【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-②分科会 地域で教育を支える~教育行政・生涯学習・スポーツ・文化~

子どもや保護者の給食に対する不安を和らげるために


福井県本部/福井市ネットワーク労働組合・書記長 森本 一憲

 新聞紙上でも記載されていたが、入学を控えた子どもの保護者の懸念されている事柄に「友達ができるか」「勉強はついていけるか」等多くの心配事があるが、その中の一つに「給食を食べられるか」という不安が上位にランクされている。
 労働組合と調理技師は、少しでも「給食」の楽しさやおいしさ、安全で安心な食の提供に心がけている事を、一人ひとりの子どもや保護者の方々に周知しなければならないと考えており、まずは入学式に来られる新入生や保護者の方々に給食を見て頂くことは、子どもや保護者に対して給食に関しての不安を和らげる事であると考える。
2008年4月1日現在

学校で調理実施校 

42校 13,345食

職員数  1~5人
パート等 1~6人

北部学校給食センター対応

12校 5,048食

職員数  16人
パート等 25人

南部学校給食センター対応

14校 5,778食

職員数  18人
パート等 29人

美山学校給食センター対応

4校  440食

職員数   3人
パート等  2人

 2006年8月に「福井市の行政改革に関する新たな指針」が発表された。それらの項目に、「平成21年度南部学校給食センター民間委託」「平成22年度北部学校給食センター民間委託」が掲げられ、民間委託の中身は「給食センターの調理業務、洗浄作業のみの委託」となっている。また食材や調味料等の物資の購入や衛生管理、施設管理等については従来どおり公である「市」が行うというものである。
 組合としては、給食センターの民間委託に関し、偽装請負の疑いもあるとして労働局へ確認を行ったが、「厚生労働省自体が統一的な見解を出していない」との返答のみであった。しかし、「かなりグレーゾーンの手法である」との見解。これを受け、組織内議員の学習会や協力を得ながら議会対策等を実施している。
 福井市ネットワーク労働組合では、調理技師で組織する「学校給食部会」を設置しており、月1回のペースで部会会議を開催している。
 特に「食育」に関しては、栄養教諭に任せっきりでなく、実際に調理に従事する立場で「給食」の楽しさやおいしさ、安全で安心な食の提供に心がけている事を周知しなければならないと考えており、そこで、入学式時に給食のサンプル等を展示してはどうかとの案が出てきた。
 入学式時の給食サンプル展示については昨年から実施しており、調理業務を実施している学校のみを展示の対象校とし、各学校長に組合から給食のサンプル展示に関しての依頼文を発送した。入学式当日は調理技師が保護者等からの質問に対応した。後日のアンケート結果では、多くの質問があり好評を得ているとの報告が多数あったが問題も何点か発生した。《資料参照》
 2008年度については、担当課(保健給食課)も巻き込みながら、すべての学校に対して入学式時に給食のサンプル等を展示する方向で実施することとした。
 保健給食課との交渉時に、昨年同様入学式時に給食のサンプル等を展示したい旨を伝え、「今回の展示に関して、各学校への依頼文は保健給食課で出してもらえないか」との依頼に対し、快く引き受けてくれた。
 学校給食センターで対応している学校については、サンプル展示は難しい(調理技師ではなく配膳パートを配置しているため、対応できないため)との判断で「給食のパネル」を展示することとした。
 学校で給食調理業務を実施している学校については、前年同様に給食のサンプルを展示し、入学式に学校に来られる保護者の対応は調理技師がすることになり、2008年4月7日入学式当日に実施した。
 学校給食は学校生活の一部であり、給食を通じた「食育」として授業にも取り入れられている。給食はいわゆる「孤食」や「弁当」とは違い、匂いや雰囲気など多くの児童生徒が食事を共にしながら「食べる」楽しさや「食の必要性」を学び、それこそ生産者から消費者まで重要な過程をも学ぶ場である。
  私たちネットワーク労働組合は、今後についても継続的に給食の重要性に関して、子どもや保護者だけでなく地域や市民全体にアピールを継続し、とりわけ入学式時の給食展示は、それらの第1歩にしか過ぎないかも知れないが、調理する立場で何が伝えられるかを考え、子どもや保護者の給食に対する「不安」ではなく「楽しみ」として今回も実施してきた次第である。

《資料》

入学式当日の給食サンプル展示についてのアンケート結果


対象施設・学校数

 

総数

提出済み

未提出

集約率(%)

センター

33

33

0

100.00

学校

108

30

78

27.78

141

63

78

44.68


① 入学式当日、給食のサンプルを展示したか(学校職場対象)

実施した

21校

実施しない

9校


a 展示場所は

・1年生の教室横
・生徒玄関前
・保護者控室
・給食室前


b 工夫したこと

・イラストを拡大し、色画用紙に貼り、テーブルクロスを敷いた。
・レシピ作成
・献立の名称をラミネート加工
・給食の説明書(栄養やカロリー等)を添付
・パネル作成
・調理する側から一言添えた。


c 何日分の献立を展示したか

1日分

2日分

3日分

3校

14校

3校


d 保護者・新1年生の反応は

良い

普通

良くない

その他

12校

7校

0校

2校


e 展示しなかった(出来なかった)理由

・学校の許可がもらえなかった
・中学校では必要ない
・学校側の意向
・幼稚園から給食は食べているので、必要ないとの学校判断
・当日、忘れた
・サンプルの費用算出を問われたため
・サンプル保存が出来ないため
・給食費の問題で展示するのを断念
・新1年生は親子給食で一緒に食べている
・異動でバタバタしていたから


② 展示について、調理技師の感想は

・幼稚園併設校のため、新入生は目新しいものではなく、幼稚園の入園式時の方が良い
・給食について関心をもってもらういい機会だった
・中学校は小学校の延長のため、必要性が乏しい
・保護者に分かってもらえるいい機会
・毎年実施しても良いのでは
・嬉しそうに見ている新1年生と給食に関心を示す保護者の方を見ていると、規模は小さくても給食フェアーを実施したとき同様価値があったと思う
・教職員からも好評を得たため、良いと思う
・冷凍した給食では、見た目が半減してしまう
・展示に関しての連絡を早めにしてほしい
・パネル等の展示も合わせてする方が良い
・給食の食器も新しくなった時だったので、保護者に対しても興味をひけた。少しでも給食の意義を知ってもらう良い機会だった


③ 今後も給食のサンプル等の展示は実施した方がいいか

実施

しない

その他

無回答

20校

6校

4校

3校


問題点
1. 給食展示のサンプル使用について
 (1) 担当課(保健給食課)に展示の許可は得たものの、給食のサンプルは、調理した給食の一部を保存した物で、これらの取り扱いに関して苦情があった。
 (2) 展示に関しての問い合わせが、組合ではなく担当課(保健給食課)にあった。
2. 栄養教諭(栄養士)や学校との関係
 (1) 栄養教諭は、①栄養に関すること、②衛生に関すること、③献立作成等、様々な業務があり、調理技師と一体となって安全でおいしい給食を提供するために従事しているが、お互いの連携が全く無かった。