【モデル単組】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ-②分科会 地方再生とまちづくり

中四国フェリーの役割と存続について


広島県本部/竹波航送船職員労働組合 野間 浩文

1. はじめに

 広島県竹原市と愛媛県今治市は、広島県と愛媛県を中心とする中国と四国の産業、経済、交通、観光、文化の交流発展のために、両市を結ぶ中四国フェリーを運航する竹原波方間自動車航送船組合(管理者・小坂政司竹原市長)をつくり事業を行っている。
 1960年に竹原波方間自動車航送船組合の設立について、広島県知事の許可を受け、1963年7月1日から運航を開始した。この運航開始から「しまなみ海道」が開通するまでの間は、フェリー乗場へのアクセス道路にまで、車が数珠つなぎの状態になるなど、順調な営業となっていた。
 しかし、1999年5月、瀬戸内しまなみ海道(大橋)が開通し、フェリーでの車両輸送が激減し減収が続き、明日の見えない状況となってきている。特に燃料高騰を受け、採算は急激に悪化している。(資料1)
 このような経営悪化の状況は、先にも記載したとおり、1999年5月に本四架橋「尾道・今治ルート」供用が開始した時から傾向が明らかになっていたにもかかわらず、2000年度末、大三島町(現在は今治市と合併)は6億円の配分を受けて一部事務組合を脱退している。さらに、竹原市と波方町(現在は今治市と合併)へ、約31億円の積立金(2001年度末残高)のなかから、6億円ずつ計12億円を配分した。当時の説明は、「船の更新費や退職金を確保できる上、4年前から人員削減などに努めた結果、経営に支障は出ないと判断した」というものだった。(資料2)
 結果、1998年度から事業収益は減少に転じ、1999年度から単年度の収支が赤字に転落することとなった。
 このような背景のもとで、中四国フェリーの役割・存続について、そこで働く労働者・労働組合・自治労広島県本部・理事者・自治体当局のみでなく、利用者・市民などとも考えを共有すべく、地元の大学の支援を要請し、雇用の安定とフェリーの存続を図るための研究を進めることとしている。
 なお、燃料価格の高騰により、今年度当初、2億7千万円の赤字予算を組んでスタートしたものの、7月末時点で、赤字が4億に届くとの試算もあり、赤字補填に回せる約5億円の枯渇時期が早まることが予測され、早期の対策(結論)が必要となっている。

2. 設立からこれまでの経過

① 1957年3月31日に今治・竹原間連絡道路開発について大三島町で協議会を開催し、中国・四国最短連絡道路期成同盟会を発足させる。
② 1959年に竹原市議会、波方町議会・大三島町議会で組合規約を可決。
③ 1960年3月、広島県知事から許可される。
④ 1961年12月に、中国運輸局から航路免許を取得。(管理者・竹原市長有原明三)
⑤ 1963年に2隻で航送船運航を開始する。
⑥ 1965年、大三島宮浦港への寄航開始。
⑦ 1967年、3隻運航となる。
⑧ 1972年、4隻運航へ。
⑨ 1973年、5隻運航へ。
⑩ 1999年5月、本四架橋「尾道・今治ルート」供用開始。
⑪ 観光名所の大山祇神社などのある大三島町は2000年末に6億円の分配金を受けとり、一部事務組合を脱退した。3隻運航へ戻る。
⑫ 2005年1月、愛媛県越智郡波方町・大三島町・伯方町など11カ町村は、今治市と合併した。
⑬ 2007年3月、経営計画(規模縮小)により、2隻運航へ。
※ 職員数の状況及び経営健全化計画の概要……(資料3)

3. 経営状況の推移

※ 経営状況一覧……(資料4)
※ 航送実績一覧……(資料5)

(1) 経営状況一覧から
 1999年5月に愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ本四架橋「尾道・今治ルート」が供用開始となった。これを契機に、営業利益が133百万円の赤字に、単年度の純損失も58百万円の赤字を経常するに至った。以降、2002年度に若干の黒字を改善するものの、赤字傾向は続いている。
 この資料には、掲載されていないが、燃料の高騰により、経営状況はますます悪化している。
 なお、しまなみ海道(西瀬戸自動車道)の交通量は年々増加傾向にあるが、航送の減少比率に比べればそれほど増えていないのが実態である。

(2) 航送実績一覧から
 航送実績一覧表で明らかなように、1999年度との比較で、2006年度には、バスで約4割、乗用車で約6割、トラックで約7割と実績が減じている。
 二輪車、小荷物も減少し、旅客は半減以上となっている。

(3) 職員数の状況――職員数の状況及び経営健全化計画の概要から
 職員数の状況
 1998年度は、定年退職2人,採用6人で100人(行政職12人、海事職85人、臨時職3人)であったが、毎年希望退職を募り、2007年度は45人となっている。

4. これまでの取り組み

 竹波航送船職員労働組合(執行委員長野間浩文)は自治労に結集し、賃金労働条件の改善を精力的に取り組みつつも、各種合理化計画にも協力し、航送船事業の再建に取り組んできた。内容は、①給料の引き下げや昇給延伸、②希望退職の受け入れなどである。しかも、利用増進に向け、県内の単組を回り、利用促進への協力を求めるなど、できる限りの努力を行ってきた。
 このように、利用者の減少に歯止めが、まず、理事者が率先して、増収のための努力を行うよう交渉の場は当然として、あらゆる機会を通じて要請してきた。
 しかし、理事者の態度は、ドル箱路線の時代の感覚から抜け出せず、収益には積極的でなく、合理化による経費削減により、対応をしようとしているのが現状である。
 この度、竹波航送船職員労働組合(執行委員長 野間浩文)は、自治労広島県本部に対しても支援要請をしてきた。

5. 地域の大学との連携について

 広島大学地域連携センターと竹原地域の活性化の中で、中四国フェリーのあり方について調査・研究を行おうと打ち合わせ会議をもったが、急激な経営悪化により、経営コンサルタント的な内容とならざるを得ず、大学の研究趣旨から外れるとの回答があり断念した。
 その後、広島経済大学へも相談に言っているが、7月末の現時点では回答が得られていない。

6. 今後の方向性

 理事者への政策提言を行うため、広島経済大学へ引き続き働きかけ、①利用者アンケート、②認知度を高める意味も含む一般市民へのアンケート、③旅行会社や運送業者への訪問調査など、各種調査を行うことを考えている。
 ただし、一部事務組合構成市の補助がなければ、現金は今年度中にも枯渇しかねず、自治研的な取り組み以外の対策も講じていく必要がある。


(資料1) 関連新聞記事(2008年6月14日)

(資料2) 関連新聞記事(2008年7月19日)

(資料3) 職員数の状況及び経営健全化計画の概要

(資料4) 経営状況一覧

(資料5) 航送実績一覧