【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり |
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1. 発 端 今から7年前の2001年。鹿追のアートロード商店街の活性化事業として、商店主と鹿追町役場の職員からなる実行委員会が組織され、町の道路整備を契機に、花とアートで町を元気づけよう、と始まったのがウィンドゥ・アート展。 2. 動き出した準備と視察 まず、始めにどんな展覧会を開催したいのか意見交換し、いくつか名前が挙がった著名なアーティストの展覧会が実施可能かどうか検討した。画廊を通さないと無理な作家、タレント作家の場合は事務所を通さないと無理。それで結構経費がかさむ。著名作家はあきらめて、今度は北海道に在住する現役作家に当たり、窓の大きさに合う作品を選んでもらう方式で急遽スタートした。 3. 作家との交渉を通しての問題点と発見 作家との交渉の中で一番難航したのは、窓に絵などを飾るということは、直射日光に晒されるということ、つまり、日焼けしてしまうということだった。そのため、展示条件などを提示すると即座に断ったり、難色を示したりする作家がいる一方で、興味を示し、窓に飾る作品ならば、その条件を想定して作品制作を進めてくださる作家もいて、その反応の違いが面白かった。 4. 第1回ウィンドゥ・アート展 7月20日、海の日。第1回目のウィンドゥ・アート展は開催された。8月末までの約40日。商店街には、色とりどりの花々が溢れ、窓には油絵、陶器、彫刻、インスタレーション、版画、人形などなど、さまざまなアート作品が並び、商店街を行き交う人々は物珍しそうに魅入っていた。 5. 第2回ウィンドゥ・アート展とデメーテル
デメーテルは、十勝で開催された大規模な現代美術展ということで、内外の著名なアーティストを招き、さまざまなイベントが開催され、帯広を中心としたボランティアも組織され、大きな反響を呼んだようだった。しかし、現代美術による地域の活性化というのは一朝一夕にはゆかず、問題や課題も数多く残ったようだった。 6. 第3回ウィンドゥ・アート展と構成内容の変容 そのため、第3回目の2003年は、作品構成をよりわかりやすい絵画や彫刻を中心にして、花との調和を図るよう工夫した。また、現代美術の作品でも親しみやすい、面白い作品を制作している作家を選ぶようにした。この年の夏のワークショップでは、古着を集めて、子ども達がその古着を黒いビニール袋にくっつけたり、ペイントしたりしてファッションショーまがいのパフォーマンスを行ったりして、参加した子ども達は昂奮していたが、この年の反省としては、だんだん展覧会がおまかせになってしまい、商店街の人々が主体的に実施するというよりは、むしろ会場を貸しているだけのような状態になってしまった。 |
出品作品から、彫刻と絵画作品 |
7. 第5回ウィンドゥ・アート展の開催と企画の行き詰まり 第5回の2005年までは、作家を10人程度推薦して、作品を2~3点制作してもらう方式をとっていたが、この年、展覧会の説明を町民向けに行う準備をしていたが、お葬式が急にぶつかったりして、結局実施できなかった。5年間の取り組みの反省としては、展覧会の内容はそれなりに水準の高いものだったが、町民に浸透せず、また協力体制もあまりできなかったということ。ウィンドゥ・アート展のPRのため、ホームページなどに掲載したりしたが、どの程度の動員があったのか、また来町した人々はどう思ったのか、などのリサーチはほとんどしなかったため、成果があったのかどうかわからないまま、終了してしまったことは残念なことだった。しかし、町の職員と商店街の人々とが協力して一つの取り組みをしたことは意義があり、今後はこうした町民の協力と理解なしには、町で行うさまざまな事業が実施困難な状況に陥る危険性も予想された。 8. 第6回ウィンドゥ・アート展の開催と企画内容の転換 2006年からは、公募展を行い、もっと商店街の人々が自分たちの商店街の活性化に主体的に取り組めるような展覧会を実施したらという意見も出て、花の絵の公募展を翌年から実施することになった。そのため、公募展の方法の原案をこちらで作成したが、それ以降の準備は商店街の実行委員の人達が中心になって取り組み、町内の小学校を順番に訪問して、学校展の実施を依頼したり、町内の陶芸サークルや写真を趣味にしている人達に呼びかけて展覧会を実施するように勧誘したりと、自主的に動き回るようになっていった。
9. 第1回花の絵コンテストの実施と今年の動き 2007年の夏には第1回花の絵コンテストが開催され、十勝管内の小中学生の花の絵が出品され、審査を行い、大賞ほか商店賞などが決定され授賞式も商店街の実行委員が中心になって実施された。この展覧会の大賞を町内の小学生がとったことで町民の関心を呼び、出品した児童や家族が商店街を訪れた。 10. 今後の展望と課題 花とアートによる町おこし。言うのはたやすいが、実際にそれを行うのはいろいろな困難が伴う。大事なことは、自分たちの町を自分たちが活性化していく実働部隊になるのだという意識が共有されることだと思う。そうすれば、自ずと意欲が出てきて、準備する際にも張り合いや前向きな行動が推進される。また、義務ではなく、楽しみを持って取り組むことも大事だと思う。 |