【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり

住民との協働による地域活性化
~まちのPR活動を通して学んだこと~

北海道本部/自治労枝幸町役場職員組合

1. 町の概要

 枝幸町は、北海道宗谷支庁管内の最南端部に位置し、2006年3月20日にオホーツク海に面した水産資源豊富な枝幸町と、森と清流のまち歌登町が新設合併して誕生した、総面積1,115.67平方km、町域は南北54km、東西43kmにおよび北海道でも有数の面積を有する森・川・海ありの自然豊かなまちです。
 産業においては、枝幸港を中心とした水産業、南部の丘陵地帯や歌登地区での酪農業、広大な森林を背景とする林業など、一次産業がまちの基軸をなしており、特に水産業においては、早くからホタテやサケ・マスの増養殖などの「育てる漁業」へ転換を図るほか、ホタテ・サケ・毛ガニの共同経営漁業による各種漁船漁業の併用によって精力的に漁業生産を行ってきた結果、水揚げも安定的に推移しており、過去5ヵ年の平均水揚げ取扱高でも60億円を超え、基幹産業の中でも最も経済波及効果が大きく、その発展が町の盛衰を左右すると言っても過言ではありません。
 観光イベントも積極的に行っており、中でも日本一の水揚げを誇る毛ガニをメインとした「枝幸かにまつり」は毎年7月に、特産品のメジカ(サケ)をメインとした「よくばりフェスタ」を毎年10月に盛大に開催しており、道内外から多数のご来場をいただいています。

2. オホーツクブランド活性化に向けた取り組み

 近年の産地価格の低迷や燃油の高騰など、水産業を取り巻く情勢は年々厳しい状況が強まる一方であり、漁業生産基盤の整備強化とともに、産地価格の維持・安定と更なる販路の拡大を図ることが今強く求められています。
 このような状況の中、豊富な水産資源を有する枝幸町ですが、その知名度は必ずしも十分ではなく、特産品についても本格的なブランド形成には至っていないことから、町内の産業機能が連携し、豊かな自然環境と豊富な水産資源を組み合わせた「オホーツクブランド」を更に大きく育てていく必要があるため、枝幸町地域活性化推進協議会を中心に町全体の取り組みとして2005年度からの継続事業と2007年度に新たな事業を展開し、都市部へのPR活動を強めています。

3. 組合の取り組み

 自治労枝幸町職員組合も、これからの枝幸町、我が町の産業を支えていく一員としてこれから報告するキャンペーン事業、都市消費者モニターツアーの開催に参加し、民間の方たちとともに一緒に汗を流すことで、役場職員としての目線だけではなく、一町民としての目線でも自らの町の良さや課題を掘り起こす機会とするため、また、日ごろの業務では経験できない販売・PR活動等を通して、新しいことに挑戦する気持ち、学ぼうとする意欲を高める研修の場として取り組んでいます。

4. 事業内容

(1) ~森と海の魅力発信~オホーツク枝幸食べ尽くしキャンペーン
 2005年度より東京有楽町ふるさと情報プラザにおいて「~森と海の魅力発信~オホーツク枝幸食べ尽くしキャンペーン」と銘打った事業を開催し、「枝幸町」の知名度アップと特産品の販売、PR、ミニイベント、アンケート等を観光協会、漁業協同組合の方たちと一緒に行っています。
 このキャンペーンを行うにあたり、私たちは枝幸町を東京の人たちにどう伝えるかということを念頭におき、大漁旗や漁に使う道具を展示する等、漁師まちの雰囲気を出しながら、冬の厳寒期、オホーツク海に面する町特有の自然現象である「流氷」をイメージ戦略的に活用するため、写真の展示や本物の大きい流氷を展示する等、オホーツクを全面におしだした会場づくりを行い、観光や地域産品の差別化を図りました。
 また、実際に販売にあたってみると、都会の方に商品のこと、おすすめの食べ方や、漁の方法等いろいろなことに対して質問ぜめにあうことも多く、商品を売りこむ経験等が無かった私たちにとっては困惑することもありましたが、都会の方に新鮮で美味しい自慢の特産品を存分に提供することができました。中でもサケの重量を当てると抽選でサケがまるごと一本当るアンケートクイズや、毛ガニが当るミニゲーム等ユニークな企画が人気でとても好評でした。
 このキャンペーンを継続して行ってきた結果、販売する製品、販売手法、場所や演出等、都市部でのPRを行うための一定の情報が蓄積されてきたことや、毎年ご来場いただけるお客様も増えてきており、「枝幸町」の知名度アップと特産品のPR、販売に一定の成果を挙げることができたと思います。

【主なイベント内容】
~森と海の魅力発信~オホーツク枝幸 食べ尽くしキャンペーン
○枝幸町に関するアンケート調査の実施
○観光パンフレット配布及びパネル・ポスターの展示
○枝幸町PRビデオの上映
○オホーツクの自然を「見て・触る」体験コーナー
 ・流氷の展示
○ミニイベント等の開催
 ・クイズ付アンケート調査(各日開催)
 ・ホタテ貝キャッチャーゲーム
 ・ホタテ干貝柱つかみどりゲーム
 ・北の漁場ゲーム
(ミニイベントの内容)
①クイズ付アンケート調査(各日開催)
 ・「サケ重量当てクイズ」付枝幸町アンケート調査の実施
 ・アンケート調査に協力いただいた方552人にホタテ干貝柱(7個入) をプレゼント
 ・サケ重量当てクイズは、冷凍した特大サケを手で持つなどして、その重量を記入して いただき、正解者の中から抽選で10人に「めじか鮭」1尾をプレゼント
 ・抽選は、帰町後に行い、当選者には文書にて通知
 ・商品の発送は、10月中旬とした。
②ホタテ貝キャッチャーゲーム
 ・参加要件: 商品1,000円以上お買い上げの方、先着30人
 ・ホタテ貝殻の中に景品の書いた紙を入れ、専用の竿で釣り上げてもらい、書いてある景品をプレゼント
③ホタテ干貝柱つかみどりゲーム
 ・参加要件: 商品1,000円以上お買い上げの方、先着45人(品切れまで)
 ・専用箱からつかみどり(ビニール手袋着用)
④北の漁場ゲーム
 ・参加要件: 商品1,000円以上お買い上げの方、先着30人
 ・専用箱に景品を入れ、くじによりスコップですくってもらった景品をプレゼント

アンケート調査集計結果

 このアンケート結果は、キャンペーン期間中にふるさと情報プラザを訪れた方を 対象に実施したものです。

●アンケート回収枚数

 552枚

●来場者住所

 都 内

 329人

(59.6%)

 都 外

206人

(37.3%)

 未回答

17人

(3.1%)

●来場者年齢層

 10代

3人

(0.5%)

 20代

15人

(2.7%)

 30代

87人

(15.8%)

 40代

89人

(16.1%)

 50代

152人

(27.5%)

 60代

108人

(19.6%)

 70代以上 

77人

(14.0%)

 未回答

21人

(3.8%)

     

質問1
 毛ガニの水揚げ日本一の北海道枝幸町をご存知でしたか?
 □知っていた ⇒ □行ったことがある □テレビ・新聞・雑誌等 □その他
 □知らなかった

【回答】

●知っていた

 236人

(42.8%)

 ・行ったことがある

36人

 ・テレビ、新聞、雑誌等 

63人

 ・その他

22人

●知らなかった

306人

(55.4%)

●未記入

10人

(1.8%)

     

質問2
 北海道で好きな海産物は何ですか?
 □毛ガニ □タラバガニ □ホタテ □秋サケ □にしん □カレイ □タコ 
 □ウニ  □その他

【回答】

●毛ガニ 

 342人

(62.0%)

●タラバ 

283人

(51.3%)

●ホタテ 

344人

(62.3%)

●秋サケ 

231人

(41.8%)

●にしん 

104人

(18.8%)

●カレイ 

69人

(12.5%)

●タ コ 

81人

(14.7%)

●ウ ニ 

256人

(46.4%)

●その他 

27人

(4.9%)

     
(けいじ、イカ、エビ、イクラ、タラコ、コンブ、ホッケ、コマイ、すじこ、八角等)

質問3
 海産物をお買い上げの際に心がけていることは?
 □鮮 度  □産 地  □安全性  □栄 養  □値 段  □量

【回答】

●鮮 度 

 469人

(85.0%)

●産 地 

269人

(48.7%)

●安全性 

199人

(36.1%)

●栄 養 

33人

(6.0%)

●値 段 

178人

(32.2%)

● 量  

27人

(4.9%)

     


質問4
 北海道を旅行するとしたら何に一番期待されますか?
 □山海などの料理  □温 泉  □自然・景観  □体験型観光  □その他

【回答】

●山海などの料理 

 353人

(63.9%)

●温 泉

197人

(35.7%)

●自然・景観

336人

(60.9%)

●体験型観光

23人

(4.2%)

●その他

16人

(2.9%)

     

この度のアンケート結果から…都市部の方が北海道に期待することは


(2) 都市消費者モニターツアー
 オホーツク枝幸食べ尽くしキャンペーンを継続して行ってきたことにより、得られた成果やノウハウをもとに「都市消費者モニターツアー」を行うことで、これまでホタテや毛ガニ等の水産物の産地としてしか認識されていなかった「枝幸町」を実際に訪れていただき、水産現場や水産加工の見学、各種自然体験を通して、枝幸への理解をより深めていただくとともに、今後の地場産品の販路拡大につなげていく取り組みです。
 また、実際に枝幸町に訪れていただき体験型ツアーに参加していただくことにより、お客様の生の声を聞くことができ、新たな課題を掘り起こすことができる機会となることも大切な目的の一つで、2007年度に開催しました。
 プログラムは「海の体験プログラム」、「森の体験プログラム」の構成とし、海の体験プログラムでは、さけ・ますふ化場、ホタテ白干加工場、サケ釣り等の見学のほか、実際にホタテ・サケの調理も体験していただきました。
 また、「森の体験プログラム」では、癒しの森見学、記念植樹、ジャガイモ収穫、お土産作り等を体験していただき、枝幸町の魅力を存分に味わっていただいたと感じています。
 私たちも、運営という立場で事業に参加しましたが、参加者がプログラムを体験しているときに驚く場面や感動する場面に遭遇できたことや、「このプログラムはこう改善した方がもっと楽しめるな」という言葉や雰囲気をその場で感じることができ、日ごろ見慣れているため何とも思わなくなっている光景等の存在価値を再認識することができました。


■都市消費者モニターツアー実施内容■

1. 実施日程  平成19年9月28日(金)~10月1日(月)3泊4日
2. 場  所  枝幸町町内一円
3. 募集方法等

・平成18年度の東京キャンペーン・アンケート調査において、本ツアーに参加の意向、関心を持たれた方、120名に案内状を送付
・招待者数は10名(5組程度)アンケート記入者及び家族・友人等1組2名までを対象とした。
・羽田空港発着(空港までは各自負担)とした。

4. 応募者数  27件(38名)
5. 選考方法

・事務局にて、応募者から抽選のうえ10名を決定
・ペア3組~6名 個人~4名  計10名(※別紙名簿参照)

6. 実施内容(※詳細は、別添プログラム参照)

【9月28日(金)】
 ●羽田~枝幸間移動 オリエンテーション (宿泊:ホテルニュー幸林)
【9月29日(土)】
 ●海の体験プログラム
  ・さけ・ますふ化場、製氷冷凍工場、ホタテ白干加工場見学
  ・ホタテ・サケ調理体験、オホーツクミュージアム見学他
  ・夜の森、星空観察(オプション)(宿泊:ホテルニュー幸林)
【9月30日(日)】
 ●森の体験プログラム
  ・癒しの森見学、記念植樹
  ・ジャガイモ収穫体験、お土産作り体験他
  ・サケ釣り見学(オプション)(宿泊:グリーンパークホテル)
【10月1日(月)】
 ●枝幸~羽田間移動 解散


■参加された皆様のご感想~ツアーを終えて~■

 この度は、大変お世話になりました。最高のツアーでした。美しい海と山、そして企画をたてたスタッフの方々の心からのもてなしに、幸せを感じる毎日でした。いろんな体験をさせていただき、感激とともに知識も広がりました。
 このような体験ツアーに魅力を感じる人は沢山いると思います。枝幸はとても素晴らしい街です。是非また行きたい!! そのときを楽しみにしています。
 ありがとうございました。

・大変整った町であるという印象です。人々は親切で素朴です。今後は、何か他に対してインパクトを与えることが必要ではないでしょうか。
・それには、例えば、他町からのレクチャーも必要でしょう。他から成長への助言をもらい、参考にしていく度量が必要かもしれません。
・今回お会いしたのも何かのご縁です。大変お世話になりました。今後、私も私なりに枝幸の良さを友人、知人に話し、第二の故郷として、少しでも貢献できることを考えていきたく思います。

 遠くとも魅力的な町、観光化されていない点が今後の人気のポイントになるのではと思いました。
 枝幸町の「素朴で美しい町」を前面に出して活動してください。今後もますます発展されるよう、何か私にもできることはと考え、行動を起こしていきたいと思いました。今回は、参加させていただき、大変に良い思い出を作らさせていただきました。本当にありがとうございました。

5. 事業に参加してみて

 「オホーツク枝幸食べ尽くしキャンペーン」、「都市消費者モニターツアー」での来場者、参加者からの様々なご意見をいただいたことや、自ら運営者としてこれらの事業に参加したことにより、今までは気づかなかった「枝幸町」が少しずつではありますが、客観的にみえてきたように思えます。
 今までは地域の主要都市から遠く交通の便が悪いため観光化されていない、自然は豊富だが人を呼べる様な目玉的なものがない等、後ろ向きにとらえがちでありましたが、特に都市部の方には観光化されていないということの魅力、素朴で美しい町である点が今後の人気のポイントにつながる可能性が高いということが分かりました。
 枝幸町は、名所旧跡がある観光地とは違うため、与えられる観光ではなく、大自然の中での体験型ツアーを通じて人の温かさを感じ、リラックスした時間を過ごしていただき、日頃の生活では気づきにくいような本来の自分に気づくことができる場所という魅力を全面に押し出した観光を目指してみるものいいのではないかと思います。
 地道でも枝幸町に来てくれた人たちが、その良さを「口コミ」で広げていってくれる、初めて訪れてくれる方はもちろんのこと、家族や仲間と訪れてくれる「リピーター」の方を心からもてなすことができるような企画を町の様々な人が連携し、意見を出し合うことで練り上げていく必要があるとも思いました。
 そして、ホタテ、サケ、毛ガニをはじめとする豊かな海産物を使った「食」を満喫していただくことと共に、今後は町の目玉となる様な海産物メニューの開発等、「食」の更なる充実を図っていくことがこれからの発展につながっていくことも感じました。
 たしかに枝幸町は遠い町ですが、遠くてもまた行きたくなる町として、訪れてくれた方が自然に触れ、感じて、自分なりのオリジナルな思い出を作りたくなるような町として、オホーツクブランド(味覚)とともに枝幸町の可能性をアピールしていきたいと考えています。

6. おわりに

 町全体の連携がこれからの枝幸町活性化のためには必要不可欠なのは言うまでもありませんが、その中でもやはり役場というのは、政策実現のためにも重要な位置を占めていると思います。
 また、様々な活動を通じていく中で町内の異業種の人たちと交流し学ぶ機会を設けることで、これからの町を役場を職員組合を担っていく「人」そのものを育てていくことができると思います。
 このたび報告させていただいた事業の取り組みについても、本来の労働組合の活動とは一見違うようにも思えますが、我が町の産業の活性化にむけた取り組みとして、特に枝幸町は歌登町と合併してまだ3年たっていないため、お互いの理解が深まっていない現状もありますので、そういった意味においても、役場職員以外の町民と協働した町の活性化事業を通じてお互いを知り合うことや、枝幸町を知らない人たちに町のアピールを行うことで、町への愛着が増すこととなります。
 そして、我が町の職員組合として町の発展のために活動し、必要な提言ができるよう自らを高めていくことができる「学びの場」として、これからも積極的に取り組んでいきたいと考えています。