【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-②分科会 地域で教育を支える~教育行政・生涯学習・スポーツ・文化~

京都市学校給食研究会 ―― 食育と環境教育の取り組み


京都府本部/京都市学校給食職員労働組合 亀崎かおり

1. はじめに―31年目を迎えた京都市学校給食研究会を振り返って

 学校給食の始まりは、1889年山形県鶴岡市でお弁当を持って来ることができない子ども達を救おうと、おにぎり・みそ汁から始まりました。戦時中は一時中断しましたが、戦後、児童・生徒の栄養補給を目的として再開されました。京都では、1947年1月、ミルク(脱脂粉乳)給食から始まりました。
 京都の学校給食も、国からの物資を与えられるままに給食を作り、子ども達に食べさせるという時期が続きましたが、30年前、調理員がもっと子ども達に栄養のバランスを考えたいろいろな献立ができないかと教育委員会に声をかけ、校長会・栄養士・学校の先生・京都市学校給食協会などで、京都市学校給食研究会が発足されました。
 30年間の取り組みのなかには、調理員として、子どもたちに安心して給食を提供できるか、また地場産の物を使った献立ができないかなどと、研究・反省を繰り返し、子どもの健康、そして調理員の健康も考えながら、31年目に入ろうとしています。
 その結果、牛乳はビンから紙パックになり、カレーは手作りのルー、だしはだしのもとから鰹・昆布・いりこだしに変わり、O157以来、加熱調理75℃1分以上という調理法にかえ、BSE問題が出てからは肉骨粉の入っているコンソメ・ソースなどは一切使用せず、また中国産の物資も問題発覚以後、使用していません。
 さらに、全国のどこよりもいち早く環境問題に取り組み、食器の洗浄は、合成洗剤から石鹸に切り替えました。子ども達の環境教育としては、牛乳パックをトイレットペーパーにリサイクルする取り組みや、保護者対象に「子どもが喜ぶ我が家の自慢献立」を募集し、給食献立に活用、また調理員からの提案で地域の高齢者と子どもたちの「ふれあい交流給食」、6年生の卒業お楽しみ給食として、バイキング方式デザートのセレクト給食「きて・みて・さわって給食室大開放」などを実施しました。
 そんななか、京都の学校給食が全国的に注目され、NHKの全国ニュースで「京のおばんざい給食」として紹介されました。今の門川京都市長、当時教育長も、各学校を訪問し試食されました。
 これからの学校給食は、台風や防災などの非常時に備えた備蓄食品を使って、回転釜でご飯が炊けるようになる必要があるため、何度かの研修を重ね、今では調理員全員が回転釜でごはんを炊くことができます。
 現在、学校給食研究会のなかに「物資選定委員会」「米飯給食検討委員会」などを立ち上げ検討した結果、給食回数190回から197回になり、全国政令都市第1位となりました。
 今、国をあげて食育の推進に力を入れていますが、周りをみれば、レストラン、コンビニ、ファーストフードと、成長過程にある子ども達の健康に不安を感じます。そんな時代だからこそ、学校給食の持つ役割は大変重要だと思います。
 私たち京都の学校給食研究会は、子ども達に安心で安全な、心のこもった給食を提供できるよう日々努力・研究を積み重ね、これからも頑張っていきたいと思います。

2. 環境問題に取り組んだ研究会活動

 1979年「京都市学校給食職員労働組合」の調理員は、自らの努力により教養を高め、技術の向上を図ることを目的に、調理研究や自主的な学習の場を持つことへと発展し、労働組合の一環として、研究会活動を教育委員会の指名研修と位置づけさせ、「京都市学校給食研究会」を発足しました。
 また、私たち学校給食研究会は、食は人間がこの世に受けて生涯を通した生命に関わり、それぞれが過ごす過程は年を追って変わるものの食事が人間の生命を変えていく大切な役割であり、調理して児童・生徒に提供する(作る人)だけではなく、食に関するそれぞれの立場から大人が子どもたちに伝えることは、食について、産地を知り生産者や地域住民との交流・エチケット・マナー・家族での食事の在り方など食事をする事の大切さと、調理して食べることから、残菜の量・生ごみ・容器包装リサイクルなどの環境教育までを私たちは食育を考え子どもたちに生きた教材なるよう、教職員全体で取り組んでいます。
 これまでも京都市は、地球の緑を守るため「地球温暖化対策」と「ごみ減量」に、学給労・研究会も、市教委・環境局・市民との連携で取り組んだ幾つかがあります。
① 「水問題を考える会」
  市民団体と事業者・市教委・学給労とで、(合成洗剤)から(石ケン)に切りかえた取り組み
② 容器包装リサイクル
  牛乳パックをトイレットペーパーにリサイクルし、各学校で使用するトイレットペーパーを「めぐれっと」と名称付け、子どもたち・教職員の協力でリサイクルされました。
③ ごみの減量
  コンポスト・たい肥化・分別・食材のくずを減らす。
  添加物・デザートのプラスチック容器の減量。
④ 生ごみのリサイクル・天ぷら油の回収
  バイオディーゼル燃料化と「バイオガス化技術実証研究プラント」に、給食から出る生ごみ(野菜くず)をプラントに1回分提供して回収してもらえる環境問題の取り組み。

(1) 牛乳パックのリサイクル
 私たちは1998年、学校給食の牛乳パックをトイレットペーパーにリサイクルした取り組みは、牛乳パックをリサイクルするにあたり問題点を協議していこうと、市教委と検討し、市民団体や業者とで作る「京都市ごみ減量推進会議」の事業で、学校と府牛乳協会・府紙料協同組合の協同事業で環境教育の一環として実施していくことになりました。牛乳パック協力団体は、「京都ごみ減量推進会議」「京都市学校給食研究会」「愛媛パルプ共同組合」「府紙料協同組合」「市教委」「環境局」などです。
① リサイクルする為に、パックについた牛乳が腐って悪臭が出たり、害虫が発生するのを防ぐ為、1個1個、調理員が洗っていく作業はできない。また、業者回収をすることができるかが、重要課題となり協議していました。
  これまで牛乳パック、年間120トン分はごみとして廃棄していましたが、トイレットペーパーに生まれ変わり、原木として、直径14cm・高さ8mのパルプ2,400本が節約できる計算になります。
  牛乳パックは、防水加工の上から印刷する大型(500cc)パックと異なり、給食用(200cc)パックは紙に直接印刷するため、インクの除去や洗浄の手間などのコスト面で再生が難しかったが、各学校の児童生徒・教員が飲み終えた牛乳パックの接着部分を手で開き、2つのバケツで2度内側を洗った後、折りたたんで集め、それを業者が回収して、リサイクルを受け持つ、四国愛媛のパイプ製紙会社が製造を引き受けることで、実施できる事になりました。
② 開始前に教員・調理員が理解し、児童生徒に環境教育として指導していくには、牛乳パックをリサイクルする事でトイレットペーパーに生まれ変わるビデオを作成し、視聴し、教材となります。
  1999年1月、3学期から、小・中(2001年から給食開始)・養護学校で給食時に実施している。
  全市188校の児童生徒が給食の牛乳パック(200cc)をトイレットペーパーにリサイクルを始めた。
  リサイクルされたトイレットペーパーを京都市独自のブランド品として普及されるため、小学生を対象にネーミングを募集した。子どもたちが毎日飲んでいる牛乳パックがどう変わっていくかの関心度が高く9,065点あった募集の中から「めぐレットペーパー」に決定しました。
  再生されたトイレットペーパー2万個が事業の協力団体である京都市ごみ減量推進会議から、学校188校への環境教材として寄贈されました。児童らが自分たちのリサイクル活動の成果を手に取って確かめる環境教育の教材になりました。

(2) バイオガス化技術実証研究プラント―今回の取り組み
 私たち調理員はこれまでも給食調理から出る生ごみの問題の解決に調理する側として、全市学校181校の毎月の献立反省を各支部(行政区)14支部の研究会役員が集まり、調理法・食材・残菜量など検討し献立作成会で議論をして残菜も出ない献立作り、(生ごみ)の減量に取り組んできました。調理員が構成する研究会の反省資料に、生ごみをコンポストでたい肥処理をしてきましたが、学校に隣接している家庭から害虫が多い、また臭いもきついので窓が開けられないなどの苦情が多く、教育委員会・体育健康教室給食担当と何回も話し合い、民間業者で週2回の回収を3回と、回収を増やす事になりましたが、学給労・研究会は市の環境局で生ごみの回収ができないかを市教委と相談し、検討していました。
 その後、環境局が、進める生ごみから水素などの燃料を取り出すバイオガス化技術実証研究プラントに1回分の回収を研究材料として2007年4月から提供することになりました。
① 《分別》
  今迄通りの調理くずを含む残菜とビニール等食材の包装容器とを分けて出す。
② 《収集車》
  一般廃棄物の収集とは別の車で収集される。
 学校給食の牛乳パックのリサイクルの取り組みや、生ごみリサイクルなど子どもたちに生きた教材となる一歩前に出る取り組みと、市民団体との協力、パートナーシップを忘れることなく今後も環境問題を継続して取り組んで行きたいと思っています。