【自主論文】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり

発想の転換と地域戦略


北海道本部/占冠村職員組合 三浦 康幸

1. はじめに

 基幹産業の衰退と人口の流出。国家財政の窮迫を背景とした自治体財政の悪化。地方自治推進のために求めるべき権限委譲の前に立ちはだかる欠員不補充という現実。厳しい現状の中で、地域住民と行政職員(以下「職員」という。)はどのような地域政策を進めるべきか。
 本稿では、日本を取り巻くグローバル環境下での一小規模自治体の事例を切り口としながら、地域が生き抜いて行くために必要な発想の転換と、今なすべき地域戦略について考察を加えたい。

2. 研究対象自治体の現状と職員組合による財政分析・将来予測

(1) 自治体の概要
 本稿で取り上げる北海道占冠(しむかっぷ)村は、北海道のほぼ中心部に位置し、西は2006年に財政破綻した夕張市に境を接する。東京23区とほぼ同じ571.33km2という広大な面積に現在約1,300人が住む大きくて小さな村である。
 標準財政規模は1,308百万円、歳出総額は2,169百万円、財政力指数は0.296(2006年度決算時)で過疎地域にしては若干高めの数値を示しているが、これは村内に大型リゾート施設が存在し、大口の固定資産税が期待できることによる。
 また、いわゆる平成16年ショックといわれる全国的な地方交付税削減の影響等により、2005年度から職員の期末・勤勉手当の約6割カットが行われ、その水準は職員待遇を「全国の最低水準」に合わせるとした夕張市職員の手当額の参考にされたと噂されるほど、全国に先駆けて大幅な職員賃金の削減を進めた自治体でもある。
 現在、村内では2011年度の完成を目指す高速道路の建設工事が進められ、数百人規模の工事関係者による経済的好影響を受けているが、工事終了後の地域のあり方についての議論はほとんど進んでおらず、住民の中に将来への不安が広がり始めている。

(2) 2008年度の財政分析と将来予測
 今年度、本組合が分析した財政状況並びに近未来予測は次のとおりである。その内容は本自治体を対象に分析・予測したものではあるが、その考え方は我が国における多くの小規模自治体に適用しうるものであろう。
① 財政予測
  2008年1月に総務省から発表された地財計画を分析すると、少なくても資料1のようなプラス要因が示されており、新年度歳入予算が非常に厳しく算定されていることがわかった(2008年度の村予算の地方交付税収入見込額は8億2千4百万円。それに対して2006年度の同決算額は約10億5百万円である)。ただし、この「つかの間の雪どけ」は、先の参院選の結果等を受けた一時的なものである可能性が高く、また、2008年度決算より地方財政健全化法のフィルターを通らなければならい等の課題が山積する中で、今後も予断を許さない状況にあることに変わりはない。


(資料1)
2008.2.20作成

2008年度はつかの間の雪どけ
~数々のプラス要因~

<2008年度地財計画の増額>
 2008年度の地財計画の歳出合計は83兆4014億円で、前年度対比+2753億円となっている。
<地方再生対策費の創設>
 総務省2008年1月22日付「地方再生対策費の創設に伴う需要額試算について」によると、本対策費の創設により、占冠村では38百万円の増が見込まれている(全国での総額は4000億円)。
<頑張る地方応援プログラムの継続>
 2005年度以降採用されている行革インセンティブ算定を引き継ぐ「頑張る地方応援プログラム」では、2008年度において全国市町村分で1870億円の基準財政需要額の割増算定がなされる予定である。
 さらに占冠村のように全国平均以上に歳出を削減している過疎・離島の市町村においては、更なる割り増しが行われることとなっている。
<地方交付税の増額>
 地方交付税総額が実質4066億円の増額(前年度比+2.3%。内約半分は臨財債分)となっているほか、不交付団体の増加も見られる。
<包括算定経費における段階補正の優遇(500人未満まで考慮)>
 市町村分の包括算定経費に採用されている段階補正では、人口段階区分の最低値が500人未満と従来適用されている最低値8000人未満よりも細分化されており、小規模自治体に配慮した補正となっている。
<全体を通して>
 全体を通して考えると、特別な事情が発生しない限り、2008年度は基金からの繰入はほとんどなしでの財政運営が可能である。


(2) 近未来予想
 2008年度は、過去最高水準の総額を記録した地財計画を背景として、久しぶりに一息つける財政状況となると予測した。また、2010年度までは前回行われた国勢調査(以下「国調」という。)人口が交付税算定に使用されるため、政治状況が急激に変化しない限り本自治体が財政破綻する可能性も非常に低い(資料2)。
 しかし、2009年度中には新地方分権一括法が国会に提出され、2010年度には新しい地方制度がスタートする予定である。官僚等の抵抗があったにせよ、基礎自治体が担う役割の変更は一定程度なされるであろうし、一部の権限縮小もあり得る。
 さらに、国調結果による大幅な歳入減の問題がある。本自治体の基準財政需要額の測定単位に用いられている国調人口は1,819人であるが、現在の住民基本台帳ベースの人口は1,291人まで減少している(2008年5月末日現在)。次回調査が行われる2010年度には工事も概ね終了し、工事関係者も地域を離れていると思われることから、次回調査時点での人口が1,000人を下回る可能性もある。段階補正があるとはいえ、多くの測定単位として使われる国調人口が一気に45%も減るという事態は想像するだけでも恐ろしい。
 人口減少と高齢化による歳入の減少と福祉予算の増加、そして地方制度改革等の問題が多くの自治体で働く職員や首長の頭を悩ませ続け、時に絶望の前に立ちすくませてしまうのである。

(資料2)

(3) 近未来予想2~小春日和はすぐ終わる~
 交付税算定基礎人口の水準維持、不交付団体の増加、選挙戦をふまえた地方への配慮等を背景として、2010年度までのごく短期間であれば決定的に財政破綻する自治体は少ないだろう。地方財政健全化法が施行されても、当面は財政健全化計画をたてる程度でしのぐことができる自治体が多いはずである。
 しかし、それ以降が非常に厳しい。日本を取り巻く環境がさらに厳しさを増すからである。
 その一例として少子高齢化問題を取りあげてみよう。
 国立社会保障・人口問題研究所の推計(死亡・出生いずれも中位)によると、2005年度から5年間の生産人口の減少数は313万7千人、それに対して65歳以上の高齢者(以下「高齢者」という。)の増加数は365万1千人である(資料3)。行政側が担う高齢者年間1人あたりの社会保障費の総額を100万円と仮定しても、3兆6,510億円の負担増になる。ちなみに2005年度以降10年間での高齢者の予想増加数は約800万人。1人あたり100万円として約7~8兆円の負担増で、地財計画総額の約10分の1に相当する額となる。骨太方針2006による社会保障費の伸びの抑制が継続されたとしても、その頃になれば現在の不交付団体の余力は福祉予算にほぼ吹き飛ばされ、多くの不交付団体が交付団体に転落することになろう。財政力に乏しい地方への交付税の流れも減少することが予測される。
 「都会は生産人口が増加し、高齢化率もそれほど上がらないから大丈夫」とお考えの方は、同研究所のHPをご覧頂きたい。東京都であれ愛知県であれ、共に生産人口の割合は一定して減少し、老年人口の割合は一定して増加すると予測されていることに気づかれるはずである。

(資料3) 将来推計人口 2006~2055年
表1-7 総人口,年齢3区分(0~14歳,15~64歳,65歳以上)別人口の増加数・増加率(5年):出生中位(死亡中位)推計

期 間

人口増加数(1,000人)

年平均増加率(%)

総 数

0~14歳

15~64歳

65歳以上

総 数

0~14歳

15~64歳

65歳以上

平成17~22

(2005~2010)

-592

-1,106

-3,137

3,651

-0.09

-1.29

-0.75

2.69

22~27

(2010~2015)

-1,746

-1,638

-4,478

4,369

-0.28

-2.07

-1.13

2.81

27~32

(2015~2020)

-2,695

-1,640

-3,172

2,118

-0.43

-2.32

-0.84

1.22

32~37

(2020~2025)

-3,465

-1,246

-2,675

455

-0.57

-1.96

-0.74

0.25

37~42

(2025~2030)

-4,046

-806

-3,556

316

-0.69

-1.39

-1.02

0.17

42~47

(2030~2035)

-4,544

-638

-4,485

579

-0.80

-1.17

-1.37

0.31

47~52

(2035~2040)

-4,985

-679

-5,584

1,278

-0.92

-1.33

-1.84

0.68

52~57

(2040~2045)

-5,252

-797

-4,335

-119

-1.01

-1.68

-1.56

-0.06

57~62

(2045~2050)

-5,291

-821

-3,703

-767

-1.08

-1.89

-1.44

-0.40

62~67

(2050~2055)

-5,221

-698

-3,346

-1,177

-1.12

-1.76

-1.40

-0.63

国立社会保障・人口問題研究所HP(H18.12月推計)出生中位・死亡中位

3. 今、何をなすべきか

(1) 転換期の日本
 日本は今、大転換期を迎えている。
 数値的にはすでに破綻しているはずの国家財政。国際競争力を失いかけている日本経済の現状。経済成長をひたすら追い求める工業型社会から市民自治の都市型社会へ軟着陸しなければならない過渡期において、生半可な決意と改革でそれを成功させることはできないだろう。
 例えば工業生産において先進国が生き抜くためには、環境保護を究極的に追求した製品の開発など、低賃金を武器とする後進国が真似ることのできない「技術」で勝負すべきである。しかし、いまだに日本は低コスト・低価格競争から脱却することができず、それを勝ち抜くために①海外へ生産拠点を移し、②国内での非正規雇用を拡大し、③種々の規制緩和を行い、④低負担の小さな政府づくりを進めてきた。地方総コンパクトシティ化とも言える平成の大合併もその延長線上にある。
 ①及び②は、産業の空洞化とワーキングプアの激増をもたらし、労働者の社会への帰属意識を低下させ、社会保障や交付税制度など相互扶助システムの担い手を減少させる。③及び④は、採算がとれない地域・階層に対するサービスの低下と教育・職業訓練への財政支出抑制をもたらし、結果的には全国的な個人・地域間格差の拡大と技術力・生産力の低下を引き起こす。
 アメリカ経済の衰退。もはや社会的不安を覆い隠すことが出来なくなった日本経済の現状。原油高を起因とする諸物価高騰や食料・金融危機への不安。このようなグローバルな問題が、人口1,291人という小村にも波及し、そして多大な影響を及ぼすことになる。

(2) 住民自治の推進~住民なければ自治もなし~
 住民の将来への悲鳴が聞こえる。
 この厳しい状況の中で、我々は今、何をなすべきか。
 住民なければ自治もなし。我々は今一度「地方自治の本旨」(資料4)、その中でもとりわけ「住民自治」の確立に立ちかえる必要があろう。
 団体自治の方向性については市町村レベルの努力で変更することは難しいが、住民自治は今後も尊重されうると考えて良い。それが地域の実情に合わせて進めるべきものであり、画一的な取り扱いをすること自体がナンセンスだからである。
 一定程度の規模を持つ自治体にとって「新たなチャンス」とも言える基礎自治体の権限変更も、小規模自治体にとっては法人格剥奪と権限縮小への恐怖となる。しかし、合併しようと権限が縮小されようと、その地域で長年培われてきた文化や人間同士の温かな繋がり(地域コミュニティ)は紛れもない真実であり、今後も守り抜かなければならない。

(資料4) 地方自治の本旨(日本国憲法第92条)
1)住民自治……その地域の住民の意志に基づいて地方行政の運営が行われること。
2)団体自治……地方の運営は地方の住民の意思を反映した、国とは別個の統治機構によって行われること。

(3) 発想の転換と地域戦略
 困難な状況の中で、地域が生き抜いていくためにまず求められるのが「発想の転換」である。
 その一つは「国が悪い」、「役所が悪い」と言う非難をやめ、今自分たちにできることは何か、やらなければならないことは何かを真摯に追求する視点を持つことである。もちろん、選挙を通じて政治的政策転換を求めることは重要だが、地域社会は住民すべての生活の蓄積により形作られるものであるがゆえに、「自分自身が変わらなければ地域は変わらない」ということに気づくべきである。国や官僚を非難するだけでは何も変わらない。自らが考え、動くという発想がまず必要である。
 さらにもう一つは、今までの中央集権的なシステムのもとで維持されてきた「市町村」という既成概念からいったん距離をおいて、自分たちが住む「地域」もしくは「生活圏」を基準にモノを考えるという視点を持つことである。そうすれば、地域政策を考える上での思考の幅は劇的に拡がることだろう。
 さらに、日本が低コスト・低価格競争から脱却すべきであるのと同様に、地方淘汰の時代に生き抜くためには量より質の追求、すなわち他と大きく差別化を図れるような地域政策若しくは産業を育むという視点を持つことである。中央ではなく、自分の足下を見るのである。
 これらの視点に立って「今、なすべきこと」を考えてみよう。
 まず人が変わらなければ地域は変わらない。ゆえに①人材の育成が急務であろう。住民が賢くてもそれを反映できるシステムがなければ役に立たない。ゆえに②住民自治システムの確立も不可欠である。さらに、特に小規模自治体では将来における権限縮小も予想されることから、適切な住民参加システムから生み出される、③地域に必ず残さなければならない行政サービス・事務権限の優先順位を決定しておく必要もあろう。さらに、将来もその地域がその地域らしく存続するために、④その地域にしかできないような施策の追求が必要である。

4. 今、しておかなければならないこと

 ここでは、上記に挙げた4つの中で最も大切な人材育成について述べると共に、地域特有の施策の追求について若干触れてみたい。

(1) 人材育成
 自治体であれ企業であれ、組織の命運を決めるのは人材である。
 住民自治推進には正確な情報を住民にわかりやすく説明し、そこで返された政策へのヒントを正確に記録・分析し、具体的な政策へと結びつけられる「志と実務能力のある」職員と、幅広い知識を持ち、理性的に議論できる多数の住民の存在が不可欠である。
 本組合では、2007年度において資料5に示す研修制度を当局に提案した。本制度の基本的考えは第1条に言い尽くされているが、その他の特徴としては、参加対象を職員に限らないこと(第2条)、研修結果の最大限の活用への配慮(第6条)等を挙げることができる。本指針は、文言上の微細な修正を除き、組合提案がそのまま採用された。


(資料5) 占冠村職員等の研修制度運用指針
(目的)
第1条 この指針は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第39条の規定に基づき、行政はあくまで地域の主権者たる住民から行政事務を信託されているにすぎないという当然の原則にたって、単に知識を有することが素晴らしいことなのではなく、住民と共に考え、悩み、語り合いながら知識・情報を共有し、地方自治の本旨を全うすることのできる政策を立案し、的確、効率的かつ謙虚な態度で事務を遂行することのできる人材を育成するための研修に関し、必要なことを定めることを目的とする。
(対象者)
第2条 この指針に定める研修の対象者は、占冠村職員定数条例(昭和25年12月5日条例第12号)に定める職員のうち、教育委員会の所管に属する学校に勤務する一般職の職員を除く全ての職員、並びに占冠村定数外職員取扱規則(平成15年9月24日規則第10号)第2条第1項第1号に定める準職員(以下「職員」という。)とする。
  ただし、村長が特に必要と認めた場合はこの限りではない。
(第3条~第5条略)
(研修職員の責務)
第6条 研修職員は、研修の成果を職場で生かし得るよう努めることはもちろん、職員から要望があった時はすみやかにその内容を発表・説明し、職員等の知識、職務遂行能力の向上に寄与しなければならない。
2 研修制度を利用した職員は、住民等から要望があった場合は、速やかにその研修の内容を説明しなければならない。
3 前2項の発表、説明の義務を負う期間は、研修を受けた日から概ね1年間とする。 (以下略)

 地方公共団体の場合、首長は地域住民の直接選挙により選出されるため、議会に対してではなく、住民に対して直接責任を負うという側面がある。しかし、4年の任期中に住民意見に反する政策執行がなされたとしても、法律上住民はリコール請求など極端な手段でしか首長の責任を問うことができなかった。それゆえ、首長の任期途中でも住民意見を反映できるシステムづくりの必要性が認識されるようになり、住民自治確立への取り組みが全国で進められてきた。情報公開、政策評価、自治体や議会の基本条例の制定など、全国にはあらゆる先進事例が存在しており、住民自治システムを電化製品に例えれば、それぞれの家庭(自治体)の事情に合わせて製品を選び、状況に合わせて設定変更するだけで使用できる状況にある。もし使えないとすれば、それは製品のせいではなく、それを使う人間に問題があるのである。多くの商品知識を持って懇切丁寧に説明できる店員(職員)と、質の高い商品を最も安く購入し、フルに使いこなすことができる消費者(住民)がその地域にどれだけ存在しているかがその地域の将来の鍵を握ることになろう。

(2) その地域にしかできないモノの追求
 今後、特に小規模自治体においては、自治体権限が縮小されても尊重される施策の追求という視点が欠かせない。その地域にしかない貴重なものであれば、自治体の有無に係わらず今後も存続しうるはずである。それは極めて地域性の高いものなので総論を述べることはできないが、例えば人口1,300人余りの自治体であれば、地方自治法第94条等を活用した議会制の廃止による究極の住民自治、すなわち直接民主制の追求による「古代アテネ村構想」も可能ではないか。
 また、高齢者がいる世帯も219世帯(2006年12月末現在)しかないため、担当職員等による頻繁な戸別訪問と、地域コミュニティのフル活用を前提とした顔と顔が見えるサービス追求による「地域丸ごとデイサービス」的な取り組みも可能かもしれない。

5. 終わりに

 最後に、自らが住む小規模自治体の将来について触れたい。
 2010年度から新地方分権一括法が施行されたとしても、激変緩和を考慮して、そこからしばらくの猶予期間は設けられるであろう。その後、次回の国調が反映され始める2011年度から急速に財政悪化をきたす自治体が現れはじめ、2012年頃から新たな改革の嵐が地方を襲うことだろう。年を追う毎に権限を確保できるだけの財政的・人的根拠を持つ小規模自治体は減少し、多くの小規模自治体が「ねをあげる」頃(2015年国調頃)に、周到に用意された各種の猶予措置の終了期限を迎えることになるだろう。それをもって現在の小規模自治体をめぐる議論は概ね終結を迎える。
 以上の予測は、小規模自治体に住む住民や職員にとっては目をそむけたいような結末であろう。しかし、明るい未来を切り開いていくためには、常に最悪の状況を予想して戦略を練るべきである。「いきなり殴られるよりも身構えていた方がダメージは少ない」のである。
 今のうちに、より理想的な住民参加のシステムを構築し、そのシステムをフル活用して「地域に残すべき行政サービスや事務権限の優先順位」を決め、可能であれば「誇るべき優れた地域施策」を確立しておく必要がある。そうすれば、将来において事務権限あるいは為し得る行政サービスの選択等を迫られた際にも住民の共感に基づいた正しい選択をすることができるだろうし、既に地域特有の素晴らしい施策が展開されていれば、その存続可能性は飛躍的に高まろう。そして、幸いにして多くの財源と権限が残されれば、その絞り込まれた行政サービスや地域施策は、住民合意により磨き上げられた「自治の柱」として有意義に活用されることだろう。
 いずれにせよ、困難を成長のチャンスと捉える「明るい思考」が根底に必要なのである。