【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-①分科会 都市生活とまちづくり

現場を担う消防職員から見た大阪府消防
広域化推進計画(案)


全国消防職員協議会 新名 政宏

 大阪府は南北に約86km、東西に約25km、面積は約1,897km2で全国47都道府県中二番目に小さな面積となっており、人口は約882万人である。
 現在、府内43市町村(33市9町1村)では33の消防本部が設置されており、内訳は、28市町で単独消防本部、5つの一部事務組合(11市町で構成)がある。また3町村で事務委託を実施しており、消防非常備団体が1町(能勢町)となっている。また、大阪府内の消防本部数は北海道の68消防本部、愛知県の37消防本部、埼玉県の36消防本部に次いで全国で四番目に多く、市町村単独消防本部数としては愛知県と並んで全国で最も多い。
 消防本部の管轄人口では、大阪市消防局の約250万6千人が最大で、最小が河南町消防本部の約1万7千人となっている。管轄人口規模では50万人以上が3団体、30万人以上50万人未満が4団体、20万人以上30万人未満が5団体、10万人以上20万人未満が7団体、10万人未満が非常備団体を含み15団体となっており、管轄人口10万人未満の小規模消防本部が府内の4割強を占めている状況である。
 管轄面積の面からは、大阪市の約222km2が最大で、最小が忠岡町の4km2となっている。狭隘な管轄面積を持つ消防本部の全国順位30消防本部のうち8消防本部が大阪府域にあり、また、管轄面積100km2未満の消防本部が29団体と、府内消防本部の9割近くを占めている。府内の1消防本部あたりの管轄面積の平均は57km2で、全国でも最も小さな管轄区域となっている。
 府内の市町村消防の消防力を、国が定める「消防力の整備指針」に基づき算定される充足率の面で見ると、ポンプ車・救急自動車・消防職員の充足率は全国平均より低く、特に消防職員の充足率は全国平均の75.5%に対し、17団体では50%から60%台、9団体で40%台以下と低水準で、管轄人口20万人以上30万未満の消防本部でも全国平均を7ポイント下回っている。消防職員の職種別では、管轄人口20万人未満の消防本部で消防・救急・救助隊員数の充足率が40%から50%台、管轄人口30万人未満の消防本部で予防要員の充足率が30%から40%台となっており出動要員に十分な余裕があるとはいえない状況である。


北部ブロック

豊中市、池田市、吹田市、高槻市、茨木市、箕面市、摂津市、島本町、豊能町、能勢町

東部ブロック

守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、門真市、四条畷市、交野市、東大阪市

南河内ブロック

富田林市、河内長野市、松原市、柏原市、羽曳野市、藤井寺市、大阪狭山市、太子町、河南町、千早赤阪村

泉州ブロック

岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、和泉市、泉南市、阪南市、忠岡町、熊取町、田尻町、岬町

大阪市域

大阪市

堺市域

堺市、高石市

2008年2月 大阪府消防広域化推進計画(案)から


大阪府下の道路状況と推理状況から見る広域化推進計画(案)

 消防広域化のメリットとは推進計画(案)によると、「①消防本部の部隊数が増加するため、多数の部隊の統一的な運用が可能となり、初動体制や増援体制が強化される。②消防本部の管轄区域が拡大するため、消防所署の適正配置や管轄区域の適正化が図られ、現場到着時間が短縮される。③総務部門や通信指令業務が一元化・効率化されるため、直接消防サービスを提供する現場要員の増強や、近年著しく高度化している予防業務・救急業務担当職員の専門化・専任化が進展し、より質の高い消防サービスの提供が可能となる。などの効果が挙げられる。特に、今後、更に需要が高まると予測される救急業務については、管轄区域が一体化することにより、現在よりも最寄りの所署からの出場が可能となり、現場到着時間や搬送時間の短縮が図られる。さらに、総務部門等の一元化・効率化による現場要員の増強により、より多くの救急救命士の養成が可能となるなど、一層迅速かつ的確な活動が可能となる。」とされている。
 推進計画(案)にもあるように消防職員の充足率が低水準である消防本部同士の広域化において上記にあるメリットを生むためには消防職員一人一人の負担はさらに増加するものと考える。そこで一例ではあるが、広域化後の管轄内の道路における市町村道の占める割合や消火栓の総数に着眼し消防職員の負担と地域に密着した消防行政について東部ブロックを例にして考察する。
 今日まで自治体消防においては管轄内の地理や水利は消防職員一人一人の知識と経験が生かされてきた、それは消火栓上や狭隘な市町村道での路上駐車の回避など機械に頼ることの出来ない側面を持つ。
 東部ブロックで一番小規模は四條畷市ですら国道が11kmであるのに対し市町村道は168kmにも及ぶ、この市町村道の隅々まで把握し現場に対応することが、地域に密着した消防行政の一端を担ってきた。これが広域化後の状況は国道が118km、市町村道は3,220kmとなり道路総延長は3,618kmとなる。また消火栓は広域化後3万基を超え、防火水槽などを含めると3万2千ヵ所を超えるものとなり、職員の負担なくして広域化は成り立たないことが見て取れる。このことから適正な人員配置と現場で働く消防職員の意見と地域住民の声が届く広域化を実現するため、職員と市民両者の推進計画策定への参画が必要不可欠と考える。


別表1
大阪府東部ブロック 各市町村の道路総延長と消火栓等の総数
 

総延長

国 道

主要地方道

一般府道

市町村道

消火栓

防火水槽
(その他含む)

守口市

212

9

5

11

187

3,985

305

門真市

181

5

11

8

157

八尾市

620

17

24

16

563

5,436

471

寝屋川市

326

14

21

12

279

9,316

806

枚方市

745

25

40

28

652

大東市

229

6

16

9

198

1,988

105

東大阪市

907

23

36

15

833

7,655

628

四條畷市

187

11

3

5

168

644

119

交野市

209

8

9

9

183

1,396

134

合計

3,616

118

165

113

3,220

30,420

2,568

     
※単位:km ※有料道路を含まない


別表2
各消防本部の規模
 
人 口
管轄面積 km2
消防職員数
(定数)
消防署
出張所
団員数
東大阪市消防局 511,922 62 489 3 13 550
枚方寝屋川消防組合 消防本部 653,307 90 772 3 16 935
守口市門真市消防組合消防本部 281,726 25 367 2 6 412
八尾市消防本部 273,883 42 250 1 5 252
大東市消防本部 128,671 18 120 1 2 390
四條畷市消防本部 57,529 19 69 1 1 179
交野市消防本部 79,438 26 73 1 0 202
合計
1,986,476 282 2,140 12 43 2,920