【モデル単組】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ-③分科会 地域からつくる保健福祉のしくみ

外出支援ボランティアの取り組みについて


新潟県本部/三条市職員労働組合連合会

1. はじめに

 三条市職労青年部は、「みんなで○○を楽しむ会」という外出支援をしているボランティア団体に団体登録しており、春と秋の年2回定期的に行われる大人数での「お出かけ会」に参加しています。
 青年部として外出支援のボランティア活動に参加しはじめて今年で丸10年が経ち、今回は、ボランティア活動に至った経緯やこれまでの活動について報告いたします。


2. ボランティア参加にいたるまでの経緯

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」という病気をご存知でしょうか。ALSとは難病中の難病といわれる疾患で、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。この病気は常に進行性で、やがては四肢マヒとなり、最後は呼吸筋のマヒにより人工呼吸器を利用しなければ呼吸ができなくなり、最終的には死に至る病気です。進行しても感覚や知能は侵されにくく、また、男女比は2:1と男性に多く認められ、働き盛りの年齢での発病が比較的多いため、本人の精神的な苦痛だけでなく、家族の介護負担や経済的負担も大きい病気です。
 当時、難病患者さんに対する様々なサービスも行政を中心として少しずつ整えられてはいましたが、家族の介護負担を軽減するための体制整備が中心であり、患者さん本人のQOL(生活の質)を高めるための支援までには至っていませんでした。患者さんの多くはテレビを唯一の友とし、天井だけを見て過ごすような日々を送ることを余儀なくされていました。
 そんな中、1996年7月頃からALS患者宅へボランティアが家庭訪問を開始しました。患者さんの「外の空気に触れてみたい……」という人間として当たり前の希望を何とか実現したいというボランティアの思いが、1997年10月下田村(現在は三条市)の「漢学の里」への「日帰り外出」という形となって現れました。
 ちょうどそのころ、三条市職労では1997年8月に青年部を結成し、青年部では「学習会」や「ボウリング大会」などを通じ仲間作りに励んでいました。ある時、ALS患者の外出支援をしていた方から、車の乗降などどうしても人手が必要で、若い力を貸してもらえないかという依頼がありました。とても活発的であった当時の青年部長は、外出支援のお手伝いを青年部のボランティア活動とし、市役所の職員ではなく、一市民として活動に参加することにしました。
 三条市青年部として初めての参加は、1998年5月に行われた「長岡市内の公園への日帰り外出」に、当時の部長はじめ3人で参加しました。外出に当たっては、患者さんをベッドから車椅子に移動させるのにも、人工呼吸器を使っているため、呼吸器を一度取り外し、一人は呼吸器を車椅子に積み、その間にもう一人がポンプのようなもので空気をおくりこみ呼吸をさせながら、車椅子に乗せるというものでした。これは患者さんだけではなく、家族の介護負担も大変なものだろうと感じたそうです。
 後に、「こんな楽しみを一人でも多くの患者さんに味わってもらいたい」というボランティアの熱い思いと市役所と保健所がドッキングして、患者さんのQOLを高めるための支援をする組織の結成につながりました。
 その後、この組織は行政の手を離れ、「みんなで○○を楽しむ会」の発足となります。


3. 「みんなで○○を楽しむ会」とは……

 「みんなで○○を楽しむ会」は、たった一人の障害者の方の「ジャズが聞きたい」の声から始まり、1998年12月にジャズコンサートを開催し、1回のコンサートで終わることなく、現在まで外出支援のボランティアを行っている会です。
 会の目的は、お年寄りでも、障害を持っている人でも、女でも、男でも、手助けが必要な人と手助けができる人とが集まって、子どもから大人まで、一緒になっていろいろな事を楽しもう、一人では外に出ることのできない人やその家族を支援しながら楽しもうという趣旨のもと活動を続けています。
 次の通りA~Dの会員で構成され、三条市青年部はB会員として団体登録しており、発足当時から活動に参加しています。
  A会員:利用会員(手を借りてみんなと楽しみたいと思っている障害者やお年寄りの人)
  B会員:提供会員(障害者の方達をサポートする人)
  C会員:賛助会員(今は参加できないが、会費で協力できる方)
  D会員:協力会員(B会員の家族で、B会員と同様に行事に参加できる人)
 「みんなで○○を楽しむ会」という名のごとく、行き先や内容については会員さんの意見や希望をもとに決められ、何を楽しんでもいいから、好きなことをみんなで楽しもうと毎回違う場所へ出掛けています。主な活動としては、年2回春と秋の大人数で実施する「お出かけ会」のほか、一人ひとりの希望を叶えるため事務局と会員さんの都合をつけての少人数での外出も年に数回行われます。買い物がしたいという人がいれば、デパートで買い物を楽しんだり、バラの花が見たいという人がいれば、その時期のバラ園へ行くといった感じです。
 事務局では、どこに外出するにしても、行き先、人数、乗車メンバーの組み合わせ、ボランティアの人数や車椅子用トイレの確認など、打ち合わせ会議を最低3回は行うそうです。
 まずは、日にちと場所の確認。行き先が野外の場合は雨天時の行き先や、下見は誰がいつ行くかなど、下見は毎回必ず行くそうです。ホームページなどで「車椅子用トイレあり」と書かれていても、実際行ってみると便器とドアのスペースが狭く、一人では車椅子から便器に移れずに使用できないという事があるそうです。腕の力があり、自分の体を支えられる人は一人で使えても、力が無く人の手を必要としている車椅子利用者には、まったく利用できない。そのような事が無い為にも、毎回下見は必須なのです。
 次に、会員さんへの声がけについて。会員さんを誘う時、A会員(障害者やお年寄りの人)の3倍くらいB会員(障害者の方達をサポートする人)がいないと、安全でかつみんなが楽しめる外出はできないそうです。1:1だと、B会員は常に付きっきりとなり、簡単にトイレにも行けず、安全面でも一人だと行き届かないことがあるそうです。A会員もB会員もみんなが楽しむには、一人のA会員に対して、2~3人のB会員が付くという余裕が必要なのです。そのことを考え、声をかける人や人数を決めていく。そして声をかける人、団体会員へお願いする人数、車の台数などがある程度決められます。もちろん声をかけた人全員が参加するわけではないし、A会員の方の体調も変わることがあるので、随時メンバーや車の変更がされるという。
 私たちは、事務局からお誘いを受け「お出かけ会」の当日のみ、運転手などとして参加していましたが、今回レポートの作成にあたり初めて打ち合わせ会に参加させていただきました。打ち合わせの雰囲気は「お出かけ会」の楽しい雰囲気そのままで、「楽しむ会」の名のとおり会議からすでに楽しく行われていました。しかしながら、会員さんをご家族から一日預かるため、当然安全第一で行動しなくてはいけない。そして、何より参加する人全員が楽しめるように細部まで綿密に計画がなされていることを知り、毎回本当に楽しく参加させていただいている裏には、事務局の方の人知れぬ苦労があるのだということを今回あらためて実感しました。


4. ボランティア活動の内容、参加体制

 青年部のお手伝いの主な内容は、「お出かけ会」の車の運転と車への乗降のお手伝いなどの力仕事をはじめ、車椅子を押したり食事のサポートなどです。行き先や内容によって、会の事務局から今回は何人出てもらいたいという依頼があり、新入職員や青年部を卒業した人なども含め毎回5人以上の職員が一市民として活動に参加しています。

(1) 最近の活動内容
① 新潟県立新津植物園&越後のお宿わか竹(2005.11.13(日)新潟市、田上町)
  県立新津植物園を見学した後、田上町にある温泉宿「越後の宿わか竹」で温泉に入りました。3年ぶりに温泉に入ったという方もおられ、大変喜んでもらえました。(参加者7人)

新津植物園にて 新津植物園にて

② 新潟みなとぴあ 遊覧船の旅(2007.5.20(日)新潟市)
  信濃川ウォーターシャトル「アナスタシア号」で水の都新潟を堪能した後、みなとぴあに行きました。信濃川ウォーターシャトルの乗船には、青年部男性陣が大活躍しました。(参加者  人)

車から遊覧船へ みなとぴあにて

③ 緑の中でバーベキュー(2007.10.14(日)三条市内)
  秋晴れの中、旧下田村の大谷ダムまで「ちょこっとドライブ」を楽しんだ後、お昼ご飯は樫の森でのバーベキュー。食事の後はミニピアノコンサートに即興ライブも加わり楽しいひと時を過ごしました。(参加者10人)

ドライブ中にBBQの準備 屋内の様子
天気がいいので急遽外へ 食事の後のミニコンサート

④ ビッグスワンでラグビー観戦・県立自然科学館見学(2008.5.18(日)新潟市)
  五月晴れの中、新潟市の鳥屋野公園を散策し、昼食は公園内の東屋でお弁当を食べました。午後は二手に別れて行動。1班はビッグスワンで開催されたラグビー日本代表戦を観戦し、もう1班は新潟県立自然科学館を見学しました。(参加者7人)

鳥屋野公園に到着 新緑の公園を散策
芝生の上も車椅子で やっぱり最後はみんなで記念撮影

(2) 参加しての感想
 私たちは、B会員としてA会員の方をサポートする立場として参加していますが、毎回いろんなところに行くので、意外と自分自身も初めて行く場所だったりすると「意外といいところなんだなぁ」と思わず夢中になってしまうことも多々あります。また、おいしい食事やお弁当が出たりと、「これではお手伝いになっているのかな?」とちらっと頭をよぎる時もありますが、やっぱり自分自身も楽しくなくてはと思うし、何より、事務局の方をはじめ周りのみんなも楽しんでいるから、「これでいいのかな」と思っているうちにあっという間に一日が過ぎるという感じです。それでも、帰りに車でA会員の方を自宅まで送り届けるときに、丁寧に「ありがとう」という言葉をいただくと、少しですが役に立った実感がするし、何より参加してよかったなと毎回思います。
 初めて参加する職員は、車椅子を押すことも初めてという人も多く、初めはぎこちないですが、周りのみんなに助けられながら、会の楽しい雰囲気にすぐに溶け込み、してあげるボランティアでなく、参加したみんなが楽しめる会なんだということを実感してもらえます。


5. おわりに

 青年部では、「みんなで○○を楽しむ会」の発足と同時に活動に参加させていただき10年が経ちました。その間、「みんなで○○を楽しむ会」におかれては、ボランティアの参加者不足があったり、会の発展について模索されながらも現在まで10年以上活動を続けられています。
 事務局代表の方は、「たくさんの人にボランティアに参加してもらいたい。実際に話しをし、車椅子を押してみて感じてもらいたい。○○の会は、そんなボランティアの最初のきっかけとなるような活動をしていきたい」とお話ししてくださいました。
 青年部としては、当日参加というほんの少しのお手伝いに過ぎませんが、活動の度に声を掛けてくださることに感謝するとともに、青年部員だけでなく、青年部を卒業した人でも、男性でも女性でも、誰もが一市民として参加できるこのボランティア活動をこれからも続けていきたいと思います。
 最後に、レポート作成にあたって多大なご協力をいただきました「みんなで○○を楽しむ会」事務局の皆様、その他ご協力をいただいた皆様に厚くお礼申し上げます。