【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ統合分科会 地域社会の維持・発展をめざして

市町村合併後の住民意識の変化とまちづくりの課題


北海道本部/函館市役所職員労働組合・自治研推進委員会

1. はじめに

 函館市近郊5市町村(函館市・旧戸井町・旧恵山町・旧椴法華村・旧南茅部町)が合併して、約3年半が経過した。この間、それぞれの地域の特色を生かしながら、市としてのさらなる発展を目指し市政運営を行ってきているところであるが、一方で、長引く景気低迷やそれに伴う税収の落ち込み、さらには出生数の減少や若年層を中心とした人口流出による人口減少が続き、様々な課題に直面している。
 こうした中、函館市職労として、合併にともなう住民意識とまちづくりの課題を調査する目的で、2006年6月に住民と組合員を対象としたアンケートを実施したところであるが、その後の状況に変化があるかどうか、今回あらためて同様の調査を行い、前回結果との比較・検証により、今後のまちづくりの方向性を探るものである。

2. 調査概要

① 調査期間 組合員  2008年5月27日~6月20日
       市 民  2008年6月1日~6月30日
② 配布数  組合員  1,844人(※前回・2,081人)
       市 民  1,000人(※前回・1,000人)
        ※市民のうち700人は電話帳・住宅地図から無作為抽出にて郵送。
         (旧函館・500人、旧戸井・40人、旧恵山・60人、旧椴法華・20人、
          旧南茅部・80人)
        ※残りの市民300人分については、地区連合傘下の組合員および家族へ
         依頼
③ 回収数  組合員  1,220人
       市 民   483人
④ 回収率  組合員   66.2%(※前回・66.2%)
       市 民   48.3%(※前回・51.0%)
⑤ 調査内容 別紙・アンケート用紙のとおり
       (調査項目については、2006年実施時と同じもの)

3. 各調査項目結果

① 合併の感想(設問6)
 ・組合員・市民双方とも、半数以上が「わからない」と回答。
  市民は肯定派と否定派が拮抗しているが、組合員は否定派が上回っている。
  地域別にみると、旧函館居住者は肯定派が否定派を上回っているのに対し、旧4町村の市民は、肯定派(16.9%)を否定派(42.4%)が倍以上、上回っている。
  (※前回調査結果)
 ・組合員、市民ともに調査時点では「わからない」が半数以上を占めている。
  一方、市民について、旧函館居住者は肯定派が否定派を上回っているのに対し、旧4町村は否定派の方が多い。(13.4%:32.3%)
  組合員については、「肯定派」「否定派」の割合は、ほぼ拮抗している。
② 合併によるプラス効果(設問7)
 ・組合員については、「地域の連帯感」、「経済・産業」の順に高く、その他はバラツキがある。地域別にみると、戸井・恵山では「公共施設」、南茅部では「環境衛生事業」が高順位。
 ・市民については、「地域の連帯感」、「環境衛生事業」、「公共施設」の順に高い。地域別にもほぼ同様の傾向にある。
  (※前回調査結果)
 ・組合員については、「地域の連帯感」、「経済・産業」、「文化・教育環境」の順で上位を占めている。なお、居住地域別にみると、各地域ごとに若干ばらつきがある。
 ・市民についても、「地域の連帯感」、「経済・産業」の順に高く、「公共施設の整備」がこれに続く。居住地域別では、旧函館は同順序であるが、旧4町村は「経済・産業」が最上位となっている。
③ 合併によるマイナス効果(設問8)
 ・組合員については、「行政サービス水準」、「保健・医療・福祉水準」の順に高率。「行政サービス水準」については、旧函館14.8%に対し、旧4町村28.6%ととほぼ倍になっている。
  そのほか、椴法華・南茅部では、「文化・教育環境」も高率となっている。
 ・市民については、「保健・医療・福祉水準」、「行政サービス水準」の順に高率で、地域間で違いはない。
  (※前回調査結果)
 ・組合員については、「保健・医療・福祉」、「公共施設」、「経済・産業」の順となっている。
  市民については、「保健・医療・福祉」に次いで、「行政サービス水準」が続いている。
④ 設問7と8の総合検証
 ・双方共に、無回答(Non Answer)が5割を超えている。特に、旧4町村地域のプラス効果の回答率が低い点が顕著。
 ・地域の連帯感について、旧函館は組合員・市民ともにプラス効果に挙げているが、旧4町村では、組合員(プラス12.3%:マイナス27.2%)・市民(プラス8.5%:マイナス40.0%)ともにマイナス効果に挙げている率が高い。
⑤ 市民の満足度(設問9)
 ・組合員は市民の「満足:不満足」を20:63と回答(地域間に差異はない)。
  これに対して、市民は「満足:不満足」を37:49と回答している。
  旧4町村市民については、22:47と不満足の割合が高くなっている。
 ・設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した組合員の8割、市民の7割が不満足と回答している。
  (※前回調査結果)
 ・組合員は、圧倒的に市民が「不満足と感じている」と回答(満足18:不満足49)しているのに対し、市民は「満足:不満足」(31:44)と回答している。
 市民の居住地域別では、旧函館・南茅部が「不満足」が多く、他の3地域は逆に「満足」の割合が多い。
 ・設問6で、「合併しないほうが良かった」と回答した組合員・市民の過半数が、現在の函館市に「不満」を持っている(と感じている)ことも結果に表れている。
⑥ 市民の満足点(設問10-1)
 ・組合員・市民ともに、「自然・気候」がトップで、順位は異なるものの「公共施設」「買い物の利便性」が2・3位に位置している。
 ・地域別差異はないが、前回同様、公立病院を抱える恵山・南茅部居住者が「医療・福祉」を挙げている割合が高い。また、設問6で「合併して良かった」と回答した組合員の3割が「文化・教育環境」を挙げている。
  (※前回調査結果)
・組合員・市民ともに、「自然・気候」、「公共施設」の順で、その次に組合員は「福祉・医療」で、市民は「買い物の利便性」が続いている。
 ・組合員について、地域別の傾向に大きく差はないが、公立病院を抱える恵山・南茅部居住者が「医療・福祉」を挙げている割合が高い。
⑦ 市民の不満足点(設問10-2)
 ・組合員・市民ともに、「労働環境」、「福祉・医療」、「行政サービス」の順となった。その他、旧函館の組合員・市民ともに、「余暇の場所・機会」が高位に挙がっている。
 ・地域別にみると、旧函館では、組合員・市民ともに「労働環境」がトップだが、旧4町村総体では、組合員・市民とも「行政サービス」が6割以上を占めている。
 ・設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した市民の約6割が「行政サービス」を挙げているのに対し、組合員の6割が「労働環境」を挙げている。
  (※前回調査結果)
 ・組合員では、「労働環境」、「行政サービス」、「福祉・医療」の順に高く、市民では、「労働環境」、「福祉・医療」、「行政サービス」の順で、順位こそ異なるが、上位3種は同種のものとなった。
 ・一方、地域別にみると、旧函館では、組合員・市民ともに「労働環境」が1位だが、旧4町村では、組合員・市民とも「行政サービス」がほぼ1位を占めている。
   特に、設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した組合員・市民とも、「行政サービス」を1位に挙げている。
⑧ 市政の課題点(組合員のみ・設問11)
 ・7割が「ある」と回答し、課題点として「予算・財政負担」「市民ニーズとの不整合」の順に挙げている(約5割)。また、南茅部では「合併による地域間バランス」を7割の組合員が挙げており、旧4町村総体でも55.2%と高率である。同様に、設問6で「合併しないほうが良かった」と回答した組合員の4割が「地域バランス」を課題として挙げている。
  (※前回調査結果)
 ・6割が「ある」と回答。課題点として「予算・財政負担」「市民ニーズとの不整合」の順に挙げている(約4割)。戸井以外の旧3町村のトップは「地域間バランス」で、旧4町村総体で46.4%が挙げている。
⑨ 市の将来像(組合員設問12・市民設問11)
 ・組合員・市民ともに「福祉都市」、「国際観光都市」、「水産海洋産業」の順となっているが、トップの「福祉都市」については、組合員47.5%に対し、市民61.9%と較差がある。地域的にみると、旧4町村組合員は、「福祉都市:水産海洋」が39:35と拮抗しているのに対し、市民のそれは55:46と差異がある。
  なお、「新たな合併」を選択したのは、旧恵山地区市民の2割以外は、市民・組合員ともに約1割程度である。
  (※前回調査結果)
 ・組合員・市民ともに、「福祉都市」がほぼ半数を占める。
 ・一方、地域別に比較すると、組合員・市民ともに旧戸井のみが、「水産海洋産業の推進」を1位に挙げている。
⑩ 今後のまちづくりの進め方(組合員設問13・市民設問12)
 ・組合員・市民ともに、「予算規模にあわせた規模縮小」に次いで、「NPO等の活用」が上位を占めている。また、旧4町村地域では「地域活動の発展」が組合員で23.8%、市民で28.8%と高率である。
  (※前回調査結果)
 ・組合員・市民ともに、「予算に合わせた施策の縮小」が1位で、「NPO等の活用」が続く。地域別には、旧戸井地区の組合員が「NPO等の活用」を、また旧恵山地区の市民が「地域活動の発展」をそれぞれ1位に挙げている。
⑪ まちづくりと市役所の関わり方(組合員のみ・設問14)
 ・「市民と協働してすすめる」が約過半数を占める。とりわけ、旧4町村ではその傾向が顕著である。一方、旧函館管内では「小さな市役所をめざす」が34.7%を占めている。
  (※前回調査結果)
 ・「市民と協働してすすめる」が約過半数を占める。旧4町村ではいずれも5割以上であるのに対し、旧函館管内では若干下回る。
⑫ まちづくり活動への意欲(組合員・設問15~16)
 ・総体的には、性別・年代・職種を問わず、現在参加していない組合員が約6割にのぼる。
  一方、地域別にみると、旧4町村地域では過半数が参加しているのに対し、それ以外は7割が参加していない状況にある。
 ・現在、活動に参加している組合員の約7割が、引き続き活動を継続する意思をもっており、性別・年代・職種・地域に差異はない。
 ・現在、活動に参加していない組合員について、総体的には今後の参加意欲ありと回答したのが43.6%で、意欲がないと回答した30.5%を上回った。特に、性別では女性、年代別では20代と50代、地域では旧4町村在住者の参加意欲が高い(過半数)が、それ以外の層においては「積極派:消極派」の割合は、男性はほぼ拮抗、旧函館は42:32となっている。
  (※前回調査結果)
 ・組合員全体としては、現在の参加率は約2割と非常に低調であるが、地域別には大きく差がある。旧4町村では、概ね半数が参加しているのに対して、旧函館は7割強が参加していない。
 ・現在、まちづくり活動に参加している組合員の7割が、今後も活動を継続する意思を示している。これは、各地域ともに共通している。
 ・現在、まちづくり活動に参加していない組合員について、今後参加する意向を聞いたところ、全体的には約4割が「参加してみたい」と回答しているが、男女別では、女性の45%が前向きな回答に対して、男性は「積極派」と「消極派」が拮抗している。
   また、地域別では、旧4町村では5割以上が前向きな回答なのに対し、旧函館では4割以下にとどまっている。
⑬ まちづくり活動の参加状況(市民・設問13)
 ・現在活動している市民は総体で約16%で、今後活動してみたいと考えている人は約44%、関心のない人が約37%で積極派が上回り、男女ともに同様の傾向にある。
 ・年代別に比較すると、20~30代は活動に消極的である一方、10代と40代以上の世代は積極派が上回っている。
 ・地域別の比較では、椴法華・南茅部について参加率は4割以上と高いが、両地区で活動に参加していない人の今後の参加意欲は低い。他の地域については、全体傾向と差異はない。
  (※前回調査結果)
 ・市民のまちづくり活動の状況を質問したところ、現在活動している人は約13%で、今後活動してみたいと考えている人は約36%、関心のない人が約46%で消極派が上回っており、男女ともに同様の傾向にある。
 ・年代別に比較すると、中高年齢者ほど現在活動を行っている割合が高く、今後の参加意欲も高い傾向にある。一方、若い世代ほど逆の傾向にある。
 ・地域別の比較では、旧函館では積極派が消極派を上回っているのに対し、旧4町村は消極派が多数を占めている(まちづくり活動は、旧役場職員が中心?)

4. 2006調査結果と2008調査結果との相違点

① 合併の感想
 ・組合員の回答において、前回は肯定派と否定派が拮抗していたが、今回については否定派が上回った。特に、旧函館居住者の否定派の割合が高くなった。
② 合併によるマイナス効果
 ・組合員の回答において、「行政サービス水準」がワースト1に挙げられた。
  旧函館:3.0%→14.8%、旧4町村:9.2%→28.6%と軒並み上昇した。
③ 市民の満足度
 ・組合員の回答において、「市民の満足度」が低下し、「市民の不満足度」が約2割高まっている。
  また、「合併しないほうが良かった」と回答した市民・組合員においては、「不満足」と回答した割合が2~3割高くなった。
④ 市民の不満足な点
 ・「合併しないほうが良かった」との回答者について、組合員は前回「行政サービス」がワースト1だったのが「労働環境」に代わった。市民は前回同様「行政サービス」がワースト1だが、比率が1割高くなった。
⑤ 市政の課題点
 ・「ある」と回答した組合員の比率が1割高くなるとともに、課題点の「予算・財政」「市民ニーズとの整合性」を挙げた比率も1割高くなっている。
⑥ 市の将来像
 ・「福祉都市」を挙げた市民の比率が、約1割高くなった一方、組合員のそれは変化はない。
⑦ まちづくり活動の参加状況
 ・現在活動をしていない市民について、前回は「今後の活動に関心がない」回答者が多かったが、今回は「関心がある」との回答が「消極派」を上回り逆転した。

5. 調査結果から推察される課題点

① 3年半が経過したが、大多数は合併の是非を判断できない人が多い。これは、合併により具体的なプラス面、もしくはマイナス面が生じていないと捉えてよいものか、さらに精査する必要がある。
  一方で、組合員の意識としては、徐々に「合併しない方が良かった」と感じている人が増加している。これは単に、合併自体の是非ではなく、この間の行革にともなう人員削減や業務集約等による職場環境の変化の影響があるのではないか。
② 旧4町村においては、「地域の連帯感が下がった」と感じている人が増加している。全市的に人口減少しているが、特に4支所管内から極端な人口流出があった訳ではないことから、合併に伴う要因なのか精査する必要がある。いずれにせよ、4支所地域がこのまま衰退するのではく、活力を感じられるような取り組みが必要である。
③ 現在の市政(市役所)に対し、約半数の市民が不満足と回答している。さらに、その不満足な点として、「行政サービス水準」が高位を占めていることは、市職員として真摯に受け止めなければならない。市の将来像として「福祉都市」を希求していることを踏まえると、今後の市政運営の方向性が示されているのではないか。
④ 組合員は今後のまちづくりの進め方について、「予算の縮小」に代わるものとして「市民との協働」を掲げているが、一方で現在のまちづくり活動への参加状況は、全体で4割にとどまっている。また、市民については現在の参加率が低いだけでなく、今後の参加意欲も低いことを考えると、まちづくり活動への意欲喚起が早急に必要である。

6. むすび

 今回のアンケート調査により、先述のとおり、当市のまちづくりを進めていく上での、いくつかの課題点が認識できた。また、2年前の調査時と比較して、項目によっては住民意識の変化も見受けられた。
 いずれにしても、今後、住民にとって住みよい、輝きのあるまちづくりを追求していくために、これら課題に対し職員組合として市政運営へ積極的に関わるとともに、単組としての独自運動を一層展開していく必要がある。このためには、日頃から地域住民と連携を強化し、お互いの協働体制を構築していくことが必須である。
 今後の取り組みに生かしていきたい。

アンケート調査項目(組合員)

アンケート調査項目(一般市民)