【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-③分科会 地域からつくる保健福祉のしくみ

民間移譲された施設に、ボランティア活動で
かかわってみました。
(福祉施設って何なの? 
―― 移譲後のボランティア活動から考える ――)


北海道本部/全北海道庁労働組合・社会福祉評議会・もなみ同好会一同

1. はじめに

 もなみ学園は、1950年北海道立知的障害児施設として札幌市の南部に当たる南区川沿に開設されました。その後、石山東に移転し、火災や施設の廃止提案など、様々なことがありながらも現在の入所定数80人(移譲前)の施設として至っています。
 2004年3月、保健福祉部当局は、我々の反対を押切り『障害児(者)施設の見直しに関する方針』(以後『見直し方針』)の策定を強行しました。内容は2004年~2008年までの5年間で、「もなみ学園の民間移譲」、「肢体不自由者訓練センターと身体障害者リハビリテーションセンターを機能統合し、設置場所を美唄とする」との内容を含むもので、全道庁が部当局に提出した『要求と提言』を部分的に受け入れ、一部で修正には応じたものの、基本的な方針は変更せず、極めて不満な内容となりました。
 しかし、「北海道障害者地域生活支援体制検討会議」における議論との整合性を図ることや、今後の機構改革に向けての十分な協議期間の確保については、部当局と確認をすることができました。
 2005年6月、保健福祉部当局は全道庁に対し、『見直し方針』に基づいて、『道立障害児・者施設の見直し』として「2006年4月から、肢体不自由者訓練センターについては、身体障害者リハビリテーションセンターに機能統合する」「もなみ学園についても、2006年4月に北海道社会福祉事業団(以後事業団)へ移譲する」との提案を行ってきました。
 このことを受けて全道庁は、①障害児(者)の地域における自立生活支援に対する道の責任を明確にさせる。②「要求と提言」の実現を求め、もなみ学園の移譲と肢体不自由者訓練センターと身体障害者リハビリテーションセンターの機能統合に反対する。③障害当事者団体と連携して取り組んできた運動の成果を生かし、入所者や障害当事者の立場にたった運動を展開していくことをたたかいの基本とし、「道立障害児(者)施設の見直し闘争委員会」を設置してたたかいを進めました。
 しかし、最終的には道財政の状況が悪化する中で効率性のみを優先し、提案どおり2006年4月より、統合・民間移譲が強行されました。近年、全国の自治体で多くの福祉施設が切り捨てられてきています。
 今回は、このような状況の中で、「本当の福祉ってなんなのかな」との視点で活動しているボランティア活動の報告をしてみたいと思います。


2. もなみ同好会(ボランティア組織)設立

 2006年4月に「道立もなみ学園」が「社会福祉法人北海道社会福祉事業団」に移譲となりました。その後、児童の社会参加(外出)の手伝いをするため、旧もなみ学園職員の数人が集まって、「もなみ同好会」を設立し、ボランティア活動を行うこととしました。
 2006年5月よりスタートし、2008年5月現在で23回の外出支援を実施しています。


3. 継続してほしいこと(ボランティア活動実施の理由)

① 我々、旧もなみ学園職員が当時のもなみ学園の事業で誇れることの一つとして、児童への社会参加支援事業がありました。毎週土曜日に「土曜プログラム」と称して、4人の職員を配置して、児童を順番に外出を中心とした支援を実施していました(このプログラム実施の導入に当たっては、土曜日に出勤する回数が増えることから、職場内で大議論があった事は言うまでもありません)。この事業は、児童からは大変好評で楽しみの一つとなっていたことから、移譲後も継続してほしいと思っていました。
② しかし、移管後の職員数は現状よりかなり減少することから、外出事業は、しばらくは出来ないだろうと思わざるを得ませんでした。
③ このような状況の中で、民間移譲反対闘争時の課題の一つだった、「混乱なく引き継ぎをするため、移譲先の職員が早めに研修すること」を要求し、実現させることが出来ました。この効果として、子どもたちと事業団職員の方たちはもちろん、職員同士も気心が知れるという利点もありました。また、事業団職員の方たちがとても良い人たちだったので、少しでも助けたいと思え、数ヶ月間(落ち着くまで)手伝いしようという事になりました。
④ 結果として同好会を設立し、我々が勤務していた時に、こんなボランティアがあればいいな~と思っていた外出サポート(職員が同伴しない)を実施しよういう事になり、事業を進めることとしました。そして、このボランティア事業は児童をよく知っている我々ならできると思いました。


4. こんな感じでやってます(運営の実際)

 現在、「もなみ同好会」の会員は、旧もなみ学園職員を中心に15人が登録し、万が一の事を考えてボランティア保険に加入し、活動しています。
 活動内容(資料1参照)は、月1回程度で子ども達と共に外出を中心として行っています。基本的には、我々同好会会員と子ども達の活動ですが、年に2回程度はもなみ学園と合同の事業として実施します。(学園の行事に参加)
 活動費用は、その時の事業毎に、参加会員から3,000円、参加児童から700円を徴収し、費用が余れば、「同好会基金」として積み立ています。その他、会員からの寄付や北海道職員互助会の地域文化交流促進事業からの助成金(20,000円)についても積み立てて、基金の余裕が出来れば、マイクロバスを借りて小旅行もしています。


5. この場面をみるとやめられない(継続している理由)

① この事業は、基本的にみんな(子どもたちを含めて)が楽しいかどうかが重要です。旧職員は、当初「サービスを低下させない」などという使命に燃えていましたが、実際にボランティアに参加すると「使命感」と言う考えは無くなり、とても楽しく、自分たちが嫌なことなどで気分が落ち込んいても、児童とともに過ごすことで解消されようになりました。さらには、この活動が、世の中の役に立っているという気にもなりますしね。結局、今となっては自分たちのために行っているのが現状といえます。
② でも、本当は児童が楽しみにしていることに間違いはありません。何故かというと、当日の参加児童は早々と用意万端で大歓声。出発後の地下鉄の中で、全員の子どもが期待をふくらませ、満面の笑みで座っている姿はとてもほほえましく、和やかな空気が流れます。本当に、この場面をみるとやめられなくなります(帰りは、とにかく学園に一刻も早く戻りたいようで、到着すると、『さよなら』も言わず一目散に部屋に戻りますが…。この時は、ちょっと淋しいですけどね)。
③ また、職員時代と違って、ボランティアと子どもたちとの関係なので、評価をしない自由な活動がまた良いのです。目的だの、指導だの、効果だの難しいことは考えずに、「いかに子どもたちと自分たちが楽しいか」と言うことを目標にしています。計画をその場で変更したり、子どもたちと競馬場に行き、我々の気合いが入る企画もあります。
④ このように自由な事業が出来るのは、送り出す施設側の配慮があってのことです。もちろん、特徴のある子どもたちなので、外出中は様々なアクシデントがあります。食べ過ぎたり、思いの通りいかず、不適応を起こす子どももいますが、それはそれでみんなで楽しんでいます。


6. 受け入れてくれたもなみ学園の職員さんの気持ちは?

「学園の子ども達、職員達を守っていただき、本当にありがとうございました。」
北海道社会福祉事業団もなみ学園 前総務課長 宮脇 一
 

2006年4月に北海道立もなみ学園(知的障害児施設、定員60人)は私たち民間法人に移譲になりました。当時「本当に移譲はうまくいくか?」という不安で一杯だったことを思い出します。職員の総入れ替えに加えて、職員数が激減し、果たして子ども達が馴染んでくれるのかといったことが最も心配でした。しかし、大きな混乱も無く、何とか移譲を完了する事が出来ました。このことは、道立の職員の皆さんが、私たちが研修という形で入った際に、きめ細かく色々とアドバイスをしてもらったことの賜と思っています。職員数が減った分の日常的な関わりは、早出、遅番は従来通り確保し何とかしましたし、関わり方も太陽の園の専門スタッフにより、道立時代に劣らないぞという思いで取り組みました。しかし、「個別の外出援助等のきめ細かな部分をする余裕はないね。」と話していました。おそらく、そのことを見て、小田嶋さんら、旧職員の皆さんが立ち上がってくれたのだと思います。移譲後すぐに、旧職員による外出支援「もなみ同好会」を立ち上げ、月1度程度、外出援助をしてくれるということになりました。開始当初は、小田嶋さんは、「3回位できればいいね。」と話していました。ところが、何と2年の実績を積み、更に今後もしばらく続いていく勢いです。このことは、旧職員の皆さんの子ども達へ思いもさることながら、組織的に進めて頂いたおかげと思っています。会の存在は、子ども達だけでなく、見知らぬ土地で心細くなっている私たち職員も「支えてくれる人たちがいる」ということを感じ、エネルギーを頂いたことは、間違いありません。
 今年4月には、私自身も他施設へ異動となり学園を離れ、これを機に同好会に加入させてもらいました。学園に勤務していた当初は、旧職員の皆さんが、休日に朝早くから来てもらい、ほぼ1日つぶしてボランティアしてくれて大変申し訳なく思っていました。しかし、実際に参加して、失礼とは思いますが、思いの他皆さんが楽しそうに、温かく子ども達と係わっている様子を感じ、本当にほっとしました。そこに長く続いてきた理由を感じました。自分自身も、職員の時とは少し違った感覚で関われ、新鮮な気持ちで子どもに接することができた気がします。
 自立支援法により、民間の事業所の収入が減っています。そういった中、今回のこの取り組みこそ、福祉の原点を感じます。法律の是非論以前に、子ども達を中心に周囲の大人が温かく見守っていくという昔の社会では当たり前だったことを実践している気がします。
 ともすれば、収支勘定や効率性だけを追求し、子ども達を置き去りしている今日、色々な所でこのような取り組みが広がっていくことを望みます。
 道立だの民間だのということは、子ども達にしてみればどうでも良いことです。これだけ、子ども達が豊かに育ちにくくなっている社会にあって、もなみ学園は、本当に子ども達同志や職員、ボランティアとの関わりの中で、豊かに育っていると自負しています。その中には、学園だけの力ではなく、同好会を始めとする周囲の方達に支えがあったからこそと思っています。子ども達が豊かに育つ社会を目指すには、「子どもは、世界の宝」ということを私たち大人があらためて自覚し、垣根を越えて見守っていかなければなりません。そのことを学園の仕事、同好会の皆さんとの関係を通じて学びました。
 最後にあえて言わせて下さい。「もなみ同好会の皆さん 皆さんの支えがあったからこそ子ども達を移管の荒波から守ることができました。本当にありがとう!!


7. 最後に

 このボランティア活動を通して考えたことは、いろいろな方法はあるにせよ、すべては障害を持つ人の生活向上にいかに寄与することが必要であるかということです。また、施設の経営主体が、公立であろうと民間であろうと、そこで働く人は、福祉の仕事の公共性を意識し、利用者のことを考えて仕事をしていることに変わりはない、そのことを改めて感じることが出来ました。
 小泉構造改革は、福祉の大幅切捨てを図り、公的施設を効率性の言葉のもとで競争原理を推し進め民間開放を進めました。結果として、福祉職場でも低賃金労働者や不安定労働者が増大することになり、福祉労働者の地位や仕事への誇りが破壊されています。現に安い賃金により、福祉への希望と理念を持って入った職場を、「生活が出来ない」「結婚しても家族を支えられない」等の理由で現場から去っていく若者がたくさんいます。
 このように、自治体の財政状況が厳しい中であっても、経営主体を変えることは、民間の劣悪な労働条件の労働者を増加させ、福祉サービスの低下につながります。民間の優位性だけを声高々に叫ぶ矮小化された議論は論外であり、肝心なことはその地域の障害者に対する希望ある施策や、人権の確保等の本格的な議論を我々が先導し、自治体や経営者に対し責任を明確化させることが必要であります。さらには利用者にとっても、サービスの低下をしないだけの、経営者交代は、何のメリットもありません。
 福祉とは何かを原点から見つめ直し、すべての福祉労働者がお互いに協力できるような環境作りや福祉に関わるすべての労働者及び利用者が尊厳を持ち得る生活するための運動や、取り組みが今後の課題だと感じました。


(資料1)

2007年度の事業内容

日  時
内     容
参 加 人 数
4月21日
【琴似で回転寿司】 会員7人
子ども9人
6月2日
【円山動物園見学 コンビニ豪華弁当】 会員5人
子ども10人
6月30日
【新札幌で買い物 ロイン亭でバイキング】 会員8人
子ども9人
7月29日
【新札幌青少年科学館見学 ロイン亭でバイキング】 会員8人
子ども8人
8月25日
【札幌競馬場見学 北欧パンでバイキング】 会員6人
子ども6人
9月29日
【バスに乗ってぶどう狩り 仁木町大野園】 会員9人
子ども13人
11月10日
【バスに乗ってティーボール 札幌ドーム】 会員9人.子ども沢山
もなみ学園と共同開催
12月15日
【狸小路でゲーム三昧 アパホテルでバイキング】 会員8人
子ども8人
1月19日
【テレビ塔見学 北欧パンでバイキング】 会員6人
子ども6人
2月16日
【白石ボーリング ロイン亭でバイキング】 会員6人
子ども6人
3月8日
【バスに乗って温水プール 白老スパランド】 会員8人.子ども沢山
もなみ学園と共同開催

2007年度収支決算

収    支
支    出
繰 越 金
35,104
 
交 通 費
149,700
借上げバス料金
会  費
315,600
 
食事代他
216,823
 
互 助 会
20,000
 
 
 
 
寄付金等
52,000
 
 
 
 
合  計
422,704
 
合  計
366,523
 

 


(資料2)

もなみ同好会たより第23号

    "7度の気温にソフトクリームは不適"
 もなみ同好会の23回目を5月10日に行いました。今回は、初めての企画の花見ツアーでした。
 角原さん、勇さん、長久保さん、小田嶋さん、松谷さん、下田さん、多田さん、斉藤ま~さん、後藤さん、そして、3月までもなみ学園にいて4月より福祉村に転勤したあの宮脇さんが同好会の会員に加わり、計10人の参加。こどもは12人でした。
 マイクロバスで9時頃出発し、11時過ぎに厚田の戸田記念公園に到着です。桜はもう散っているかと思いきや、結構咲いていて、また、広大な土地でもあり、とてもきれいでした。
 室内の休憩所もあり、寒さも何のその、食事開始とともに猛烈なスピードでむちゃくちゃ食べ始め、他の人を圧倒していました。
 帰りは、町村牧場(長久保さんは不機嫌)でソフトクリームを食べましたが、気温7度のため、みんなふるえながら食べ、さすがの〇〇君も途中でソフトクリームを投げつけるという、滅多に見られない光景がありました。そんな中、〇〇君は、歯をガチガチさせながら、2個完食。

 次回は6月21日に決定。小樽か、ゲームセンター。
 その次は、7月19日にしましたが、変更して8月2日でお願いします。

    会計報告
5月9日現在の残額(23回目の事業開始前)  65,751円

第23回の収支(5月20日実施)
収 入     支 出    
 参加費 3,000円×10=30,000円    バス代 48,300円  
700円×12= 8,400円    弁当代 26,000円  
合 計 38,400円
 ソフトクリーム 4,750円  
     
合 計
79,050円  
  38,400 円(収入)-79,059円(支出)=-40,650円  不足額  40,650円

65,751円(23回目の事業開始前)-40,650円=25,101円

 5月10日現在基金残額 25,101円