【要請レポート】

第32回北海道自治研集会
第Ⅳ-④分科会 自治体から発信する平和・共生・連帯のメッセージ

磨けば光る自治体の平和力
ブルーリッジ接岸拒否に至る12年

北海道本部/小樽市議会議員 斎藤 博行

1. はじめに

 小樽市は北海道の中西部、日本海に面し札幌の西隣に隣接する人口13万3千人の地方都市です。今は観光都市で売り出していますが、古くは商工業・貿易都市として栄えた街です。その歴史も北海道では比較的古く、今年で開港109年を迎えています。
 地方都市小樽が全国的に注目されたのが、1997年9月5日インディペンデンス、2000年10月13日キティーホーク、そして2006年7月1日キティーホークと3回続いた米海軍空母の入港でした。日本国内で米海軍基地以外の、いわゆる民間商業港への米海軍空母の寄港は1997年のインディペンデンスの小樽寄港が初めてでした。また、全国の民間港への米海軍空母の入港は今まで4回しかないなかで、そのうち連続3回が小樽港でした。
 このレポートは、三回の米海軍空母の小樽寄港時に展開された小樽市サイドの発言や議会答弁等を整理し、その中から今年1月の米海軍ブルーリッジ「入港拒否」に至る議論の経過や判断基準である「3条件」の扱いの推移等についてまとめたものです。

2. 小樽方式の12年

(1) 1997年インディペンデンス初寄港
① 入港までの議論経過
 ア 1997年7月25日夜、小樽市港湾部に小樽海上保安部より、米海軍からの情報として米海軍空母のインディペンデンスと巡洋艦モービル・ベイが9月5日から10日までの6日間、小樽港に入港するとの通知がありましたので検討願いますとの一報がありました。
 イ 小樽市港湾部は7月28日にこの情報を小樽海上保安部に正式に確認しました。
 ウ 7月31日海上保安庁から小樽海上保安部に対し空母インディペンデンス他米海軍艦船が接岸する岸壁の手配の指示があったので、港湾管理者である小樽市長にバースの手配を依頼する文書が届きました。
 エ 8月1日小樽市と小樽海上保安部は米軍関係者より空母の入港方法や離着岸方法等について説明を受けました。
 オ 8月1日夜、小樽市助役は記者会見で「これまで入港を認めてきた米海軍艦船と同じスタンスではなく慎重に対応したい。」と民間港への空母初寄港の重要性を指摘しました。
 カ 8月5日「米海軍空母インディペンデンス等の入港に伴う港湾業界への状況説明会が開かれ、港湾業界から商船の動向や港湾荷役活動との関係について意見が出されました。
 キ 8月6日外務省より「現時点で核の持込について事前協議はないので、非核3原則は守られていると理解している。」との回答が届きました。
 ク 8月8日在札幌米国総領事館より「米国海軍の水上艦船、攻撃型潜水艦および海軍航空機には核兵器を搭載しないことが米国政府の一般的な方針です。しかしながら、特定の艦船、潜水艦、航空機に関して核兵器の搭載の有無については、議論しません。米国政府は日本人の核兵器に対する特別な感情を理解しており、安全保障相互条約に基づく義務を忠実に履行してきており、今後も継続します。」との回答が届きました。
 ケ 8月8日「インディペンデンス等入港に伴う打ち合わせ会議」が開かれ、港湾業界からは沖での待船料や横待ち経費が発生したときには港湾管理者が負担すべきであるとの考えが示されました。
 コ 8月15日助役が外務省に「インディペンデンス小樽寄港に関し、入港時の警備体制や港湾関係者に損害の出た際の対応等」について国の考えを求めました。
② 小樽の3条件
 ア 8月19日米海軍空母のインディペンデンス小樽寄港計画受け入れの是非を議論する臨時議会が開催されました。そこで市長は受け入れの前提として「入港、接岸時の安全性、核兵器を搭載していない、港湾荷役への影響がない」の3条件について検討・判断するとの方針を明らかにしました。
 イ 同日小樽市議会は「小樽市は核兵器廃絶平和都市宣言を行っており、港湾の利用においてもこの趣旨が生かされることを強く望む。」との決議を全会一致で採択しました。
 ウ 8月22日市長は記者会見で「米海軍空母インディペンデンス寄港の受け入れ」を正式に表明しました。また、その際、小樽海上保安部に使用許可条件として「施設使用者として事故防止対策、港湾施設に損傷を与えた場合の使用者負担による原状回復」、外務省には「治安確保のための万全の警備体制と寄港に伴い発生する諸経費の補填」、そして在札幌米国総領事館には「乗組員の事故、事件防止」を要望したことを明らかにしました。
 エ 9月4日第3回定例議会で「米海軍空母インディペンデンス入港に関する調査特別委員会が開催され、付託された「インディペンデンスの小樽寄港の撤回を求める請願、陳情を審議し、賛成少数で不採択としました。
③ 空母寄港と見学者
 ア 9月5日午前8時30分、空母インディペンデンスが小樽港勝納埠頭に接岸。9時40分、随伴艦モービル・ベイが中央埠頭に接岸しました。
 イ 誰もの予想を大きく上回る見学者


 
9月5日
9月6日
9月7日
9月8日
9月9日
合 計
見学者
20,000
130,000
162,000
30,000
20,000
362,500
内艦内見学者
0
70,000
75,000
0
0
145,000

④ 前例としない
 ア 市長は9月1日付の全港湾労働組合の「商港小樽を準軍港化及び軍港化しないと明言すること」との要求に対して「小樽港は将来とも商業港としての発展を期しており、軍港化、準軍港化する考えはない」と文書回答しました。
 イ 9月9日、米海軍空母インディペンデンス出港後の記者会見で市長は「これを前例とすることなく、再度入港の時には一から改めて議論する。」と述べました。

(2) 2000年2度目は「キティーホーク」
① 入港までの議論経過
 ア 9月1日小樽海上保安部から小樽市港湾部に「米海軍空母キティーホークが10月13日から16日まで小樽港に入港するとの連絡があったので、港湾管理者・小樽市長にバース手配を依頼したい。」との電話がありました。
 イ 9月4日小樽海上保安部から小樽港湾管理者・小樽市長に文書でバース手配の依頼が届きました。
 ウ 9月8日「キティーホーク」入港に伴う小樽港湾振興会からの意見聴取が行われました。港湾部長は「仮に入港するとなると前回のインディペンデンスと同様勝納1番バースが見込まれる。空母寄港中の商船の動向把握、情報収集が必要となる。」と説明。それに対し業界からは「商港であり、商船とのバース競合は認めがたい。早急に動向把握させたい。仮にシフトとなった場合の経費の補償はどうなるのか。具体的には港運協会小樽支部で検討する。」などの意見が出されました。
 エ 9月11日「キティーホーク入港に伴う港運協会小樽支部からの意見聴取が行われました。業界からは「穀物船、麦船、木材船等の動向、予定についての説明があり、一部に競合が懸念されるためより詳細に情報把握が必要。随伴艦の有無について確認してほしい。貨物輸送にも影響が多少は出ると考えられる、埠頭内の規制や安全対策についてなど」の要望が出されました。
 オ 関連業界への説明会が行われました。新日本海フェリー(9月11日)、小樽運送事業協同組合(9月13日)、3ヶ所の肥料工場(9月13日)、勝納埠頭内の76企業(10月5日)
 カ 9月14日職員が外務省に出向き小樽市の基本的考え方や市民感情や議会等の動向を説明し、合わせて入港目的や随伴艦の有無を質しました。また、核搭載の有無について文書照会しました。
 キ 9月19日在札幌米国総領事館で、商港としての小樽港の基本的考えを説明し、あわせて核搭載の有無について文書照会しました。
 ク 9月22日小樽市議会「米海軍空母キティーホーク入港に関する調査特別委員会」で市長は「入港に関する3条件について慎重に検討し判断する。」と答えました。
② 貨物船と競合?
 ア バース会議において10月中旬の「キティーホーク」入港時に入港を予定している商船の存在が浮上してきました。
 イ 競合する貨物船は二隻でした。
   飼料穀物船「エンシャン・フェニックス」(46,610トン)→
       米国 ニューオリンズから穀物荷役・貯蔵施設のそろう勝納埠頭へ接岸予定
   小麦船「ハンディー・エスペランス」(23,846トン)
       カナダ バンクーバーから中央埠頭へ接岸予定
 ウ 9月18日小樽市議会予算特別委員会で市長は「受け入れるかは白紙だが、空母が入港を予定しているのと同じ時期に大型の民間貨物船二隻が小樽港の利用を計画していることを念頭に置いた判断をしなければならない。」と答弁しました。
 エ 9月25日総合商社「トーメン」は貨物船「エンシャン・フェニックス」が当初は10月14日に小樽港入港の計画であったが、出港地米国での穀物の積み込みに手間取り出港が2日遅れ、小樽入港は10月18日か19日にずれ込む見通しであることを発表しました。
③ 随伴艦ビンセンス接岸拒否
 ア 9月28日突然に随伴艦ビンセンスのバース手配の依頼が小樽海上保安部から港湾管理者である小樽市長に文書で届きました。
 イ 9月29日小樽市は「米海軍空母キティーホークのバース手配をする。」「随伴艦ビンセンスは期間中に入港する大型商船と競合するためバース手配ができない。」旨小樽海上保安部に通知しました。
 ウ 10月12日小樽海上保安部から「随伴艦ビンセンスの小樽入港を取りやめる」旨の通知が小樽港湾管理者・小樽市長に文書で届きました。またその際、随伴艦ビンセンスは小樽港湾区域外で沖停泊の見通しであるとの連絡もありました。
④ 夜間休憩所
 ア 米軍側の「外出できる乗組員は1日約1,000人。4,000人余が艦内に残るため、勤務終了後に陸上で休む場所が必要」との要請があり、空母歓迎実行委員会(小樽・札幌商工会議所)は小樽市から3,000平方メートルの市有地を借り、空母の接岸した勝納埠頭に「夜間休憩所」を開設しました。
 イ 「夜間休憩所」で米兵に提供するバーベキュ、ハンバーガー、コーラ、ビールなどは空母側が用意しました。
⑤ 寄港と見学者
 ア 10月13日午前7時45分米空母「キティーホーク」勝納埠頭に接岸。随伴艦ビンセンスは港湾区域外に停泊しました。
 イ 10月14日と15日随伴艦ビンセンスの乗組員は通船により分散しながら勝納埠頭に上陸しました。
 ウ 見学者は1997年インディペンデンスの五分の一に減少しました。


 
10月13日
10月14日
10月15日
10月16日
合 計
見学者
2,480
31,050
36,410
540
70,480
内艦内見学者
0
27,280
32,060
0
59,340

 エ 10月16日午前9時空母「キティーホーク」出港。
⑥ 小樽市の反応
  10月31日小樽市長は記者会見で「前回の空母寄港時より、市民から激しい反対を感じた。今後の対応は市民感情に配慮したい。」

(3) 2006年キティーホーク再び
① 入港までの議論経過
 ア 5月29日小樽海上保安部から小樽港湾管理者・小樽市長に文書で米海軍空母「キティーホーク」のバース手配依頼が届きました。
 イ 5月30日小樽海上保安部から小樽港湾管理者・小樽市長に文書で米海軍艦船「カウペンス」のバース手配の依頼が届きました。
 ウ 5月30日助役は記者会見で「従来と同じく小樽港を利用する商船への支障、運行の安全が図られるか、核搭載の有無の3点を入港受け入れの判断基準とする。」「日本人の被害者が出ている米兵による事件もあり、在札幌米国総領事館に対し、市民の中にはいろいろな意見があることを話し、再考できないか聞きたい。」と述べました。
 エ 6月2日市長は外務省に出向き、寄港撤回の要請と核搭載の有無についての照会文書を提出しました。
また、同日、助役は在札幌米国総領事館に出向き同様の要請を行いました。
 オ 6月5日港湾関連4団体と「キティーホーク」の小樽寄港に関する事前説明会が開催されました。席上参加者から「一般商船に影響のないように。」との要請が出されました。
 カ 関係業界への説明会が開催されました。マリンウエーブ小樽(6月5日)、新日本海フェリー(6月6日)、飼料工場(6月6日)、小樽運送事業協同組合(6月7日)、小樽倉庫事業協同組合(6月7日)
 キ 6月14日在札幌米国総領事館から「核搭載の有無についての文書回答」受理。
 ク 6月15日外務省から「核搭載の有無についての文書回答」受理。
② 小樽市議会キティーホーク特別委員会
 ア 6月16日小樽市議会「キティーホーク入港に関する特別委員会」が開催され、市長は「核搭載の有無について在札幌米国総領事館から文書で、1991年にブッシュ元大統領が発表した艦船上の核兵器撤去は現在も米国の方針という回答がきており、一般論的な内容だが正式の文書できており疑うわけにはいかない。」との考えを示しました。
 イ 市長は「入出港時及び接岸時の安全性については6月15日に港長から特段の支障はないとの回答を得た。商業港として港湾機能への影響については15日に港湾部として一般商船への特段の影響はないと判断した。核搭載の有無についての12日付の外務省からの文書回答でないと判断した」と述べ、「キティーホーク」の小樽入港受け入れを表明しました。
 ウ 総務部長は「2006年1月米軍側のブルーリッジの非公式な入港打診の際、当時の豪雪による事情(除雪の遅れで市民生活に深刻な影響が出ており、接岸予定バースまで手が回らない)を説明したところ、寄港先が室蘭港になった経過を報告し、小樽港のカードは大雪などの自然条件か商船でバースがあいていないなどの物理的事情しかない」との考えを示しました。
 エ 港湾部「小樽港周辺は改正海上人命安全条約(ソーラス条約)によりフェンスが張り巡らされており、一般的に市民の出入りは禁止されている。米海軍艦船訪問者は全てソーラス条約の制限区域に立ち入ることになるが、ゲート管理は港湾管理者である小樽市長が保安規定に従って通常通りに対応する。」と答えました。また、総務部は「米軍はいろいろな行事を予定しているようだが、一般の人を対象とするのではなく[招待状]を出すことになると考えている。」と答えました。
 オ 「キティーホーク入港に関する特別委員会」終了後の本会議で「米空母キティーホーク寄港反対」の陳情が不採択となりました。
③ カウペンスバース変更
 ア 6月16日小樽市議会終了後、バース使用を認める通知を小樽海上保安部へ持参しました


キティーホーク 勝納埠頭1・2番バース
カウペンス 中央埠頭4番バース

 イ 6月27日小樽海上保安部から、米海軍側の警備上の理由から、カウペンスのバース変更要請が届きました。
 ウ 6月29日小樽港湾管理者・小樽市長は小樽海上保安部へカウペンスの接岸バースを勝納埠頭2番バースに変更し使用を認める通知を持参しました
 エ カウペンスは空母の横隣に「縦接岸」しました。
④ 寄港と招待制見学会
 ア 7月1日午前8時キティーホーク入港。9時カウペンス入港。
 イ 「キティーホーク」歓迎実行委員会は新聞等に「キティーホーク招待見学会」の宣伝を載せ、見学者を募りましたが、見学者の数は前回を更に下回りました。(図1参照)


 
7月1日
7月2日
7月3日
7月4日
7月5日
合 計
見学者
10,581
23,405
10,224
6,122
300
50,632
内艦内見学者
6,541
8,652
0
0
0
15,193

 ウ 7月5日北朝鮮のミサイルが日本海に発射される中、キティーホークは小樽港を出港。

図1 北海道新聞(朝刊)

3. 2008年ブルーリッジ7回目の入港

(1) 入港までの議論経過
① 1月15日米海軍艦船小樽寄港の情報を得た小樽市副市長は在札幌米国総領事館を訪ね「勝納埠頭に接岸した場合、冬の季節風の影響で岸壁を損傷する恐れがある。冬の小樽ー札幌間は高速道路が普通になることも多く条件が悪い。市民感情も無視できない。」と話し入港計画の再考を求めました。
② 1月15日夕刻、小樽港長より2月7日から11日まで米海軍艦船ブルーリッジの岸壁手配依頼が届きました。
③ 小樽市総務部は「ブルーリッジは過去に6回小樽港に入港しており、安全性についてはある程度問題はないと考えている。」との見解を明らかにしました。
④ 小樽市港湾部は「25日にバース会議があるので、米側の回答期限の25日に回答するのは不可能」との考えであることを表明しました。

(2) 1月25日のバース会議
① 1月25日金曜日午後2時よりバース会議が開かれ、ブルーリッジ入港予定時期のバースの利用予定が示されました。


バース
船 名
船 籍
トン数
貨 物

仕出港
2月6日
7日
8日
9日
10日
11日
勝納埠頭1番バース シェコーシー
香港
37,846トン
メイズ
米国
カラマ港
天候で延長もあり      
中央埠頭4番バース コールカバレロ
パナマ
14,446トン
小麦
カナダ
バンクーバー
 
港町埠頭2番バース ジャジャガン外 コンテナ
 
 
 
 
港町埠頭3番バース アムール外 木材埠頭
 
 
  ブルーリッジの 手配依頼期間  

(3) 岸壁手配困難
 1月28日、米海軍艦船入港に当たっての3条件を検討した結果として、小樽港湾管理者・小樽市長は「米国艦船が接岸可能ないずれの岸壁も商船の接岸・荷役が予定されており、岸壁の手配は困難です。」と小樽港長に回答しました。

(4) 外務省北米局日米地位協定室長来樽
① 1月31日外務省北米局日米地位協定室長が来樽しました。小樽市総務部・港湾部が「米海軍艦船入港にあたっての小樽市3条件について。今回の判断(小樽市の考え方やスタンスになんら変更のないことを)について。バースの手配状況や位置関係やこの間の経過について」説明しました。
② 約1時間半にも及んだ「お話し合い」のやり取りは記録がないとの理由でなぞのままです
③ 2月1日午前、室長は小樽市長を訪問、懇談しました。

(5) 2月1日のバース会議
① 2月1日金曜日午後2時よりバース会議が開かれ、中央埠頭4番バースに2月8日から入港予定されていた穀物船「コールカバレロ」の入港日程が2月18日に変更になった旨の報告がありました。
② 2月1日夕刻、小樽港湾管理者・小樽市長は「平成20年1月28日付樽港施第83号で回答いたしました米海軍艦船ブルーリッジの岸壁手配について、同艦船の寄港予定期間中、中央埠頭4番バースで予定されていた穀物船の入港日程が変更となりましたのでお知らせします。なお、同艦船の岸壁手配を必要とされる場合は、再度文書にてお知らせ下さい。」との文書を届けました。
③ 2月1日小樽港長より小樽港湾管理者・小樽市長に再度岸壁手配要請の文書が届きました。
④ 2月4日小樽港湾管理者・小樽市長は「岸壁手配ができた」旨の回答を届けました。
⑤ 2月7日午前10時ブルーリッジが入港しました。

4. 終わりに

 1月28日の「ブルーリッジ小樽港入港拒否」、このレポートの流れから言うと「ブルーリッジ接岸可能な岸壁手配できず」という発表に至る経過を、その時だけに限定しないで、12年間遡り経過と議論を見て来ました。
 小樽には1961年から今日まで55隻の軍艦が入港しています。こうした小樽市で米海軍艦船の入港時に、入港受け入れの判断基準が定められ、判断に至る経過が公開されるようになった端緒が「インディペンデンス」入港でした。結果として、自治体の持つ「平和力」を目覚めさせる役割を果たしたことになりました。というのは、「小樽に3条件」が米海軍艦船の入港受け入れを判断する条件である限界は当然ありますが、一定の判断基準が定められ、表で議論がされるようになると自治体は憲法や地方自治法や港湾法を意識して、商業港を管理・運営しようと動きます。そこに自治体当事者の思惑を超えた「自治体の潜在的平和力」が発動すると思います。なぜならば、憲法も地方自治法も港湾法も、たとえ港が閑散としていても、商業港に軍艦が入港する場面では高いハードル「商船優先」として機能するからです。そして、その効力は日米安保、地位協定さらには米軍の民間港優先使用に対しても有効なのです。2000年のビンセンスそして2008年のブルーリッジはそのことを示していると考えます。
 インディペンデンス入港という衝撃により始まった「3条件」の議論は、小樽港の軍事利用に反対する多くの市民や団体のたたかいに支えられている側面があります。広範な反対運動が市長や小樽市を動かし、外務省や米国側へ出向かわせ、発言させているのです。つまり、市民の声は市長にとっては煩わしいプレッシャーであると同時に外務省や米国側と向き合う時の、「再検討」を要請する時の、そして「岸壁の手配ができない」と返答する時のエネルギィー源でもあるのです。「市民感情を無視することはできない」と市長に言わせる運動があって初めて自治体の持つ「平和力」が目覚め、緊張感を持ち、磨きがかかると思います。いま、小樽では「小樽3条件」のげんかいを克服し、小樽の港の平和を守るため米海軍艦船等に非核証明書の提出を義務づける「非核平和市民条例」の追及する運動が続いています。市民の力で磨けば必ず輝きを増してくる自治体の平和力はどこの自治体にも必ずあることを読み取って頂ければ幸です。