【自主レポート】 |
第32回北海道自治研集会 第Ⅲ統合分科会 地域社会の維持・発展をめざして |
|
1. はじめに 合併しなければ「まち」は確実につぶれるという考え方が地方自治の中で支配的になりつつあった中、合併するべきか否か、行政・議会・住民が真剣に悩み、議論した上で、最終的に合併を決断し誕生した「新ひだか町」。2006年3月31日に静内町と三石町の合併により誕生した北海道の太平洋岸日高管内の中央に位置する人口26,414人(2008年6月末現在)の地方都市の今日までを検証し、こらからの新町のまちづくりに提言します。 2. 新ひだか町誕生(静内町・三石町合併)までの経過 2002年4月12日に日高中部合併調査研究会が発足し、翌2003年1月23日に日高中部合併問題検討協議会(任意協議会)が設置されました。その後、同年11月1日には日高中部合併協議会(法定協議会)へ移行し、同年12月7日までに延べ13回の協議会が開催されましたが、新冠町長より協議会離脱の申し入れがあり、日高中部合併協議会は休止(2005年12月31日付けで廃止)となりました。これを受けて、同年12月29日に静内町・三石町合併検討協議会(任意協議会)を設立し、翌2005年1月12日に静内町・三石町合併協議会(法定協議会)へ移行しました。そして、同年3月20日に施行された「合併の賛否を問う町民投票」において、両町ともに合併賛成票が反対票を上回った結果を受け、同年3月22日に合併協定調印式が行われ、2006年3月31日に「新ひだか町」が誕生いたしました。 3. 新町建設計画 新町の総合計画の基礎となる「新町建設計画(まちづくりプラン)」では、新町としての一体性や均衡ある発展を目指すとともに、町民の皆さんの生活に急激な変化を及ぼさないよう長期的視野に立って、計画的にまちづくりを進めるとしており、合併前に両町民が心配していた点を克服し、町民が期待する施策を実現するために5つのテーマを設定いたしました。 |
【はじめに=計画づくりの方針】 【まちづくりの主な課題(2004年1~2月実施の町民アンケート結果より)】 【新しい町の「台所事情」は?】 |
4. 合併後の2年間 (1) 組織改編とグループ制導入 |
また、次のような効果が期待されるとして、グループ制が導入されました。 |
① 担当課長が状況に応じて所属職員の事務の割り振りを行うことができることにより、繁忙度合いを考慮した中で課内労働力の有効活用が図れる。 ② 主査職以下の職員も状況に応じて課内の他担当業務を経験することにより、課内業務全般の理解度が増すとともに、来庁者に対するスムーズな対応が期待できる。 ③ 主幹職がグループリーダーとして、主査職以下の職員とより密接な立場による業務遂行が行え、実務担当の人数も増えることにより、超過勤務手当の削減も期待できる。 ④ 一定人数の主幹職(グループリーダー)を配置することにより、合併によって現れる職員の管理職への登用時期の遅れを防ぐとともに、これにより主査職(現係長職)の士気低下を招かない効果が期待できる。 ⑤ 担当課長が所属職員の業務担当を割り振らなければならないことにより、今まで以上に課内業務の状況、事務量などについて掌握する技量が必要となるなど、課長職におけるマネジメント能力の向上が期待できる。 |
(2) 定員管理(内訳等は別紙のとおり) 定員管理計画によると、定数内職員の数を、定年退職者等の欠員不補充、退職者の3割程度とする職員の採用上限数、勧奨退職者制度等の活用、グループ制の有効活用などにより、2015年度までに、合併時の定数内職員数472人をおおむね12%削減し、415人とする計画となっています。 (3) 財政状況 |
(4) 権限委譲事務の増加
担当部局において、職員配置、実例数の多少、許認可の重大性等を検証した上で受けていることから、目立った混乱はなく、現在に至っていますが、委譲を受けた権限の多くが、過去の実例数が0もしくは数件程度であったという背景がありました。 道州制の議論が進展していく中で、基礎自治体が自主・自立していくためには、職員力の向上は不可欠であり、権限委譲に対して、積極的に受け入れていく姿勢に立つことは重要であると考えますが、安易に受け入れるのではなく、住民に混乱を招かないよう、受入態勢を整備した上で今後も対処していかなければなりません。 (5) 住民負担増と行政サービスの低下 |
① 施設の休止(山手公園ゴーカート場、静内湖キャンプ場、町民休養ホーム、屋内ゲートボール場、ふれあいセンター御園館、三石スキー場) ② 施設の廃止・統合(地域保育所(春立、御園、田原、鳧舞)、三石幼稚園) ③ 開設期間の短縮(三石海浜公園・ふれあい交流施設、静内温水プール) ④ 施設の有料化(静内川右岸緑地公園パークゴルフ場、静内体育館、山手体育館、静内武道館、静内弓道場、古川公園野球場、老人いこいの家、町立学校施設開放) ⑤ 社会教育団体等の減免規定を見直し(3時間500円を基本に使用料を原則徴収) ⑥ 火葬場使用料・上下水道料・法人町民税均等割の増額 ⑦ 各種手数料の増額(例:住民票の交付200円→300円に) |
5. 組合員の声
(1) アンケート調査の実施 (2) 調査結果 |
② 労働条件について 「非常に厳しくなった」「厳しくなった」との回答が50%を超えており、職場実態は確実に厳しさを増しています。臨時・嘱託職員が削減されたことが一因とも考えられますが、行政のスリム化の推進が避けられない状況にある中で、適正な行政サービスを保持するためにも一定程度の良好な労働条件の確保は重要であり、職場実態調査を継続し、事務量に見合った人員確保を求めていく必要があります。 ③ 合併の効果と影響について 本庁・支所間の連絡・情報交換に対し、「行われていない」という回答が57%と実に半数以上を占めており、合併から2年も経過していることを踏まえると、いささか低いと考えられます。公平・公正な行政サービスを提供するためにも本庁・支所間の連携強化を推進する必要があります。 行政サービスについては、「多少低下した」「低下した」という意見が50%と半数を占めており、組合員自身もサービスの低下を実感していることが伺われます。町民の声を拾い上げる活動にも目を向ける必要があります。 町民の町政への関心の変化については、「高まっている」という回答が36%である一方で、「薄れた」という回答が12%あり、組合員自身も、なにかしらの変化を感じ取っている結果となりました。どのような意味で「高まっている」のかなど、掘り下げて検証する必要があります。 合併効果をさらに上げるための条件(複数回答)としては、「地域エゴの解消」という回答が最も多く、以下順に「職員の士気の向上」「職員の政策形成・執行能力の向上」という回答結果となりました。一方で、「まちの一体感」の形成については、「形成されていない」との回答が82%もあり、2年間では一体感を形成するまでに至っていないと判断せざるを得ません。地域エゴをいち早く解消し、まちの一体感を創出することが最重要課題であることが伺われます。そして、組織改編、定員管理が進められる中で、いかに職員の士気を向上し、政策形成・執行能力の向上を図っていけるかが、合併効果を上げる礎となるという認識を多くの組合員が共有しているということも伺われます。 |
④ 合併自体について 合併前の立場については、「賛成」「反対」「どちらでもなかった」という回答がそれぞれ約3割程度ずつという結果でした。地方交付税の算定替え、合併特例債、合併補助金など国からの合併支援策に加え、合併の合理化・効率化による財政効果などから、「負担は軽くサービスは高く」「合併後はバラ色」という風潮が流れていた中で、「反対」という立場の組合員が3割いたということが判明しました。 総合的な判断結果としては、「どちらともいえない」「わからない」との回答が64%に上っており、現時点で判断するのは時期尚早であると考えられていることが伺われます。 |
⑤ 今後のまちづくりについて 今後どのようにまちづくりを進めるべきかという質問に対し、「予算規模に合わせ施策を縮小するべき」という回答が半数を超え、以下順に「自治会等地域活動を発展させ課題を解決していくべき」、「予算不足はNPOや住民ボランティアなどで補完していくべき」という回答を得ました。まずは、身の丈に合った行政運営を目指すべきであり、それでも補えない部分について、住民との協働により解決していくべきであるという意見が多いことが伺われます。 まちづくりへの参加意欲については、「ぜひ参加してみたい」、「機会等があれば参加したい」という前向きな回答が63%に達しており、その関心の高さが伺われました。職員とは異なる立場で、まちづくりに関わる中で、現状や課題などを認識することは必要であり、それを職員の立場に戻った際に、いかに解決していけるかは、行政運営にも大きなプラスとなります。 新たな合併については、「国・道の新たな合併支援や道州制の議論を待ってから、慎重に考えるべきだ」、「検討する必要はあるが、今の段階で当町が積極的になることはない」、「目指すべきではない」という意見が全体の68%を占めています。新合併特例法が2010年3月31日で効力を失い、今後、道州制や国・道からの新たな合併支援等に影響があるという見方が強い中でも、現時点では、慎重派が多数を占めている結果となりました。 |
6. 課題と具体的取り組み
アンケート結果からも合併による様々な課題が明らかになりましたが、なかでも象徴的なものとして、産業形態が異なる2町の合併を背景に「地域エゴの解消」や「まちの一体感の形成」というまちづくりに関連する課題や、「予算規模に合わせた施策」という財政に関連する課題が明らかになりました。また、サービスの低下や我々職員の職場の状況についても厳しい実態が明らかになっています。
7. おわりに 合併後2年数ヶ月しか経過していない中で、結論を出せる状況にはありませんが、夕張市の財政破綻により、良くも悪くも地方財政の逼迫という課題が住民にも広く浸透したことで、住民にとっては、行財政改革の推進に伴う負担増などサービスの低下が先行しているという感情が蔓延し、負の効果にしか視線が行っていないのが現状であると認識しています。 |