて中心に講演を行った。
  講演の中で、「医療機関と医師の求職ニーズをコンピューターで紹介する研修医制度と、専門医としての技術を追求する高機能病院志向」により、医師が都会に集中し、結果としてこのことが地方の医師不足を招いている大きな要因であることを指摘された。
  次に各立場(行政、医師、労働組合、各病院現場)から現状を発表し、意見交換を行った。
  パネリストからは、「夜間の緊急手術が出来ず、地域の中核病院としての機能を十分に果たせない」、「田舎者は病気になるなと言わんばかりの現状だ」という状況報告をし、医師不足が病院のみならず、地域にも大きな影響を与えていると報告した。
  初めての開催としては200人を超す一般参加者があり、この問題に対する関心の高さを感じた。また参加者からは「シンポジウムを通じて、様々な観点からの報告や分析が聞けて大変ためになり、次も是非参加したいです」という意見も寄せられ、住民と現状の共有化を図ることができた。

 日 時

 

2006年5月20日(土) 13:30~16:00

 場 所

 

アスパル 小ホール(島根県雲南市三刀屋町)

 主 催

 

雲南地域医療を考える会

 後 援

 

雲南市  飯南町  奥出雲町
公立雲南総合病院  自治労島根県本部

 内 容   ア 基調講演
 ・講師:関 竜太郎 氏(雲南地域医療を考える会会長)
 ・演題:「中山間地域における医師不足と医療の現状と課題」
 ・公演時間:約50分間
イ パネルディスカッション
 ・テーマ:各現場の現状と意見交換
 ・時間:約90分
 ・シンポジウムパネリスト
  行政の立場から    大城  等(島根県雲南保健所 所長)
  医師の立場から    大塚 昭雄(公立雲南総合病院 院長)
  労働組合の立場から  梶谷 房生(自治労中央本部衛生医療評議会 副議長)
  現場の立場から    松村 和茂(飯南町立飯南病院 看護師)
  現場の立場から    内田百合子(町立奥出雲病院 看護師)
  現場の立場から    毛利真由美(公立雲南総合病院 看護師)

② 住民署名活動
  雲南地区地域医療対策協議会は、連合島根の「2007年度県民要求」に合わせ、9月11日に島根県知事に下記署名用紙と合わせ要請書提出を計画した。
  署名活動を取り組むに当たっては、8月20日を集中行動日に設定し、街頭で住民に対し地域医療の厳しい現状を訴えながら署名の呼び掛けを行うことに着手した。
  約1ヵ月間という大変短い期間での取り組みではありましたが、多方面よりご協力を頂き、目標としていた3万筆を大きく上回る36,227筆(雲南地域の人口約65,000人)の署名を集める事が出来た。



要請主旨を説明する松林議長と関会長


要請書と署名用紙を手渡す松林議長

③ 地域医療講演会

 日 時

2006年11月24日 18時30分~

 場 所

公立雲南総合病院4階大会議室

 演 題

「隠岐島前病院における地域医療の取り組み」

 講 師

隠岐島前病院 院長 白石吉彦氏

  雲南地区地域医療対策協議会は、隠岐島前病院・白石吉彦院長を講師に招き、「隠岐島前病院における地域医療の取り組み」と題する地域医療講演会を開催し、120人の組合員が参加した。
  講演では、主に離島での医療提供条件・対策・今後の課題について説明して頂きました。
  隠岐島前の西ノ島町には隠岐島前病院のほかに、浦郷診療所、海士町には海士診療所、知夫村には知夫診療所があり、いずれも他の医療機関や福祉・保健分野との連携が欠かせない状況にある。
  隠岐島前病院での地域医療の取り組みについて、白石院長は、①病院間の連携、②診療所との連携、③保健福祉分野との連携、の3点を強調された。
  病院間の連携としては、遠隔画像システムと緊急ヘリコプター患者搬送を行い、診療所との連携では、医師ブロック制を行っている。
  具体的には、医師ブロック制について、西ノ島町、海士町、知夫村のそれぞれ診療所の医師が、曜日によって島前病院と診療所を行き来するシステムを実施し、これにより医師側の利点としてストレスの軽減、研修・研究が出来ることがあり、住民側の利点としては、医療の継続性(診療所→隠岐島前病院の入院でも治療に携われる)、地元の診療所でも専門医(小児科、外科)にかかることができるとのことであった。
  また、保健福祉分野との連携では、保健分野として精神疾患とのかかわり、健康教室・健康座談会、難病疾患とのかかわり。福祉分野では、サービスに携わる様々な関係者との会議を開き、住民との関係を築いていっていることを報告され、院内では、職員から様々な意見を集めて、「まずやってみる」ということであった。
  今後の課題としては、自治体立病院としての役割、人材確保、他病院・診療所との連携、機能分担の必要性等の指摘がされた。
  最後に、「島での治療が困難な患者さんが本土から帰って来られたとき、安心して暮らせる環境をつくることが重要」と、在宅生活の支援の必要性を強調され、病院と地域間の連携を再確認させられる講演内容でした。



隠岐島前病院・白石吉彦院長


熱心に講演内容を聞き入る組合員

④ 公立雲南総合病院の精神科病棟存続を求める取り組み
  我が公立雲南総合病院においては、精神科の常勤医師が不在であり、病棟管理・外来診療は非常勤医師体制で行われていた。この状況を改善すべく雲南地域家族会連合会(会長青山友行)は昨年、県に陳情書を提出し改善を求めてきたが、2006年12月26日に開催された公立雲南総合病院組合議会臨時会において、管理者速水雄一雲南市長より「精神科の常勤医師不在体制が3年目を向かえ、非常勤医師により外来・病棟維持をしてきたが、大学より今のままでは病棟管理は出来ない、常勤医師の派遣も難しいとの申し出があり、独自に医師確保に向けて努力してきたが、確保の目処が立たず病棟閉鎖もやむなしである。」との発言がなされた。更に、この発言を受けて新聞紙上において「2007年3月末での病棟閉鎖」との報道がなされ、家族会連合会はもとより地域住民に大きな不安が広がった。
  このような状況に対し、雲南地域医療を考える会、雲南地区地域医療対策協議会、雲南地域家族会連合会は連携し、1月31日、「公立雲南総合病院の精神科病棟の存続を求める要望書」を3団体連名で、島根県知事、雲南市長、雲南市議会議長に提出し存続を求めた。
  結果としては、精神科病棟は一時閉鎖という状況となったが、当初病棟閉鎖やむなしとの雲南市長の見解を、要請行動の席上「引き続き常勤医師確保に向けて努力し、確保が出来次第現在の病床数で病棟を再開する」との発言を取り付けた。
  このことは要請行動の一定の成果であり、雲南圏域の精神科医療の充実に向けた足掛かりとなった。
⑤ 第2回雲南の地域医療を考えるシンポジウム開催
  2007年6月2日、木次経済文化会館チェリヴァホールにおいて、雲南地域医療を考える会(関龍太郎会長、住民組織)・雲南地区地域医療対策協議会(松林重雄議長、連合雲南地協主体組織)主催、雲南市、飯南町、奥出雲町、公立雲南総合病院、自治労島根県本部の後援により、「第2回雲南の地域医療を考えるシンポジウム」を開催した。昨年に引き続き2度目の開催となったシンポジウムには、約350人の聴衆が集った。
  今回は、基調講演とパネルディスカッションの2部構成とし、国民健康保険弥栄診療所・阿部顕治所長による「中山間地域の医療充実に向けて-浜田市の実践から」と題した基調講演と、雲南地域の様々な立場(病院・病院勤務医の立場、開業医の立場、保健・福祉の立場、行政の立場、議会の立場、住民の立場)のパネリスト7人により、「雲南地域の医療の充実に向けて」~医療・保健・福祉の連携と圏域内での機能分担をどう考えるか~、をテーマに意見発表と討論を行った。

 日 時

2007年6月2日(土) 13:30~17:15

 場 所

チェリヴァホール大ホール(島根県雲南市木次町木次里方55)

 主 催

雲南地域医療を考える会
雲南地区地域医療対策協議会

 後 援

雲南市  飯南町  奥出雲町
公立雲南総合病院  自治労島根県本部

 内 容

ア 基調講演
 ・講師:阿部 顕治氏(浜田市国民健康保険弥栄診療所長)
 ・演題:「中山間地の医療充実に向けて―浜田市の実践から」
 ・公演時間:約60分間
イ パネルディスカッション
 ・テーマ「雲南地域の医療の充実に向けて」
      ~医療・保健・福祉の連携と圏域内での機能分担をどう考えるか~
 ・パネリスト
  <病院の立場から>  服部 修三 氏(公立雲南総合病院副院長)
  <開業医の立場から> 西村 昌幸 氏(雲南医師会副会長)
  <保健の立場から>  曽田 富代 氏(雲南市健康推進課主査統括保健師)
  <福祉の立場から>  井谷 順子 氏(社会福祉法人雲南広域福祉会統括所長)
  <行政の立場から>  影山 喜文 氏(雲南市副市長)
  <議会の立場から>  佐藤 嘉夫 氏(公立雲南総合病院充実強化雲南市議会議員連盟会長)
  <住民の立場から>  景山 純孝 氏(大東町自治会連絡協議会会長)
 ・コーディネーター
   大城  等 氏(雲南保健所長)
 ・助言者
   阿部 顕治 氏(基調講演講師)
 ・パネリスト発言時間 一人当たり約7分
 ・パネルディスカッション討論時間 約60分間
   (会場からの発言も求める)
 ・討論のまとめ 約10分
 ・合 計 約2時間




熱心にパネリストの意見に耳を傾けている参加者

⑥ 第3回雲南の地域医療を考えるシンポジウム開催
  2008年6月28日、木次経済文化会館チェリヴァホールにて、雲南地域医療を考える会(関 龍太郎 会長、住民組織)・雲南地区地域医療対策協議会(吉川 肇 議長、連合雲南地協主体組織)主催、雲南市、公立雲南総合病院、連合島根、自治労島根県本部、がんばれ雲南病院・市民の会、雲南病院を支えよう加茂市民の会の後援により、「第3回雲南の地域医療を考えるシンポジウム」を開催した。3度目の開催となったシンポジウムには、約400人の聴衆が集った。
  シンポジウムの内容は、昨年同様基調講演とパネルディスカッションの2部構成とし、島根大学医学部地域医療教育学講座の熊倉俊一教授による「島根の医療充実に向けて島根大学医学部の取り組み」と題した基調講演と、パネリスト5人による、「雲南医療圏域における公立雲南総合病院の役割」~地域住民が求める医療とは何か~をテーマに意見発表と議論を行った。

 日 時

2008年6月28日(土) 13:30~17:15

 場 所

チェリヴァホール大ホール(島根県雲南市木次町木次里方55)

 主 催

雲南地域医療を考える会
雲南地区地域医療対策協議会

 後 援

雲南市 公立雲南総合病院 連合島根 自治労島根県本部
がんばれ雲南病院・市民の会 雲南病院を支えよう加茂市民の会

 内 容

ア 基調講演
 ・講師:熊倉 俊一 氏(島根大学医学部 地域医療医学講座教授)
 ・演題:「島根の医療充実に向けて島根大学医学部の取り組み」
 ・公演時間:約60分間
イ パネルディスカッション
 ・テーマ「雲南医療圏域における公立雲南総合病院の役割」
      ~地域住民が求める医療とは何か~
 ・パネリスト
  <行政の立場>    永岡 秀之 氏(島根県雲南保健所長)
  <病院開設者の立場> 秦  和夫 氏(公立雲南総合病院組合副管理者)
  <病院勤務医の立場> 松井  譲 氏(公立雲南総合病院副院長)
  <看護師の立場>   白根 典子 氏(公立雲南総合病院看護部長)
  <住民の立場>    矢壁 敏宏 氏(がんばれ雲南病院・市民の会事務局長)
 ・コーディネーター
   関  竜太郎 氏(雲南地域医療を考える会会長)
 ・助言者
   熊倉 俊一 氏(基調講演講師)
 ・パネリスト発言時間 一人当たり約10分
 ・パネルディスカッション討論時間 約50分間
   (会場からの発言も求める)
 ・討論のまとめ 約10分
 ・合 計  約2時間



熱心にパネリストの意見に耳を傾けている聴衆の皆さま


それぞれの立場でお話頂いたパネリストの皆さま

4. 今後の課題と展望

 憲法25条にある、健康で文化的な生活を営む権利を、中山間地や離島に住む地域住民は奪われようとしています。
 とりわけ日本の高齢化社会の先端を行っている島根県は、医師・看護師が激減し病棟閉鎖や診療科の廃止が各地で起こっています。
 雲南地域にある我々の公立雲南総合病院でも、2002年度まで常勤医師が34人在籍していましたが今や19人にまでに減っています。この間に皮膚科、麻酔科、精神科、泌尿器科は常勤医師が不在となり、精神科病棟においては一時閉鎖となりました。
 現在かろうじて各関連大学や島根県、構成自治体の協力と現存している医師をはじめとする医療従事者の献身的な努力によってかろうじて維持されているのが現状です。
 このままでは、地域から病院が消え地域医療は崩壊します。そうなれば地域住民は安心して生活を営むことが出来なくなり、ひいては地域社会が崩壊してしまいます。
 そうした中、地域医療は医療を提供する側だけでの努力で維持出来ません。住民もともに参加し、スクラムを組んでいかなければ、いつでも、どこでも、だれでも良い医療を受けることは出来ないと考えます。
 これまで3回のシンポジウムを通じて、地域医療の現状を住民の皆さんに訴えてきました。少しずつではありますが浸透し、地域から病院支援をする会が立ち上がっています。
 この芽を大事にしながら、今後は地域の住民の皆さんとともにこの中山間地域の医療をどうするかを考え、方向性を見出すことができる活動が出来ればと考えます。
 そして具体的には、地域住民と行政や医療機関の橋渡し的な役割を担い、この雲南地域の医療を守るにはどうすれば良いかを考える場を提供していければと考えます。