1. はじめに
小泉政権よりの「官から民へ」というキャンペーンのもと、郵政民営化をはじめとして「市場化テスト法」「指定管理者制度」など民間委託や民営化への流れが作られ、その後の安倍そして福田政権へと変わってもその流れは鈍化したもののなくなったわけではない。
その影響を今最も受けているのが、現業職場である。賃金センサスとの比較の公開もそのひとつである。雇用形態や勤続年数などを全く無視し、同一業種というだけで比較するなどコストのみをクローズアップして比較しようとする政府の意図がはっきりとみてとれる。
明和町においては、学校給食の見直しが市町村合併の破綻以降、再び検討課題としてあがってきた。そこで明和町職員労働組合では、現業評議会を中心として町民文化祭等の場で住民に対して直営学校給食の良さを知ってもらうため「お試し給食」などの取り組みを2005年より進めている。現在のところ、直営が続いているものの、一部民間委託が検討される中、今後の取り組みを考える上で必要であるとして、検証を行った。
2. 学校給食について
日本の学校給食は、1889年に山形県鶴岡町(現鶴岡市)の私立忠愛小学校において、おにぎり・焼き魚・漬物といった昼食を貧困児童に与えたのが最初の給食とされている。その後、戦時中の中断を経て、1954年に学校給食法が施行され、学校給食は教育の一環として位置づけられた。この学校給食法第2条には下記の4つの目標が掲げられている。
一 日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと。
二 学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと。
三 食生活の合理化、栄養の改善及び健康の増進を図ること。
四 食糧の生産、配分及び消費について、正しい理解に導くこと。 |
これの条文からも、学校給食の目的がただ児童・生徒の「昼食」ではないことは明らかである。
また最近給食費の滞納が問題となっているが、この給食の経費について同法第6条で下記のように記されている。
第6条 学校給食に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。
2 前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第22条第1項に規定する保護者の負担とする。 |
これは人件費・調理費など食材以外は学校の設置者、公立学校においては自治体の負担であるということを示している。
さて日本以外では、アメリカ・イギリス・フランスなどの諸外国においても学校給食を実施している。そのうち学校給食を官から民へと民営化させたのはイギリスである。イギリスの学校給食は20世紀初頭より始まったが、1980年代「小さな政府」を目指し公営企業の大規模な民営化を実施したサッチャー政権が行財政改革により無償の学校給食を原則的に廃止し、そして1992年に学校給食を完全民営化した。その後イギリスの学校給食は合理化のため伝統的な料理が姿を消し、ファーストフード型のメニューが主流となっていった。しかしこれに対し国民の間から批判の声が高まったことから給食改善の取り組みが広がり、2005年秋に学校給食の栄養基準を設け、また2006~2009年までの4年間で約600億円の予算をかけて学校給食を改善していく新たな基準を設けるなど、学校給食を教育の一環として再び見直し政府としての責任を強化する方向で方針転換をしている。
もう一度日本の学校給食調理の現状をみると、次のような調査結果を文部科学省が発表している。 |