【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-②分科会 地域で教育を支える~教育行政・生涯学習・スポーツ・文化~

「学校は我々が守る」
資質向上と職の確立を目指して

愛知県本部/岡崎市従業員労働組合 向井 敦子

1. はじめに

 現業職場を取り巻く状況は、極めて危機的なものとなっています。行政サービスの民間開放が進められ職員数の激減、職場自体が消滅しようとする事態も生じています。私たちの働く学校職場は現在中央で進められている教育改革の流れの中、いじめや不登校、学級崩壊など様々な問題を抱えながら、不審者侵入対策等安全管理上の問題への取り組みも含め改革が進められています。
 子どもたちが健やかに学校生活を過ごす為に私たちは学校方針に沿いつつ教職員と共に、子どもたちの日々変化する環境に対応し学校教育が円滑に行われるための潤滑油的な役割となるように努めています。教師とは違う視点で子どもたちの健全育成に力を添えて子どもたちが集団で生活をする学校の安全環境を守り、教育の成果を充分に子どもたちにいきわたらせるために私たちが出来ることを模索しながら日々の職務に臨んでいます。
 地域、保護者からの信頼を得るための活動、安全安心な公共サービスを提供するための活動、そして私たちの職場を守るための活動が試行錯誤しながら始まりました。

2. 概要

 岡崎市は用務員を校務員と称している。学校分会は正規校務員と作業班で構成されている。

学 校 数
幼稚園3園・小学校50校・中学校19校 計72校    
配置状況  校務員配置校 幼稚園3園・小学校46校・中学校19校 計68校  
人員(男・女) 正規・再任用職員 44人(男34人・女10人)
嘱託職員     24人(男7人・女17人)
作業班
岡崎市立の学校全体を管理  
正規職員     10人(男10人) 

(1) 活動1. 学校分会ニュース発行 (分会ニュース1号から11号まで添付)
 校達業務が民間委託された為に支所に毎朝集まることがなくなり、校務員同士が情報交換をする機会が少なくなり、学校分会という組織の一員である意識が段々薄れる状況が出始めました。
 分会全体での意識統一を図るために情報の共有化をし、学校分会の活動が全体で出来るようにする為に分会ニュースという形にして情報提供を始めました。
 ニュースの原稿は当初は役員が主として書いていましたが、分会全員で作るという意識を持って貰う為にも、原稿は交代で分会員が書くように段々と移行し始めました。編集担当者は、読み易くなるように工夫を凝らして編集しています。
 ニュースを発行したことにより、意識統一は少しずつではあるけれど行われ始めてきたと感じます。

(2) 活動2. 活性化委員会の立ち上げ
 岡崎市従本体の取り組みでもある職場活性化活動は、分散職場ではなかなか、活動も大変で役員の負担も大きくなり、活動が思うように進まないのではと判断して、地区委員(全体を6ブロック別にし各代表者1人選出)が活性化委員を兼務とするという形にして活性化活動のリーダーをつくりました。
 活動内容は、保護者、地域住民へ学校校務員は雑用係ではなく環境整備・管理運営等の職務があることを理解してもらい、地域貢献をして保護者、地域住民から信頼を得る為の活動。そして、何よりも私たちの目の前にいる大切な子どもたちが安心で安全に過ごせる環境を作ることをめざして活動を始めていきました。
 活動として現在行っている大きな活動は以下の4点です。
① 小学校環境学習場整備    年3回程度・日曜日
  岡崎北東部の小学校が学習田と利用していた田を猪の被害で活用しなくなり、それに伴い田と隣接して作られていたビオトープにも誰も足を伸ばすことが無くなり、荒れ果てていました。
  子どもたちが、安全にめだか・蛍・蛙等と触れることの出来る場所を残す為にビオトープ、田の整備をすることにしました。
  しかし、作業は重労働で思うように進まなかったり、整備費用の問題が浮上したりと前途多難で活動は想像以上に大変です。
  私たちが幼いころに見て触れてきた生き物を次世代の子どもたちにも同じ体験が出来る環境を残すという強い気持ち持ち続けて活動をしています。
  現在は、岡崎市の自然共生班へ活動趣旨を伝え、協力を御願いしています。
  その結果として観察路の資材となる間伐材を無償で提供していただけることになりました。観察路が完成した時には、地域住民に蛍の観察会等を催して活動を理解していただき、自然を残すための保護活動が一緒に出来るようにしていきたいと考えています。

 

② 自主学習会  毎月1回程度・1時間
  異動で新たに校務員になった人、または一人職場で近くに相談相手がいなく孤独感を感じている校務員が多く存在することが分りました。
  校務員同士が顔を合わせて、学校の作業等で困っていることを話し、意見交換をする会を設けました。
  顔を合わすことにより仲間意識も増し、学習会で学ぶことにより技術もレベルアップしてきました。
  今後は学校行事と照らし合わせて学習内容を考えていき、即実践が出来るような学習会にしていきたいと考えています。



<今までの学習会内容>
  護身術・包帯のまき方、エンジン草刈機、トリマーのメンテナス方法
  ロープワーク、ガラス切りの方法、パンク修理方法、木工(巣箱作り)
  危険予知訓練・危険予知活動訓練学習
  防災について、電気修理、トイレ等水周り補修

③ 上級救命講習会 年2回 1回5人受講  組合員54人中35人講習修了者
  AED(自動対外式徐細動器)が学校に設置してあることから、学校で児童生徒たちに万が一おきた事故や地域住民からの救急要請が来た場合に率先して応急手当が出来るように、全員が受講するように活動を進めています。
  また、一度受講するだけでなく3年毎に再受講をするように計画しています。
  受講することにより「子どもたちは私たちが守る」と言う意識を持つ機会にもなっています。

④ 創意工夫提案
  ただ単に作業をするだけでなく作業コスト等を考えて効率よい働き方を工夫していく。指示待ち的な業務でなく自発的な業務をしていくことの中から、いろいろなアイデアを出し効率的な業務へとしていっています。成果が出た事は他の職員にもアイデアを提供して作業の効率化を全体で上げていくことを進めています。現在はかなりいろいろなアイデアが出されています。


提案事例1. ごみの分別箱の製作
**工夫した点**
分別箱を一体化し仕切りをつけた。
仕切りの部分に隙間を持たせ予備のごみ袋を収納させた。子どもたちが分りやすいように分別方法を表示した。
分別が正しく行われるようになり、後の作業がスムーズになった。

提案事例2. 塩化カルシウム散布機
**工夫した点**
トラックの荷台に乗ってスコップで散布を行っていたが、ワックス缶を利用し重ね合わせ、ブロワーを利用した装置を作り散布できるようにした。作業が早くなり、また本体をスイングさせるようにし、塩カリの量も調整できるようにしたので運動場に均一に散布できるようになった。


(3) 活動3. 所管交渉から
 人員要求と共に分会員が資質向上に向けて頑張っていることを伝えながら学校校務員の必要性を訴え続けています。
 分会員の努力を教育委員会も認め、必要性は充分理解しているとの見解までに至りましたが、2010年以降学校数の半分に正規校務員を削減するということは依然として変わりありません。
 交渉することが現実的でなく形だけの交渉になっていく感じがありました。
 要求しても解答が出ないままになっていた時間内研修について何とか実現できないかと考えました。分会主導として企画立案運営をすべて分会が行い発文のみ教育委員会へ依頼するという形にして要求をして望んだところ即答でOK回答を得ることが出来ました。
 単に要求するだけでなく自分たちがいかに考え行動を起こす事が大事かを思い知る機会となりました。
 交渉時には柔軟な発想を持ちながら今後挑みたいと思います。

 交渉により実現した時間内研修
① 第1回 2007年2月15日午後3時から午後4時30分まで
  特殊勤務手当についての説明
  労働安全衛生についての基礎知識
② 第2回 2007年8月22日午後1時30分から午後4時30分まで
  木工研修(プランターカバー作り)          
  メンタルヘルスについて
  福利厚生について               
③ 第3回 2007年9月13日午後1時30分から午後4時30分まで
  緑化研修(剪定、花壇作り)
  動力機械のメンテナンス 

 講師も資料作りも全て仲間の校務員が務めていることで刺激にもなり、講師を務めた人も自信へ繋がりお互いの相乗効果がでて分会全体としては意識改革になりとても良い結果が出ました。
 今後も校務員同士が切磋琢磨していき、誰でも講師が務めることが出来て、技術・知識のレベルアップにも繋がるようにとなればと考えます。



3. 今後の活動として

 いつ起きてもおかしくないと言われている東海地震や自然災害について学校現場における危機管理対策がなかなか職員全体へ周知されていない現状があります。今まで大きな災害に見舞われたことがない土地柄にも一因するところかもしれません。
 学校で生活する子どもたちが被災者とならないように努めなければいけませんし、被災にあったとしても最小限に収めるように準備をしておかなければなりません。また、自らも被災者にならないように努めていかなければと思います。
 避難所となった時には、校務員である私たちが活動する場面がたくさん出てくることが予想されます。そのための準備を早急に始めなければいけないと考えています。
 防災学習会を行い、災害が起きたときの心構えと知識を身に付けていきたいと考えています。
 マニュアルを読むだけでなく災害を想定したシミュレーションを訓練して冷静な判断力、行動力を身に染み込ませることが必要と考えます。
 また、学校は避難所となるので住民との連携は必要不可欠です。住民、防災課、社会福祉協議会等と連携した取り組みをして避難所としての学校のあり方を学習していきたいと思います。備えあれば憂いなしの言葉通りに大切な子どもたちを守るために最大限の活動をしていきたいと考えています。 

4. あとがき

 私たちの職場は集中改革プランにより削減ありきの考えのもとに学校数の半分まで正規職員を削減する計画が出されています。この計画を見直して撤回させるためにいろいろ活動をしていますが決して良い結果が出ているわけではありません。それにくじけることなく、『ピンチがチャンス、ありがとう』という言葉通りに前向きに今後もこつこつ地道に子育てと同様に手間隙かけて活動を続けます。学校校務員として職の確立を目指して未来ある子どもたちと共に成長していきたいと思います。