【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-②分科会 地域で教育を支える~教育行政・生涯学習・スポーツ・文化~

網走市「健康まつり」での学校給食の市民への提供


北海道本部/網走市役所労働組合・現業評議会

1. 実施までの経緯

 網走市における学校給食は、自校方式を堅持しつつも、この間学校の統廃合や建て替えなどにより、近隣校との「親子給食」が導入されています。加えて、正職員である給食調理員の定数削減提案が毎年のように行われ、その都度、私たちは、「学校給食は、単に"食"を提供するのではなく、教育の一環である」ということを念頭におき、「安心・安全な給食をどのように子ども達に提供するのか」そしてそのためには「どのような体制(職場配置)が必要なのか」を真剣に議論し、職場実態を根拠に交渉を行ってきました。
 しかし、「教育の一環である給食」を守っていくためには、こうした労働組合内部での議論に留まらず、広く市民に給食の現状(調理法やメニュー、衛生管理等)を知ってもらう必要がありました。
 網走市職労現業評議会給食部会は、定期的に部会を開催し、日常業務の悩みや業務のあり方についての議論が行われておりました。そして、2006年6月に開催された部会において、「他市町村では、給食調理員が町のイベントに給食の提供で貢献している」ということが報告(労働者集会)されました。その報告を聞いた組合員から「私たちも何かできないだろうか?」という思いから議論が行われ、それでは網走市の主催で毎年実施されている「健康まつり」への参加という話へつながることになりました。具体的に基本組織や現業評議会と協議を行うこととなりました。
 この「健康まつり」は、毎年、網走市保健センターをメイン会場に行われる市主催のイベントであり、文字通り、市民を対象に「健康」に関する様々な催物を行うもので、行政のみならず、市民団体も多く参加しており、たくさんの市民が来場するものです。また、ここ数年では食生活に関する関心も高まり、"食"に関するブースも設けられていました。こうした中、給食部会での議論を基に、網走市労連基本組織から担当セクションに参加の打診をしたところ、「食育という観点からも是非参加してほしい」との快諾を受け、同イベント参加に向け具体的な議論に入りました。

2. 実施に向けての準備

 参加を決めた後、給食部会では、数度にわたり部会を開催し、当日のメニューや調理から提供までの流れ、そして会場での掲示物をどうするか、などについての議論を行ってきました。この議論には現業評議会常任幹事会や基本組織も加わり、「給食部会だけの取り組みではなく、市労連としての取り組み」であると位置づけてきました。また、具体的には、12人の正職員を"食材・調理班" "会場・展示班"に分け、それぞれ具体的な議論と準備を行ってきました。また、現業評議会常任幹事会も当日の"給食運搬班"として協力することとなり、基本組織については、学校施設や備品使用に関して、学校との協議を進めるなど側面的サポートを行ってきました。加えて、労働組合だけでなく、市教育委員会にも「参加の趣旨」を伝える中から、学校施設の使用などについて全面的な協力を確約させてきました。

3. イベント初参加

 2006年10月1日のイベント当日は、「ドライカレー」「ホワイトゼリー」をイベント会場から5分程度の距離にある学校の給食室を使用し、"食材・調理班"の調理員6人が350食の調理を行いました。そして、調理した"給食"を、市内の親子給食実施校で実際に使用している給食運搬車を使用して、現評常任幹事会が会場まで運搬し、会場では"会場・展示班"の調理員が実際に市民と接し、販売を行いました。加えて、"会場・展示班"が作成・準備した、掲示物(市内各校の1ヶ月の献立表・今の食器と昔の食器・昔の給食、など)を掲示し、市民へのPRも行ってきました。
 この日は好天に恵まれたものの、市内において大きなイベントが他にも開催されていたため、例年ほどの人出がなく、基本組織や給食部会を中心に会場でのビラ撒きを行うなどしたものの、350食の完売にはいたりませんでした。しかし、来場し実際に給食を食べた市民を対象に行ったアンケート結果からは、「たいへんおいしかった」「なつかしい」「学校給食は大切だからこれからもがんばってほしい」「自分達がたべていた給食とは全然ちがって驚いた」「学校給食が無くならないように頑張って」などの反応が寄せられ、概ね好評であったと考えられると同時に、当初の目的であった「給食の現状を知ってもらう」ということもある程度達成できたものと考えます。

4. 再度の参加

 2007年の参加は、前年の初参加を参考に給食部会での議論を行うことから再度参加を決めました。その後の部会議論では、メニューの選定や調理方法に議論が先行し、「何故参加するのか?」「何を目標に参加するのか?」といった本来の目的があいまいになり掛けていましたが、議論を深める中から本来の目的を再確認することが出来ました。
 しかし、前回終了時にしっかりとした総括運動が不足していたために、「手の込んだ調理は時間が掛かりすぎる」、「掲示物をたくさん頑張って作ったがぜんぜん見てくれなかった」など後ろ向きな議論がなかったとは言えません。

5. 参加に向けて

 何はともあれ、参加にあたってのメニューは、「二色団子汁と揚げパン」に決定し、準備に入りました。調理場は、会場に一番近いエコーセンター(社会教育施設の調理場)を確保し、「全員で作って全員で参加する」ことで当日を迎えました。市民向けの掲示物や売り子や呼び込み、運搬を現評常任幹事会と基本組合が中心に行いました。

6. イベント当日

 いつもと勝手が違う調理場でしたが、そこはベテランの調理員ということもあり、時間どおりに完成し、今回は外のテントで温めながら販売出来たこともあり、200食用意した物が揚げパンと共にあっという間に完売。購入した市民も「懐かしいね。」「今はこんなにたくさんの具が入っているんだね。」などなど給食調理員と市民が会話を重ねることができ前年に引き続き住民アピールも行えたと思います。
 掲示物には、自校給食の意義を簡単に掲載しましたが、多くの市民の目に留まっていました。

7. 今後にむけて

 今回のような「自らの仕事」を職場内部や労働組合内部に留まらず、広く市民にアピールしていくという取り組みは、今後益々重要性を増してくると考えます。アンケートの中には「保護者も給食を食べられる機会をもっと増やして下さい」という意見もありましたが、昨年の取り組みの総括をもとに、こうした取り組みを今後とも継続していきたいと考えています。加えて、こうした取り組みにおいて得た「市民の声」を自らの業務にフィードバックさせ、業務の充実を図っていくことこそが、自らの職場を守ることにつながるものと思います。こうしたことが「現業(現場)活性化」への近道であると考えます。
 また、給食部会の取り組みに学び、学校用務員部会で新人用務員が増えたことから部会役員が中心になり、数十年ぶりに「床メンテナンス研修」を再開させ夏休み前に実務研修として実施するなど、今後も市職現評各部会を中心にして「職の確立」として広く実践して行かなくてはなりません。


2007年給食まつりで掲示した資料

学校給食が出来るまでに半日を追ってみました。

 この日のメニューは、・スペシャルカレー
・フルーツのオレンジソース和え(929Kcal)・牛乳でした。
 この大釜から作られるカレーは一釜300人前はOK、この調理場では三釜が設置され、メニューによって使用する釜は違います。この日は一釜で間に合うようです。
愛情こめて混ぜる。重労働! 腕が逞しくなります。
 蓋をするとこんな感じです。140リットル入ります。
 この釜で「蒸す・焼く・炒める・煮る」を使いこなします。アルミ製と鉄製の2種類を用意し、不足しがちな鉄分の吸収に配慮しています。また、釜はアスベスト対策もしっかり行っています。
 フルーツのオレンジ和えに使用する「
バナナ」10房。皮を剥き切り分けられ、他の食材と和えられます。
 この日の主な作業は、ご飯を炊く・カレーを作る・デザートを作る」の三工程となり、午前中の子どもたちの給食時間に合わせギリギリに盛り付け、各階の配膳室に運ばれます。
 
出来上がりました。スペシャルカレー、フルーツのオレンジソース和え・牛乳、ちょっと辛めでフルーティーなカレーに酸味の利いたデザートが、食欲を誘います。
 網走の学校給食でのみ食べられる一品です。
 多くの香辛料を丹念に仕上げた真にスペシャルなカレーです。

学校給食
 「熱いものは熱いうちに・冷たいものは冷たいうちに」をモットーにし、子供たちの口に入るよう心がけています。自校給食のメリットです。また、食中毒には細心の注意を払っています。

 食中毒は、学校給食にとって大変恐ろしいものです。数年前からO-157やノロ・ロタウィルスは、発生すると大変な事態になり、近年でも多くの人が被害にあっていますが、網走では学校給食が原因での被害はいまだに起きていません。

 起きてしまっては大変ということから特に学校給食の調理場では、様々な制約がありそれ以上に調理員は、衛生に気を使っています。
 また、文部科学省も食中毒を引き起こさない・最小限にするのは自校が望ましいとのコメントを出しています。

自校給食には様々なメリットがあります。
1. 学校の動きに合わせたメニューの取入れが可能です。
2. 温かいものを温かいうちに提供できます。
3. 衛生面で目が届きやすい。
4. 食中毒が発生しても最小限に留めることが出来ます。
5. 調理する調理員と子どもたちが触れ合える。
 などなどセンター調理場にはないメリットがあり、私たちは自校給食にこだわっています。
 しかし、自校給食には設備投資がかかります。少子化により子どもたちが減少する中で、調理場の老朽化に伴いセンター化の動きがあります。網走では、一部で何とか近隣の小中校の調理場をまとめ「親子」方式を取っています。

 「親子給食でも自校に引けをとらない給食を」
 近いとはいえ車で搬送しなければなりません。器を保温性の高い製品にし、時間一杯まで暖めることなどで努力しています。また、調理員だけではなく搬送には用務員が担当し、搬送先では事務補が配膳します。時には調理員も搬送者に同乗します。

今、食育の時代
 学校給食がここ数年見直され、日常生活の食(食べること)を見なおす事が重要とされ、便利コンビニ弁当も時代の要請なら学校給食もまた時代の要請ではないでしょうか?

 安全でおいしい給食を未来の子どもたちに!! 私たちはがんばります。