【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-③分科会 男女平等:あなたにとってのワーク・ライフ・バランスとは?

働く女性の『妊娠・出産』時における
よりスムーズな職場復帰のために

島根県本部/松江市職員ユニオン・女性部

1. はじめに

 女性が一人の人間として社会的に自立する(=結婚しても出産しても年をとっても健康で安心して働きつづける)ためには、長い間の差別によって生じている多くの問題を解決しなければなりませんでした。そのため、私たち女性は、この問題を自らが解決していくという主体性をもち、職場、家庭、地域などにおける制度や慣習の中にある有形無形の差別をなくすために、様々な取り組みを行ってきました。
 職場での雇用、賃金、昇格、福利厚生、退職勧奨などにおける差別をなくす取り組みや母性保護の権利拡充、家庭と仕事の両立を支援するための諸権利の拡充、その他女性の労働条件改善に対する運動などをすすめてきました。また、安心して暮らすために、公害やせっけん、平和問題などの学習や社会制度の改悪に対する反対運動なども行ってきました。
 一方、政府は、1980年「母性は個人的なものではなく、社会的機能であり、母性保障と男女平等は基本的人権である」と明言した『女子差別撤廃条約』を批准し、雇用平等の法的措置として1985年「男女雇用機会均等法」を成立させ、1999年に『男女共同参画社会基本法』を成立させました。
 さらに、昨年12月には『暮らしの経済的基盤が確保できる働き方や、働く人の健康が保持され家族などとの充実した時間の持てる豊かな生活、子育てや親の介護などおかれた状況に応じて柔軟な働きができ、かつ公平な処遇の確保などを目指すため』のものとして「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。
 国内外の様々な取り組みや法整備が進み、女性の働く環境と取り巻く情勢は大きく変化し、結婚・出産後においても、母性保護や家庭と仕事の両立支援策などによって、女性が働き続ける条件は整いつつあります。
 しかし、職場では、非正規雇用化や正社員の長時間労働が進み、取得することが困難な現実があります。公務職場においても業務量の増大や欠員の不補充、臨時・嘱託などの非正規職員化などによって、時間外勤務の増加、休暇取得日数の減少化が進み、さらに職場の民間移譲、民間委託、指定管理者制度、統廃合などによる職種転換もふえてきました。
 また、地域社会の中で、男女の役割分担の意識改革は進まないまま、家庭では核家族化が進み、働く女性の増加とともに女性自身の働き方も多様化する中で、女性一人当たりの職場と家庭における労働は強化し、心身ともに負担が増しています。
 このような中で、職場を一定期間まったく離れてしまう『妊娠・出産』を経験する女性にとってはいろいろな意味において大きな試練となります。
 『妊娠・出産』という女性のみが持つ身体の機能が、職場での差別の道具にならないために、スムーズな職場復帰への支援について、私たちの職場を例に考えてみました。
 心身ともに健康で安心して休暇の取得ができ、不安なく職場や仕事に復帰できる支援が受けられれば、女性の働く意欲や姿勢も変わりますし、職場だけでなく、家庭や地域の活性化につながると考えます。

2. 経験から感じたこと

 ここ1~2年の間に産前産後休暇と育児休業を取得して、職場や家族からの言葉・支援などに対して感じたことについて、該当者6人に聞いた内容は次のとおりだった。

Aさんの場合

 

★困ったこと
・保健師さんの産休代替がおられず、職場に迷惑をかけた。
・年度途中に、実施マニュアルが作られていない事業の担当になった時戸惑った。
★良かったこと
・ゆったり育児できたので、休暇を取得できたことは、自分にとっても子どもにとってもとてもよかった。
・子どものことなど相談にのっていただいたり、声をかけていただき、心強かった。
★してほしいこと
・育児時間がスムーズに取れるよう配慮していただけるといいかな?
★望む支援策など
・休暇中の収入がもっとあると安心して休むことができる。
・家族の協力がなかった。もっと協力があれば……。


Bさんの場合

 

★困ったこと
・子どもが慣らし保育中に病気をもらい、ほとんど慣れないまま保育園に通わせることとなり、保育園からの急な呼び出しに休まなければならないことが不安だった。(周りの目もあったため)
★良かったこと
・休みがきちんととれたことが良かった。(産後1年間)
★望む支援策など
・ママ友達がいなかったため、育児のことを相談する相手が限られた。市役所の中でたまたま同じ育休の人と知り合い、時々連絡を取り合ったが、同じ市役所の同じ立場の方がいると心強いので、知り合うきっかけがあるといいなと思った。


 このような経験者からの感想や意見を基に、『妊娠・出産・子育て』という人間の基本的な営みを安心して行えるようにするため、そして、そのことがより充実した住民の生活環境づくりへの施策につながることをめざし、自分達の職場を基本に、安心して休暇が取得でき、不安なくスムーズに職場復帰ができるための具体的な支援策を次項以降に述べる。

3. 情報提供

 産前産後休暇および育児休業は、安心して子どもを産み育てるために必要な制度であるが、休暇を取得することにより、長期間職場から離れることとなる。休暇取得中の職員にとっては、復職後仕事に対する感覚が取り戻せるのか、人事異動により職員体制も変わっていくので上手く馴染めるのか、また休暇取得前とは業務における法律や制度が変わっているのではないかなどと不安なことも多い。
 そこで、休暇取得中も、子育ての負担にならない程度に周囲の職員が情報を提供したり、取得中の職員の学べる場を設けたりすることが必要となってくる。以下情報提供の面から復職支援策を考えた。

(1) 職員研修への参加
 人事課は各種の研修を企画し、職員に声をかけて参加者を募集しているが、希望に応じて休暇取得中の職員にもメール等で声をかけるとよい。研修に参加することができれば、他の職員と交流し、市役所の状況を知ることができる機会にもなり、新しい知識も身につく。
 研修で配付された資料は、職員専用サイト(スターオフィス)で入手できるようになっているが、休暇中の職員も同様に資料が入手できるとよい。職員専用サイトは、現在職場内からのみアクセスできるようになっているが、外部からでも職員アドレスを用いてログインできるようなサイトを開設すれば、さらに気軽に情報が入手できる。サイト内に新着情報があった場合は、携帯に受信できるように設定しておけば、頻繁にサイトを確認する必要もない。

(2) 制度改定や法律改正の情報提供
 今年の4月から後期高齢者医療制度が始まったように、法律の改正は頻繁に行われており、休暇に入る前と復帰時とでは、制度概要が大きく異なっていることも決して珍しくない。そもそも制度改正は、担当職員でさえ理解が難しいものもあり、長期間職場から離れている人にとってはなおさらである。めまぐるしく変わっていく制度に、復帰後もとまどうことがないように、休暇取得中でも制度改正についての情報を得たり、勉強をする機会があれば、復帰後慌てること、不安になることなく仕事ができる。少なくとも、職場の人たちの会話に参加することができる。また同僚と同じ情報を共有していることで、休暇取得中でも職場を身近に感じられる。
 情報入手の方法として、制度の改定や法律の改正についての情報が各課に届いた際は、必ず休暇取得中の職員へ連絡する。紙ベースやインターネットで情報を提供すれば、休暇取得中の職員にとって負担にならず、自分の好きな時に見ることができる。確実に休暇取得中の職員に情報を連絡するために、連絡係を課内で決めておくというのが望ましい。復職時に、制度改正について研修・概要説明を受ければ、スムーズな職場復帰が可能になる。

(3) 人間関係の構築
 復職後にとまどうこととして、仕事以外に人間関係も挙げられる。人数の多い職場ならば、何人かは必ず知った顔ぶれだろうが、人数の少ない職場であれば異動により面識の少ない職員ばかりのこともある。休暇取得した人の中には、代替職員の方が、自分よりも必要とされているように感じ、辛く思う人もいる。課内で特に仲の良い人がいれば、日頃からメールのやり取りができるが、人によっては、休暇中全く課の人との交流がない人もいる。
 そこで、所属する課の歓送迎会がある時には休暇取得中の職員にも声をかけるとよい。もし参加できれば、新しい同僚たちと交流がはかれ、課の状況もわかり、安心できる。子連れで参加できるような交流会もあると、さらに良いと思う。
 また、機構改革や人事異動の情報も休暇取得中の職員へ知らせるようにするとよい。お世話になった人が他の課へ異動になっていたことを復職後に知るというのは、残念である。休暇取得中でも一職員であるので、人事異動といった重要な情報については、情報を共有するような仕組みになっているとよい。

(4) 育児に関する制度等の開示
 日頃から各種の休暇や制度があることは耳にしているが、自分が実際に取得する立場にならなければ、詳しく調べることはなかなかない。休暇や制度が整っていても、知らなければ利用することもできない。仕事と子育てを両立していくためにも、こういった制度を知り、上手く活用できるよう情報を提供することが必要である。
 そこで、職員用のホームページに育児に関する諸制度や手続き方法、申請書などをすべてまとめて掲載してあるコーナーがあるとよい。情報はわかりやすい形で提供し、できれば出産・育児経験者の経験談などといったコメントも掲載されていると、一人で悩んでいる人にとって心強い。

(5) 周囲の職員への育児に関する情報提供
 休暇取得中の職員へ情報を提供することはもちろん大切だが、周囲の職員へ育児に関する情報を提供することもまた大切である。休暇を取得した職員にとって、妊娠中、休暇取得中、復職後、すべての場面において同僚の支えがなくてはやっていけない。出産・育児経験者ならば、それぞれの場面がどういった状況で、どのような心境なのかということは理解できるが、経験がない職員にとっては、どのように支援し、どのように接していけばよいのか分からないということもある。
 それぞれの場面において、本人が大丈夫だと言えば、実際は無理をしていたとしても、大丈夫だと思ってしまうこともある。妊娠・出産した職員が無理せず、安心して子育てをするためにも、育児に関する情報を研修したり、インターネット上でサイトを設けて掲載するといった形で全職員に知らせるようにすると少しは理解できるようになる。
 育児の体験談、妊娠障害の恐さを学習する機会を設けたり、育児に関しての休暇や制度を知らせれば、復職直後の職員の状況がより良く分かり、より子育てを支援する職場づくりができる。周囲の職員の理解が得られれば、復職後の職員にとって、子どものための休暇を取得したり、定時に帰宅できるなど働きやすい環境になる。
 復職支援のためには、今まで挙げてきたようにあらゆる形で「情報」を有効に提供していくことが重要になってくる。まずは、その情報を提供していくための流れ、制度をつくり、浸透させていくことから始まるのではないだろうか。

4. 交 流

 休業中は、わが子をゆっくりと育てることができる、育児に専念できる大切な時期である。しかし、子どもの成長を日々見ながら、子育ての喜びを感じて暮らすことができる一方、子育てに対してとまどいや不安・悩みが出る時期でもある。
 アンケート調査では半数以上の母親が子育てに不安や負担感を感じている。(図1)
 「子どもを叱りすぎている様な気がする」「食事や栄養に関すること」「病気や発育・発達に関すること」「自分の自由な時間が持てない」「子育ての費用」などである。(図2)
 また、仕事を持つ母親にとっては、休業も後半に差し掛かると、仕事の事がちらつき、あせりや焦燥感が出てくる。休業が長ければ長くなるほど、職場からは取り残された様な孤独な気持ちになり、復帰後うまくやっていけるだろうか、ついていけるだろうか、子育てと仕事を両立できるだろうかと心配になってくる。休業があと残り何ヶ月、あと何ヶ月……。仕事と子育て両面から不安が募ってくる休業中に対する支援は、今のところほとんどない。
 今年4月から支払いを兼ねて、休業中の母親に対して交流の通知がされるようになったものの、育児支援の内容には程遠い。来るべき、職場復帰の時期に備え、仕事と子育て両面からの支援も復帰後の支援と同様に必要である。
 そこで、職場とのつながりが希薄になりがちな休暇取得中の支援として、職員同士が子育てについて気軽に体験を話し合い、相談や交流できる場が必要である。初めての子育てや気軽に相談できる者がいないことが育児不安の要因となっていることから、「不安は特別なものでなく、誰もが不安を抱きながら子育てをしていること」や「いろいろあるけれどやっぱり子育ては楽しい」と交流の中で実感できるような交流の場と同時に内容の工夫も必要である。
 育児不安やストレスの軽減により、子育てに喜びを感じことができ、さらに育児力の向上(親育ち)により親が自信を持って子育てができる支援を望む。また、父親の育児への協力が母親の精神状態を安定させることから、父親の参加も勧めたい。
 定期的な開催とするが、具体的には次のような内容を提案する。

(1) 子どもの栄養や食事について
 離乳食の月齢にあわせた作り方、量、献立や幼児食の基本、手軽に作ることが出来る食事やおやつ等について学んだり、親同士子育てについて情報交換する中で大方の悩みや不安感は解消されるはずである。
 そして、食の安全や食品の選び方などの情報交換や他の親子と一緒になって簡単クッキングなどをすることでふれあいを深めたり、友達づくりができる。このような機会を通して、職員と親しくなることは、復帰した後、人脈として仕事にもプラスになる。

(2) 子どもの病気の予防・対処方法について
 発熱、下痢、湿疹など子どもの病気については、特に初めての場合、どう対処してよいかとまどってしまう。受診の判断や手当て、そんな時の食事や入浴などたくさんの不安が襲ってくる。ひきつけでも起こしたらもうパニックになる。身近に頼る親や知人がいない場合はなおさらだ。病気の予防やいざという時の対処方法など情報交換、交流する機会があるとよい。

(3) 親子のふれあいについて
① おひな祭りや七夕会、クリスマス会等の季節の行事を通して、親子のふれあいや子どもたち同士・親同士の交流やふれあう機会があるとよい。一緒に料理を作ったり、飾ったり、おやつを食べたり楽しい交流をしたい。
② 絵本の読み聞かせは子どもの好奇心と想像力を膨らませ、豊かな感性を育てる。親子の絆を深めるためのコミュニケーションの場として大切であるが、読み聞かせのコツを知っておくことでさらに楽しく読み聞かせができる。
③ 親子で一緒に遊ぼう。子どもとどう遊んでいいかわからない親が増えている。体操、ベビーマッサージなど親子のふれあいを通して、他の親子とも交流できたらよい。
  このような交流によって、育児に対する自信が生まれ、より充実した生活が送れる。このことは、復帰した後の仕事への意欲にも大きく影響する。休暇取得中における交流はとても重要なポイントである。

図1 子育ての不安や悩みを感じている者の割合(%)
(出所)「松江市次世代育成支援行動計画」資料

図2 子育てに関して日常的に悩んだり、気にしていることの割合(%)
(出所)「松江市次世代育成支援行動計画」資料

5. 職場復帰後の支援策

(1) 休暇取得前の職場にスムーズに復帰するための研修の実施
① 看護師……看護技術の実施研修をする
  採血業務など患者に対する看護師の専門的な技術を研修で再習得し長期のブランクによる不安を解消する。他の職種と異なり、治療に伴う薬品の使用など生命の危険と直結した業務であり、一瞬たりとも気の抜けないハードな職種であると言える。
  研修期間を十分に取り看護技術や知識を取り戻し、自信を持つことでスムーズな職場復帰ができるようにする。
② 調理師……調理研修をする
  離乳食の各期(初期・中期・後期・完了期)における食品の使い方、食物アレルギーによる除去食の作り方、栄養素の摂取についてなど、必要に応じ知識や技術を再習得して円滑に業務に戻れるようにする。
③ 幼稚園教諭、保育士……保育研修をする
  乳幼児期の心と体の発達の特性、家庭外保育の役割、具体的な保育技術(音楽リズム・お話・手遊び・造形など)などの研修を受け、知識や技術を再習得して円滑に業務に戻れるようにする。
④ 保健師……保健業務研修をする
  保健福祉システムの研修、現行法令・制度の研修、現行保健事業の技術研修などの研修を受け、知識や技術を再習得して円滑に業務に戻れるようにする。
⑤ 事務職員……事務業務研修をする
  財務システムの研修、現行法令の研修、財務規則研修、休業中に改正となった事務処理規程の研修など必要に応じて行う。また、事務分掌の変更点の把握や関係する課の業務の把握等についても研修する。
  研修や他の職員との親交を支えにスムーズな業務への復帰をはかることで、精神的な負担を徐々に解消し、自信を植え付ける。

(2) 長期休業取得者のための職場復帰暫定期間の設置
 近年、職場でのメンタルな部分での支援がより必要とされ、十分な不安解消の期間が必要であることから、各職場において円滑に職場復帰するための職場ごとの研修の実施を基本とした上で、休業中の代替えの職員をそのまま1か月間程度置き、ワークシェアをすることで、引継をしながらゆっくりと業務量を増やしていくようにする。
 その間に業務に追われずに研修を受けることもできる。特に医療職場への復帰支援としては、不安解消につとめ、心身共に慣らしの期間を十分に持たせたい。そして、患者にとっても安心できて信頼のできる医療職場であって欲しいと願う。また事務職場など他の職場においては事務の繁雑化、職場環境の変化(元の職場に戻っても人事異動により環境が一変していることもあり得る。)があり、適応が無理なくスムーズにできるようにしたい。休業後の精神面への負担をまず軽減させる支援が必要である。
 育児休業が1年から最長3年まで取得できるようになり、利用する職員も今後益々増えていくと思われる。従って、長期休業後の復帰職員への支援策は急務であり今後さらに必要となってくる。復帰後の職場研修と、1か月間程度の代替え職員との引継期間など休業取得者の能力や資質、環境に合わせた対応が必要である。

(3) 環境づくり
 復帰直後は、子どもも保育所等に入所直後であり、環境の変化から体調を崩すことも考えられる。急な受診・看護が必要となってくるので、それに対応し、休みが取り易いよう配慮が必要である。
 また、休業中や研修期間中、育児時間取得中の職員のいる職場では、特に専門職において、他職員の負担を鑑み、正規職員での代替えを望む。

6. 健康診査

 育児休業期間は子が3歳になるまで取得できるようになったが、その間の職員の健康管理はどうなっているのか。
 育児に集中していて、母親は体調の変化を、「産後」というかたちで病気を見過ごしてしまっていないか。現在育児休業を取得している人は、休業中に健診を勧奨してもらうことはないが良いのであろうか。
 現在、一般的に若年者のがんの発病が増えている。そのため、厚生労働省はがん検診では胃がん検診・子宮がん検診・大腸がん検診の対象者年齢を20歳以上に引き下げている。
 その中でも子宮がんは、感染症の増加により若年層の罹患がふえている。子宮頚部がんの29歳以下の受診者の発見率は各年代でもっとも高い。このような現状の中、2008年度から妊娠と同時に子宮がん検診が受診できるようになり、公費助成で妊婦健康診査受診票に子宮がん検診がオプションで追加された。乳がんも乳腺の異常を産後の乳腺症と混同し発見がおくれるケースもある。死亡者も年々増加している。
 また妊娠はホルモンのバランスを崩したり、「高血圧、蛋白尿、浮腫」を主症状に妊娠中毒症に罹患したり、大きなリスクがある。最近耳にする「メタボリック症候群」の中の肥満も妊娠出産をきっかけという女性もいる。また産後はホルモンの分泌が不安定で、「産後うつ」といわれる症状を体験する人もいる。核家族化で育児支援が得られず、産後うつが改善できずにうつ状態が続く人もいる。無自覚であることも多いので早期発見のために、生活の振り返りを行い専門医に相談することも大切である。
 しかし産後の女性には、産後1ヶ月健診で産科健診が異常なければ、その後健診を受ける機会はない。それでは健康を守っていくことはできない。
 生活習慣病予防のために、医療保険者は加入者に対して食事や健康上のアドバイスをする事が義務づけられている。休暇取得期間に一般健診を受け、母親が生活習慣病についての意識を持っていくことが、子どもの生活習慣病を予防し健康を育てていく事につながる。
 職員が健康に子育てできるように生活習慣改善への支援をするべきである。働き続けるためには産後の異常と混同しやすい疾病の発見が遅れないように育児休暇中の健診が必要である。きちんと健診を制度化するべきである。

7. おわりに

 『妊娠~出産~職場復帰』、長い人生においてはわずかな期間ですが、出産する女性にとっては、大きな人生最大といっても過言ではない変化の生じる時期に、適切な支援をすることで親も子も心豊かに、そして、安心して次世代を育てていく基礎となります。
 女性が仕事と家庭を両立させ、心身ともに健康で安心して働き続けられる職場の実現は、男性にとっても働きやすい職場となります。
 『結婚しても出産しても年をとっても健康で安心して働きつづける』という女性の人権の確立は、長い間女性が引き継いできた願いです。
 今提案をした支援策が基本となり、参加者の声を聞きながらさらに内容の充実したものになっていくことを期待するとともに、このことが松江市で暮らす人、女性のよりよい生活につながり、子育てしやすい環境づくりの一助になることを願います。