【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅲ統合分科会 地域社会の維持・発展をめざして

合併3年目を迎えた大空町の今後の課題


北海道本部/自治労大空町職員組合・副執行委員長 平田 義和

1. 大空町の概要

(1) 位 置
 大空町は、2006年3月31日、女満別町と東藻琴村が対等合併して誕生した新しい町で、オホーツク海に面した網走支庁管内のほぼ中央部に位置しています。地勢は、国道39号〔旭川~網走〕、国道334号〔羅臼~美幌〕がそれぞれ本町を南北・東西に通過し、網走国定公園網走湖女満別湖畔、藻琴山を代表する豊かな自然に囲まれた農薬〔水田・畑作・畜産〕を基幹産業としている町です。
 女満別地区は、JR石北本線〔旭川~網走〕が南北に通過。年間乗降客数が100万人超の『女満別空港〔滑走路2,500m級〕』を有し、札幌〔新千歳・丘珠〕へ約50分(7往復/日)、東京〔羽田〕へ約110分(6往復/日)、名古屋〔中部国際〕へ約115分(1往復/日)、そして大阪〔関西〕へ約125分(2往復/日)など、国内の主要都市を通年運行で結び、管内の空の玄関口として、観光及び経済活動の重要拠点となっています。

(2) 沿革(旧女満別町・旧東藻琴村)
 旧女満別町は、1890年、福井県人山田慎氏がマッチ軸木の造材のため、オタパ(現在の網走湖女満別湖畔)に和人が入植したのを開拓の初めとし、1898年から、農業に従事する者が定住し本格的な開拓が始まりました。1902年の網走~美幌間の道路開通、1912年の野付牛(現在の北見市)~網走間に鉄道が開通し、網走本線が全通して以後急速に入植者が増え、商業を営む者が出るなど基礎的な集落が編成されました。1921年、網走町(現在の網走市)から分村して女満別村が誕生、1951年に町制施行となりました。〔1,750世帯、人口10,418人〕
 1956年、札幌~女満別航路開設(北日本航空(株))、1980年、東京~女満別間直行便開設(東亜国内航空(株))、1985年、女満別空港が開港され現在に至っています。
 旧東藻琴村は、1889年、藻琴原野殖民地計画としての実測が行われ、1906年、梅谷房蔵氏他5人が、東1線と基線21号の交差点付近に仮小屋を設けて定住入地したのを開拓の初めとし、大正期に入ると市街地区画割が行われ、ハッカや豆類の好景気などに支えられ基礎的な集落が編成されました。1915年に網走・能取・藻琴の3村が合併して網走町として1級町村制が施行となった際に東藻琴(旧東藻琴村地区)と改称されました。その後、1947年、網走町の市昇格とともに分村して東藻琴村が誕生しました。

2. 合併に至った経緯

(1) 地方分権の受け皿づくりの要請
 地方分権一括法(2004年4月)の施行に伴い、市町村の自主性や自立性、地域住民の自己決定権の拡充が求められ、各種行政サービスをできる限り身近な市町村において処理すべく自治体の政策判断、政策遂行における役割と決定責任能力の重要性の高まり。

(2) 国・地方の財政悪化への対応の必要性
 右肩上がりの経済が期待できない中、国の三位一体改革などの抜本的な改革の推進に伴い、地方財政計画総額が縮小や地方交付税制度の段階補正(団体規模)の見直しが行われるなど、留保財源が乏しく、過去に実施した事業の起債負担が大きい本町のような小規模自治体の財政は極めて厳しい状況となった。
  ●[参照資料]女満別町・東藻琴村・合併後の財政推計総括表

(3) 人口構造の変化への対応の必要性
 若年層の働き手の減少に伴う地域経済停滞への対策と少子高齢化に対応したまちづくりの必要性が急務であった。

(4) 生活圏・経済圏の拡大と広域的行政課題の増大への対応の必要性
 ごみ、下水道、消防・防災など、住民の日常生活件の変化に伴い多様化する行政課題に対応した効率的・広域的なまちづくりが必要となった。

3. 合併までの具体的経過

〔2004年〕    
 ① 4月20日   女満別町長・正副議長及び東藻琴村長・正副議長会議が開催され、両町村による任意合併協議会設置に向けて正式合意
 ② 4月26日~28日   両町村において市町村合併住民懇談会(住民説明会)を開催
 ③ 5月12日   両町村議会臨時会において任意合併協議会関連予算案可決
 ④ 5月14日   女満別町・東藻琴村任意合併協議会の設立調印式
 ⑤ 5月24日   北海道より合併重点支援地域指定を受ける。
 ⑥ 5月31日~8月31日   第1回~第7回の任意合併協議会を開催
 ⑦ 9月6日~9月23日   両町村において合併懇談会(住民説明会)を開催
 ⑧ 10月4日   両町村議会臨時会において女満別町・東藻琴村合併協議会(法定協議会)設置案・関連予算案可決
 ⑨ 10月6日   女満別町・東藻琴村合併協議会の設置調印式
 ⑩ 10月21日~2005年2月8日   第1回~第7回の合併協議会を開催
〔2005年〕    
 ⑪ 2月11日~2月19日   両町村において合併懇談会(住民説明会)及び住民投票説明会を開催
 ⑫ 2月16日   新町「大空町」名付け親表彰式
 ⑬ 2月27日   両町村にて合併の是非を問う住民投票が実施され、女満別町(賛成2,102、反対1,491、投票率76.43%)、東藻琴村(賛成1,401、反対427、投票率82.73%)の結果となる。
 ⑭ 3月5日   合併協定調印式
 ⑮ 3月11日   両町村議会において廃置分合等合併関連議案可決。北海道に対し、廃置分合を申請
 ⑯ 7月1日   第2回定例道議会にて女満別町・東藻琴村の廃置分合が可決
 ⑰ 8月19日   総務省告示第961号にて旧両町村の廃置分合が官報告示
〔2006年〕    
 ⑱ 3月31日   新町「大空町」誕生

4. 合併の項目

 合併協定項目20項目(その他事務事業項目66項目)及び事務事業調整項目686項目
  (1) 合併の方式
  (2) 合併の時期
  (3) 新町の名称
  (4) 新町の事務所の位置
  (5) 財産の取扱い
  (6) 新町建設計画
  (7) 議会の議員の定数及び任期
  (8) 農業委員会の委員の定数及び任期
  (9) 職員の身分の取扱い
  (10) 地方税の不均一課税
  (11) 地域審議会等の取扱い
  (12) 特別職職員の身分の取扱い
  (13) 条例、規則の取扱い
  (14) 使用料、手数料の取扱い
  (15) 組織機構
  (16) 公共的団体等の取扱い
  (17) 各種補助金、交付金等の取扱い
  (18) 慣行の取扱い
  (19) 町名、字名の取扱い
  (20) その他事務事業の取扱い(66項目)
    ①総務関係事務事業(4項目)、②企画財政関係事務事業(3項目)、③住民生活・福祉関係事務事業(29項目)、④経済産業関係事務事業(12項目)、⑤建設関係事務事業(8項目)、⑥教育文化関係事務事業(10項目)

5. (通勤者への)臨時給付規程の創設(2008年2月1日施行)

 世界的な原油価格の高騰により、国内の石油製品価格が大幅に値上げされている情勢等の中、通勤手当の拡充等に関する職員組合の申し入れに対し、「独自通勤手当支給に対する国・北海道の強い指導等を踏まえると、国の基準を上回る通勤手当の支給は困難」とする回答であったことから、引き続き重点交渉課題と位置付けつつ、現に通勤している組合員への緊急避難的措置として、女満別・東藻琴両地区及び町外(片道15km超)に居住する、居住地と異なる本庁舎または総合支所への通勤者に対し、職員組合費の中から「燃料費の一部補填」を2008年2月1日から実施しているところです。
 また、子育て中や介護、心身の不調など自己・家庭の事情等により本庁舎・総合支所間の通勤に要する時間的・精神的状況等を踏まえ、人事異動希望の制度化に関する職員組合の申し入れに対し、「2008年度人事異動から対応する」ということで制度化され数人の組合員が異動となった。
  ●[参照資料]「臨時給付規程」「通勤者に対する組合独自補填の考え方」

6. 今後の課題

 「合併を進めるための資料ばかり示して、訳の分からない町の名前をつけてまでこの女満別町をなくしたいのか……。俺は絶対反対だからな
 2004年5月の任意合併協議会設立以降、旧女満別町と旧東藻琴村との間で本格的な合併協議がスタートしましたが、企画財政課に所属していた当時の私は、この任意合併協議会事務局へ派遣を命ぜられ、両町村から派遣された職員計5人とともに合併に向けた事務事業を推進する立場にいました。同年10月には法定合併協議会が設置され、両町村の合併に関する法的支援も受けながら、より積極的な合併協議が進められました。新町名「大空町」が決定された日の夜、友人から上記のような言葉を言われました。
 それまでも合併協議が進むにつれ、電話やメール、手紙やFAXなどでお叱りやご意見が多数寄せられていました。自宅近所の方々からも応援の声もあれば、絶対反対の声もありました。
 100年以上続けてきた町・村の歴史、風土、慣習……「合併によってこの町、この村、この地域どうなるのだろう……」多くの方が期待と不安の毎日だったと思います。
 両町村の合併から3年目がスタートしましたが、新聞記事(2008年4月1日、北海道新聞)に記載されているとおり、まだまだ両地区の一体感を感じるのに時間がかかる状況となっていますが。
 合併協議が十分だったのだろうか……今でも自問自答することがあるのですが、今後の新しいまちづくりの中で組合員も何をすべきなのか、個々に考え・行動しなければならないことだけは間違いありません。




女満別町・東藻琴村・合併後の財政推計総括表

「臨時給付規程」「通勤者に対する組合独自の補填の考え方」