【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-③分科会 地域からつくる保健福祉のしくみ

「全道庁労連障労連」の組織化及び
この間の運動の取り組みについて
~組合において障害をもつ組合員が当事者としての              
                 運動を組織する意義~

北海道本部/全北海道庁労働組合連合会・障害労働者連絡会

1. はじめに ~レポート作成にあたって~

 本レポートでは、「障害をもつ者が雇用された後、最後(定年)まで安心して働き続けることのできる明るい職場づくりのためにどう取り組むべきなのか?」という角度からの取り組み報告と問題を提起していきたい。
 「障害者雇用促進法」では、自治体や企業に対し、一定の割合で障害者を雇用するよう定められている(いわゆる「法定雇用率」)。しかし、現実には法定雇用率未達成の企業が多く、公的機関においても教育委員会を中心に未達成のところが少なくない。また、「法定雇用率」を満たしていても、そこが、障害者にとって働きやすくかつ働き続けていくことのできる職場かどうかとなると、疑問符が付く。それは、労働組合が組織されていないところだけではなく、組織されている職場においても、どれだけの労組が障害者の問題について意識しているかによっても異なる。仮に当該労組の役員が意識をもって障害をもつ組合員の問題に取り組んでいたとしても、役員改選等によって担当者が変わったときに、継続した取り組みを期待できるかは、疑問である。そのように考えると、障害をもつ者が「当たり前に」働くことがいかに難しく大変なことか、多少なりとも想像できると思う。
 そのような中で、私たち障害をもって働く当事者が、自らが所属する労働組合の中で仲間を組織化し、「最後(定年)まで安心して働き続けることのできる明るい職場づくり」のために取り組んでいることの意義は大きいのではないだろうか。
 以上の観点でこのレポートを報告する。

2. 全道庁労連において障労連を結成するまでの経過

 全道庁労連における障害労働者連絡会(以下、障労連)の活動は、1983年11月の「全道庁札幌総支部身障者連絡協議会」結成によりスタートした。
 1980~1990年にかけて北海道庁に採用された障害をもつ組合員は、札幌に配置されることが多く、障労連としての活動も札幌総支部障労連を中心として進めてきた。しかし、徐々に全道各地に障害をもつ仲間が配置されるようになり、全道庁としての障労連組織が必要であるとの声が高まってきた。こうした声を受けて、1998年9月25日、全道庁障労連を結成した。
 なお、全道庁障労連結成に至るまでの自治労北海道本部(以下、道本部)における取り組みとして、1989年から1990年にかけて「自治労道本部障害労働者懇談会」が開催されており、全道庁の障害をもつ仲間も積極的に参加した。同時に全道庁では、札幌だけではなく全道的な障害労働者の労働条件改善を目的にした諸要求をまとめるための「身体障害者対策会議」を行ってきた。そして、道本部では、1991年に「懇談会」を発展的に解消し「自治労道本部障害労働者連絡会」が結成され、現在に至っている。

3. 障労連結成以降の取り組み

(1) 各総支部段階での障労連の組織化に向けて ~「全道オルグ」の実施~ 
 全道庁障労連を結成して最初に開いた役員会で議論になったのは、「障労連組織を、どのようにして強化・拡大していくか」ということだった。
 14支庁の行政区域がある広い北海道であり、全道庁労連も支庁単位に14の総支部を組織している。そのことをふまえ、全道庁障労連の最重要課題は、14総支部すべてに障労連組織を確立していくことであるとの認識に立ち、"①全道14総支部からの幹事選出" "②総支部役員に対するオルグ"を目的に、全道の総支部を対象に「全道オルグ」を行うこととし、年に2~3の総支部へ行き、障害をもつ組合員を集め、それぞれの職場実態を出し合いながら交流を深め、新たな仲間の結集を得てきた。
 どこへ行っても、「普段はなかなか職場の同僚に言えないことも、ここなら言える」「今後もぜひこのような場を設けてほしい」という声が必ずあがり、また、特徴的なこととして、最初は「特に自分は困ったことはない、大丈夫」と言う仲間が必ず一人や二人はいるのだが、他の仲間が具体的に困っていることを訴えるのを聞き、「あ、それ、私にもある」と、さらに具体的な問題が明らかになるという場面が多くあった。あらためて障労連組織の必要性を痛感し、また私たちが活動していくことへの自信を強めてきたところである。
 ところで、「全道オルグ」を行うにあたっては、どこの職場にどんな障害をもつ仲間がいるのかを把握しなければならないが、それは各総支部役員の協力がなければできないことであった。そのため、全道庁障労連が独自に作成したアンケートや広報の各総支部の仲間への配布・集約等を通じ、意識して総支部役員の理解・協力を得るように心がけ、仲間が困ったことに直面した際にすぐに対応できるための基盤を作ってきた。
 以上の取り組みにより、次に述べる合同学習会の開催や各総支部障労連結成など、総支部段階の障労連活動の活性化につなげることができた。
 2003年、釧路・網走・根室・十勝(帯広)の道東4総支部の仲間が集まって、初めて総支部同士の合同学習交流会を実現した。札幌のように障労連の仲間が多く配置されているところと違って、一つの総支部に1~3人程度しか仲間のいないところだと、活動するといってもなかなか難しい。その中で、仲間が少ない総支部において、工夫して学習交流会を実現したことは大きな意義がある。なお、この道東4総支部の仲間による学習交流会は、その後も継続して開催してきている。
 その後、札幌総支部、胆振総支部(室蘭)に続き、網走総支部(網走)、上川総支部(旭川)及び空知総支部(岩見沢)においても、公務員制度改革をテーマにした学習会などを重ね、障労連を結成してきた。
 このように、比較的障害をもつ仲間が多くいる総支部では障労連組織を結成し、同時に周辺の総支部と学習交流会をもちながら全道の障害をもつ組合員のネットワークをつくっていくことが重要であると考えて、組織化を進めてきているところである。

(2) 要求実現に向けて ~働きやすくかつ働き続けることのできる職場づくり~
 「全道オルグ」で出てきた仲間の声のくみ上げに併せて、諸要求実現のための障労連独自のアンケートも行ってきた。(資料1参照)
 また、私たち障労連役員は、体温調節機能に障害をもつ仲間がいることを、「全道オルグ」を行うことによって初めて認識した。これを具体的な要求に練り上げるために、把握し切れていない実態を明らかにしていく必要があることから独自アンケートを実施することとしたのである。この独自アンケートも、その後、毎年継続して行っている。
 以上の取り組みによって、普段、職場では不満や悩みを言えない仲間の声をできるだけ多くくみ上げて、具体的な要求につなげてきた。(資料2参照)

4. 今後に向けて

 数年前から、政府による公務員制度改革、とりわけ能力・実績主義に基づく人事・給与制度の導入へ反対することが私たち全道庁障労連の最大の課題となっている。
 既に導入された自治体が全国に多くあり、北海道庁においても、今年(2008年)の12月から「勤務実績の勤勉手当への反映」が制度の上でも現実的にもスタートさせられる状況にある。この制度の問題点については、紙面の都合からここでは触れないが、これまでの取り組みについて若干述べておきたい。
 全道庁労連では、この2~3年、北海道当局による「勤務実績の給与への反映」に反対する取り組みを進めてきた。また、私たち障労連は、その数年前から能力・実績主義に基づく人事・給与制度導入の動きに対して強い危機感をもって学習会を全道各地で重ね、同時に、組合の定期大会等の場で、全組合員に向け導入反対の取り組みを強化していくことを訴えてきた。
 その取り組みの結果として、昨年末、制度導入を強行された状況の下、全道庁労連は、その制度が自治労中央の求める「4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(苦情解決制度、労働組合の関与)」を具備したものとなるよう、協議するにあたっての前提条件を北海道当局に対して申し入れたが、その中に「障害を理由に不利益を被ることのないようにする」と、一つの独立した項目として条件に入れることができた。そして、障労連独自に設定した北海道当局との交渉においても、「質の悪い理不尽な管理職が少なくない」「職場(上司)の理解が得られず辞めていった障害をもつ仲間が少なからずいる」「どんなに公平・公正な評価をするための条件を整えたところで、最終的に差をつける以上、結局は数値勝負になる」など、実際に仲間が抱いている不安や具体的な実態をふまえた追及をしてきた。しかし、私たちの申し入れに対する当局の回答は「障害を理由に不利益を被ることはないと考えている」という、具体性がなく、かつ不誠実なものだった。
 私たち障害をもって働く仲間は、職場の同僚の理解とサポートによって、自分の持つ能力を精一杯発揮して働く事ができる。しかし、能力・実績主義という名の下に持ち込まれる「競争原理」の中では、これまでのような協力関係が維持できるのかは大いに疑問であり、誰もが自分の評価をあげる事に汲々とし、協力関係が壊されることになるのは明らかである。
 「だれもが定年まで安心して明るく働き続けていくことのできる職場づくり」が私たち障労連(=労働組合)のめざすものである。これは、障害をもつ者にとっては労働組合の中に障労連を組織することによって初めて可能と言える。そのためには、労働組合執行部の理解・協力があって可能になることではあるが、同時に、障害をもつ当事者自身の取り組みも必要不可欠であり、そのどちらが欠けてもありえない。
 このことを確認した上で、今後、組合のもっとも大切な基盤である団結を破壊することを意味する「勤務評価制度」に対して反対する取り組みを強化していくことが、これからの重要な課題であることもあらためて確認しておきたい。


(資料1参照) 2009年度当初予算闘争へ向けての障労連独自アンケート

(資料2参照) 全道庁労連障労連が要求してかちとってきたもの