【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ統合分科会 地域社会の維持・発展をめざして

合併事例報告


北海道本部/自治労せたな町役場職員組合・自治研推進委員 藤井 卓也

 せたな町は(旧瀬棚町・旧北檜山町・旧大成町)人口11,842人・総面積638.67km北海道の南西部、日本海に面した檜山支庁管内の北部に位置し北部と南部が山岳地帯となっており、その中央には清流日本一となった後志利別川が流れ狩場山から海岸にかけては狩場茂津多道立自然公園・南部の海岸線の一部は檜山道立自然公園に指定されるなど、豊かな自然環境を有しています。
 合併の経緯とこれまでの検証としては、国は「3,000の市町村を1,000に」とのスローガンを掲げ、財政的な優遇措置という飴を与えることを約束した平成の大合併といわれる市町村合併を強力に推進したことから、2004年2月の檜山北部4町長会議から始まり同月に合併協議会を設置(後に今金町離脱)、2005年4月1日に法定合併協へ移行後、2005年9月1日に3町が合併し、『せたな町』と生まれ変わりました。
 合併後初めての「2005年度せたな町決算」がまとまったのを受け、厳しい財政事情を見据え、健全な財政運営と将来にわたってせたな町が財政再建団体とならないため、2006年7月31日の第4回町議会臨時会において、町長が「財政非常事態宣言」をしました。


財政非常事態宣言
 
 昨年9月1日に大成町、瀬棚町、北檜山町が合併し誕生した新町「せたな町」の初となる平成17年度決算の財政指標数値がまとまり、財政構造の硬直化を判断する指標となる経済収支比率は91.3%で、適正とされる70~80%を大きく上回りました。加えて、財政規模に占める公債費(借金返済)の役割を示す実質公債比率20.9%で、適正とされる18%以下を大きく上回る結果となりました。このことにより今後、起債を借りるためには国に公債費適正化計画を提出しなければなりません。また、平成18年度の普通交付税の交付決定額は、前年度に比べ5.0%減、約2億6千万円少ない48億8,300万円となりました。
 国の三位一体改革による地方交付税や国庫支出金の削減に加え、町税収入が伸び悩んでいる現在の経済・社会情勢では、今後においても財政が好転することは期待できず、極めて憂慮すべき事態が続くものと考えております。
 私は財政運営の責任者として「財政の非常事態宣言」をし、せたな町が財政再建団体に陥ることのないよう、町民の皆様、町議会、特例区協議会のご意見をいただきながら、職員一丸となり財政の健全化に向けて適正な財政運営に努め、この局面を乗り切って参ります。
 今後の財政健全化の推進について、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
平成18年7月31日
せたな町長 高 橋 貞 光

 当初の計画では合併後は前途洋洋たる未来が待っているような計画でしたが、合併時の財政見込みの甘さに端を発し、少子・高齢化及び過疎化に伴う人口の減少や、三位一体の改革による地方交付税の減少など地方自治体の努力で補えない程の締め付けから、町の財政も危機的状態へと陥ることが余儀なくされ、合併から1年も経たず財政非常事態宣言をするなど財政が逼迫し、各種事業の見直しなど、瀬棚区・北檜山区と約40km離れた大成区においては病院から無床診療所へと規模が縮小され、住民の生命に直結した改革が実施されました。俗に言う「地方切捨て」が末端まで拡大する中、歳出の徹底的な見直しも行われましたが、2006年度決算では経常収支比率91.9%、公債比率は27.4%、実質公債比率は22.8%と更に財政の硬直化が進行している状況であります。
 このことから2006年度には賃金の独自削減(寒冷地手当・期末手当など19年度まで継続)も実施され、2008年度からは寒冷地手当、期末手当を元にもどし新たに本俸のみ(期末勤勉手当に跳ね返り)の削減案を受け入れ、手取りでは前年度と比較し若干の改善も図られたことから(当初6%削減から4.2%の削減で妥結)、これを基に組織拡大に向け職員組合の存在意義、必要性などを機関紙にて非組合員を含め全職員へ発信しました。ですが旧大成町職以外の2町の職員については、長年組織が無いところからの組織への加入には大きな壁が有り、未組織が当たり前であった職員自身の意識改革がどこまでできるかが最大の難関と考え、それを乗り越えるために、地本や各単組・総支部からサポートを受けながら組合員自らが組織拡大に向け取り組まなければなりませんでした。
 何より非組合員に執拗に声をかけ、数多く接し、お互いの人間関係を構築することが最重要と考えるとともに、定期的な学習会の開催や機関紙の発行、自治労共済のパンフレット配布及び内容説明、また業務上及び私的にかかわりのある職員については、事あるごとに口頭にて加入促進運動を展開しております。本年も組織強化並びに自治労共済加入促進を目的とした学習会を管理職を含む全職員に参加を呼びかけましたが、非組合員の参加者は管理職の1人のみで、組合に加入してもらう以前の段階から非常に厳しい状況であります。やはり今まで組織がある中で日々過ごしてきた我々とは違い、組織が無いのが当たり前といった環境で過ごしてきた職員からは、「職員組合」というもののイメージが描けないとの声が多数聞かれました。
 また、職場では「組合で取り組みをしても」「自分がしなくても組合員の誰かが」といったアキラメや人任せの気持ちがある中、当局の財政難を理由とした合理化攻撃や賃金の独自削減、行政改革による職場の労働条件悪化など、これら一連の動きがひいては自分の職さえも脅かすという危機感が足りないのも事実であります。
 しかし、このような現状だからこそ組合の存続意義、必要性を訴え、組織拡大に向け根気強く取り組んでいかなければなりません。


 2008年1月31日機関紙より一部抜粋
 せたな町職としても合併から2年を経過し、徐々にではありますが新組合員が加入しております。非組合員の中には組合を否定する方もいますが、私たちは公務員として、職員組合(組合員)として、特権意識をかざしているわけではありません。おかしな制度や仕組みと、最低限守るべきものに対しては、毅然と物申すこともまた大切と考えます。


 合併して現在は、地道に一本釣で個別に加入拡大運動を展開しておりますが、「危機感なくして行動なし」、職員一人ひとりが危機感を持ち、人数を含め有資格者の半数程度で組織することができるような状況にもっていくことが重要と考えます。
 「合併して良いこと無いな」「合併しなければ良かった」などの声が町民からも多数聞かれる中、町の職員適正化計画も策定され、早期勧奨退職者はもとより自己都合で退職する若い職員も多数現われ、「職員にとっても未来が描けない」などの理由から計画を上回るスピードで職員数も減少してきました。現に総合支所となった旧大成町・瀬棚町では5課あった部署も3課に統廃合され職員数が削減するなど、合併=職員の削減・住民サービスの低下・地域の衰退・過疎化への拍車などの懸念があり、特に我々の住むまちでは限界集落が多数存在し、合併すると地域は崩壊してしまうのでは? と感じざるを得ない程の危機感もあります。
 もし、合併せずに単独で何とかやっていけるのならそのほうがよい。せたな町は檜山管内で最初の合併町村です。まだ誰も携わったことのない「町村合併」という道を手探りの中、さらには時間的に余裕がない状態の中で、事務事業の精査をはじめとする3町のかかえる課題の方向付けなど、右往左往しながら職員一人ひとりが新町誕生へ向け奮闘してきました。
 当町の場合は3町対等合併といった形をとりましたが、やはりそれぞれの職員の考え方等が違いなかなか改善はなされておらず、事務取扱がバラバラだったり、本庁と総合支所との見えない壁も存在していることも確かであります。「旧○○町職員なら……」「旧○○町の時はこうだったのに……」等の声も聞かれますが、過去を振り返らず前向きに考えると今の現状(サービスや事業の維持)があること自体、合併のメリットなのかもしれません。
 今後は、職員・住民も旧町のしがらみを無くし、行政主体ではなく住民主体のまちづくりを構築していく必要があり、合併先進地の事例を基に住民の全員が心から合併して良かったというまちへ築き上げて行く必要があると感じております。