【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-③分科会 地域からつくる保健福祉のしくみ |
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1. はじめに このレポートは、大分県地方自治研究センターの専門部会の一つ、社会保障専門部会の研究活動「障害者と自治体」の一環としてまとめられた。私たちは「障害者と家族」グループとして、10人のメンバーで作業を進めてきた。 2. 明らかになった課題 私たちはまず、障害者が人として家族とともに地域で生きるライフサイクルを考えた。それに沿って意見交換しながら、具体的な課題を明らかにしていった。 (1) ライフサイクルから考える
意見交換では、「生まれた子どもの障害を親が受け入れることが難しい」、「保育園では障害を伝えると反発を受けることもある」、「入学する学校の選択に悩んでいる」、「卒業後の行き先が課題」、「親は自分がいなくなったら子どもはどうなるのだろうという不安が大きい」、「家族に依存する福祉は難しくなっている」等々、多くの問題点の指摘があった。 (2) 具体的な課題 3. 実際の取り組み では、自治体の現場ではどのような対応が行われているのだろうか。ここで、三つの自治体職場の実例を報告する。 (1) 保育園における障害児の受け入れ |
自治体における対応のモデルケース |
(2) 在宅支援(訪問看護ステーション)の取り組み 訪問看護ステーションは、地域で療養する人及び介護する人を支援することを目的にしている。赤ちゃんから高齢者まで、在宅療養者、障害者など幅広く保険で利用でき、疾患の種類や障害の程度を問わないので対象範囲が広く、多様化したニーズに対応できる。 ① 精神障害者の訪問看護の例 精神障害者への訪問看護は「統合失調症」を主に「躁鬱病」「アルコール中毒症」などが主な利用者。「生活のリズムの調整、身体的なケア」「治療、服薬の相談」「家事・生活の仕方の援助」「家族支援」「睡眠ケア」などにかかわっている。
イ 訪問までの経過 1980年頃 錯乱状態にて発症、入院 寛解、再発をくりかえす。 2000年頃 クリニック通院 現在 訪問看護 月2回、デイケア・作業所 週4回 ウ 問題点 a 支援体制が変わったことにより、精神状態が不安定になる可能性あり b 生活がひきこもり c 家族関係の調整、支援の必要あり エ 目標 a 状態を観察して、悪化防止に努める b 家族の介護負担を軽減 c 本人の望む生活を可能に ② 母子訪問看護の例 母子の訪問看護は「母」と「子ども」双方の要因で訪問することが多い。 |
イ 訪問までの経過;県立病院で手術。退院後、吸引などのため訪問看護を依頼 ウ 社会的背景;母親が地元で介護したいと希望 エ 目標 a 状態の悪化がなく療養生活を送れる b 本人、家族のサポート オ 問題点 a 退院後の悪化の可能性 b 気切部の管理等が一人では困難 カ 対応 a 県立病院とも連携、緊急時はK市民病院を受診 b 呼吸、心拍、SpO2チェック、経管栄養の管理 c 気切部の観察、Yガーゼの交換等 |
(3) 障害者と親の高齢化 (4) 現場から見えてくること 4. これからの自治体のあり方について ―― 私たちの提言 地域で暮らす障害者や高齢者、さらにいろんな困難を抱える人たちの要望は尽きない。むしろ高齢化や過疎化、地域共同体の弱体化のなかで暮らしの困難は増す一方である。しかも、財政削減や負担増はすべての人を直撃し、「苦しいのは障害者だけではない」というのも多くの人の実感である。 (1) 地域社会で「自分らしく」暮らせるように (2) 宇佐市の取り組み ―― 市民参加の「ネット」づくり |
図 宇佐市の障がい者福祉ネットワーク |
夏休み期間の子どもの一時支援事業はボランティアを呼びかけて実施した。障害者の移送サービスは、タクシー利用を考えるとともに運転ボランティアの募集も行っている。今年3月には、市民の理解を深めるため、民生委員などにも呼びかけて400人規模の市民集会を開いたが、すべての参加者から200円の参加費をとった。その一方で、相談支援事業などポイントになる事業には他市を上回る予算をつけている。 (3) 一つの可能性 ――『市民参加』と『市民との協働』 5. おわりに 障害者と暮らす家族にはいつも、「親亡き後」という言葉がずっしりと覆い被さっている。歳をとっていく障害のある子の行く末を心配しながら、多くの親は子どもより先に亡くなっていく。 |