【自主論文】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅱ-③分科会 地域からつくる保健福祉のしくみ |
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第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
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1. ドミナントストーリー(地域包括支援センターは見た) (1) 講演会にて (2) 予防議論 |
―私は、百戦錬磨の厚生労働省老健局幹部が新予防給付に大きな健康増進効果と費用抑制効果があるとナイーブに信じ込んだとは考えられない。(中略)ちなみに、ある病院団体幹部は「新予防給付は年齢拡大に失敗した厚生労働省のアリバイ宣伝で、本気でやろうとしているか怪しい(本気でやると費用増になるため)」と喝破している。 |
二木立氏は、2005年時点で、先のような論を述べていた。(予言または警鐘か?) |
さて、実際の介護給付費はどうなったのか、であるが、実質的にはマイナスに転じるという「効果」があったわけである。しかし、それは介護予防事業の効果だというわけでは「絶対に」ない。本来、健康づくり事業というのは、それこそ長期的な視野に立って行われるものであって、その評価もまた数十年のサイクルの中で判断するものであろう。(因みに本市における特定高齢者のスクリーニングでは、2006年度で対象者約220人、条件緩和後の2007年度で約540人であった。そのうち、実際に介護予防事業に参加した者は2006年度で72人、2007年度も78人しかいない状況である。) 結局のところ、介護給付費の抑制の大きな要因は、2005年度に行った施設給付の抑制施策と、新予防給付による軽度者への利用制限に依るものであろう。 軽度者への利用制限とは、具体的には、マルメ(包括)報酬の導入であり、もう一つは自立支援の名を借りた「使い方の制限」である。 マルメ報酬の導入は、実質的に介護(予防)支給限度額の足切りである。介護保険サービスが収益事業である以上は、月当たり低水準の定額しか持ってこないお客は出来るだけ回数少なく受け入れ、重度者の利用割合を増やしたい、となるであろう。しかしながら、介護(支援)認定を受けたものの大半が軽度の者である。結果として、介護保険から出回るお金は少なくなりマーケットは想像以上に圧縮されたのである。今にして思うが、何故、報酬審議会において事業者から反対がなかったのか、本当に疑問である。 「自立支援の名を借りた使い方の制限」というのは、地域包括支援センターがやっている予防プラン(要支援者へのサービス計画)作成にも大いに関係があるのだが、簡単に言うと「ヘルパーさんに何でもまかせっきりにする(依存する)のではなくて、自分も一緒に料理をしたり掃除をしたりする。」考え方と言って良いだろう。 「依存による廃用を防ぐ」という主張は大変ご立派に聞こえるが、厚生省がお手本にしなさいといったICF(国際生活機能評価分類)に基づくケアプランとは相容れないところがある。その人らしい生きがいのある生活のためのケアというには、内容が乏しすぎる。利用者には、「一緒に買い物」「一緒に調理」「一緒に洗濯」そう聞こえるだけだと思う。 二木の②については、メタボリック・シンドローム予防議論等についても同じ事が言える。つまりは、「国を挙げての健康づくり、介護予防」が喧伝されているが、その内容に科学的な裏づけはない(かもしれない)。そんな希薄なものに、「参加した方がいいですよ。参加しなければいけないのですよ。」というのは如何か、という意見だ。 怖いのは、パワーリハ等に対する過度の期待や、能力の全般的改善があるといった誤解である。その結果として、次に引用するような論旨が住民にもウケてしまう風潮は困ったことである。(ちょうどウチのまちづくり係長が深い考えもなく「頑張ってふれあいサロンをやってください」と言ったのに大きな拍手があったように……) |
「受診者に何らかのインセンティブを与え、受診していない人には、言葉はきついが多少のペナルティがあるようにすれば、自分の健康を守ることについてのインセンティブが働く」 「健康の保持・増進に努力した人とそうでない人との公平・公正の兼ね合いは考えていくべき。(厚労省として)何らかの工夫や仕組みを提案したい」 (中略) ①「すでに民間の生命保険・医療保険では導入されているように、喫煙の有無や肥満度などに応じて〔公的〕保険料を設定することは可能である」。②「がん検診で発見された場合とそれ以外の(症状を自覚してから医療機関を受診して診断された)場合とで、自己負担率を変えるべきである」。③「食事療法などをきっちり守っている患者には、自己負担率を下げることも考えられる」。 (中略) 「予防に大切なのは1人ひとりの努力。(中略)遺伝性でH啼く生活習慣に起因する病気を減らすには、その患者にかぎって患者の月額上限を上げるなど、本人が経済的にも痛みを感じる仕組みが避けられないのではないか」。ここまでくると、ナチスの「義務としての健康」そのものです。 |
生活習慣病にかかること、慢性的に治療が必要になること、介護保険サービスを遣う必要が生じること、それらを一個人の責任に帰していいものなのだろうか? それが、「安心を保障する医療保険や介護保険」の保険者の姿勢でよいのだろうか? 本当のところ、今の予防メニューを勧める自信はあまりない。 (3) お年寄りは何処へ行くのか? |
(資料)
☆要介護者のサービス利用の有無と、介護者のストレス、悩みの有無の関係 |
(問4)現在、要介護者は、介護保険サービス、福祉サービス等を何かご利用されていますか? | (問8)現在、あなたは少しでもストレスを感じていますか?また、介護に関して悩みを持っていますか? | |||||||
(人) |
(%) |
(人) |
(%) |
(人) |
(%) |
(人) |
(%) |
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①利用している | 148 |
86.5 |
22 |
12.9 |
1 |
0.6 |
171 |
100 |
②利用していない | 43 |
70.5 |
18 |
29.5 |
0 |
0 |
61 |
100 |
③わからない | 0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
無回答 | 13 |
86.7 |
2 |
13.3 |
0 |
0 |
15 |
100 |
・②サービスを利用していないと回答した人の中で、問8②いいえと回答した割合は約3割と、①利用していると回答した人よりも高い。これは、ストレスや悩みがないから、サービスを利用しなくても良いとも考えられる。 ・しかしながら、サービス利用の有無にかかわらず、ストレスや悩みがある介護者の割合が高いことから、サービスを利用するだけではストレス解消や悩みの解決にはならないと考えられる。 |
2. オールタナティヴストーリー(語られなかったセンター次長の講演)
(1) 誰のための社会保障制度なのか? (2) 20XX年の楽観的予測(未来新聞より) (3) 財源論(まとめにかえて) |