1. はじめに
2008年7月11日(金)8時頃、米海軍イージス艦マックキャンベルが新潟東港に入港した。東港では、新潟港の軍事利用を許さない県民の会と県平和運動センター、社民党県連合等が共同で抗議行動を展開した。米海軍イージス艦の入港は2004年以降これで6回目である。
今回、上記関係団体は港湾管理者である県の姿勢を質すため、7月8日に小熊副知事に会い、米海軍イージス艦の入港を認めないよう求める申入れをしたが、『これまで同様に港湾法に基づいて対応する』との返答であった。一方、港湾所在地である新潟市では、今回は市長としては公式な行事には「一切不参加」の姿勢で臨み、行政としても窓口の国際課は「一切関わらない」との対応であった。
以下は、2004年に米海軍イージス艦が初めて入港した際の取り組みを通じて得たことを踏まえてまとめた文書であり、小生のホームページにその時以来、掲載し続けてきたものである。情勢も状況も大きな変化はなく今日を迎えているので、今次集会の参考に資するものであればと期待して応募した。
日米安全保障条約や日米地位協定による米軍への協力体制が、周辺事態法や有事立法の成立により着々と強められてきている一方、平時の日本国内での対応については依然として国内法に準拠することになっているものの、実情は超法規的に強制的に協力が求められてきているようにしか見えない。
日米安全保障条約や日米地位協定を盾にした米軍の行動、例えば米兵による犯罪や事故への米軍による不当な対応、米軍艦船の日本国内港湾への寄港の強行等に、市民を代表して交渉に当たってきた首長は「自治体の限界」を訴えてきた。いまや、小泉内閣はなし崩し的に見放そうとしているようにしか見えないし、泉田県政では小泉路線を甘受することになりそうだ。
本当に法的に限界があるのだろうか。政治的限界はどうなのか。中央と地方の行政の対応に新たな可能性は生じてきていないか。あらためて検証する必要性があると思う。
今の政治情勢はかつての米ソ東西対立、国際冷戦構造、国内での自社対決の時代とは違う。一般市民の政府・行政への期待との関連で新たな判断を生む可能性があるのではとの問題意識で、新潟港湾管理者の新潟県知事が2004年10月に米海軍のイージス艦の入港を認めた根拠法令が何処にあるのかについて考察した結果、そもそも入港を許可したことに法的に問題があるのではないかとの考えに至った。
2. 新潟市長にも要望書を提出
篠田昭新潟市長は、安保防衛問題については就任以来一貫して政府とは距離をおき、自治体の立場での主張を展開してきている。2002年11月に全戸配布した『合併ニュース』で「合併後の新市の理念」に"北東アジアの平和と安定に向けて積極的な役割を果たす"と明記した。さらに、2004年6月定例議会で私の一般質問に対し、有事関連法案の強行採決、イラクでの自衛隊の多国籍軍への参加に関する論議のすすめ方等について「国民保護計画の作成に当たって、とりわけ市民的諸権利との整合性については、どのような事態にどのような協力要請があるのか、国会の審議において十分に明らかになっておらず……」「自衛隊の(イラクでの)多国籍軍への参加は、国民への説明が十分に尽くされるべきものでありますが、小泉首相の説明の仕方や内容には正直申し上げて疑問を感じるところがございます。さらに国民的な議論が必要なものと考えております」と不快感を示し、小泉内閣の姿勢を強く批判してきた。9月定例議会では中山議員の一般質問に「米国のイージス艦が日本海に配備される予定と報道されていますが、イージス艦の配備は日米地位協定の問題もあり、平和と市民の安全を守るという私の立場から、軍艦が新潟市に入港することは、好ましくないと感じており、今後もイージス艦の動向については、注目していきたいと考えます」とまで答弁している。
このことについては、基礎的自治体の首長の態度としては勇気ある言動であり、高く評価されるべきことと思う。
しかし、この様な市民代表である市長の意向とは裏腹に、港湾管理者である新潟県は、「拒否する理由はない」として、港湾法13条2項に基づいて米海軍イージス艦の入港を認めた。その結果、10月11日(月/祝)朝9時、陸上と海上での抗議行動の中、新潟東港に灰色のレイクエリー号は入港した。
県平和センターが10月7日に県知事宛に申し入れたのを受けて、10月8日の午後、社会民主党新潟支部連合、新潟地区平和運動労働組合連絡会議、市議会市民共生ネット議員団の三者は連名で、新潟港の地元市長宛に要望書を提出した。要望した内容と趣旨は以下の通りである。
① 県がイージス艦の入港を許可したことは、イージス艦レイクエリーに搭載された砲弾や弾薬などの危険物の有無、攻撃目標にされたときの危険性、世界の軍事的緊張を刺激することなどの計り知れない問題があり、平和な港を望む地元市民や県民感情等への配慮を全く欠く判断と言わざるを得ない。地元市長として県に抗議されたい。
趣旨 日米地位協定第5条では、アメリカ海軍の艦船の入港については港湾の使用料と水先案内(ランチ)のことだけ規定されており、他のことについては国内法と自治体の判断によることになっている。しかし、県は日米地位協定第5条に基づく寄港通告をあたかも強制力を伴うものとして受け止めている。さらに、港湾法は商業港での軍艦の入港を予定しておらず、港則法による危険物チェックの対象になっていない。その様な中で、港湾管理者としての県は、単に岸壁が空いていることだけで入港を許可したことは極めて遺憾である。兵器も核も港則法上の危険物には該当しないのでチェックの対象にはならないが、港湾法13条の規定に基づき軍艦も民間船舶も差別しないとの姿勢は、実におかしい。
② アメリカ海軍の艦船の新潟港への寄港については、市民感情として歓迎するわけにはいかない状況にある。その旨を国や県に申し入れられたい。
趣旨 そもそも、イラクに大量破壊兵器がなかったことをパウエル国務長官が認め、国際的テロ組織アルカイダとフセイン政権との関係が薄かったことをラムズフェルド国防長官が公言するなど、いまアメリカによるイラク戦争の大義への疑問が世界中に広がっており、多くの市民も同じ認識でいる。
③ 新潟港が環日本海交流の拠点になるように努め、新潟港の軍事利用を許すことなく、日米の軍艦の寄港を常態化させないように、国や県に申し入れられたい。
趣旨 今回のアメリカ海軍の最新鋭イージス艦の新潟港への寄港が日本海への配備に繋がるのではないか、日米の軍艦の寄港が常態化するのではないかと危惧している。さらに、そのことが北東アジアの軍事的緊張をいたずらに刺激することになるし、世界の平和を求める声や市民感情に著しく反するのではないかと心配している。
④ 米軍艦船の入港に関する情報が流れて以降、そのことに伴う様々な経費が発生することになる。これらの諸経費について、国に請求されるように、県に申し入れられたい。併せて、本市も同様に対応されたい。
趣旨 今、地方は合併して身を削って財政の効率的運営に努めている。今回のアメリカ海軍の艦船の入港は新潟県や新潟市が誘致したわけではなく、日米安全保障条約に基づいて入港してくるものである。本市にとっても県が岸壁使用を認めたため、止む得ず受入れることになる。いわば損害賠償の対象のようなものとして把握するべきことと思う。
3. そもそも港湾法は軍艦の入港を予定している法律なのか
港湾管理者である新潟県は港湾法13条2項に基づき、「拒否する理由はない」と説明した。そのうえ、10月17日の選挙で新たに選ばれた泉田知事(自民党・公明党の推薦)は、「県民国民を守るために入港するのだから」と述べ、従来の県の姿勢を一転させ、歓迎する意向も示しており、大変な問題である。
確かに港湾法は13条2項で「船を差別してはならない」としており、「入港は拒否できない」と説明している。しかし、そもそも港湾法は軍艦の入港を予定している法律なのか否か、極めて強い疑問を感じる。いろいろな関係者を通じて調べても、「そもそも港湾法が軍艦の入港を予定しているか否かは不明」とされてきている。まず、そのことを若干検証してみた。
(1) 軍艦は「軍港」にしか入れないのが常識だった
「民間港」と言う言葉がある。「民間港」というのは、かつて「軍港」があったから、「民間港」という言葉がある。厳密に言えば、「民間港」という言葉は沖縄の那覇軍港との対比で今も生きているはずだが、そのような使い方は官でも民でもしてないようだ。
かつての「軍港」は、呉、舞鶴、佐世保、横須賀の四港で、軍港法により、「軍港」にふさわしい規制があった。この4港以外の港は「民間港」だった。
明治政府は鎮守府条例の中に1890年に「軍港要港に関する件」を定め、軍港の指定をすすめた。
明治後期には、この4港の他、室蘭も『軍港』に指定した。しかし、当時の室蘭の経済人達には室蘭港を商業・貿易港として発展させたいとの意向が強かった。何をするにも、いちいち海軍省や商工務省の許可が必要になるため、例えば「鉄道延長工事の妨げになる」「港湾の埋め立て事業ができない」ことから、政府に指定の解除を求め、1898年に解除された。
軍港の指定については、1900年には軍港要港に関する件が軍港要港規則に改編され、1945年10月15日の軍港要港規則の廃止まで続いた。
軍港指定については、1895年制定の防務条例、1896年制定の軍港境域判定、1898年制定の要塞近傍取締の他、要塞地帯法、陸軍輸送港域事業取締法、軍用電気通信法、国境取締法等により、防空演習の実施の義務などの様々な規制があったようだ。
(2) 軍転法で「軍港」指定がなくなった
軍転法は1950年5月31日に議員立法で成立し、6月28日に公布、即日施行され、日本国内から「軍港」の指定がなくなった。
港湾法は同年6月1日に港湾法が政府提案で成立した。政府提案の港湾法の策定時には、まだ「軍港」があり、「軍港」以外の港に軍艦が入ることなど、想定していなかったのではないかと推測している。
軍転法の成立により「軍港」がなくなっても、まだ旧軍施設のある旧軍港にしか軍艦は入らないことが前提になっていたのではないかと推測できる。
4. 港則法も軍艦のチェックを予定していない
港湾の安全を確保するために制定され、海上保安庁による取り締りの根拠法令になっている港則法は、軍港が法律上も実態としても社会通念上も存在していた1948年に制定されたものである。
だから、港則法21条~23条に基づく港則法施行規則による「危険物の種類を定める告示」(1979年9月27日の運輸省告示)の中には、武器、弾薬、核が例示されていない。危険物の例示の中に、武器、弾薬、核がないので、海上保安庁による危険物のチェックの対象になっていない。
もちろん、テロにより軍艦が攻撃される危険性も、その場合には港周辺の広大な地域が吹き飛ばされる危険性があることも想定していない。せいぜい、武器、弾薬、核を搭載していない民間船舶の海難事故、例えば単独火災、衝突事故、座礁の危険性を想定したチェックだけしかしていない。
しかし、武器、弾薬、核を搭載している軍艦の海難事故、例えば単独火災、衝突事故、座礁だけを想定しても大変な惨事となる。とくに、港湾施設内や港湾周辺で起きたら大変なことになる。それが軍艦の持つ独自の危険性であり、かつて軍港に寄港先を絞った理由もそこにあり、対処できる環境を必要としていたからでもある。
いろいろな関係者を通じて調べても、「そもそも港則法が軍艦の入港を予定しているか否かは不明」とされてきている。
5. そもそも新潟港は軍港に相応しいのか
通常、軍艦の入港には、それなりの条件が整っていなければならない。水深が12メートル以上ないと船底を打ってしまうし、潜水艦による護衛もできない。天然の良港でないと寄港しにくい。入江が山で囲まれていて自然の要塞になっていないと安全な寄港が望めない。軍の施設を構築できるようにしておくため様々な規制を敷く条件が整っていること、さらに行政による軍への協力体制の確立や総力の集中が容易な地域であることが必要とされる。
新潟港や松浜漁港の様な、土砂の堆積がすすみ浚渫が常に必要な河口港で、遠浅の砂浜で、新潟平野の一角で隠れる場所もなく、繁華街が近くて遊休地の少ないところで、平和勢力が極めて強い地域に、軍艦が出入りすることなど、全く予想も予測もしていなかったのではないか。よもや、新潟に東港ができて12メートルバースが設置されることなど、港湾法制定当時には誰も予言すらしなかったはずだ。
その新潟東港には東北電力の新潟東火力発電所がある。東北電力は全国の九電力会社の一つでありながら、全国の電力の20%を賄っている。新潟東火力発電所での発電量は年間209億kW/hで、本県全体の年間消費電力160億kW/hをはるかに上回っており、東北電力の供給電力全体の25%を占めている。
この発電所には満タンの石油タンクが並んでおり、石油備蓄法に基づき常に24万klが貯油されている。その上、中東のカタールやインドネシアからLNG(液化天然ガス)が東港に着き、パイプラインで仙台に送られている。
さらに、新潟東港には約20社が貿易を中心に事業を営んでおり、国際貿易拠点として繁栄することが今後大いに期待されている地域で、決して新潟市街地から離れた単なる田舎ではない。
この新潟東火力発電所は、イージス艦が入港したコースに面して広がっており、国民のライフラインの要をなしていることから、もし日本政府が本当に全国民の生活の安定を目標に掲げているならば、国も港湾管理者である新潟県も、そもそも危険な船舶である軍艦が、この発電所の周囲を航行し、新潟東港に入港することなど、許すことはできないはずである。
このことを国民市民に対して政府や港湾管理者である県は、どの様に説明するのだろうか。一度聞いてみたいものである。
6. 想定していない軍艦の入港は拒否できるのではないか
軍港4港以外が条件を満たしていなかった頃、港湾法も港則法も制定されたようである。
港湾法と港則法が軍艦の入港を想定していない可能性を残されているのであれば、それを理由に軍艦を入港させないことができるのではないか。法治国家の判断として、港湾管理者は拒否するべきものと思う。
つまり、港湾法も港則法も民間商業船だけを想定しており、こんな危険な軍艦の入港を全く予定していない。にもかかわらず、この様に軍艦が堂々と入港して来る。これは実におかしい話だ。
7. 無登録農薬問題との対比で対処するべき
以前、白根でも無登録農薬が問題になったことは記憶に新しいと思う。その時、農薬取締法に例示されていない農薬が使われていて問題になった。
無登録の農薬を使ったような農産物は、この世に流通していないことになっており、流通していないはずだから検査する必要がないということになっている。ところが、何かの拍子に、無登録農薬を使用した形跡のある農産物が市場で見つかり大騒ぎになった。
農薬取締法には使用して良い農薬が例示されていて、例示されていない農薬は使われていないことになっている。無登録農薬を使用した形跡のある農産物は市場から排除され、使用した可能性を含む農産物は全て廃棄された。
港湾法も民間商業船だけを想定しており、こんな危険な軍艦の入港を全く予定していない。軍艦の入港を想定していないから港則法による危険物の中に、武器、弾薬、核が例示されていない。危険物の例示の中に、武器、弾薬、核がないから、海上保安庁はチェックをしない。
そもそも、港湾法上は、武器、弾薬、核を搭載する様な船が来るはずなどない。でも、この様に軍艦は正々堂々と入港している。農産物では「無登録農薬問題」で大騒ぎになったが、軍艦ではノーチェックが大騒ぎにならない。実に奇妙な話だ。
日米地位協定第5条に基づいてイージス艦が入港してきたが、この条項でも日本の法令、つまり港湾法に従うこととされている。県が全く無前提に「拒否する理由がない」とレイクエリーの入港を認めたのは、実におかしい。
8. 非核平和自治体宣言を楯に対応する自治体も
神戸市など、この問題に気がついた自治体は非核平和自治体宣言を制定し、核の搭載の有無を問うことにしたとたん、米軍は答えたくないので、入港を諦めている。その他にも似たようなケースがある。
国内では「米軍が使用を希望する岸壁が空いていない」との理由で米海軍の軍艦が入港できなかったケースは多いが、上記のように、それ以外の理由で入港できなかった例もある。新潟市も『宣言』の実現に向けて頑張らなければならない。
『宣言』をめぐり新潟市議会でも多く論議されてきた。新潟市は周辺市町村と2005年3月21日に合併する予定であり、合併対象市町の中に既に『宣言』をしているところとの関係で、市民共生ネット議員団団長の関口議員(社民党新潟支部連合代表)が2004年2月定例議会の代表質問で市長に質した。市長からは「広域合併を進めている近隣市町村の中には既に平和都市宣言をされているところもあり,11市町村との広域合併を一つの機会ととらえる方法も考えられます」との答弁は得ている。ただ、「北朝鮮の核開発疑惑が市民の大きな関心を呼んでいる状況に配慮する必要もあると考えております」との条件が付いている。
9. 諸経費の分担について
イージス艦の入港に関わる諸経費を国に請求するように、県に働きかけ、市で発生するようであれば、市も国に請求せよと要望した。
米軍艦船の入港に伴う港湾施設使用料と入港料は、日米地位協定第5条により、米軍には請求できない。ただ、「非提供港湾施設損失補償要領」により、その同額を国(防衛庁)に請求できる。この規程に従い、県はイージス艦の入港料、岸壁使用料を国に請求する予定だ。
米軍艦船の入港に伴い発生するゴミ・し尿処理等の経費については、代理店であるリンコー・コーポレーションは全て米軍に請求する。
しかし、小樽や室蘭等では、港湾管理事務所の職員の超過勤務手当などの諸経費も含めて国に請求していると聞く。我々の抗議行動への警備も必要になり、委託料や通信費用も嵩むことになるが、みんな請求すればいい。そのことが、歓迎していないことに露骨に繋がるからだ。
別に、イージス艦を誘致したのではない。いわば「損害賠償」を求める構えで対応するべきではないか。
10. 国民に広がる「北朝鮮の暴発への脅威感覚」をどう削ぐか
現実的対応を抜きにした、いくら「軍艦の入港が国内現行法上では認められないはずだ」と強調しても、説得力を持たない。つまり、①国民の間に広がっている北朝鮮の暴発、日本を標的にしたミサイルの発射の可能性をなくすこと、②アメリカのミサイル防衛構想の本当の目標を暴露し理解を広げること、③この二つの目標を日本の平和勢力が誠実に実行すること、これらのことがセットにならないと、何ら意味を持たない。
仮に、新潟港への軍艦の入港を阻止できたとしても、他の港が受入れる状況があっては意味がないからである。そこで、平和外交の戦略課題、日本国内の地方にいる我々の実行可能な任務について一考してみた。
とりあえず、アジアの平和と安定への糸口が当面の六カ国協議の進展にあることは事実であり、何としても成功裏に続けてもらわなければならない。
しかし、世界には何らかの理由で、朝鮮を南北に分断した現状を固定化しておき、一定の緊張がある方が望ましいとの意向が働いていることも、残念だが感じられる。そうした分断固定化政策に風穴をあけ、自主的平和的統一を実現することも、アジアの平和と安定に重要な意味をもつ。平和勢力は引き続きこの取り組みを強めるべきであろう。
それらのことを踏まえて、全国各地で各平和勢力が各地域の在日朝鮮総連組織とともに、朝鮮の自主的平和統一の実現に互いに努力することを確認しながら、六カ国協議をすすめることに、日本の朝鮮総連も尽力するように働き掛けることが重要である。全国津々浦々どこでもできることである。
県内でも、新潟・長岡・上越だけでなく街ならどこでも取り組むとの草の根的な姿勢が重要であり、難しい学習会だけではなくサッカーや草野球、カラオケでも何でも良いのではないか。とにかく工夫することを求めたい。
平和勢力の中で大きな位置を占めているのは労働組合であり、労働組合の良識が平和勢力を安定的に支えてきた。労働組合の中でこの種の活動が弱いと、平和勢力の衰退に繋がる。実際、運動の蓄積と世代交代を進める際に、組織内企業内産別内のことに忙殺され、奇妙な「節約」意識により、労働界のお付き合いや、平和問題等が蚊帳の外に置かれがちになるからである。
「針の穴に糸を通す様なもの」とも言われるほど精度の低いミサイル迎撃体制と高額の開発費を費やす意味がない。そのためにイージス艦を日本海に配備させる必要性があるのだろうか。
かつて、湾岸戦争で「パトリオット神話」が崩壊した。
つまり、湾岸戦争で米国は、イラクが発射したスカッド改良型の中距離弾道ミサイル「アルフセイン」を地対空ミサイル「パトリオット」(PAC2)で迎撃した。その際、米軍は96%を撃破と発表したが、その後の調査で9%にすぎないことが判明したと言われている。
TMD構想に含まれる「PAC3」や戦域高々度防空システム「サード(THAAD)」にしても、空中でミサイル同士をぶつけ合うことになる。専門家等は「これぞまさに神業」と評している。果たして命中率は上がっているのだろうか、これも疑問視されている。「かつてのSDI(戦略防衛構想)の焼き直し」との酷評も聞こえる。その上、パトリオットと比べ、はるかに高額である。
宇宙平和利用の国会決議と矛盾しないかという問題点も指摘されている。
この国会決議には「わが国における宇宙に打ち上げられる物体および打ち上げ用のロケット」を対象とするとされており、防衛庁内には「衛星を他国と共有せず、米国の衛星からの情報提供には問題はない」との見方が強いと聞く。しかし、決議は1969年の通常国会で議決されたもので、TMDのような衛星の利用法を想定していたものかどうかは疑問視されている。
今回入港したレイクエリー号はミサイル迎撃訓練で一発打ち落とした優秀な軍艦との評価があるが、打ち落としたミサイルの速度、大きさ、発射位置や射程等、どの様な想定で打ち落としたのかを疑問視する向きもある。
そもそも、日米がコンピューター上であれ、瞬時に未確認飛行物体を発見し打ち落とすために作動されれば、集団的自衛権の行使になる。実質的に実態的に既成事実を積み上げ、その範囲を広げようとする危険な策動であり、これを許してはならない。
世界の仲間と連帯しアメリカの単独主義を国際協調路線に転換させること、アメリカ一辺倒の日本外交を転換させること、日本政府には国民に説明責任を果たすよう求めることが求められている。
11. 終わりに
新潟市長は10月12日(火)の定例記者会見で、米海軍のイージス艦レイクエリー号の新潟港への寄港について「説明がない」と不快感を示し、交流行事へは欠席したことを内外に報告した。このことは、私たちが要望書を提出したことへの回答として高く評価するものである。
今後は、国会では①法解釈の問題、②市民生活を不安に陥れないようにすることとの関連での自治体や港湾管理者の姿勢への指針等を追及してほしいし、県会では港湾管理者の判断を求めてほしい。
ただ、10月17日(日)の知事選挙で当選した泉田知事が、米海軍の軍艦の寄港を歓迎する意向を示しており、本市の今後の方向に悪影響を及ぼすことにならないかと懸念している。
その上、県議会ではもっぱら「万景峰号の入港を拒否できないか」「何故イージス艦の入港のことが問題となるのか」との論議が主に交わされていると聞いており、大きな愕きである。万景峰号は商業船であり、港湾法や港則法で差別されず公平に扱われているのは疑問を挟む余地のないことであり、実に当然のことである。
以 上 |