【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅱ統合分科会 市民とつくる社会保障システム

津別町における地域福祉、自主防災への取り組み


北海道本部/津別町職員組合

1. 津別町の高齢化と地域福祉の必要性

 津別町の人口構成は、2008(H20)年5月末現在6,055人、その内65歳以上の人口は2,149人、高齢化率35.5%、平均年齢51.7歳となっており、統計データのある1995(H7)年の65歳以上の人口1,689人、高齢化率22.9%と比べると13年の間に、急速に高齢化が進んでいる状況がわかります。
 以前当町では、2006(H18)年8月、「自主自立のまちづくり構想」が練られ、この中で2035(H47)年には人口2,493人、その内65歳以上の人口は1,132人、高齢化率45.4%と超高齢化社会に向かっているとの予測がされました。(下記グラフ


将来人口推計

 超高齢化社会がどのような地域環境になっているのか、長野大学教授の大野 晃氏が最初に提唱した「限界集落」という考えで照会しますと、就業人口が増加しない過疎地域にあって、産業や雇用が衰退していき、若年層の流出が進み、65歳以上の高齢者が更に年上の高齢者を支える状況、冠婚葬祭、地域清掃、除雪などの自治会活動、社会的な共同生活が介護する人の高齢化とともに、維持していけない状態になることです。
 参考までに限界集落の区分は以下の表を目安にしています。


名 称
定   義
内       容
存続集落 55歳未満人口比50%以上 跡継ぎが確保されており、共同体の機能を次世代に受け継いで行ける状態
準限界集落 55歳以上人口比50%以上 現在は共同体の機能を維持しているが、跡継ぎの確保が難しくなっており、限界集落の予備軍となっている状態
限界集落 65歳以上人口比50%以上 高齢化が進み、共同体の機能維持が限界に達している状態
消滅集落 人口0 かつて住民が存在したが、完全に無住の地となり、文字通り集落が消滅した状態

 近年、身近にある問題として地方でなくとも核家族化が進み、ひとり暮らしの高齢者が増え、時折ニュースや新聞でも、近所の住民に気付かれないまま孤独死する現状を耳にしますが、近所の住民は、郵便箱に新聞が何日も溜まっている状況など気に掛ける必要があります。これまでには保健師をはじめとした行政事業や、老人クラブ、自治会から推薦されて社会福祉協議会から委嘱される地域ボランティアの福祉委員で、地域の中で助けを求めているお年寄りや障害者、その他の要支援者に対して、その人たちの立場になって問題解決の活動をし、必要に応じてそれらの情報を社会福祉協議会に報告し、逆に福祉に関する事業やサービスなどの情報を提供するパイプ役としての対応が成されていますが、今後地域の高齢化は、さらに支援や介護の必要な高齢者が増加していくことで、新たな対策を進めなければならない問題なのです。

2. 自主防災活動の必要性

 近年、集中豪雨などの自然災害や大規模な地震により全国各地に大きな被害がもたらされています。1995年1月に戦後最大の被害をもたらした阪神・淡路大震災の経験から、地域における防災活動の重要性、つまり「自主防災組織」の必要性について大きな教訓を得ました。交通網の遮断や火災の同時多発などで、警察や消防などの機関が対応しきれない状況のなか5,000人を超える死傷者がありながら、地域住民の助け合いにより多くの命が救われました。災害時では、下図のように救助隊に救われるケースは極少数なのです。


生き埋めや閉じこめられた際の救助
(社)日本火災学会:「兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書」より

 自主防災組織が結成されている先進地の事例を整理すると、「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚と連帯感に基づき自主的に結成する組織で災害による被害を予防し、軽減するための活動を目的としています。地震、台風、豪雨、大雪などを原因とした広域的、長期的な停電や断水などの災害に対し、地域の地理的な条件や高齢者、要支援者の状況、平日の日中に仕事や学校に出ている方を除いた地域滞在者の状況など各地域の実情を考慮して、次のような活動を整理しているのです。
(日常的な活動)
 ・防災知識の普及        ・地域の災害危険箇所等の把握
 ・防災訓練の実施        ・火気使用設備器具等の点検
 ・防災用資材、機材の管理と整備
(災害時の活動)
 ・防犯対策(避難家屋の見回り) ・出火の防止、初期消火、防犯対策(避難後の戸締り)
 ・負傷者の救出、擁護      ・必要に応じて要支援者をはじめ住民の避難誘導
 ・情報の収集と伝達       ・犬や猫など各戸のペットへの対応
 ・防災本部や援護団体との連携による活動(給食、給水、支援者への励まし)
 上記活動は、地域の実情に応じて作成されており、多様な活動が取り組まれています。

3. 当町自治会におけるこれまでの防災対策

 当町においては、2005年の自治会長会議の中、町より「自主防災組織」についての説明がなされ、以降いくつかの自治会へと下ろされました。2006年には、2つの自治会において防災講習会が取り組まれ、別添「防災ハンドブック」は多くの自治会で活用されています。そして、2007年4月には一つの自治会で町初の「自主防災組織」が結成され、要支援者の把握と災害時の連絡網が確認されました。

4. 民生児童委員協議会の取り組み

 当協議会では、これまでに防災計画についての学習や、緊急連絡網の整備、社会福祉協議会、自治会、自主防災組織、行政、消防等との連携により災害時のニーズ把握などの活動を進めてきました。
 2006年2月には、全国一斉に「災害時一人も見逃さない運動」を展開し、ひとり暮らし高齢者、高齢者夫婦世帯、障害者、子育て家庭等の要支援者に対しての日常的な見守りと生活の支援を通し、自然災害時における安否確認行動に備えた取り組みとして、災害時におけるニーズの把握や、地域コミュニティによる安否確認体制・支援体制の構築、防災・減災に向けた啓発活動などを通して、地域住民や関係機関と連携、協働した安全で安心な街づくりをめざす運動を引続き展開している。

5. 福祉マップの作成

 2007年8月の自治会福祉委員研修会での問題提起があり、地震などの天災の際に近所の住民が支援できる体制、住民みんなが安心して暮らせる環境整備・情報が必要とのことから、2007年11月「地域の福祉活動推進に向けた合同会議」(津別町社会福祉協議会、津別町自治会連合会、民生児童委員協議会)の中、「自治会福祉マップ」作成の提案を受け、地域で支援を受けて暮らす方々の現状や、災害時の支援活動の重要性・個人情報の取り扱いを把握し、各自治会役員それぞれが、2008年3月末までに「自治会福祉マップ」の作成を手掛けることになりました。
 自治会福祉マップの利用目的は、誰もが老後を迎える過程で、予期しない病気や事故に遭い、これまでの生活ができなくなる前に、困った人を早期に発見し、素早くサービスに結びつけ、近隣の人々による助け合いのネットワークを進めることにあるのです。
 「自治会福祉マップ」の作成にあたり、名簿等の内容はすべて個人の情報となります。
 調査段階では、地域住民に回覧板等で「調査した内容は、福祉活動や自治会活動のほか、事故や災害時の情報として活用し、目的以外には使用しません。」との説明を記載し、承諾の上で調査に協力いただくこととして、原則福祉活動に関係する最低限の役員(自治会長、自治会福祉委員、民生委員)にのみ所有することとし、自治会内で協議の上、地域の実情に応じた対応をすることにしたのです。
 以後、2007年12月中に、ほとんどの自治会で自治会回覧の案内文書が回覧され(別紙参考)自治会福祉名簿(案)を参考に整理し、「自治会福祉マップ」については任意に自治会戸別図に要支援宅を書き込む作業が始まりました。
 2008年3月末には、それぞれの自治会から、「自治会福祉マップ」(別図イメージ)の提出があり、65歳以上の1人世帯や、65歳以下の世帯でも支援を必要とする住宅について地図上で表記され、行政、自治会などで相互利用することとしたのです。

6. おわりに

 今回のレポート作成のなかで、高齢化の進む地域での助け合いのネットワークを進めることは、これまでの冠婚葬祭、地域清掃、除雪などお手伝いが、内面的にもより深く浸透していかなければでき得ないことでありますが、将来、住宅政策や町並み整備でも、高齢者が歩いて生活できる、衣食住や医療等に係る環境こそ整備しなくてはならない根本でもあり、その整備も早々に取り組む必要があると感じられました。

防災ハンドブック

自治会回覧「福祉マップづくりの調査にご協力ください」

自治会福祉名簿(案)

自治会福祉マップ