【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり |
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1. はじめに 中山間地域では、高齢化の進展やコミュニティの希薄化、あるいはJA合併のあおりや地元商店の廃業などで、物流との接点を失い、作物を育てる元気はあるのに出荷することができず、出荷をあきらめている(近所に配り、さらに残ったら捨てる・耕作を止めるなど)高齢者の姿がある。これは、高齢者たちの生産性が生かされなくなっているという大きな問題である。 2. 研究テーマの設定 コミュニティビジネスの枠で考えたとき、出荷先として考えられるのは、JA・青果市場・直売所・良心市・地元商店などである。本研究では、町内で利用者も多く、業績を上げている直売所をフィールドにすることとした。 |
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この仮説は本研究の根幹的な思考である。なお、本研究のキーワードは 「福祉」「産業」「つなぐ」である。 3. 福祉産業から産業福祉へ("保護"からの脱却) 既存の高齢者に対する福祉サービスは、高齢者は弱きものという前提であり、心身が虚弱化してから受給することができるサービスが大勢である。サービス利用の要件が要介護度や生活困窮などいわゆる「否定的」なものであり、お金の回る仕組み(産業)ではあるが、儲けているのは高齢者自身ではない。これは福祉が産業となるカタチ(=福祉産業と呼ぶ)といえる。 4. 仮説を基にした実証実験の内容
サービス内容と実験期間等は以下のとおりである。 5. ビジネスサポーターの業務 本サービスの鍵を握るのは実際に「集荷」を行うビジネスサポーターである。現在、業務を委託しているのはTさんという方で、ご本人も出荷をしているという適任者である。 |
【図2】 |
6. サービス稼動開始直後の様子 Tさんに聞き取った初日の状況(湊川系統)は…… 7. サービス利用者のへのアンケート調査 サービス開始後2回(各地域で行った事前説明会でのアンケートを除く)にわたり、高知大生・センター事務局・黒潮町研究員が、「登録者」を訪問し、アンケート調査を実施した。 |
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なお、第2回アンケート時の利用者の世帯状況は次のとおりであった。
さらに「近所で出荷について相談したり、ビジネスサポーターとの交流を楽しみにしているなど、地域コミュニティの再生や、新たなコミュニティの形成=地域の活性化に深く関連している」ということが「利用者の声」として確認された。これは、当初の想定を上回る効果であった。 8. 庭先集荷サービスの課題 実際に現場でサービスを実施して、いくつかの課題も見えてきた。 9. 成果の確認と発見 成果としては以下のような内容が挙げられる。 10. 庭先集荷の可能性 公共・行政サービス(情報・救急・文教・イベント・交通etc.)を受けづらい山間部にとって、必要な公共・行政サービスではないかと考えられる。 11. 転ばぬ先に「新たな杖」
こうした視点で考えると、庭先集荷サービスの利用者は「ありがたい」うえに「楽しい」と語る方が非常に多いことにヒントを見出すことができる。 高齢者たちが楽しんでいるという事実(ニーズ)を目の前にしたとき、高齢社会・高齢地域のマネジメントを可能とする仕組みが生まれたのだと思えてならない。これは「新たな杖」の創造である。 12. 新たなセーフティーネットとして 今後の研究で、庭先集荷の仕組みの精度を上げ、汎用性のある「制度」に育て、全国に提供していくことが、研究に携わる私たちの使命であろう。 |
【図5】 |