【自主レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-④分科会 自治体から発信する平和・共生・連帯のメッセージ

「おきなわ・平和の旅」に参加して


石川県本部/石川県職員労働組合 北谷 俊彦

 この6月報道されたあるニュースに、私は思わず感嘆の声を上げていました。その内容は、「文部科学省が小学校の新しい学習指導要領の解説書に、初めて沖縄戦という言葉を明記することを決めた。」というものでした。
 私がこの沖縄戦に深く関心を抱くようになったのは、昨年の秋に参加した「おきなわ・平和の旅」がきっかけでした。本当に軽い気持ちでの参加でしたが、今まであまり目を向けていなかった沖縄の一面を知り、平和への思いが深いものとなり、私自身得るものが非常に大きかったと思います。

<昨秋の主な行程表>
1日目(9月28日)
・沖縄県職労・沖縄平和センター表敬訪問
・「癒しの島、沖縄の真実」著者 野里洋(のさとよう)(金沢市出身)さんとの対話
2日目(9月29日)
・南部戦跡めぐり(ひめゆりの塔、魂魄(こんぱく)の塔、南風原(はえばる)陸軍野戦病院跡等)
・教科書検定意見撤回を求める県民大会への参加
 3日目(9月30日)
・基地視察(普天間基地、嘉手納基地)
・キャンプシュワプ・辺野古漁港 米軍再編反対「命を守る会」との交流

 行程中、最も心に残ったのは、何といっても「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に参加したことです。参加人数が当初の予想では、5万人程度と思われていましたが、ふたを開けてみると、予想の倍以上の11万人余の人が結集し、沖縄県民の強い憤りが示されました。
 教科書検定は、もともとは各都道府県で行う構想でしたが、最終的には、国(文部科学省)が行うことになり、憲法で禁止している「検閲」的な面を濃くしています。この県民大会の意見撤回は、2006年度の高校日本史の教科書検定で、沖縄戦の集団自決の記述から、「日本軍強制」が削除されたことに対するもので、沖縄県民としては、到底受け入れるべきものではありません。参加者には、涙ぐむ人や怒りを顕わにする人が、老若男女を問わず多くいました。私は圧倒されると共に、沖縄戦に対して、うちなーんちゅ(沖縄人)とないちゃー(本土の人)との間に大きな認識の隔たりがあることを痛感しました。
 野里さん(「癒しの島、沖縄の真実」著者)によれば、「沖縄県民は、太平洋戦争末期、敗色濃厚のなかで本土防衛の最前戦で日本軍とともに徹底交戦し、14万人余の死者を出した。捕虜になることを禁じられ、家族同士で殺し合うなど集団自決に追い込まれた者も多数おり、悲劇の島となった」ということでした。沖縄は、まさに本土防衛の捨て石となったのであり、沖縄県民の心に、「日本本土に捨てられた」という思いが今もしっかり刻まれているのです。
 大会では、「日本軍による自決の強要を削除するな」「検定意見を撤回させるぞ」の声が響く。そして、この時の高校生による「おじぃ、おばぁの(集団自決の)話は全部ウソなのでしょうか」の叫びが、文部科学省の今回の「学習指導要領解説書の記述決定」に繋がったのです。



<9・29検定撤回 県民大会>
県民へのアピール(全文)
砲弾の豪雨の中へ放り出され
自決せよと強いられ
死んでいった沖縄人(うちなーんちゅ)の魂は
怒りをもって再びこの島の上を
さまよっている
いまだ砲弾が埋まる沖縄の野山に
拾われない死者の骨が散らばる
泥にまみれて死んだ魂を
正義の戦争のために殉じたと
偽りをいうなかれ
歴史の真実をそのまま
次の世代へ伝えることが
日本を正しく歩ましめる
歪(ゆが)められた教科書は
再び戦争と破壊へと向かう
沖縄戦の死者の怒りの声が
聞こえないか
大和(やまと)の政治家・文科省には届かないか
届かなければ 聞こえなければ
生きている私たちが声を一つにして
押し上げ 訴えよう
 9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会



 この旅では、いろいろと考えさせられることがありましたが、絶滅危惧種のジュゴンに思い入れの深い私にとっては、「名護市辺野古(へのこ)の米軍用滑走路建設計画」は重視する問題の一つです。この建設計画は絶対に阻止すべきものです。現地の海に立って、より一層この気持ちが高まりました。辺野古の沿岸部は美しいサンゴ礁が広がり、海底にはジュゴンが主食とする海草が育っています。米軍の滑走路建設は、この美しいサンゴの海とジュゴンを次世代に残せないことを意味します。米軍基地再編の下、綺麗な沖縄の海が次々と………。この自然環境破壊に、私は強い憤りを感じながら、普天間基地の辺野古移転を阻止する現地闘争の責任者の安次富(あしとみ)さんに思いを託してきました。安次富さんが、「米軍の新基地建設は様々な問題を抱えており、今後も反対運動を続けていく」と語気を強めて話している姿が今も私の脳裏に残っています。
  この平和の旅のキャッチ・コピーは、「あなたは本当の沖縄を知っていますか? いまこそ平和を、もっと平和を!!」でしたが、参加した人は、きっと何らかの形でこのフレーズを噛みしめたと思います。日本で唯一地上戦を経験し、県民の4人に1人が命が奪われ、今なお多くの戦争の爪跡を残す沖縄への「平和の旅」の企画は、平和を希求していく上で、今後とも引き続き必要であると感じています。


世界遺産「ナキジングスク(今帰仁城)」