1. 共同作業にいたった背景
まず、「共同作業とは何か」についてです。背景として3点あります。
① 管理用務員職種の向上を図るためには、管理用務員が学校になくてはならない存在であることを示すことが重要。
② 各学校に配置されている1~2人管理用務員では、出来る作業に限界がある。
③ 職員の高齢化や女性職員が増加する中で、個々の管理用務員の持つ、優れた技能を継承する必要がある。
共同作業が検討された時、京都市内の各学校、幼稚園には1人ないし2人の管理用務員が配置され、それぞれの管理用務員が勤務校の学校教育環境の整備に従事していましたが、個人で出来る作業にはおのずと限界があり、特に不得意な作業はどうしても後回しになってしまいがちでありました。また、せっかく特別な技能をもった職員がいても、その学校以外ではその能力を発揮することが出来ないのが実情でした。
そうした状況を克服し、管理用務員の新しい作業形態として、複数の学校から一定人数の管理用務員が1つの学校に集まり、仲間同士協力して普段なかなか出来なかった作業に共同で従事するという、これまでと全く違う方式で、各学校・幼稚園の教育環境の整備を行い、教育現場における管理用務員の存在価値を大きくアピールさせる
⇒ これが共同作業です。
2. 実践までの経緯
次に実現までの経緯ですが、これには学職労、教育委員会、校長会の3者協議の場として立ち上げた「学校教育近代化対応研究会」が大きな役割を果たしました。
(1) 「研究会設立」の趣旨
① 教育の近代化に対応しうる管理用務員職種像の追求
② 関係集会の確立や日常作業の充実と職種の向上
③ 教育職場に必要不可欠な職種としての確立
④ 児童・生徒・保護者・地域住民の期待に応える
⑤ 研究会協議を通した共通認識、共通理解
当時、教育環境の近代化に伴い職場環境が大きく変化するとともに、仕事の内容の変わりつつあり、また週休2日制が進むもとで、学校施設の地域開放も積極的に進められるなか、学職労がそれまでに進めてきた運動方針である、「園児・児童・生徒を主人公に教育環境の整備は我々の手で」の実践・充実とあわせて、学校週5日制への対応や地域社会へのかかわりが重要な課題となっていました。
このような課題に対応するためには、従来の「現状維持」の運動では合理化を阻止することは困難であり、「直営」でなければならないという条件整備を、管理用務員自身の自主的な運動で示すことが重要であり、また、服務規律の徹底や組織的な体質改善、個々の意識転換が求められていました。そうした職種を取り巻く状況や、他都市の合理化の実態の危機感から、管理用務員が教育職場に必要不可欠な職種であることの確立を目指し、3者協議を進めました。
(2) 研究会設置の成果
① 新規採用時に服務規律・職務内容につい徹底を図る
② 新規採用者について、隔年で研究会を実施する
③ 全体研修会を隔年で実施する
④ 共同作業を5年間を目途に実施する
こうした取り組みの具体化、実践の推進の一つとして実施したのが「共同作業」です。
実施にあたっては初めての経験であったため、賛否両論、様々な意見がありましたが、管理用務員の将来的な作業形態を模索するとともに、組織の活性化や反合理化の取り組みとして他都市の取り組みを見学するなど、実施に向けて協議を行いました。さらに具体化にむけての意見を集約し、実践要綱の作成に着手するため、各学校・幼稚園にアンケート調査を行い、その結果をまとめ、分析、検討を行いました。
これらの経緯をふみ、1995年8月22日から25日までの4日間、試行実施を行ったところ、実施校では子どもたちや教職員はもとより保護者からも「学校がきれいになってよかった」との声が上がり、校長会・園長会からもお礼の電話や手紙が組合に寄せられました。また、PTA新聞やマスコミでも大きく取り上げられるなど、その他の学校や地域など各方面から大きな反響と高い評価を得ることができました。
また、仲間相互の協力体制の強化、組合組織全体の団結に大いに役立ち、組合員の職務に対する意識の高まりももたらしました。
このように「学校教育近代化対応研究会」は前段の調整協議を含めた4年間にわたり、その実績を重ね、1995年度末当初の設置の趣旨が達成したと総括することができました。その総括に基づき「学校近代化対応研究会」は1995年度末をもって発展的に解消し、さらなる職種の向上と確率を図るため、1996年管理用務員の自主的な研究組織として「京都市学校用務研究会」が発足し、現在に至っています。
このように試行的に実施された「共同作業」は内外に大きな成果をもたらし、1996年以降の本格実施について、1996年3月の中央委員会で決定されたのち、第50回定期大会で5年間の継続実施を確認しました。
本格実施となった1996年度共同作業では、
① 管理用務員が学校に不可欠な職種であることの確立を図る
② 仕事に対する認識の高揚を図るとともに、技術を高める研修の場とすることで職種の向上をはかる
③ 職場環境や仕事の内容が変わりつつある中で、将来的な展望を目指し、これからの職種の在り方を追求する
④ 支部の主体性や仲間相互の協力体制を強化し、組織全体の団結と活性化を図る
⑤ 共同作業をもとに教育委員会や校長会・園長会との協力体制を密にする
⑥ 管理用務員職種の必要性をアピールし、合理化を跳ね返す
という基本的な考え方を十分に踏まえて、夏期休業に入った早々の7月22日から、各支部(行政区)一斉に実施し、規模・内容・ともに前回を上回る大きな成果をあげました。
2000年からは教育委員会からも研修として認められるものになり、正規職員・嘱託・臨時職員を問わず、すべての管理用務員を対象に年々充実が図られております。
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