【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり

地域再生とまちづくり
~市民事業とコミュニティワーク型仕事づくりを中心とした自治体の雇用政策づくり~

三重県本部/自治労熊野市職員労働組合

1. はじめに

 熊野市から地域外へ輸出されている商品は、農林水産物及びその加工品がほとんどであり、それぞれが個々に熊野市の特産品として輸出されている。
 これまで、その輸出の中枢を担ってきたのは、第1次産品として取り扱う農協であり漁連であって、それぞれが都市部における卸売市場を対象としたものであった。
 しかし、加工品については、個々の事業者の能力に頼ることが大多数で、その事業規模から大きなロット数での対応が出来ず、その輸出量は伸び悩んでいるのが現状である。
 また、特産品といえども「ここにしかない物」という商品もなく、みかん・鮮魚・干物・味噌・梅干し等全国どこにでもあるものを特産品としていることで、その付加価値化やこだわりの部分をおざなりにしてきた結果、特にその商品を求められるという事例は少ない。
 このような現状の中で、農家の一部では直販に活路を見いだし、水産加工の一部の業者は催事における宣伝やマスコミの活用によりその商品の高付加価値化に成功し、その業績を伸ばしている。
 しかしながら、多くの事業者は依然として旧態依然たる状況を脱することができず、地元の顧客・来店客のみに販売などが多く、その業績を地域経済に依存しているのが現状である。
 そのうえ、原材料・製法へのこだわり意識はなく、他の地域における同系統の商品に対して競争力があるとはいえない。

2. 対 策

 2006年度に市単独事業にて各課職員より輸出産業検討事業作業部会を立ち上げ、先進地を視察し、今後の事業に向けて検討・検証を行った。
 職員が個々に視察を行ったところ、共通した話題として
① 地元が元気で行政を全く頼っていない
② 何処にでもある商品であるが、自信とこだわりを持った商品づくりをしている
③ 商品は添加物・防腐剤等を極力使用しない体によいものを生産している
④ 地元での販売は程ほどで、大半は都市部等外部販売が主流であった。あまり地元への販売意識は低い(消費者の絶対数が違うため見切りを付けていた)
⑤ 商品について、全国展開できる生産量・出荷量を確保している
⑥ 年月をかけ商品開発を行い、売れる商品づくりを行っている
⑦ 良い商品は多売薄利でなくても、良い値で取引されている
などがあった。
 これを、現在の熊野市の小売業者に当てはめてみると大変申し訳ないが、今までの商売・生産方法を根本的に改めていかなければ2014年度の尾鷲熊野道路開通時には何もない、ただ通過点でしかない寂れた街になるのは明白である。
 また、基幹産業が第1次産業であるため、雇用面もたかが知れており、地元で就職したくても仕事がなければ生活することは出来ず、結局都市部へ流出していくという悪循環を繰り返し、魅力ある街づくりにはほど遠いのが現状であると思われる。

3. 今後の課題として

(1) 商品のこだわり
 外貨獲得を目的として町づくり
 せっかく熊野古道が世界遺産に登録されていることを無駄にすることはない。
 こだわりを持った商品を優先するため、一定の品質を維持できる商品のみを特産品として認定するなどの仕組みを構築していく必要がある。
 例えば他県・他市町村で見受けられる地元ブランド認定委員会のようなものを立ち上げ、そこにおいて認定されたものだけが地元認証を受けたブランドとして付加価値を得た標榜できる仕組みを構築していく。

(2) 雇用の確保
 行政が地元での雇用の場の確保
 海の幸と年中みかんが採れるなど魅力的な所がある反面、地元雇用が少ない地域柄であるため、行政で施設を作り、商品づくりなど直接産業施策の基本スタンスとし、産業起こしとして転換していくくらいの気構えが必要である。第3セクター等で会社を興し、軌道に乗ったら株式会社化させて優良企業を作ることも可能である。
 時には、雇用の確保による若者の定住促進にも繋がる。
 商品づくりには必ず人手を必要とし、雇用も必然と必要となってくる。

(3) 販売方法の多様な取り組み
 異業種での販路
 青果やその加工品を販売する業種にこだわらず、他の飲食品を扱う業者による商品の取り扱いや銀行・建設業・配送業などの法人による景品・ギフト等への販路を求めていく必要がある。
 都会からの脱却
 これまでは、特産品を大消費地である都会へ売るという発想が主流であったが、その地域にない商品が求められるという観点に立って、内陸部への魚介類及び加工品の販売、寒冷地への柑橘類の販売など、視点を変えて新たなマーケットの開拓を行っていく必要がある。

(4)特産品輸出に係る組織の構築
 商社機能を持つ事業体の構築「熊野名物を一挙に扱う商社」
 熊野には全国に出しても恥ずかしくない商品もないことはないが、販売の方法にかなり問題がある。商工会議所や物産振興会があるがこれら組織は会員すべてが平等に扱われることが前提である。
 そのような状況では何ら変わることがないため、既存の商工関係組織とは一線を画し、自社が定める基準以上の商品のみを取り扱う組織として商社機能を持つ事業体として事業を進め新たな組織を作る必要がある。

(5) 観光業と飲食業との連携
 熊野に来ても、美味しいものがあるが食べられる店がない、ガイドブックにも掲載されていないということは、それだけ地元で自慢できる店がないということに気がつかなければならない。
 そこで干物専門や熊野から輸出している食材を使ったメニューのみを提供することにより、その食の印象度が高くなりリピート効果が高くなる。例えば、大規模な観光センターでここでしか食べられない美味しい干物を食せる専門店の併設や既にある飲食店でも地元商品にこだわった食材を提供したりすることでお互いに知名度も上がり、収入の上昇にもつながり相乗効果が考えられる。

4. 市職員による売り子もしなければ

 上記の対策の内、いくつかは既に実施している。
 例えば、(3)で取り上げた異業種との販路にて食品流通企業のギフト商品としてミカンの取り扱いや不動産賃貸企業からギフト商品として味噌等のスポット購入など、少しずつであるが全国に熊野の特産品が出始めていることなどの報告がある。
 また、林業部門では地域材を利用した木造住宅の輸出も検討しており、現在、地元協同組合と調整し、営業活動を行っている事例もある。
 詳細結果についてはあえて公表を控えるが、職員が地元業者の方達と地方の物産展へ出店・実演販売・バイヤーとの商談・ホテルへの売り込みなどを行い、少しずつであるが手応えを感じている様子である。
 市役所の職員がいったい何をしているのか? と思われるが、売って少しずつでも知名度を上げていく地道な作業も立派な仕事である。マスコミ等で取り上げられ全国区になるまでの下積み努力は絶対必要である。知れ渡ってしまった後の苦労話は笑い話で済まされます。

5. 組合での取り組み

 熊野市職労で行っている取り組みは地元の商店の産品斡旋を職員に行っている。現在、特に力を入れているのが、「熊野地鶏」である。何度か庁内で販売し好評であった。値段的には高価で市場にはあまり出回ってなく普段から購入することは出来ないが、こだわりの肥育法と肉の旨みには自信があり、販売手法も多岐にわたり、これからの活路を見いだしていくこととなる。
 食さずものを売ることは出来ず、まずは自分たち役員が率先して購入し、口コミで広げる努力をしている。

6. おわりに

 ピンチをチャンス 熊野市まるごとブランド化
 市の経営は企業経営と同じといっても良いと思う。他力本願では何も出来ないのである。
 「自分たちの街は自分たちが守る」という自治の原点に立ち返り骨身を削りながら、もてる知恵と力を振りしぼり頑張るしかないと思う。たゆまぬ努力と情熱で、ふるさとの未来を創り、理想の社会にして次世代に手渡しすることが今の行政マンである私たちの使命である。
 また、職員の士気にもつながり、魅力のある職場づくりになる。ただ与えられた仕事をこなすだけが公務員ではなく、一線を画した職種もあって良いと思う。確かに、広く浅く経験するのも公務員としては大切であるが、専門的に行い経験年数も長いプロパーな職員も必要である。