【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-③分科会 男女平等:あなたにとってのワーク・ライフ・バランスとは?

男女共同参画の推進状況と今後の課題
―― 男女共同参画に係る拠点施設について ――

大分県本部/地方自治研究センター・人権・文化専門部会・人権グループ

1. はじめに

 男女共同参画社会基本法の制定から9年が経ち、様々な領域で女性が活躍する場面が増えるなど、男女共同参画社会の実現のための取り組みは着実に進められている。しかし、地域においては、人口の減少、少子高齢化、社会的格差、経済的自立、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)、子育て、配偶者からの暴力等の課題を抱えている。男女共同参画の推進は、地域(自治体)にとって重要な課題である。
 今回「人権」グループは、そのさまざまな課題の解消に必要な「男女共同参画」の各自治体における推進状況と現状についてアンケート調査をし、担当者レベルでの意見の集約を行った。(資料①)その結果から見える問題点と今後の課題について提案したい。
 国の「男女共同参画基本計画(第2次)」に、男女共同参画センターについて「男女共同参画センター等は、男女共同参画社会の実現に向けた活動の拠点施設として、男女共同参画に関する情報提供、女性グループ、団体の自主的活動の場の提供、相談、調査研究等多様な機能を果たしている。人材の育成機能や効果的な事業の展開を通じ、これからの拠点が一層充実し、男女共同参画社会基本法の理念に則した運営と有機的な連携が図られるよう支援する」と位置づけている。全国に約350ある拠点施設であるが、大分県は、県の施設「アイネス」1つのみで、市町村の拠点施設については、佐賀県と並んで0である。このことは、重大な問題ではないだろうか。
 地域における課題や、そこに住む人々が抱えている課題の解決のための実践的活動に重点を置いた施策を実施していける拠点施設が望まれるが、市の財政上の問題で、センターの新設については、難しいのは現実である。しかし、「男女共同参画社会実現」のための機能が、自治体の政策の中において、推進していかなくては、さまざまな課題の解決は望めない。「拠点施設」の新設が無理であるならば、その課題解決のための施策ができているかの検証は必要である。
 そんな中、2007年度別府市において「男女共同参画センター検討委員会」が設置され、現在前向きに協議されており、県下の市町村で初めての「拠点施設」の誕生が期待されているところである。その経過や目的・状況についての報告も資料として掲載したい。(資料②


(資料①)

男女共同参画に関する担当者アンケート 分析結果(*姫島村資料なし)

① 担当課について
 ○担当課はどこですか? の問いについては
 ・男女共同参課・室があるのは……大分市・別府市の2市
 ・人権担当課に担当があるのは……豊後大野市・臼杵市・玖珠町・中津市・豊後高田市・国東市の6市町である。
 ・企画にあるのは……津久見市、佐伯市、日田市、宇佐市、杵築市の5市である。
 ・総務にあるのは……由布市、竹田市、日出町の3市町である。
 ・生涯学習課にあるのは……九重町である。
 *県下の担当課は、大分市と別府市を除き、人権・企画・総務・生涯学習課とまちまちである。
 ○今の課がふさわしいか? その理由については
 *男女共同参画課(大分市・別府市)は除いた意見として、
 ・人権担当課がふさわしい……臼杵市、中津市、豊後高田市の3市 
         実現するためには人権意識によるところが大きいと考えられるため。
         市民運動につなげることが可能などがあった。
 ・人権担当課がふさわしくない……豊後大野市、玖珠町の2市町 
  理由としては、内容が多岐に渡っている。
         人権関係だけでなく、多方面に関連があるため。などがあげられている。
 ・企画課がふさわしい……佐伯市、日田市・宇佐市・杵築市の4市町 
  理由としては、全庁的な取組みとしやすい。
         他課の調整機能をもつ部署であると思うのでふさわしい(妥当)。
         女性政策として総合的に推進するのはふさわしい。
 ・企画課がふさわしくない……津久見市
  理由としては、独立した課・室・班などを新設するのが望ましい。
 ・総務課がふさわしい……由布市 
 ・総務課がふさわしくない……竹田市・日出町の2市町
  理由としては、総務課は、全体的な管理を行う部署ではありますが、男女共同参画行政を担当するところではない。
  一概にふさわしくないとはいえないが、どの課が担当するにしても専任職員が必要。
 ・生涯学習課がふさわしい……九重町
 *どの課がふさわしいかは、まちまちではあるが、専任職員の必要性を強く感じる。
 ○どのような課が事業をすすめやすいと思いますか?(回答したのは8市町・残り8市町は無回答)
 *男女共同参画課である(大分市・別府市)は除いた意見として、
 ・男女共同参画課……豊後大野市・津久見市の2市
  理由として、男女共同参画課が中心となり、各課へ男女共同参画の視野に入れた事業を展開していくよう依頼できるため。
 ・人権担当課……竹田市・日出町
  理由として、男女参画行政に関する事項は、人権施策の一環である。
        女性の人権という面では、人権対策である
 ・企画、総務……豊後大野市、玖珠町、国東市の3市町
  理由として、男女共同参画課が理想であるが、無理ならば、企画がよい。
        市民と協働し、各課との連携がとれる。
        全庁的な取組みが行えるから。
        実現に関する取組みは、広範多岐なものであり、市政のほとんどの分野において取組みを実施する必要があるため。
 ・住民への啓発及び学習会・講演会等を行える課

② 拠点施設について
 ○拠点施設はありますか?     ・各市町拠点施設はなし!!
 ○今後の建設予定又は、基本計画等位置づけについて
 ・未定または無しのところがほとんどであるが、
  豊後大野市では、新庁舎建設時に一部の機能ができるよう要望したいや
  日田市では、今後建設予定
  別府市では、設置に向けて検討委員会が設置されており、男女共同参画推進条例において施設の整備に努めるとなっている。(別紙資料②参考)
 ○拠点施設の次の業務は、どのようにしていますか?(13市町回答・3市町無回答)
 ・相談機能については、人権担当課や福祉課、子育て支援課等での対応が多く、各課と連携を図りながら相談または対応を行っている。
 ・交流機能については、臼杵市・津久見市・玖珠町・中津市は、行っていない。
     *自由に、いつでも市民が学習できる環境は必要である
 ・情報機能については、HPや広報及び書籍等を通じて情報提供を行なっている。
 ・学習機能については、講演会、学習会、研修会を実施、取組んでいる。
 ・活動支援については、大分市のようにNPO法人への土日窓口委託や佐伯市では7団体に年額5万円補助金を交付している。別府市では拠点施設の設置準備室を市の施設内に開設いており、活動のために提供している。などがあげられている。
 ○拠点施設についてどう思いますか?
 ・必要と回答したのは……大分市、由布市、豊後大野市、津久見市、佐伯市、日田市、別府市、国東市、九重町の9市町
  その理由として、施策上重要なことであり、目的を達成するために市民が直接活動する場所として有効。
          市民の情報収集や活動交流の場となる。
          DVなどプライバシーの関係で拠点施設があると利用しやすい。
          市役所に行きづらいというイメージが払拭できる。
 *男女共同参画社会を実現するためには、市民が利用しやすい拠点施設が必要だと考えている。
 ・必要ではないと回答したのは……竹田市、臼杵市、玖珠町、豊後高田市、宇佐市、杵築市の6市町
  その理由として、小規模自治体には運営できない。現在の人口規模では必要ない。
  小規模な自治体では拠点施設として機能しないのでは? という意見である。

③ 担当者について
 ○担当者は、専任ですか? 人数は?
 ・専任の職員を配置しているのは6市で……大分市(2名)、豊後大野市(1名)、臼杵市(1名)、別府市(2名)、国東市(1名)、中津市(1名)
 ・兼任は11市町で……由布市(5名)、竹田市(1名)、津久見市(1名)、佐伯市(2名)、日田市(2名)、玖珠町(3名)、豊後高田市(1名)、杵築市(1名)、日出町(2名)、宇佐市(1名)、九重町(1名)
 ○今の人数でよいですか? の問いについては
 ・専任、増員(1~2名)を希望しているのは7市町、今の人数でよいが9市町となっている
  兼任しているところが多く今の人数でよいというところもあるが、増員や専任を希望している。

④ 条例について
 ○策定状況と特徴についてですが
  臼杵市・津久見市・中津市・宇佐市・九重町以外策定済みであり、特徴のある市としては「大分市の苦情や権利侵害などの救済の申し出をすることができる」や「豊後高田市の部落差別をはじめあらゆる差別をなくし人権擁護する条例に包含される」などがあげられている。

⑤ 基本計画について
 ○策定状況と特徴についてですが
  津久見市・杵築市・日出町・豊後高田市(本年度策定予定)以外は、策定済みである。
 ○数値目標と内容については
  目標設定をしているのは12市町(大分市、由布市、竹田市、豊後大野市、臼杵市、佐伯市、日田市、中津市、宇佐市、玖珠町、国東市、九重町)であり、各種審議会等の女性登用率を30~40%を目標としている。

⑥ 庁内連絡会議について
 ○組織構成メンバーについてと機能していますか? の問いについては
 ・組織していないところは(津久見市、佐伯市、玖珠町、杵築市、日出町)の5市町。
 ・組織しているでは、
  豊後大野市では、関係各課より職員1名ずつ13名で構成、日田市では下部組織として一般職員で作業部会を設置している。豊後高田市については、プロジェクトチームを立ち上げている。関係部課長級で構成しているところが多い。その中で、別府市においては推進幹事会が男性と女性が同数で構成されている。連絡会議については機能しているようだが、まだ十分でない。

⑦ DV担当について
 ○担当課及び対応については?
  各市町、人権・福祉・子育て支援課などが主に担当しており、人権、福祉課等で職員や相談員が連携を図りながら相談・対応を行っているところが多い。
 ○男女共同参画課としてDV関連の仕事内容は? については
  相談・研修会・情報提供・啓発活動(キャンペーン)など行っている

⑧ 配偶者暴力相談支援センターについて
 ○必要性を感じるか? とDV防止法の改正について知っているか? の問いには、宇佐市以外は各市町ともに必要と回答しており、改正についても知っている。

⑨ 女性の審議会委員の登用について
 ○数値目標がありますか? の問いについては
  50%ともっとも高いのは佐伯市である。
  40%は由布市と臼杵市
  35%は大分市
  30%または以上と回答したのは、竹田市、豊後大野市(H22まで)、日田市、玖珠町、別府市、杵築市、国東市、中津市、宇佐市の9市町。20%は日出町。津久見市は数値目標はない。
 ○昨年度調査での率は?
  大分市が31.2%もっとも高く、次いで国東市の28.9%と佐伯市の28.7%となっており、女性登用に積極的に取組んでいる。また、玖珠町と杵築市が15.3%と登用率が少なくなっている。
 ○率を上げるためにいていることは?
  文書等で通知又は、協力依頼を実施しているところが多い。佐伯市のように強力に要請しているところや、日出町では町内の女性団体連絡協議会を設立し実績を残すように活動し取組んでいる。豊後大野市は、女性の人材リストの作成に取り組んでいる。

⑩ 男女共同参画の仕事について
 ○あなたの理想は? については
  「男女共同参画」といわなくても良い社会になるのがいい。各課の事業それぞれに男女共同参画を意識した取り組みが必要であると思う。拠点施設(又はそれに代わるもの)が出来て、市民が自由に活動できるようになればいいと思う。など。
 ○理想をかなえるためには、どんなことが必要でしょうか? については
  各市、男女がお互いに理解し、個人を尊重し、支えあえあうことが大切だと考えており、理想をかなえるためには、正しい理解や意識の向上(職員・市民)などがあげられている。
  その中で、別府市においては拠点施設設置の検討委員会設置について取組みを始めたことをあげている。


(資料②)
別府市男女共同参画センター検討委員会について

1、女性センターの設置目的
  女性の自立と地位向上を求める世界的な動きの中で、国は、平成11年6月に男女共同参画社会の実現に向けて必要とされる女性問題の解決を念頭に置きつつ、「男女共同参画社会基本法」を制定されました。これからは、男女が共同して、家庭で、地域で、学校で、職場で、それぞれの個性と能力が発揮できる社会(男女共同参画社会)づくりが必要となっている。
  別府市においても、少子高齢化・核家族化・国際化が急速に進展していく中で、「別府市総合計画」にあります「住む人も訪れる人もいきいきと輝く豊かな生活交流圏の創造」の基本理念に基づいた、こうした新しい社会をつくっていくための施策を総合的、計画的に推進するために、平成14年3月に市民の皆様と共に考え行動していく指針となる「別府市男女共同参画プラン」が策定された。
 ※別府市の男女共同参画社会を推進するため、女性の自立や社会への参加を促す意識啓発・職業・能力開発等の学習活動、女性をめぐる様々な問題についての相談、さらに、情報の提供、市民間の意見交換、情報交流の場として男女共同参画を推進する拠点施設の設置が必要である。

2、男女共同参画センター検討委員会設置の流れ
平成12年度
・社会教育(女性行政)から市長部局(男女共同参画)へ
・男女の意識に関する市民1000人アンケート実施
平成13年度
・第1期別府市男女共同参画推進懇話会設置(市民代表、有識者、各種団体からの推薦者等)
・第1期別府市男女共同参画推進懇話会より男女共同参画プラン『提言書』提出
・「男女共同参画プラン」策定(14年3月)
平成14年度
・男女共同参画推進本部設置
平成15年度
・第2期別府市男女共同参画推進懇話会設置(公募委員、学識者、各種団体からの推薦者等)
・「湯のまちべっぷ男女共同参画都市宣言」に関する『提言書』提出(16年2月)
平成16年度
・「湯のまちべっぷ男女共同参画都市宣言」(16年9月) 
・第2期別府市男女共同参画推進懇話会は男女共同参画条例について協議
「男女共同参画センター設立を願う会」より
 「男女共同参画センター設立に関する要望書」提出(17年3月)
平成17年度
・第2期別府市男女共同参画推進懇話会は「別府市男女共同参画推進条例」を提言
・男女共同参画に関する市民1000人アンケート実施
「男女共同参画センター設立を願う会」より
 「男女共同参画センター設立に関する準備室の要望書」提出(18年2月)
市内活動団体等の賛同団体による協議会づくり
・「別府市男女共同参画推進条例」施行(18年3月)
(条例第17条第22項「市は、市民及び事業者による男女共同参画社会の形成の推進に関する取組を支援するため、拠点施設の整備に努めるものとする」)
平成18年度
男女共同参画拠点づくりのための準備室として
 「べっぷ男女共同参画協議会」開設(18年5月)
・「男女共同参画推進条例」リーフレット作成(18年6月)
・男女共同参画審議会設置(公募市民、有識者、事業者からの推薦者等)(18年7月)
・「男女共同参画推進条例」リーフレット作成(18年6月)
「べっぷ男女共同参画協議会」より
 「男女共同参画センター設立に関する要望書」の提出(19年2月)
平成19年度
「べっぷ男女共同参画協議会」より
 「男女共同参画センター設置検討委員会に関する要望書」提出(19年8月)
・「男女共同参画センター検討委員会」設置(公募市民、有識者、事業者からの推薦者等)
(20年2月)
平成20年度
・「男女共同参画センター検討委員会」において協議継続中(21年2月答申予定)

3、どのようなセンターを作ろうとしていますか
  (男女が共に、あらゆる分野に共同で参加できる男女共同参画社会を実現するため、男女共同参画センターの設置が必要であり、センターの機能・運営・活動等について検討)
  別府市男女共同参画センター検討委員会の中で機能等について検討協議中
  ・相談機能 女性の総合相談・支援ができる
        (夫婦や家族のこと、職場や仕事のこと、生き方等)
        配偶者暴力相談支援センターの機能がある
        (配偶者暴力防止法の改正平成20年1月11日)
  ・交流機能 性別、年齢、地域等の枠を越えた多くの人が集い交流ができる。
  ・情報機能 男女共同参画に関する情報を収集、多様なニーズに対応
        (パソコン、ビデオ、図書等)
  ・学習機能 男女共同参画についての啓発、研修会、自立支援のための技能習得など
        (パソコン研修等、センター内に託児室や保育サービス等)


2. おわりに

 内閣府の「男女共同参画会議基本問題専門調査会」がまとめた『地域における男女共同参画推進の今後のあり方について』を参考にすると、男女共同参画社会の実現のために必要なこととして
 ① 地域の課題の解決
 ② 地域に住む人々の課題の解決
 ③ 地域の活性化
 ④ 個人の尊重
 ⑤ 個人の能力の発揮
 ⑥ 個人・組織間の緩やかなつながりの形成
 ⑦ 男女共同参画の視点
 をあげている。これをみると、自治体がしていくべき政策の全てに関わっていくものである。したがって、男女共同参画社会の推進=自治体の課題 として、市町村の果たす役割は大きい。
 今回、県内各自治体の、男女共同参画の推進状況の調査をして、問題であると感じ、又、当局に強く要望していくべきことは、下記のこととしてまとめたい。
 男女共同社会の実現のための施策の推進は、その重要さの認識の度合いで決まってくると考える。
 主管課については、各市の規模や組織の問題であるが、その施策をすすめる担当者にあっては、専任であることが必要である。一人でも専門的にこの問題について課題をもって取り組める状態であれば各自治体の現在の問題点やしなければならないことも見えてくるはずである。
 拠点施設についても、形に限らず現状の施設の中で、その目的にあった利用を可能にするなど工夫する中、拠点施設としての目的を果たして男女平等参画社会の実現につなげてほしいものである。
 最後に、男女共同参画センターの重要な機能を掲載して、レポートをまとめたい。
≪男女共同参画センターの重要な機能≫
 ① 課題解決型で実践的活動につながる知識習得や意識啓発
 ② 地域や地域に住む人々の課題の的確な把握及び情報提供
 ③ 実践的な活動のための関係団体等との協働、ネットワークのコーディネート
 ④ 実践的な活動を通じた人材の発掘・確保・育成
 これからの時代に、地域において男女共同参画をさらに推進するために求められるのは、男女共同参画の視点を持って、個人を尊重し、多様な主体と連携・協働しながら、身近な地域の課題やそこに住む人々が抱えている具体的な課題の解決に取り組むことである。男女共同参画の視点は、地域社会を支え、新たな発展を生み出す大きな原動力となるに違いない。(内閣府資料より)